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■夏の日の想い出・郷愁(2)

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ところが、5月上旬、その件で千里・青葉の姉妹、その場に居た七星さんと4人で話していた時、千里は
 
「そういう事情なら、まるでケイが書いたような曲を私は2曲提供する」
と言い出した。
 
そしてその場で「ケイ風の曲の作り方」の講座を始めたのである!それを聞いた青葉と七星さんも
「だったら私たちもケイ風の曲を1曲書く」
と言ってくれた。
 
ただ実際に青葉と七星さんが書いた曲は、私が自分の名前で発表するには微妙な曲であった。しかしそれを見た千里は2人に連絡して改造の許可を得ると、数日できれいに本当に私が書いたかのような曲に直してしまった。
 
私は千里の特殊な「技」と才能を見て、惚れ込むと同時にライバル心も掻き立てられた。
 
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ところがその千里が7月上旬“事故”に遭い、一時は心臓が停まったのを近くにいた青葉が蘇生させるという事態が発生する。蘇生はしたもののその後遺症は大きく、彼女は霊的な能力をほぼ喪失、バスケットの力も大幅にダウンさせて日本代表から落とされた上に、作曲や演奏の能力も著しくダウンしたと伝え聞いた。
 
私は唐突なライバル消失に戸惑いを隠せなかったし、私のやる気も20%くらいが消えてしまった。
 
しかし千里はそのわずか10日後には、怪我した選手と入れ替わる形で日本代表に復帰してしまった。私はその超人的な千里の復活劇に心を打たれ、私も泣き言を言ってないで頑張らなければと思った。
 

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制作する楽曲は7月中に下記の14曲が揃った。
 
私自身の作品 同窓会、春の詩、刻まれた音
醍醐名義の作品 縁台と打ち水
醍醐作ケイ風作品 お嫁さんにしてね、冬の初めに
青葉作ケイ風作品 硝子の階段
七星作ケイ風作品 青い浴衣の日々
Sweet Vanillasの作品 トースターとラジカセ
ゆまの作品 セーラー服の日々
青葉の作品 靴箱のラブレター
七星さんの作品 村祭り
琴沢幸穂の作品 フック船長
ゴールデンシックスの作品 斜め45度に打て
 
琴沢幸穂は千里(醍醐春海)の後輩作曲家らしい。千里が7月上旬に事故に遭い、今まともな作品が書けないので、代わりにこの人の作品を使ってくれないかと推奨された。但し千里は事故のせいで記憶が混乱しているようで本当はそれ以前に3曲もらっていたのだが、優秀な新人作曲家と聞いて興味を持ったので、作品を送ってもらったら、ひじょうに良い出来だった。それで使わせてもらうことにした。ゴールデンシックスは、私が困った状態にあると花野子が聞きつけ「もし足りなかったら使ってください」と言って送ってきてくれた。
 
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この他に上島先生の様子を奥さんの春風アルトさんに尋ねてみたのだが、複数のアイドル歌手のアルバムが同時進行していて、声も掛けられない状態とお聞きしたので、上島先生には声を掛けなかった。
 

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そういう訳で14曲も揃ったものの、時間的にこんなに作ることは困難である。それで七星さん、近藤さん、鷹野さん、氷川さんと5人で話し合い、最終的にやはり10曲に絞ることにした。
 
外すのは下記の4曲である。
 
村祭り(七星)、春の詩(マリ&ケイ)、縁台と打ち水(醍醐)、冬の初めに(ケイ風醍醐)
 
こちらの窮状を察して書いてくれた人たちに悪いので、遠慮の要らない七星さんと親友の千里の作品を外させてもらった。
 
結果的に次の10曲で構成する。
 
ケイ名義 同窓会・刻まれた音(本当にケイ)、青い浴衣の日々(実は七星)、お嫁さんにしてね(実は千里)、硝子の階段(実は青葉)、
 
それ以外 トースターとラジカセ(Sweet Vanillas)、セーラー服の日々(ゆま)、靴箱のラブレター(青葉)、フック船長(琴沢)、斜め45度に打て(Golden Six).
 
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本当に自分が書いたのが2曲だけという状態で出すのは罪悪感を感じるのだが、取り敢えずケイ名義の曲が5曲で体裁としては整っている。
 
これを実質8月の1ヶ月で音源制作し、9月にPVを制作する。PVの制作と並行して音源の調整とマスタリングを進める。
 

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私は6-7月に必死でこれらの曲のスコアを書いた。最初からある程度スコアができていて微調整で済んだのは、七星さん・ゆま・千里の作品と千里がスコアを書いてくれた琴沢さんの作品の4曲で、自分の曲2曲、青葉の曲2曲、Sweet Vanillas, Golden Sixの曲の6曲のスコアを書く必要があったがスコア1つ書くのにはどんなに頑張っても(私には)1週間は掛かる。それで全10曲のスコアが揃ったのは7月の中旬であった。
 
私はこれを音源制作に参加してくれる約30人のミュージシャンにコピーして送った(実際のコピーと郵送の作業は★★レコードの人がしてくれた)。
 
これが7月19日くらいであった。
 
今回お願いしたミュージシャンは下記の人たちである。
 
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スターキッズ&フレンズ(7) Gt.近藤嶺児 Sax.近藤七星 Bass.鷹野繁樹 Dr.酒向芳知 Marimba/Vib.月丘晃靖 Gt.宮本越雄 Tp.香月康宏
 
ヴァイオリン演奏者(8) 田中成美・伊藤ソナタ・桂城由佳菜・前田恵里奈・佐藤典絵・富永英美・杉本一美・長崎詠子
 
和楽器(6) 笙.若山鶴海(今田七美花)・琵琶.若山鶴風(田淵風帆)、胡弓.若山鶴宮(中村美耶)・箏.若山鶴朋(今田友見)・三味線.若山鶴花(今田三千花:槇原愛)龍笛.大宮万葉(川上青葉)
 
追加楽器(7) Sax.山本心亜(バレンシア) Tp.安田礼美(バレンシア)Fl.田中世梨奈 Fl.久本照香 Cla.上野美津穂 (この3人は青葉の友人)KB.長尾泰華 Pf.長丸穂津美(スリーピーマイス)
 
これに私とマリが加わって30名である。
 
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今回は制作期間が短く、多重録音をする時間的な余裕が無いので、基本的に使う楽器を全部同時に鳴らして一度に録音していく方式でいかざるを得ない。そのため、原則として1人が1つの楽器を演奏することにした。例外はフルートも吹く七星さん、龍笛とトランペットも吹く七美花、サックスも吹く青葉である。
 
スターキッズで普段キーボード/ピアノを弾いてもらっている月丘さんは今回はマリンバ・ヴィブラフォン専任とし、メインピアニストは長丸穂津美(エルシー)にお願いすることにした。
 

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今回いつも第1ヴァイオリンをお願いしている鈴木真知子ちゃんが海外のコンテストに出場するため参加できなかった。その代わりにと言って国内の大会でよく一緒になるという女子高生ヴァイオリニスト田中成美ちゃんを推薦してくれた。彼女は私も自分が参加した大会で見かけたことがあり優勝経験こそないものの入賞は何度もしていて腕は確かであり歓迎した。
 
ただ私は彼女の性別がよく分からない。実は彼女は何度か男装で大会に参加しているのである。真知子ちゃんに尋ねると
 
「女の子だと思うけど」
と言っていたので多分女子高生ということでいいのだろう。男装趣味??
 

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この音源制作メンバーの中から、ヴァイオリン奏者を外したメンバーを基本に一部都合のつかない人を代りの人で補って、7月30日の苗場ロックフェスティバルに出場することにした。
 
今年はいつも出ていた横須賀市のサマーロックフェスティバルも出場を辞退した。苗場も辞退したい気分だったのだが、ずっと露出の無い状態が続いていると活動休止しているのではと思われるからと氷川さんに言われ、これだけ出ることにした。
 
苗場には27日の前夜祭から最終日の30日まで滞在するが、その後、全員で東京方面に移動し、そのまま音源制作に入る方針で行く。
 

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苗場には、KARIONも出場するのだが、私は今回とてもそちらまで関わる余裕が無かったので、全部和泉にお任せした。ただ
 
「あんたもKARIONの一員なんだから、パフォーマンスには参加してもらわないといけないから」
と言われ、苗場に入る3日くらい前から和泉は私を新宿のスタジオに呼び出して小風・美空、トラベリングベルズと一緒に苗場での演奏曲目の練習をした。
 
27日のお昼過ぎにKARION関係者、ローズ+リリー関係者と一緒に苗場に向かう。一部は昨日の内に向こうに入っている人たちもあった。機材関係は共同で4トントラックに積んで越後湯沢まで持って行き、越後湯沢と会場の間は出演者と一緒に、マイクロバスやワゴン車などで運んだ。
 
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KARIONが29日、ローズ+リリーが30日なので、29日の夜に合同で多くの出演者を集めて打合せをした。
 

打合せの後、私は少し寝ようと思ってベッドに入る。政子は
「ちょっと出てくる」
と言って部屋を出たので、今回のフェスに今日28日に出演したWooden Fourの大林亮平の部屋に行ったんだろうと私は思った。
 
1時すぎ、その政子の電話で起こされる。
 
「朝一番のシャトルバスではアクアのステージに間に合わないらしい」
といきなり言う。
「は?」
 
それで話を詳しく聞いてみると、アジア選手権でインドに行っている千里からわざわざ青葉に電話があって、明日午前中のアクアのステージは、徹夜組だけで埋まってしまうので、朝1番のシャトルバスで行ったら既に満員になっていると予言したらしい。それで青葉も政子も何件かタクシー会社に電話したものの、今夜は予約がいっぱいと言われたらしい。
 
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私は夜中に申し訳無いと思ったのだが、佐良さんに電話してみた。すると佐良さんと矢鳴さんで話し合い、矢鳴さんが朝4時にエルグランドで会場まで往復してくれることになり、それを政子に連絡した。政子が青葉にも連絡すると言っていたが、正確に伝わるか不安を感じたので、念のためこちらからも青葉にメールを送っておいた。
 

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そういう訳で私は3時半に起きて会場入りの準備をする。ワゴン車で会場に行くのは、結局
 
私、政子、小風、美空、青葉、田中世梨奈、久本照香
 
の7人である。田中さんと久本さんは青葉の友人で、田中さんは金沢市内の大学に通学しており、久本さんはまだ高校3年生である。
 
和泉はきついから寝ていると言った。私も寝ていたかったのだが、政子が「一緒に行くよね?」というので仕方なく同行する。実際政子ひとりで行かせるのは怖い!
 
エルグランドは4時出発なので3:50くらいに私はホテルの玄関の所に降りていった。すぐに小風と美空が降りてきた。美空は起きる自信が無いので小風の部屋で一緒に寝ていたらしい。すぐに青葉たち3人が来る。
 
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3:55になっても政子が来ない。
 
政子の携帯に掛けるも反応が無い。多分マナーモードにしてるなと私は思った。
 
仕方ないので私は大林さんの携帯に掛けた。
 
「朝早く申し訳ありません。朝4時出発なのに政子がまだ来なくて困っているのですが」
「ああ、すみません。起こしますね」
 
それで大林さんに起こされて、やっと政子はやってきて、エルグランドは出発した。
 

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外はかなり雨が降っている。
 
「楽器持って来ちゃったけど、どうしよう?」
と私は独り言のように言ったのだが、すると矢鳴さんが
 
「私がKARIONの楽屋に持って行っておきますよ」
と言うので、お願いすることにした。結局、矢鳴さんが私のヴァイオリンとウィンドシンセサイザ、青葉のサックス、田中さん・久本さんのフルートを楽屋まで持って行ってくれた。
 
私たち7人は既にかなり出来ているアクアの会場に入る列に並んだのだが、私たちが並んですぐに「31000人」という札が立てられていた。アクアの会場は混乱防止のため35000人に定員が制限されているので、もう少し後に来ていたら、入れない所であった。
 
到着したのが5時すぎであるが、5時半には「アクアのステージはもう満員」というアナウンスがある。7時から客を会場に入れ始める。私たちも7時半頃中に入ることができたが、いちばん後ろのブロックである。政子が
 
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「ステージが遠い」
と文句を言っていたが、徹夜していた人たちにはかなわない。
 

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夏の日の想い出・郷愁(2)

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