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■夏の日の想い出・郷愁(31)

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私はしばらく考えてから、ふと気付いて言った。
 
「3人って言った?」
「だから私と、信次さんと結婚する千里と、Wリーグで活動している千里だよ」
 
「千里は3人いる訳〜?」
「琴沢幸穂が多作なのはそのせいだよ」
「うむむ」
 
私はハッとした。
 
「もしかして、ここにいる千里がソフトハウスで仕事してる?」
「不正解。あれは千里の偽物」
「うーん・・・・」
「私はふだん海外に居るんだよ。これ住所ね」
と言って千里は2枚の名刺をくれた。
 
「フィラデルバーグ、アメリカ? マルセイユ、フランス?」
 
「春から夏はアメリカ、秋から冬はフランスにいるつもり。私まで日本国内にいたら、ややこしいことになるから。それで2番がアメリカに居る時に結婚式を見て『お嫁さんにしてね』を書いて、3番がフランスに居る時に夕暮れの景色を見て『冬の初めに』を書いたんだよ。『縁台と打ち水』は1番が日本の川越で書いた。短期間に3つ作品ができたのは、そのせい」
 
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「そういうことだったのか!」
 
と言ってから再度考えた。
 
「1番・2番・3番と言った?ここにいる千里は?」
 
「私は2番。事故にあって壊れているのが1番、日本代表でインドに行って来て今Wリーグに参加しているのが3番。私が3人居ることを知っているのは2番の私だけ。今回3番は皇后杯前の練習で忙しいから私がこちらに出た」
 
「なるほどぉ」
 
「携帯を見ると区別できるから。金色のiPhone7 plus持っているのが1番。でもこのiPhoneは実は7月の事故の時に壊れたから、彼女に連絡を取るには用賀のアパートの家電に掛けるしかない。この赤いガラケーToshiba T008を持っているのが2番、私。ピンクのAquos持っているのが3番。ついでにいうとソフトハウスに勤めている私の偽物さんは、富士通の白いArrowsを持っている。偽物は2人いて、F-01J持っている子とF-02G持っている子がいるけど、どちらも同じ白いArrowsだから区別するのは難しい」
 
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「えっと・・・ガラケー持っているのが全部知ってる千里というのだけ覚えた」
「まあそれでいいよ」
と言って千里は笑っている。
 
「その2番の千里に物を送りたいときは、このフィラデルバーグかマルセイユに送らないといけない?」
 
「それは葛西に送ればいい」
と言って千里はまた別の名刺をくれた。江戸川区葛西??
 
「千里住所いくつあるの?」
「うーん。。。。桃香のアパートまで入れたら6つかな?」
と千里は考えるようにして言った。
 
「葛西にいるのはたいてい私だけど、たまに3番が来ることもある。向こうで遭遇して私じゃないようだなと思ったら適当に話を合わせておいて。税金の通知とか、JASRACの報告書とかは全部葛西に送ってもらっている。用賀のアパートに居るのは確実に1番。3番は普段は川崎のマンションに居る。経堂の桃香のアパートには3人とも行く可能性がある。フィラデルバーグとマルセイユは私しか使わない」
 
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「ごめん。分からなかった」
 

15時半頃に北九州空港に到着した。レンタカーを返して4人で16:45発のJAL376羽田行きに乗った。737-800(Winglet)のクラスJシートは左側に2席、右側に3席並んでいるのだが、その左側の2席並びの所を2列確保して、まとまって座っている。座る位置は、前に風花と妃美貴、後ろに千里と私、という、プリウスに乗った時と同じ並びである。
 
私は風花と妃美貴に、千里はしばらく作曲活動のため楽器置き場として使っている千葉の葛西のマンションにいることが多いらしいから、何か物を送る時などは、そちらに送ってと言った。千里は直接風花と妃美貴にも葛西の住所を書いた名刺を渡していた。
 
「葛西は一応東京都なんだけど」
「ごめん!」
 
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「ここはFAXとネットのために電話は引いているけど、電話機は設置していないから、連絡は携帯に」
 
と言って、携帯の番号も再確認していた。
 
「あれ?私が登録しているの、違う番号だ」
 
と言って、風花は番号を変更していた。たぶん千里の言う“3番”の電話番号だろうなと私は思った。3番のスマホは実際には三宅先生が貸与しているものらしい。でも料金払っているのは雨宮先生らしい!?
 

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飛行機の中ではアクアのことが随分話題になった。
 
「アクアちゃん体力が付いてきたのかな。去年は一昨年以上に忙しかったと思うんですけど、いつ見ても元気でしたね」
と風花が言う。
 
「あらためて事務所側にも高校を卒業するまでは学業優先というのを申し入れたみたいだよ。だから、学校の出席率もあがったみたい」
 
「でもその分、放課後と土日のスケジュールが過密になっていたりして」
 
「お膳立てをするためのマネージャーさんの負荷もハンパ無いみたい。葉月や姫路スピカも代役としてリハーサルにどんどん使われているし。マネージャーさんが現在3人、他に、桜木ワルツもしばしばサブマネージャー兼リハーサル要員として駆り出されているみたいだけど、4人でも追いつかないみたい。それ以前に鱒渕さんが1人でそれをやっていたのが信じられない、とか志穂ちゃんが言ってましたよ」
 
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「緑川志穂もアイドルとしてスポットライトが当たる側から、裏方に転向してアイドルを支える側になって、色々勝手が違ったろうけど、頑張っているみたいね」
 
「KARIONのマネージャーの花恋なんかと似た立場だね。もっともアクアは凄まじすぎるけど」
 

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「あの子、結局去勢とかはしてないんでしょ?」
と妃美貴が訊く。
 
「してないよ」
と私と千里は同時に言った。
 
「女性ホルモンは?」
 
「周囲の人から騙されて飲まされちゃうことはあるんだけどね。本人も分かっていて騙されたふりしているし」
「ああ」
 
「松浦紗雪、マリ、丸山アイ、フェイ、川南、特にこのあたりが犯人」
「こないだ小風にも騙されたと言っていた」
「あれ何度も同じ手口で騙されているし」
「騙されたいんだ!?」
 
「だから結果的には結構な女性ホルモンを摂っているけど、身体に変化を起こすほどの量ではないと思う」
 
「でもボディラインが完璧に女の子ですよね。ウェストのくびれとか凄いし」
「ボディスーツで体型を維持しているからね」
「じゃやはり女の子っぽい身体になりたいんですか?」
「そのあたりが微妙なところで」
 
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「昨年の1月にもコスモスはアクアと性別問題について2人だけでかなり長時間話しあったけど、アクアは自分は女の子になりたい訳ではないというのをしっかり言った。実際、少なくともアクアの生殖器は少しずつ男性として発達して行っているよ。ここまで声変わりが起きてないのは、何と言っても小さい頃にした病気の影響なんだよ」
 
と千里は言う。
 
「じゃ、いつかは声変わりが来るのか」
 
「まあ声変わりが来たら、売上げは激減するだろうけど、それを事務所もレコード会社も割り切っている。だからコスモスや紅川さんにしても、TKRの松前さんにしても、今のアクアの売上げがずっと続くとは考えていない。本人も自分の人気がいつまでも続くものではないと思っているから、堅実に演技の勉強をして、俳優としてやっていきたいと思っている」
 
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と私は説明した。
 
「結構ベテラン俳優さんと共演するから、その人たちの間の取り方とか、解釈の仕方というのを見て、勉強しているんだと言っていたよ」
と千里が言うと
 
「偉〜い」
と妃美貴が言う。
 
「男の子アイドルは砂上の楼閣のようなものだって誰か言っていた」
「ですよね。女の子アイドルだとそういう問題が少ないけど」
 
「女性タレントも結婚で人気が急落するけど、結婚は20代後半くらいが多いのに対して、男の子アイドルの声変わりは12歳くらいで来るからそれ以前の期間が凄く短いのが普通」
 
「だからアクアというアイドルは、本人の病気からきた奇跡の存在なんだよ」
 

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「でもその声変わりが来るまで限定でも、今のアクアちゃんの年収、物凄いですよね」
と妃美貴が言う。
 
「CDを出した場合、歌手の取り分はだいたい0.9%、作曲家の取り分は7.2%なんだけど、アクアのCDは2組のソングライトペアが書いているから1人あたり1.8%になる。1200円のCDが120万枚売れた場合、歌手の取り分は約1300万円、作曲家は約2600万円。アクアは昨年4枚CDを出したからその収入はだいたい7000-8000万円くらいかな」
と千里が言った。
 
「あ、意外と少ない気がする」
「他にライブツアーで50万人動員しているから多分ギャラは4000-5000万円くらい」
「そちらが結構あるかな」
 
「彼はドラマに出ているし、映画に出たし、多数のテレビ番組に出ているし、CMにもたくさん出ている。ドラマのギャラは多分年間4000万円くらいだと思う。諸々のテレビ番組のギャラが恐らく全部合わせて年間3000万円くらい。映画のギャラは恐らく2000万円くらい。本当はもっともらってもいいと思うんだけど、どうしても若手の俳優のギャラは低いんだよ。あとCMが読みにくいけど恐らく8000万円くらい。他に昨年出した写真集は歴史的な売上げになったから、ギャラを1億円くらいもらったと思う。だから昨年の年収は全部で4億くらいかな」
 
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「やはり稼いでる〜!」
と妃美貴。
 
「でもその半分が税金で持って行かれるんですよね?」
と風花。
 
「そうなんだよ。まあお国のために貢献していると考えるしかない」
と私は言った。
 
「アクアちゃんのお金の管理は自分でしてるんですか?」
 
「アクアのご両親の方針で、基本的に芸能活動によって得られた収入は全て貯金している。実際には雨宮先生が雇った投資の専門家3人に3分の1ずつ運用させているんだけどね。だからアクアはふだんは、両親が自分たちの給料から渡している月1万円のお小遣いで生活している。食費や家賃・光熱費は別でね」
と千里は説明する。
 
「嘘!?」
 
「本当は月1万円のお小遣いは普通の高校生には多すぎるんだけど、アクアはみんなから高額所得者と思われているから、立場上、色々なもののお金をみんなより多く出さないといけないことが多いから」
と千里。
 
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「そういうのがあるのに1万円なら、ほとんど贅沢できない気がする」
「だから彼は慎ましい生活をしているよ」
と私も言う。
 
「中学生や高校生が何千万円ものお金を自由に出来たら、ぜったいろくなもんにならない、とこれはご両親と、上島先生・雨宮先生、全員の意見」
と千里。
 
「わあ」
 
正確には里親である田代夫妻と親権者(叔母)の支香さん、祖母の松枝さん、上島先生・雨宮先生、それに私と千里、川南さんが集まって全員一致で決めた方針である。
 
「だから少なくとも20歳になるまではアクアはそのお金に自分では一切手をつけることはできない。実際には高額の出費が必要なものは、その都度両親の許可を取ってその資産から出しているけどね」
 
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高校の学費(制服代などを含む)、忙しい中でも欠かしていない歌や楽器のレッスン代、青葉に依頼している声変わり防止のためのホルモン・トリートメントの施術料も、両親決済で出しているものだろう。ホルモン問題については千里も色々しているようだが、多分そちらは千里の自主的な“余計な親切”っぽい。
 
「いや、その方針がいいと思いますよ。親御さん、しっかりしてますね」
と風花は言った。
 
「両親ではなく、雨宮先生が雇った人に財産を管理させているのもいいよね」
と私は言う。
 
「うん。誰に頼むかは議論もあったんだけど、ご両親は目の前に大金があったら目がくらんで魔が差すかも知れないと言う。それで上島先生が僕も忙しすぎて、その管理者自体をしっかり管理できないから、雨宮頼むと言って、雨宮先生が雇うことにした」
 
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と千里は説明した。
 
「確かにそれは管理者をしっかり見てないといけないですよね」
 
まあ雨宮先生もけっこう危ないけど、三宅先生がいつも手綱を引き締めているから大丈夫だろう、と私はあらためて思った。
 
「ちなみに3人雇ったのは相互監視のため。2人でもいいけど2人だとどうしても競争しちゃうから3人にした。それと投機的なことは絶対にするなと厳命している。リスクの高いFXとかワラントとかビットコインは禁止」
 
「玉子はひとつの籠に盛るなってやつですね」
「そういうこと」
 

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