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■夏の日の想い出・郷愁(27)

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やがて演奏が終わる。
 
最後の音の余韻が消えた所で、大きな拍手が来た。
 
私は立ち上がり、マリと一緒にステージの最前面まで行く。そして大きくお辞儀をした。両手をあげて拍手と歓声に応える。
 
そしてステージを降りた。
 
川崎ゆりこが舞台袖に登場して
 
「これにてローズ+リリーの2017-2018カウントダウンライブを全て終了します」
と締めのアナウンスをした。
 

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続けて、★★クリエイティブの女性スタッフが退場についての案内をする。
 
「皆様、公演は終了しましたが、退場はブロックごとに逐次スタッフが案内しますので、案内があるまでは席を立たないで下さい。ステージに近い一部の席以外では、観覧ブロックがだいたい宿泊地の行き先ごとになっております。案内のあったタイミングで退出し、お手持ちのチケットに印刷された乗り場のバスに、目的地名を確認してからご乗車ください。万一、湯の児温泉に泊まるはずの方が誤って小浜温泉行きのバスに乗ってしまったりした場合、有明海を泳いで横断するのは大変です」
 
などとアナウンスがあると、どっと笑い声がする。
 
(この手の誤りは昨年・一昨年もあったが、現地の旅行会社スタッフが適当な現地の旅館に泊めて対応した)
 
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一方私たちは楽器類だけを持つと、撤収は★★クリエイティブの人たちに任せて用意された中型バスに乗り込み、一路宿泊する耶馬溪(やばけい)まで走る。
 
このバスに乗ったのは、私とマリ、スターキッズの7人、知り合いの演奏者9人(風花を含む)、鱒渕、UTPの甲斐窓香・江口マル、★★レコードの氷川、秩父、加藤次長、の24人である。
 
私はバスの中でぐっすり眠っていたが、他の人もだいたいそうだったようである。どうも甲斐窓香と、元々この時間はいつも起きているという千里だけが起きていて運転手さんと3人で世間話をしていたようだ。窓香はそもそも移動中に運転手さんと眠気防止のためのおしゃべりをするため、公演の後半は江口マルに任せて仮眠していたようだ。
 
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また千里はふだん毎日夜中の2時頃までバスケの練習をしていて、その後、朝くらいまで作曲の作業をし、午前中に寝ているらしい。そのサイクルなのでこの時間は起きている方が調子いいらしい。
 

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耶馬溪に到着したのは深夜2時頃である。小さな旅館に入る。この旅館はほぼ私たちの貸切になっている。元々定員40人くらいの旅館のようで、私たち以外に泊まるのは、毎年ここで新年を迎えるという常連客だけだったようである。
 
夜遅いので、多くの人がそのまま寝ることになる。お酒とおつまみが欲しい人だけこの時間まで起きていて私たちを迎えてくれた女将さんと社長さんから受け取った。(女性が多いので、お酒の代わりにお茶やコーラなどを受け取った人も多かった)
 
私とマリも到着するなり、お茶とおつまみだけもらって部屋に入り、セックスもせずにひたすら熟睡した。
 

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しかし私は3時頃、目が覚めてしまった!
 
再度寝ようとしても、なかなか寝つけない。マリはすやすやと寝ているようだ。
 
私は、お風呂にでも入ってこようと思い、着替えとタオルを持つと浴場に向かった。
 
浴場の入口のところに
 
「本日は男湯と女湯を入れ替えております。女性の方は男湯と書かれた方に、男性の方は女湯と書かれた方にお入り下さい」
 
と書かれた大きな紙が貼られていた。
 
私たちが25人の内男性7人・女性18人で女性が多いので、こういう対応にしたのだろう。あとで聞いてみると、ここは昔からある旅館なので、女湯は3〜4人も入ればいっぱいになる小さなものらしい。
 
私は「人生で男湯に入るのって初めてかも知れない」などと思いながら男湯の暖簾をくぐって、中に入ったが、今日の泊まり客の男性は、禁断の女湯(?)に入浴初体験できるかも?
 
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脱衣場に籠(かご)が2つ出ていて服が入っている。こんな夜中に誰もいないだろうと思ったのだが、私同様、目が覚めてしまった人だろうか?
 
しかしこの脱衣場自体も6〜7人でいっぱいになりそうである。重ねてある籠を数えると12個あるが、12個の籠をこの脱衣場に並べると、人が歩けないかも知れない!?
 
籠を1個取り、服を脱いで浴室に入ると、中にいたのは千里・青葉の姉妹である。
 
「お疲れ様〜」
「あらためて明けましておめでとうございます」
「明けましておめでとうございます」
 
と声を掛け合う。
 

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私は髪を洗い、身体を洗ってから浴槽に浸かった。
 
「男湯と女湯を入れ替えているというから、こちらは広いのかと思ったら、こちらもあまり広くないね」
「まあ田舎の旅館だから仕方無い」
 
「これ何人入るんだろう?」
と私はつぶやくように言った。
 
「この浴槽はざっと見た感じ、3m x 2m って感じ。6平方mなら12人計算」
「ここに12人も入る〜?」
「男の人はきついかも。女ならギリギリ12人入るかも」
「それもう身動きができない気がする」
 
「旅館業法だかで定められているんだよ。浴槽は1人あたり0.5m2 洗い場は1人あたり1.1m2で計算する。実際ここの浴室自体は6m x 4m って感じだからだいたい計算が合いそう。逆算するとこの旅館の定員は男性48人程度を想定しているみたい。男女合わせて60人くらいかな」
と千里は言う。
 
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「旅館の定員の4分の1が浴室の定員?」
 
「お風呂がいちばん混むのが20-21時で、この時間帯に客の半分が入浴すると仮定する。だから男性48人なら24人が一度に男湯に入る場合を考えて、その内半分が浴槽に入っていて、半分が洗い場にいると仮定すると浴槽に12人、洗い場に12人。実際ここ給水栓は12個あるし」
 
「ホントだ!でもここに24人も入ったら酸欠で倒れるよ」
 
「まあ実際問題として脱衣室には籠が12個しか無かった」
「たぶん実際には男女合わせて30人も泊まらないんだろうね」
「ああ、そうかもね」
 
「でもライブ会場の基準は、立見の場合、1人あたり0.2平方メートルで計算するけどね」
「その基準も無茶って気がするけどね」
「本当にこの密度で入れたら、何かあった時、確実に将棋倒しが起きるよ」
「ライブハウスとかも、公称の人数はその基準で出しても、本当はそれより少ない人数で消防署とかには届けていたりするみたいね」
「多く届け出ると、著作権使用料が高くなるからね」
 
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コンサートの著作権使用料は《入場者数》ではなく《定員》に対する掛け算である。そうしないと、主催者が入場者数を過少申告して、著作権使用料をケチろうとするケースが多発することが容易に想像できる。
 
「実際問題として客が200人居るのと600人居るのは違いが分かるけど、200人と300人は、あまり違いが分からないんだよね」
「200人しか居なくても、300人と言われたらそんな気がするからね」
 

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「そういえば年賀状のリスト見ていて気付いた。葵照子というか蓮菜ちゃん、結婚したんだっけ?」
 
「そうそう。9月に結婚したんだよ。だから10月の厄払い旅行の時は新婚ほやほやだった」
「そうだったんだ!」
 
「壮大なる遠回り婚だよね」
と青葉が言う。
 
「遠回り?」
「相手は幼馴染みなんだよ」
と千里が言う。
 
「へー!」
 
「お医者さんごっことかしていた仲だって」
「おぉ!」
 
「ふたりは小学生の頃から、既に恋人同士という感じだったし、中学生の頃には既にセックスしていたよ。もちろん避妊はしっかりやってた。どちらかがどちらかの家に泊まる時は、親がちゃんと避妊具を渡していたらしい」
 
「そういう理解のありすぎる親って時々いるよね」
「でも高校2年くらいの時に一度別れたんだよ」
「あら」
 
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「でも別れてもお互いの家に泊まって、一緒に寝ていたりしてた」
「別れたのに〜?」
「別れたからセックスはしないけど、同じ布団に寝るのは友だち同士だから問題無いとか言っていた」
 
「いやそれ絶対問題ある」
 
「親や蓮菜が下宿していた蓮菜の叔母さんとかは、ふたりが別れたことを知らずにずっと付き合っていると思っていたみたいね。実際よく会っているようだったし、よく泊めていたし」
 
「そりゃよく会っていて、泊まって行くくらいなら、恋人のままなんだろうと思っていたろうね」
 
「その後、各々恋人を作ったけど、ふたりの関係はずっと続いていたみたい。セックスはしないけど、一緒に寝るというのも続けていたみたいだし」
 
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「でもそれよく相手も我慢できるね。一緒に寝ているのに」
「小さい頃からずっと一緒にいたから、兄妹に近い感覚かもと言っていた」
「いや男女の兄妹は一緒に寝ないよ」
「ね?」
 
と千里も少し呆れたように言うが、千里も細川さんと同じ部屋の同じベッドに寝るけどセックスは拒否というのを随分長期間していたようである。こちらも忙しかったので、細川さんとのことは聞いてないが、最近はどうなっているのだろう。2016年秋に婚約指輪と結婚指輪を細川さんのお母さんからもらった後、何か進展しているのだろうか。
 
「それで結局今年の春に田代君があらためて蓮菜にプロポーズして蓮菜は結婚くらいしてもいいよと言った。それで結婚することにした」
 
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「結婚くらいしてもいいよ、か」
「まあ蓮菜らしい返事だね。別れてから10年間、友だち以上恋人未満な曖昧な関係を続けていたからそろそろ年貢の納め時だった気もするけどね」
 
私は話を聞いている内に無性に曲が書きたくなった。
 
すると
「冬子さん、どうぞ」
と言って青葉がジップロックに入った五線紙とボールペンを渡すのでびっくりする。
 
「それ顔料インクだからお風呂の湯に濡れても大丈夫ですから」
と青葉。
 
「袋の中に入っているタオルで手と腕を拭いてから書くといいね」
と千里。
 
全くこの姉妹は〜!?
 

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ともかくもそれで私は『遠回りの恋』という曲を書いたのである。
 
私が曲と歌詞を同時進行で書いて、ほぼ書き上げた時、千里が訊いた。
 
「冬、この場だから白状しちゃいなよ」
「何を?」
「郷愁協奏曲って、あれ書いたのは冬でしょ?」
 
私は顔を緩めて息を吐き、苦笑して答えた。
 
「この姉妹には何も嘘がつけない」
 
と私は言う。そしてこの曲を書いた経緯について『遠回りの恋』にコード付けをしながら語った。
 

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■夏の日の想い出・郷愁(27)

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