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■夏の日の想い出・郷愁(34)

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この劇の撮影が2月中旬に終了し、PVの編集は2月中に終了して、日本語版のマスターはCD, DVD ともに完成した。
 
また2〜3月は英語版・フランス語版・スペイン語版・ポルトガル語版・ロシア語版・ドイツ語版・北京語版の歌唱収録を各々1週間単位で進めた。これで海外版の音源編集を進めてもらった。
 
海外版の作業で私とマリに七星さんも3月中、そちらに取られてしまったので、次のシングルの音源制作は4月に入ってからおこなうことにした。
 
パンフレットに関しては、ライナーノートを蔵田さんに書いてもらい、写真などを入れて、妃美貴が2月中旬までにまとめてくれた。それで2月下旬からプレスに入ることができた。
 
これはFMIのスタッフの手で各国語に翻訳され、海外版に添付される。
 
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“千里2”からは、“千里1”が予定通り、2月16日に川島信次さんとの婚姻届を提出し、3月17日に結婚式を挙げたことを聞いた。私は“千里1”の結婚式にお花を「唐本冬子」名義で贈っておいた。千里1は、桃香の卵子を借りて体外受精と代理母で子供を作り、特別養子縁組で自分たちの子供にする予定であるという。その方式は、和実たちが希望美ちゃんを作った時の真似かなと私は思った。実際の体外受精は4月頭に実行するらしい。
 
もっとも千里は京平ちゃんを作った時と同様、自分で卵子を提供できたと思うのだが、おそらく千里1は自分に卵巣があること自体を忘れているのだろう。その卵巣は千里2の説明によると小学4年生の時に骨髄液を採取してその細胞からIPS細胞を作り、それを卵巣や子宮・膣に育てて2年後に移植したものだという。
 
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それは原理的には可能なことであるが、2018年の現時点でもまだそのような手法は医療技術として確立していない。オーバーテクノロジーだ。そもそもIPS細胞の技術は2006年に山中伸弥(ノーベル賞受賞)によって確立されたものだが、千里が小学4年生だったのはその6年前の2000年である(ES細胞なら確立しているもののこれは受精卵が細胞分裂を始めた初期に細胞を採取しておかなければならない)。しかし、千里の言葉はなぜか信じてもいい気がした。
 

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ところで千里1は2月に婚姻届けを出し、3月に結婚式を挙げたにも関わらず信次さんと同居せず、用賀のアパートでそのまま暮らしているようであった。私は彼女に電話してみた。
 
「信次さんの所に居るのかと思って電話してみたら、お仕事の都合でまだ世田谷区の方にいるんですよ、と向こうのお母さんに聞いた」
 
「うん。ソフトハウスの仕事はどうしても深夜とかまで掛かるし、その場合、とても千葉市まで戻れないんだよ。それで会社に近い用賀のアパートにそのまま住んでいるんだよね」
 
「ずっとそのまま?」
「実は信次に転勤命令が出ていて。4月2日付けの転勤の予定だったんだけど信次が手術を受けるから、それが落ち着いてから5月14日付けで名古屋支店に転勤」
 
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「信次さん手術って何か病気?」
「ううん。性転換手術」
「え〜〜〜!?」
「と本人はジョーク言っていたけど、実際は腫瘍の手術。良性だけど、念のため摘出しておいた方がいいという話」
 
「びっくりした。でも良性で良かったね」
 
しかし千里1もジョークが言えるほど精神力を回復させているな、と私は思った。
 
「それで信次が名古屋に行くから、私もそのタイミングでやっと会社辞めさせてもらうことになった。とりあえず信次が手術を受けるあたりからはさすがに私も千葉に移動するつもり。だからこのアパートは3月いっぱいまで」
 
「なるほど」
 
「レッドインパルスの方は、休部することにした。そちらも退団させて下さいと言ったんだけど、籍だけは残しておいてというから。1軍と違って2軍は定員がないから、部員は何人居てもいいんだよね」
「なるほどね」
 
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そのあたりも私は千里2から説明を受けたのだが、現在レッドインパルスの1軍に「33.村山千里」、2軍に「66.村山十里」が登録されていて、実際には千里1が2軍に参加しており、千里3が1軍と日本代表で活動しているらしい。
 
どうも、バスケットの能力は千里3に最も強く出て、音楽の能力や霊的能力は千里2に最も強く出て、女らしさは千里1に最も強く出ているらしい。
 
「千里3は男の娘だからかなあ。あまり料理とかしないで、ほとんど外食みたい」
「へー」
 
千里2は4月中旬までフランスのLFBリーグに参加し、その後アメリカに移動して5月からアメリカのマイナーリーグ、WBCBLに参加する予定であるという。私は現在は3の方がバスケット能力が上でも海外のリーグで鍛えられている2はその内3を追い越すかもという気がした。
 
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一方貴司さんは千里2の予言通り、1月21日に阿倍子さんと離婚。阿倍子さんは神戸の実家に京平君と一緒に戻った。
 
そして貴司さんは2月3日に“妊娠させてしまった”三善美映さんとの婚姻届けを提出した。こちらは美映さんがそういうのは好きでないというのもあり、結婚式は行わない。記念写真を取って、ふたりでお食事をしただけである。(食事会にはどちらの親族も出席せず、貴司さんと美映さんのみ)
 
この妊娠は京平君の時と同様、本当に妊娠しているのは千里(千里1)なのだが生殖器が一時的に交換されているのだという。千里2の説明によると、貴司さんには、ある種の“呪い”が掛けられていて、彼が誰か千里以外の女性とセックスしようとすると、自動的にその女性の生殖器と千里の生殖器が入れ替わってしまうらしい。だから貴司さんは結果的に千里以外の女性器とセックスができないことになる。そして妊娠する場合も千里の生殖器が妊娠してしまうのだという。
 
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この交換は、出産が終わると(妊娠しなかったら次の生理の時に)元に戻るらしいので、結果的に相手の女性は出産しても処女のままである!
 
貴司さんがどうやっても浮気ができないようになっているというのは、お釈迦様の掌の上を飛び回る孫悟空を連想させた。
 
なお、千里1の妊娠中は、千里2・3もHCGホルモンが高い状態になり、妊娠検査薬はプラスを示し続ける。乳房も膨らみ、出産後は3人ともお乳が出るだろうと千里2は言っていた。
 
「おっぱい大きいと、バスケやってる時に動きにくくて困っちゃう」
などと千里2は文句を言っていた。
 

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「え?だったら、来年は『ときめき病院物語』は制作しないんですか?」
とアクアはコスモス社長からその話を聞いて驚いた。
 
「主演の三崎京輔さんが今年は映画を撮るので降板したいという申し出があって。三崎さんあっての『ときめき病院物語』だったからね」
 
「わあ残念ですね」
 
「テレビ局ではその枠で今度は片原元祐さんを主役にした時代劇をやろうかという話が出ている」
 
「時代劇ですか!片原元祐さんは武田信玄をなさいましたね!」
 

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それでアクアは2017年12月中旬、多忙な中、コスモス、葉月と一緒にテレビ局の企画会議に出席した。『ときめき病院物語』を担当していた橋元プロデューサーから新しいドラマの企画が説明された。
 
タイトルは『ほのぼの奉行所物語』である。主な登場人物はこのようになっている。
 
北町奉行所
 鳥居元衛門30(定廻り同心)片原元祐(主人公)
 岡っ引き・厳蔵40 新田金鯱
 山門新五郎50(定回り同心)藤原中臣
 岡っ引き・七次 40 スキ也
 南川昇平44(与力)主人公の上司 香川満夫
 南川ちか(昇平の妻)万田由香里
 南川勝之進22(昇平の長男)岩本卓也
 南川和之介18(昇平の次男)アクア
 南川しの16(昇平の長女)アクア
 
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南町奉行所
 藤沢理太夫26(定廻り同心)中橋智也
 立花勘兵衛52(定廻り同心)佐川伝二
 北山啓吾41(与力)光山明剛
 北山きく37(啓吾の妻)西山羽留香
 北山一太郎18(啓吾の長男)松田理史
 北山みつ16(啓吾の長女)岡原襟花
 
越中屋
 諭吉43(主人)広川大助
 三平22(手代)大山弘之
 さよ20(諭吉の娘)神尾有輝子
 きぬ16(諭吉の娘)馬仲敦美
 
主人公の若手同心・鳥居と、ライバルとなる南町同心・藤沢との拮抗、先輩同心山門とのやりとり、また藤沢と先輩同心・立花のやりとり、といったものが物語の中心である。基本的に殺人事件や強盗事件などは(大きくは)取り扱わず、江戸町民の日常的な生活を描いていく。また小普請組(つまり無職!)の勝之進の就活の様子、学問所に通う和之介・一太郎の友人たちとの交流、箏の教室に通う、しの・みつや友人の武家の娘たちとの交流なども描かれる。
 
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アクアはサブストーリーに関わり、北町与力・南川の息子と娘の二役とする。南町与力・北山の息子・娘との微妙な関係が描かれる。例によって葉月がボディダブルを務める。葉月は箏教室の参加者としての顔出しもある。
 
主題歌は神尾有輝子が歌い、エンディングテーマをアクアが歌う。
 

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初日のこの日は、役者さん同士の顔合わせ、挨拶、また衣裳やカツラ用意のための採寸なども行わた。メイン級の俳優・女優は「似合う」服を用意するため、写真・動画も撮られた。
 
「アクアちゃんって、ほとんど女の子体型!」
と衣裳会社の担当さんが言っていた。
「きっと、女優さんが男装する時の衣裳が合いますよ」
と山村マネージャーが言うと
「ほんとにそうかも知れない」
と言っていた。
 
「頭もまだ成長過程だからかなあ。これ女優さん用で合いそう」
と、かつら会社の人は言っていた。
 
この日、アクアと葉月は主役の片原さんをはじめ出演者にひたすら挨拶してまわった。このあたりはちゃんとしておかないと、なまじ人気があるだけに、人気を鼻に掛けて生意気とか言われかねない。それでマネージャーの山村ともどもしっかり挨拶して回る。挨拶には順番!もあるので結構神経を使う。これって山村さんが付いてないと無理だぁ!とアクアは思った。
 
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3年前に『ときめき病院物語』を始めた時はここまで意識しなかったのだが、やはりそれは3年間で君の立場が変わったからだよ、と山村は言っていた。確かに全くの新人であればそのあたりが楽な面もあったろうし、大目に見てもらえる部分もあったろう。
 
葉月については
「へー。やはりアクアちゃんのボディダブルは女の子でないと務まらないよね」
「君、わりと男装も行けそうだね」
などと言われるので、山村が
「いえ、この子、男の子なんですよ」
と言ったのだが
「まあ、そんな冗談を!」
と言われて、全然信じてもらえなかった!
 
なお、このドラマの撮影は室内や庭先などでの場面は都内のセットで、屋外の風景については、つくばみらい市のワープステーション江戸で月に1度まとめて行われる。当地は秋葉原駅からつくばエクスプレスで1時間、みどりの駅まで行き、そこからチャーターしたバスで20分程度で現地に到着する。撮影の日は土曜朝に現地に入り、つくばみらい市内に1泊して日曜日の夜まで撮影は続くことになる。
 
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