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■娘たちのタイ紀行(32)

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27日に宿舎に戻ってから、また現役vsOGの試合をした。スターターはこのようにした。
 
OG 敦子/千里/宏歌/暢子/留実子
現役 雪子/ソフィア/絵津子/不二子/紅鹿
 
先日は20分で打ち切られて16-54だったのだが、この日は40分やって41-96であった。
 
むろんOGの勝ちなのだが、OG組キャプテンの宏歌は
「あんたたちは強くなった」
と現役組を褒めていた。
 
「サーヤに全然勝てない」
と紅鹿が嘆いている。
 
「このあと少し練習しようよ」
と留実子が言い、センター組は留実子と一緒に夜遅くまで練習していたようである。暢子も
「フォワード組来い」
と言って、不二子・ソフィア・胡蝶・智加・花夜・揚羽・志緒といったメンツを睦子・川南・夏恋と一緒に鍛えていた。
 
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絵津子と久美子も千里と「某所」にいき、また特訓をした。
 
ポイントガード組はお休みだが、彼女たちは精密機械なので休ませた方がいいと、暢子と千里は、南野コーチと話し合った。
 

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28日月曜。ウィンターカップ最終日である。
 
旭川N高校のメンツは9時頃会場入りしたが、千里は9時を過ぎるとすぐに控え室の隅で携帯を使って振り込みの操作をした。
 
藍川さんからは5分後に「受け取った。ありがとん♪」というメールが来た。
 

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女子の3位決定戦は10:00からセンターコートで行われた。
 
この試合は湧見絵津子(164cm)と小松日奈(185cm)の対決が見応えがあった。20cmもの身長差があるので、ゴール下では小松が絶対有利であるものの、絵津子はその背丈の違いにはめげず、ひたすら素早く走り回って対抗していた。
 
しかし、愛知J学園戦では、向こうが今年の新戦力となった、紫・由実・久美子といったあたりをあまり研究していなかったこともあり、優位な戦いに持ち込めたのだが、Q女子校はしっかり彼女たちを研究していた。
 
そうなるとじわじわと実力差が効いてくる。最後に久美子がスリーを入れたものの、そこまで。
 
結果的には70-67と3点差で敗れてしまった。
 
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それで今年のウィンターカップの3位は愛媛Q女子校となり、旭川N高校はメダルを取ることができなかった。
 

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「今年の戦力でここまで行ったのは充分奇跡じゃないか?」
と客席で見ていた暢子は小声で千里に言った。
「うん。インターハイのベスト8というのがこのチームの本来の戦力だと思う。今回は愛知J学園にまぐれで勝って、その勢いで東京T高校にも勝った。でもさすがにF女子高やQ女子高には実力的に足りないね」
と千里は言う。
 
暢子も頷いていた。
 
「まあ夏までに本当にベスト4になれるくらいまで力を付けさせたいね」
「絵津子は鍛えれば鍛えるだけ伸びるよ」
「昨日より進化してた。どこで特訓やってるの?」
「月山の頂上。幽体離脱して行くから、霊感のある子限定」
「凄いところでやってるな」
 

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「悔しい〜!」
とその絵津子が言っていた。
 
「その悔しさをバネに頑張ろう。来年のインターハイはメダルを取りなよ」
と夏恋が言う。
 
「そうですね。何とかメダルに手が届くといいな」
「もちろん金色のメダルにね」
「ですよね!」
 
と言ってから絵津子は千里に言った。
「千里さん、私あの場所での練習をもっともっとやりたいです」
 
「うーん。だったら、私と一緒に冬山の修行する?」
「したいです。あ、でも学校での練習はどうしよう?」
 
「夜9時まで学校で練習して、帰宅してご飯食べたあと、夜0時から朝6時まで私と一緒に練習すればいいんだよ」
と千里。
 
「やりたいです。でも私、それならいつ寝ればいいんだろう」
と絵津子が悩んでいると
 
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「授業中に寝ればいいじゃん」
と横からソフィアが言い
 
「そうしよう!」
と絵津子が言うと、宇田先生が苦笑していた。
 

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続いて行われた女子の決勝戦は札幌P高校が渡辺純子の活躍で鈴木志麻子のいる岐阜F女子校に勝ち、2年連続のウィンターカップ制覇、そしてインターハイ・国体・ウィンターカップの三冠を達成した。
 
札幌P高校は昨年もインターハイとウィンターカップを制したものの、国体は旭川選抜が出たので、国体を制することができなかった。今年は旭川選抜に勝って国体に出て優勝していたので、初の三冠となったのである。
 

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13:30から女子の表彰式が行われた。
 
最終日まで残った、札幌P高校・岐阜F女子校・愛媛Q女子校・旭川N高校の4校がフロアに入り、P高校に金メダル、F女子校に銀メダル、Q女子校に銅メダルが授与される。そして雪のように美しいウィンターカップを今年はP高校の渡辺純子が手にした。
 
本当はウィンターカップを受け取るのはキャプテンの猪瀬がする予定だったようだが、猪瀬が渡辺に譲って、自分は優勝トロフィーの方を受け取ったのである。
 
渡辺が嬉しそうにウィンターカップを受け取り高く掲げるのを、湧見絵津子、そして鈴木志麻子が厳しい目で見ていた。
 
MVPは渡辺純子(P)、得点女王は湧見絵津子(N)、スリーポイント女王は神野晴鹿(F)、アシスト女王は水原由姫(F)、リバウンド女王は小松日奈(Q)と発表された。絵津子は名前を呼ばれてびっくりしていたようであるが、前に出て行って渡辺とハグしていた。
 
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ベスト5はPG.水原由姫(F) SG.神野晴鹿(F) SF.渡辺純子(P) SF.猪瀬美苑(P) C.小松日奈(Q)と発表された。
 

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表彰式を終えて、撤収しようと控え室でみんなで荷物を片付けていた時、(男性なので)廊下で待機していた教頭の所に電話が入ったようである。旭川にいる校長からのようだったが、
 
「え〜〜〜!?」
と凄い声をあげる。
 
みんな何事かと思ったのだが、教頭は、女子の一部がまだ着替え中であったにも関わらず、控え室のドアを開けて中に入ってきた。
 
「村山君!」
と何だか血相を変えた表情で言う。
 
「はい」
「君の名前で学校の口座に1000万円振り込まれていると言うんだけど」
と教頭。
 
「ああ。それは若生暢子との賭けなんです」
「賭け!?」
 
「私が昨年のウィンターカップの時『もうこれでバスケからは引退する』なんて言ったもので、若生が『そんなの絶対無理』と言って、それで1年後に私が引退していたら、若生が100万円、私がまだ現役だったら私が1000万円払うという賭けをしたんですよ」
 
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南野コーチが息を呑んでいる。コーチは暢子の姿を探したが、今どこかに行っているようだ。
 
「それ若生君に払うんじゃなくて学校に払うの!?」
 
「はい。それで私は今年はU19世界選手権に出てスリーポイント女王も取りましたし、その後シェルカップ準優勝、10月には千葉県のクラブ選手権を制して来年2月には関東クラブ選手権に出る予定ですし、関東総合Best4に純正堂カップ優勝。どう見てもバリバリの現役です。賭けは私の負けなので、潔く1000万円払いました」
 
と千里はにこやかに言う。
 
まだ着替え中だった絵津子はその話に驚いて、ブラジャー姿のまま寄ってきた。もう試合が終わったのでスポーツブラではなく普通のブラを付けている。
 
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「千里さん、本当に1000万払ったんですか?」
と訊く。
 
「えっちゃん、せめてジャージ着なよ」
と千里が言うと
「きゃっ」
と可愛く悲鳴をあげて慌てて着ていた。
 
「千里ちゃん1000万あったの?」
と南野コーチ。
 
「今年は予定外に収入が多かったもので」
などと千里は頭を掻きながら言う。
 
「『恋遊び』が随分売れたもんね」
と夏恋が言う。
 
「うん。あれが特に大きかった」
と千里は答える。
 
鴨乃清見の名前で提供した津島瑤子『恋遊び』が70万枚、そして大西典香のアルバムも30万枚売れたことから、今年千里は鴨乃清見分だけでも印税と著作権使用料で6000万円以上稼いでいる。津島の歌は熟年層に人気でカラオケでたくさん歌われるため、実はCD印税より著作権使用料が凄まじい。また、それ以外に東郷誠一名義のゴーストライターで得た収入も2000万円ほどある。半分は税金で払わなければならないものの、それでも4000万円ほどの手取りになる。
 
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「でもそんなにもらっていいの?」
と教頭。
 
「はい。だって私は旭川N高校の特待生にしてもらえなかったら、そもそも高校進学自体ができなかったんです。それをあの日宇田先生と偶然遭遇して、それで宇田先生と教頭先生で、私の中学まで来てくださって、特待生にするから入ってと言われて。それで父の失業で、中学出たら就職なんて話になっていたのを高校に進むことが出来ました。そのせめてもの恩返しをさせてください」
 
と千里が言うと、教頭は
 
「分かった。ありがたくもらうことにするよ」
と言った。
 
「まあ千里はN高校に入ってなかったら多分性転換もしていない」
と千里をけっこう冷静に見ている夏恋が言う。
 
「うん。私もそう思う。だってN高校に入ってなかったら、DRKをしてないし、そうなると私、雨宮先生とも知り合えず、作曲のお仕事してないから、性転換の手術代が稼げなかったんだよ」
と千里は夏恋を見ながら言った。
 
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夏恋は頷いている。
 
実際今の自分があるのは、春風アルトさんや谷津さん、そして雨宮先生との遭遇があったからだが、その全ての大本はやはり宇田先生とのあの日の遭遇なのである。
 
そして千里はまだ呆然としている宇田先生に向かって言った。
 
「宇田先生。まだ足りなかったら、私資金提供しますから、今年の冬、旭川N高校女子バスケ部は地獄の合宿しましょう」
 
「え〜〜〜!?」
という悲鳴が一部の部員たちの間からあがったが、絵津子や久美子は楽しそうな顔をしていた。
 
「うん。合宿やろうか。取り敢えず冬休み期間中」
と宇田先生も言っている。
 
「きゃー!」
 
「それ食事代も出ますよね?」
「うん。いっぱい食べてね」
「頑張って食べます!」
 
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「食べて練習もしなくちゃ」
「食べるために練習します」
と絵津子は笑顔で言っていた。
 
 
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