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■夏の日の想い出・郷愁(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-12-09
 
龍虎(アクア)は夏休み中、映画『キャッツアイ』の撮影をしていたが、9月には学校が始まる。実際には9月1日(金)に学校に出て行き授業を受けて、2日は映画の撮影で「ここだけは撮っておきたい」と言われて出て行き1日スタジオで撮影をした。3日はその映画の主題歌『真夜中のレッスン/恋を賭けようか』の録音をした。
 
この2曲は先月8月20日までに伴奏部分が仕上がり、アクアの所にはスコアと伴奏音源が送られて来ていた。映画の撮影は実は3人で交代で出ているので、出番を待つ間に残り2人の内1人がキーボードで伴奏しながら1人が歌うという形で練習をしていた。
 
そういう訳で3日の録音はスムーズに行き、見てくれていた和泉さんも
「たった1日なのに、充分良い出来になった。これでちょっと大宮万葉さんの意見を聞いてみる」
と言ってくれた。
 
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実際には大宮万葉さん(青葉)は大阪でインカレの水泳に出ていたらしく、4日(月)に東京に移動してきて仮ミックスした音源を聴き、OKを出してくれたという。
 

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9月中は、Times of JK など、レギュラー枠を持っているラジオ番組の録音、テレビの音楽番組やバラエティ番組への出演、雑誌の取材などをこなす。4〜7月に比べると忙しさは少し減っていて、小休止なのだが、それでも中学時代は結構学校が終わってから自分で電車で都心に出ることも多かったのが、電車での移動時間が惜しいということで、だいたい15時半くらいに高村友香が車(白いアクア)で迎えに来て、事務所や放送局などに入ることが常態化している感もあった。
 
本来は下校時に保護者あるいは保護者から委託された人が車で迎えに来るのは毎回学校の許可がいるのだが(C学園は登下校時にベンツやクラウンが並ぶようなお嬢様学校ではない)、龍虎の場合は一週間前までに予定表を提出しておけば、いちいち先生に断らなくてもいいことになっていた。事務所の白いアクアもナンバーを予め届けており、守衛さんも顔なじみになっている高村や山村が運転している限りフリーで通してくれる。
 
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何度か飛鳥(松梨詩恩)が
 
「龍、新宿に行くの?だったら乗っけて。先生には言った」
 
などと言って、アクアに同乗して都心に出ることもあった。彼女も龍虎ほどではないものの、結構多忙なようである。
 
「詩恩ちゃん、お姉ちゃんより忙しいみたい」
と友香が言う。
 
「何か最近嫉妬されてる気もするんですけど」
と飛鳥。
 
「姉妹のタレントって、ライバル意識がどうしても強くなるよね」
「まあでも事務所が違ってて良かった気がします」
「うん。姉妹が同じ事務所なら、事務所側もどちらかに重点を置かざるを得なくなる。だから、AYAと遠上笑美子、槇原愛と篠崎マイみたいに事務所を分けたほうが思う存分競えるよね」
「私はあまり競う意識無いんですけどね〜」
「本人たちに競争意識がなくても、お互いの事務所は競争意識持つから」
「それはあるかもですね〜」
 
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ちなみにアクアに龍虎と飛鳥が同乗する場合、ふたりは後部座席に並んで座っている。飛鳥は龍虎を「異性」とは見ていないので、並んで座っても全く気にならない。それどころか、1度は車内で制服を脱いで衣裳に着替えてしまったこともあった。
 
「龍、背中のファスナーあげてくれる?」
「OKOK」
 
などといったこともしていたが、飛鳥も龍虎も、友だち感覚しかないので、変な意識を持つことは無かった。
 

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10月4日(水).
 
この日は12月公開予定の映画『キャッツアイ・華麗なる賭け』の主題歌である『真夜中のレッスン/恋を賭けようか』の発売日なので、学校が終わったら青山のTKRに行き、CD発売の記者会見をすることになっている。
 
この日学校に出てきているのはNであるが、記者会見にはMが出ることにし、高村さんの車で青山まで行ってTKRの入っているビルに入る所でMに入れ替わることにしていた。それでFとMはマンションで待機して、Mは歌の練習、Fは英語の勉強をしていた。
 
ノックする音がある。
 
FとMは顔を見合わせる。
 
宅配便屋さんとかなら出ても問題無い。しかし知り合いなら出るのはまずい。それで様子を見ていたのだが、インターホンが鳴って
 
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「渡したい物があるだけ。私目を瞑っておくから、私の手から取っていって」
というのは千里の声である。
 
Fが出る。
 
ドアを開けると、千里が何か封筒を持って立っていた。インターホンで言ったように目を瞑っている。
 
「記者会見に出る時にズボンでもスカートでも、その時穿いてるもののポケットに入れておいて」
 
「今見ていい?」
「もちろん」
 
封筒の中に入っていたのは身代わり人形である。
 
「ありがとう。ズボンに入れておくね」
 
「うん。じゃぁね」
と言って、千里は目を瞑ったまま手を振ると、エレベータの方に歩いて行った。
 
「千里さん結構元気になってる気がする」
とFは独り言のように言った。
 

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身代わり人形のおかげか、その日の記者会見では“龍虎は”無事だったが、映画の中村監督の座った椅子が壊れて、尻餅をつく場面があった。
 
龍虎は10月7,9,11日に厄払い旅行に行ってきた。《こうちゃん》がうまい具合に日程を3分割してくれたので、1人1つずつ参加することにする。実際には7日にNが、9日にMが、11日にFが参加した。
 
親族と一緒の9日はMでないとヤバい。7日は青葉さんがヒーリングすると言い出すかも知れないのでNの身体でないとまずい。消去法でFは第3行程で行くことにした。雨宮先生とか松浦紗雪さんとか、危ない人が入ってはいるのだが。
 
それで11日は千里が一緒になったので
「こないだはありがとうございました。おかげで怪我しなくて済みました」
と言ったのだが、
「何だっけ?」
と言っていた。どうも心当たりが無いようなのである。やはり事故の後遺症で物忘れが酷いのかなあとも龍虎は思った。
 
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この日は結局葵照子(田代蓮菜)さんがずっと龍虎のそばに居てガードしてくれて“いちばん危険な”松浦紗雪さん(拉致されそう)、“別の意味で危険な”雨宮先生(貞操の危険を感じる)から守ってくれた。ふたりの相手は主として紅川会長や三田原課長がしてくれていた。
 
松浦さんは「今度うちの箱根の別荘に来ない?」なんて言ってたけど、そんな所に行ったら、眠り薬飲まされて、気がついたら女の子に改造されてそうだ!
 
Fはお伊勢さんに行った時、そっと
『私たちは1つに戻れますか?』
と尋ねてみた。すると左斜め前の方角から
『3』
という数字を言われたような気がした。
 
3・・・年後ということかな?
 
と龍虎Fは思った。
 
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10月17-18日、私とマリはリフレッシュのため、長崎方面に旅行に行ってきた。17日は長崎市内とハウステンボスを見て佐世保市に泊まり、18日は九十九島や眼鏡岩を見て烏帽子岳に登り、その後車で博多に移動して泊まった。
 
私たちはこの日はツインに泊まっているが、実際にはベッドをくっつけて並んで寝ている。夜中突然政子が何か叫んで飛び起きた。
 
私もそれで起こされてしまったのだが、政子は
 
「青い豚なのよ」
と言っている。
 
「何?何?」
 
「今の夢。忘れない内に書く」
と言って、結局詩を書き出した。
 
私は部屋のポットでお湯を沸かし、キーコーヒーのドリップバッグでコーヒーを入れた。政子のそばのベッドのヘッドボードの所に置くと左手の指を3本立てるポーズをする。これは私と政子の間で通じる「サンキュー」の意味である。
 
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政子が書いている詩を読むと、青い豚というのは、鼻先が青い豚君のことである。
 
鼻先の青い豚は走るのが自慢であった。誰も彼に勝つことはできなかった。ところがある日、彼の住む町に鉄道がやってきた。機関車と競争するも、負けてしまう。
 
悔しくて意気消沈していた豚君だったが、ある日機関車が走ってきて
 
「しまった!」
と言う。
 
乗客の白いウサギちゃんが乗っていないのに気付いたらしい。
 
「たぶん赤い城の所で休んでいて、戻る前に僕が出発してしまったんだと思う。戻って連れて来なきゃ」
 
しかし青い豚は言った。
 
「君は定時進行しないといけない。行ってて。ウサギちゃんは僕が連れてくる」
 
それで青い豚は物凄い勢いで赤い城まで行くと、そこで多くの魔物たちと戦い、ボスの所に拉致されていた白いウサギを救出。彼女を自分の背に乗せると、また物凄い勢いで機関車を追いかける。そしてついに彼は機関車に追いつき、無事ウサギちゃんを汽車に乗せることができた。
 
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「君は凄いね!君は僕より速い!」
 
と機関車は豚君を褒めてねぎらった。
 
それで青い豚は、汽車よりも速い豚とみんなから呼ばれた。
 

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「何か短編のアニメ映画が作れそうだ」
 
と私は政子が詩を書き上げてから言った。
 
「ポルコ・ロッソならぬポルコ・ブルだね」
と私は言う。
 
「ポルコ、ピウ・ヴェローチェ・デル・トレーノ(汽車より速い豚)」
と政子はイタリア語で言ってから
 
「その名前も格好良いけど、イタリア語だと分かりにくいから、やはり、青い豚でいい」
と言った。
 
「冬、この詩に曲を付けて」
「OKOK」
 

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それで私はアクアに渡す予定の『夕暮れ少女』は後回しにして先にこの詩に曲を付けることにした。
 
「この曲は私たちで歌いたい」
と政子は私が楽譜を書いている傍で言う。
 
「今度のアルバムに入れる?制作時間が延びたから曲を追加できるよ」
「この曲はシングルで出したいなあ」
 
「じゃ『Four Season』の後にする?」
 
政子は少し考えていた
 
「『青い浴衣の日々』とセットで出せないかなあ」
 
「曲が揃う?。新しいシングルの広告は明後日21日には流し始める」
 
「『青い恋』を使おう」
と政子は言った。
 
「あぁ・・・」
 
それは2011年の12月にローズクォーツのキャンペーンで仙台を訪れていた時に書いた曲なのだが、発表の機会を逸したままであった。とても美しい曲である。私はあの曲にはストリングアレンジを入れたいなと思った。
 
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「3曲あればシングルとして構成できるよね?」
「うん。普通はシングルは2曲かせいぜい3曲なんだよ。ローズクォーツからの流れでいつも4〜5曲入れているけどね」
 

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夏の日の想い出・郷愁(9)

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