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■夏の日の想い出・郷愁(21)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-12-19
 
12月29日(金)。
 
千里は“7月に無理を言って2軍に落としてもらったので”、午前中横浜市郊外の2軍練習場に行こうとしていた。
 
レッドインパルスはお正月の全日本バスケットボール選手権(皇后杯)に出るが、それは1軍であり、2軍は今日で練習は終わりで、正月の練習は1月9日からである。その間は気が重いが“結婚に向けての準備”をしなければいけないなあと思っている。結婚式の衣裳を合わせるのも見てと康子さんから連絡が来ていたのだが、最近(作曲の依頼が多くて)忙しいもので、なかなか見に行けずにいたのである。今年中にあと2曲!完成させなければならないので、今日練習が終わったら、その後はアパートに籠もって作曲に集中しようと思っていた。
 
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幸いにも「自分が作っていることになっている」システムの納品が1月中旬に延期されたので、それまでは「忙しい」と信次や康子に言うことができる。
 
千里は自分がシステムの仕事なんてほとんどしていないのに、勝手にシステムが作られて行っているふうなのは、なぜなのだろうと何度か考えてみたものの考えても仕方ないと諦め、なるにまかせている。
 

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それで出かけようとしていた時にピンポンとアパートの呼び鈴が鳴った。
 
「はーい」
と言って出ると、見覚えのある顔だ。これはえっとえっと・・・秋乃風花さんだ!冬子(ケイ)の高校時代の友人で、冬子の実質的な秘書のような役割をしている人。
 
千里は7月に自分が何か大きな事故に遭った(気がする)後、色々なものを忘れていたのを、最近少しずつ思い出してきつつあった。
 
「おはようございます、風花さん」
「おはようございます、醍醐先生。カウントダウンライブでお願いする譜面がちょっと改訂になったんですよ。それで新しいのをお渡ししなければと思って。もう明日には移動なさると聞いていたので郵送では間に合わないと思って、こちらに持って来ました」
 
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「ありがとうございます」
 
それで千里は風花から受け取ったものの、風花が帰った後で悩む。
 
「カウントダウンライブって何だっけ?私、もしかしてそんなのに出る約束とかしてた?」
 
最近千里は自分の記憶に自信が無い。
 

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千里の後ろの子たちは顔を見合わせていた。
 
『誰かと勘違いしたんじゃね?』
『風花さんはしっかりしてるけど、ケイはいつもオーバーフローしてる』
『きっとケイが指示し間違ったんだよ』
 
その時《きーちゃん》が言った。
 
『分かった。これ多分、青葉に渡すべきものをこちらに持って来たんだよ。ほら、龍笛の所に丸が付いてるじゃん』
 
『ああ、なるほど』
 
『私が千里から取って青葉に渡してくるよ』
と《きーちゃん》が言うので、
 
『よろしくー』
と他の子たちは言った。
 
みんな特に疑問は感じていない雰囲気だったが、ただ1人《すーちゃん》だけは腕(羽根?)を組んで考え込んでいた。
 

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千里が譜面を見て悩んでいた時、また玄関がピンポンとなる。
 
「はい」
と言って出ると、またさっきの風花さんである。
 
「醍醐先生、済みません!私、うっかり大宮万葉先生に渡すべき譜面をこちらに持って来てしまって」
 
「ああ!万葉の譜面でしたか」
「すみません。向こうに持って行きますね」
「分かりました。お願いします」
 
と言って、千里は譜面を風花に渡した。
 
それで風花が帰っていった後、千里は練習用のユニフォームや下着の替え、水分補給用の水筒などを準備し、アパートを出た。
 

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「千里〜、これ新しい譜面だって」
と《きーちゃん》は、葛西のマンションに来ると、千里に譜面を渡した。
 
「ありがとう」
と言って、もう寝ようとしていた千里は《きーちゃん》から受け取った。
 
「風花さんが1の所に持って行っちゃったから、何とか取り上げて、こちらに持って来た」
「さんきゅ、さんきゅ。いつも苦労掛けるね」
と言って千里はパラパラとスコアをめくってみる。冬子の字で「この辺りが以前頼んだ時と変わっています」と書かれ、何ヶ所かマーカーで印が付いている。
 
しかし眠い。
 
「“朝”起きてから見るのでいいよね?」
 
千里は《フランス時刻》で生活しているので、今は日本時間では朝9時でも、フランス時刻では夜中の1時である。千里は日中チームの練習を8時間した後、マルセイユで夕食を取ってから、葛西で5時間ほど作曲活動をしていた。(ローズ+リリーの音源制作に参加する時は、作曲活動の時間と睡眠時間を入れ替えている)
 
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「千里の腕があれば問題無いと思うよ」
「じゃ、おやすみ」
と言って、千里は布団に潜り込んですやすや眠ってしまった。
 

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その頃、川崎市のマンションでは千里が大阪に飛んで京平と遊んできてから、朝御飯を食べながら、作曲を頼まれている案件の指示書に目を通していた。
 
頬杖をつく。
 
「最近、新島さんも適当だなあ。これでどうやって書けというのよ?」
などと文句を言いつつ、蓮菜に電話する。
 
「ああ、蓮菜?新婚さんのお宅を邪魔して申し訳ないけど、詩を書いてくれない?うん。それが凄い適当な指示書でさぁ。高校生男子と塾の女教師の恋愛物語のドラマのテーマ曲なんだって。歌手は****.うん。それ以上の詳しい説明がない。ね?だいたいそんな話を公共の電波で流していいのかね〜?うん。あまり凝らなくていいから、適当によろしく」
 
それで千里は別の作曲依頼された案件で数日前から書いていた曲の手書きで書いていた譜面をCubaseに入力し始めた。
 
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「さて皇后杯に向けて、午後からは川崎で練習だから、午前中に何とかこれ入力し終えなければ」
とひとり事を言いながら、千里は画面に集中した。
 

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§§グループ恒例の年末年始の「今年もお世話になりました」のCMが今年も12月30-31日にテレビに流れた。
 
今年はかなり人数が増えている。
 
指揮者:秋風コスモス、ピアノ:川崎ゆりこ
並んでいる人:桜野みちる・品川ありさ・アクア・今井葉月・高崎ひろか・西宮ネオン・姫路スピカ・白鳥リズム・花咲ロンド。
 
総勢11名である。このCMを最初に始めた2015年の年末は7人であった。指揮者とピアニストを除くと5人から9人に増えたことになる。
 
いつものように、コスモスの指揮でゆりこが、C−G7−Cをピアノで弾き、それに合わせてお辞儀をする。そして全員で声を合わせて
「今年も大変お世話になりました。皆様、ありがとうございました」
と言った。
 
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例によって、(羽織袴姿の)西宮ネオン以外全員振袖を着ているが、今年は全員白地の振袖にしたようである。前面に立っている、品川ありさ・桜野みちる・アクア・高崎ひろか・姫路スピカの5人の振袖を見ると、全員模様が違うので、後列に立っていて模様がよく分からない子たちも、全員違う振袖を着ているのだろう。しかし地の色を白に統一したようだ。
 
(ロングバージョンでは全員が映るので、実際に全員違う柄の振袖であることが確認できる)
 
ちなみにアクアと今井葉月も振袖であるが、これについては今年はもう誰も突っ込まなかった! (葉月はそもそも女子と思われている感じもあるが)
 
「アクア様の振袖姿、ほんとに可愛い。こんな可愛いアクア様のお嫁さんになりたい」
「アクアがこんなに振袖似合うなら、そのまま俺の嫁になってくれ」
 
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などという書き込みが多数あるのはいつものことである。
 

アクアの高校は2017年は12月22日(木)の授業を最後に23日(金)天皇誕生日から冬休みに突入した。
 
冬休みというのはふつうの中高生にとっては、のんびりと休めて楽しい時間であるが、売れっ子の芸能人にとっては壮絶に忙しい時期である。同じ学校で同学年の松梨詩恩や星原琥珀、2つ上の学年の山森水絵などはこの時期随分学校を休んでいた。アクアの場合は、上島さんのお陰で「学校絶対優先」になっているので、木曜日の授業までしっかり終えてから、テレビ局に向かい、お正月の番組の撮影などに臨んだ。
 
今年も年末年始の番組にはいくつ出演しているのか、自分でも全然分からない状態である。マネージャーの山村はもちろん、サブマネージャーの志穂と友香も凄まじく多忙で、桜木ワルツもこの時期は臨時にサブマネージャー・吉田和紗の名刺でアクアのサポートに奔走していた。
 
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「アクアさん、遅い時間で申し訳無いんですが、今から新宿のVSスタジオまで来てくださいということです」
と、その日テレビ番組の収録を終えた後、付き添ってくれていたワルツが言う。
 
それでワルツが運転する車で新宿に移動した。ワルツも若葉マークを卒業して取り敢えず無事故無違反だし、ここまでの累積走行距離が2万kmを越えているので、最近はアクアの移動を受け持つことがある。
 
(むしろ運転の経験を積ませるのに積極的に道具類や印刷物などを運んだりする仕事をたくさんさせていた)
 
それでスタジオに到着したら、桜野みちるが
「アクアちゃん、ワルツちゃん、待ってたよ。これに着換えて。着替えは215号室で」
と言って、和服の入っているようなバッグを渡す。バッグには
 
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《アクア様》
《桜木ワルツ様》
と書かれたシールが貼られている。
 
「えっと着付けしてくれる人は?」
「今他の子の着付けをしてるから、肌襦袢と自分でできるなら長襦袢も着て待ってて」
「はい」
 
「これ何の和服ですか?」
とアクアがみちるに尋ねる。
 
「振袖。その後撮影するから」
「あ、振袖ならボク、自分で着られます」
とアクア。
 
「そうだったね。じゃ、アクアはひとりでよろしく」
 
それで結局アクアは自分で着てしまったものの、アクアが振袖を着終わってもまだ着付けをしてくれる人は来てくれない。それでアクアがワルツに長襦袢と振袖まで着せて、帯も締めてあげた。
 
アクアの振袖は加賀友禅のようである。白地に袖の先や裾の部分だけ水色になっており、臙脂・藍・黄土・草・古代紫の《加賀五彩》の色で、桜の花と枝・葉っぱ、おしどり・鯉などが描かれた豪華なものである。ワルツの振袖はそこまで豪華ではないものの、青地に牡丹・菖蒲(あやめ)・紅葉・菊の花模様が描かれ、御所車の絵も入っている。アクアの振袖ほどではないが、結構なお値段のする振袖のように思われた。
 
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ちなみに、ふたりは同じ部屋で着換えているが、そのことについてはアクアもワルツも何も意識していない。
 
「アクアさん、着付けできるって、すごーい」
「小学5年生の時に、川南さんって知り合いのお姉さんが熱心に教えてくれたんだよね〜。それで覚えた」
 
「へー」
と答えながら、なぜ男の子が振袖の着方を習ったんだ〜?などとワルツは思っている。
 

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全然誰も呼びに来ないので、他の人がいる所を2人で探して回っていたら、401号室に白鳥リズム、花咲ロンド、石川ポルカの3人がいるので
 
「おはようございまーす」
と言って中に入る。
 
「おはようございまーす」
と中にいる子たちも挨拶する。
 
「アクアさんが来た!やはりここで良かったんだ」
などと白鳥リズムが言っている。
 
「401号室で待っててと言われたものの、誰も来ないから不安になっていたんです」
と花咲ロンドが言っている。
 
「私たちは何も指示されてなかったから、誰か居ないかなと思って探しているうちにここに来た」
と桜木ワルツ。
 
ちなみに、白鳥リズムと花咲ロンドは白地の振袖、石川ポルカは青地の振袖を着ている。
 
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「これ、もしかしてこれからデビューする子が青地の振袖なのかな」
「あ、そうなのかも」
 
などと言っていた。
 
ちなみに誰もアクアが振袖を着ていることに疑問を感じていない。本人も何も感じていない!
 

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5人で話している内に、品川ありさと高崎ひろかが来て、姫路スピカと今井葉月も来て、これで9人である。今井葉月も振袖であるが、これについても誰も突っ込まない。実はワルツとポルカはアクアの振袖には疑問を感じなかったものの
 
「なぜ葉月さんも振袖なんだろう?」
と思っていたが、誰も言わないので口にしなかった。
 
やがて桜野みちるが来るので
「何があるんですか?」
と質問が出る。
 
「年末年始の挨拶のCM撮るよ」
とみちる。
 
「ああ、そういえば去年も撮りましたね!」
という声が出てやっと趣旨が分かった。
 
その後すぐに、秋風コスモスと川崎ゆりこも来る。
 
「全員揃っているかな?」
と言っていた所に
 
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「済みません。遅くなりました!」
と言って、羽織袴姿の西宮ネオンが入って来た。
 
それを見てからアクアが
「あれ〜?ネオン君は羽織袴なの?ボクは振袖なのに」
などと言う。
 
品川ありさが呆れたように
「その質問、昨年も聞いた気がする」
と言った。
 
しかしアクアは今日は年末年始の挨拶CFの撮影だとは聞かされていなかった!
 
「ボク振袖だと、女優さんだと誤解される」
と今井葉月が言うが
 
「何を今更!」
と多くの意見であった。
 

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■夏の日の想い出・郷愁(21)

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