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■娘たちのタイ紀行(24)

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スーパーを出ていったんホテルに戻ろうとしていたら、千里に電話が掛かってくる。天津子である。
 
「千里さん、今まだバンコク市内ですか?」
「うん。今日の夜の便で帰るけど」
「だったらお願いできないかなあ。実は忘れ物してしまって」
「あらら」
「先日車の運転をお願いしたメーオさんちに、私、ネックレス忘れてきていて」
「それ高価なもの?」
「祖母の遺品なんですよ。値段は分からないけど、古いものだから売っても二束三文だと思うんですけどね。」
 
「お祖母ちゃんの遺品なら値段と関係無しに大事だよね。分かった。受け取って持って行くよ。どこで会えばいいの?」
 

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メーオさんから直接電話させるということであったが、すぐに本人から電話が掛かってくる。ラートプラオ駅で会いたいということであったので、彰恵たちと別れて千里はタクシーに乗った。
 
昨日のことがあったので最初に「メーター倒して」とタイ語で言うと、運転手さんは、やれやれといった感じの仕草をして、ちゃんとメーターを倒してくれた。それで(たぶん)ラートプラオ駅だろうという所に着く。
 
メーオさんとは1度会っているので彼女が近くにいれば波動を見つけきれるはずである。目を瞑ってしばらく付近を「探索」していた。
 
「あ、こっちだ」
と気づいて、そちらに行く。彼女は駅の別の入口の所に立っていた。
 
「サワディ・カー」
と合掌して言うと、向こうも合掌して
「こんにちは」
と言った。
 
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「これなんですよ。昇陽先生の忘れ物」
と言って渡されたのは古ぼけた皮の袋に入ったネックレスだが、ずしりと重い。
 
「中を見ていいですか?」
「ええ」
 
それで取り出してみると、大粒の真珠が多数連なっている。
 
「これネックレスというより数珠なのでは?」
「先生は二重(ふたえ)にして首に掛けておられました」
「なるほどー」
 
しかし・・・・これ二束三文どころか、どう見ても500万円はするぞと千里は思った。さすがに小包で送るというわけにはいかないだろう。
 
「ではお預かりしていきます。これ一時輸出証明書とかは無かったんでしょうかね?」
「先生は下着のバッグの中に埋めておいたとおっしゃってました」
「ああ。まあ何とかしましょう」
 
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それで受け取って帰ろうとしたら、
 
「これ良かったら御手間賃代わりに」
と言ってビニールの袋を渡される。
 
「ありがとうございます」
と言って千里は笑顔で答えた。
 
が重い!
 
何なんだ!?
 

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再びタクシーに乗ってホテルに戻った。むろんしっかりメーターは倒させた。それで中に入って行くと、彰恵たちがスーツを着ている。
 
「どうしたの?」
「あ、千里、間に合って良かった。すぐ代表スーツに着替えて1階のカイムクってレストランに来て」
「OK。すぐ行く」
 
「でも何買ってきたの?」
「いや、もらったんだけど、そういえば何だろう?」
と言ってビニール袋を開けてみると、大量のシンハーの缶ビールが入っている。
 
「彼氏へのプレゼントとか?」
 
「ああ、それでもいいかなあ」
と千里は言った。
 
「自分で飲むんだっけ?」
「私、ビールはあまり飲まないんだよね〜」
「日本酒派?」
「ある人に連れ回されてワインはだいぶ飲んだ」
「ほほぉ」
 
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しかし自分でジュース買ったのに、お土産でビールをもらうなんて。重たいものばかりだ!!
 

千里はすぐ自分の部屋に戻り、ビールは部屋に置き、急いで日本代表のスーツに着替える。彰恵たちはお化粧してなかったよなと思い、すっぴんのままで下に降りて行く。ネックレスは部屋に置いておくわけにはいかないので、自分のバッグの中に入れておいた。
 
カイムクと(多分)書かれたレストランに入っていくと、自分と同じスーツを着た集団がいるので、そちらに寄っていく。
 
「済みません。遅くなりました」
「いや、まだ高梁と熊野と中丸が来てない」
「今呼び出してるんだけどね」
 
昼食の席には見慣れない顔があったが、日本の在タイ大使夫妻ということであった。祝福に来てくれたらしい。
 
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王子たちが来た所で始める。料理が運び込まれてくる。
 
「美味しい料理を前にお預けを食わせてはいけないので、まずは乾杯」
と大使が言って、(未成年なので)シャンパン代わりのぶどうシュースで乾杯する。このぶどうジュースがなかなか美味しかった。
 
「チームが7位入賞、佐藤さんのアシスト女王、村山さんの3ポイント女王、それに高梁さんは得点数ランキングで3位だったということで、日本の女子バスケットの将来は明るいですね」
 
と笑顔で大使さんが言っていたが、王子は
 
「え?私3位だったの?」
などと言って驚いていた。
 
「結果レポートに載っていて、こちらでは騒いでいたが気づかなかった?」
と百合絵が言っている。
 
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「お腹空いて、クララ・ソラと3人で焼きそば買って食べてたもんで」
などと王子は言っていた。
 
大使はわざわざ席を回ってひとりひとりと言葉を交わしていたが、マナーなどは何も知らないものの、元気いっぱいの王子には、大使も
 
「いや君はきっと大物になる」
と褒めて(?)いたし、王子も
「次はメダル獲得ですね」
と張り切って答えていた。
 

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午後は希望者だけ市内の観光をしようということで、マイクロバスに乗り、有名どころを回った。早苗は行きたい所があるということで別行動になった。
 
「行きたい所って性転換手術をしてくれる病院?」
「うーん。それもいいかなあ」
 
他の子は付き添いの高田コーチと一緒に、最初王宮に行き、敷地内のワット・プラケオ寺院も見学する。近くのワットポー、ワットアルンまで見てから、バンコク国立博物館を見学する。
 
修学旅行みたいだと桂華が言っていたが、コースを考えた高田コーチもそういうノリだったようである。しかし博物館はタイの歴史を辿る感じで、なかなか見応えがあった。
 
その後、とっても庶民的なデパート“ロビンソン”に入り、ここでお土産を買っていない人はお土産を買っていた。これはスピッツのヒット曲『ロビンソン』の曲名の元となったデパートである。
 
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高田コーチの言うには、高級デパートに行ってもいいが、日本のデパートにもあるようなブランドが多いし、何万円もする高級ブランドの服や宝石、シルバーアクセサリーなどを買って帰りそうな顔している子が見当たらないし、ということであった。
 
確かに何だか居心地のいい店だった。
 
午前中にお土産を買っていた千里たちはフードコートで休んでいた。
 
「午前中に行ったスーパーと雰囲気似てるね」
「まあ庶民のお店って感じだね」
 
「高田さんに言われて、そういえばタイって宝石とかシルバーも有名だったことを思い出した」
「高校の同級生がゴールデンウィークにタイ旅行してきて、ルビーとかサファイヤの宝石とかシルバーアクセサリーとか大量に買ってきたと言ってた。何か日本で買うのの3分の1の値段で買えたって」
と彰恵が言っている。
 
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「縁の無い話だ」
と江美子。
 
「今回のメンツには確かにお嬢様っぽい人がいないよね」
「メイが残っていたら、あの子はわりとお嬢様。お父さんは上場会社の部長さん」
「おお、セレブだ」
 
「私は特待生にしてもらえなかったら、そもそも高校進学できなかったんだよ。お父ちゃんが中学卒業直前に失業しちゃってさ」
と千里が言うと
 
「ああ、私も似たようなもんだ」
と桂華が言っている。
 
「サクラの家が凄い貧乏だから、うちは貧乏なんて言えないけど、同級生たちのファッションとか旅行とかの話にはついて行けんと思ってた」
と桂華は言う。
 
「まあ私も高校行くなら公立と言われていたんだけど、私、公立に合格するような頭が無かったから、特待生で入れるという話に飛びついたんだよね」
と江美子。
 
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「貧乏自慢なら私もできる気がする」
と彰恵も言っている。
 
「やめようよ〜、そういう暗い話は」
 
と玲央美が言っているが、彼女もそんなに裕福な家ではない。彼女がバスケットを続けられたのは、年の離れたお兄さんが自分は1Kで暮らしながら、頑張って学資を提供してくれていたおかげである。
 

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話しながら、千里はバッグの中から鈴を4つ取り出した。ひとつは金色の鈴、あと3個は水色の鈴である。
 
「なんかたくさん鈴がある」
「全部預かり物なんだよね。適切な人に渡してくれと言われたものの、現時点では全く行き先が分からない」
 
「誰から頼まれたの?」
「金色の鈴はタイで預かったもので、ある部族の王様」
「へー」
「水色の鈴は沖縄で預かったもので、ある高貴な女性」
「沖縄に行ったんだ?」
 
「それってどちらも人間じゃ無いよね?」
と玲央美が言う。
「まあ、想像に任せる」
「人間じゃないって何だろう?」
「あまり想像しない方がいいよー」
 
千里がその水色の鈴をもらったのは元の時間の流れで7月23日夕方、那覇の波上宮である。金色の鈴は今の時間の流れの中で、8月1日の夜中である。物理的な時間ではほんの10日もしない内に続けてもらったことになるが、実際には半年近い時の経過がある。千里はこの水色の鈴を誰に渡せばいいのか、全く見当が付かずに半ば放置していたのだが、この金色の鈴を受け取ったことで、どちらも行き先が定まるような気がした。
 
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彰恵が鈴を鳴らしてみる。
 
「金色の鈴は本当に身体の細胞が活性化するような感覚がある。水色の鈴は何かいいアイデアが浮かんできそうな気がする」
 
「ああ、そんな感じかも。金色の鈴はもしかしたらスポーツ選手あるいは霊能者、水色の鈴は芸術家のような気がしているんだよね」
 
「なんかその鈴、金色の鈴と水色の鈴がお互いに影響しあっている気がするね」
と玲央美が言う。
 
「うん。金色の鈴の活性効果で水色の鈴がパワーアップしている気がするし、水色の鈴の感応効果で金色の鈴は自らの作用するチャンネルを拡大している気がする」
と江美子も言う。
 
「しばらく両者を一緒にしておくことで、どちらも良くなる」
「じゃ、取り敢えず一緒に入れておくか。でも誰に渡せばいいんだろう」
 
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「よし。私が占ってあげよう」
 
と江美子が言い出し、タロットを取り出した。
 
「そのデッキは初めて見た」
「昨日会場近くの雑貨屋さんで買った」
「へー!」
 
タロットはタイの風物を絵に描き込んであり、カードのタイトルがタイ語で書かれているが、アラビア数字も入っているので、タイ語が読めなくても何のカードかは分かる。
 
「金色の鈴は、女司祭。誰か占い師とか霊能者だよ」
「やはり」
「女性?」
と彰恵が訊く。
「まあ男でも女装していたらOK」
「ふむふむ」
 
江美子はもう1枚カードを引く。カップの6である。
「まだ子供だね。小学生くらいかな」
 
「小学生で占い師か霊能者って、天才的な人だよね」
「だと思う」
 
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千里は一瞬天津子のことを考えたのだが、天津子は中学生である。恐らくは江美子の言うように小学生というのが正しいと思った。それに天津子に渡すべきものであったら、千里はこの鈴をもらった時に、その瞬間天津子の顔が浮かんだと思うのである。それが無かったということは恐らく未知の人物だ。
 
「水色の鈴は愚者。これたぶん性転換者だと思う」
「ほほぉ!」
「聖杯の4。音楽家かダンサーだね」
「じゃアイドルみたいな?」
と彰恵が言う。
 
「性転換したアイドルなんているっけ?」
「それローズ+リリーのケイでは?」
「おぉぉぉ!!」
 
「あの子結局性転換したんだっけ?」
「ローズ+リリーが復帰してもいいはずなのにずっと休んでいるのはケイが性転換手術を受けてその後身体を休めているからだって、もっぱらの噂だよね」
「いや、そもそもあの子はデビュー前に性転換していたのではという噂もある」
 
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「ふーん。。。。じゃケイに会ったら渡そうかな」
「ケイと知り合い?」
「直接は知らないけど、ある人を通じてつながっている」
「へー!」
 
「つながっているのなら、性転換したかどうかも知ってる?」
「そのケイとの共通の知人は、あの子は中学生の内に性転換したのではと言っていたけど、その人、私も中学生の内に性転換したと思い込んでいるみたいだから、あまり当てにならない」
と千里は言ったが
 
「それ千里については事実だと思うが」
と玲央美に言われた。
 

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千里はそういえば高2のインターハイで唐津に行った時、ケイが携帯に付けていたストラップの鈴が外れて千里のバッグに飛び込んでいたのも預かっていたなというのを思い出した。でもあの鈴、どこ行ったっけ??
 
「水色の鈴のもうひとつは聖杯のA。何か泉か小川に関連した人」
 
千里は1つめの鈴がケイというので、2番目の鈴が泉なら、それはKARIONの絹川和泉なのではという気がした。だったら1つ目の鈴もケイというより水沢歌月に渡すべきものなのかも知れない。
 
「棒の10。森にも関わっている人」
 
やはり森之和泉で良いようだ。
 
 
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娘たちのタイ紀行(24)

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