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■娘たちのタイ紀行(10)

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玲央美のスリーはきれいに決まった。
 
84-84.
 
日本は土壇場で同点に追いついた。
 
残りは2.9秒。
 

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フランスは速攻に掛けた。
 
ボールを審判から受け取った選手が遠投する。
 
玲央美のシュートの瞬間から走っていた選手がボールをキャッチする。そしてシュートしようとしたが、サクラがブロックする。
 
笛が吹かれる。
 

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かなり微妙な気もしたのだが審判はサクラのファウルを取った。サクラは5ファウルで退場になる。華香が交代で入る。
 
フランス側のフリースローである。
 
残り時間は1.2秒。フランスが1点でも入れたらフランスの勝ち、0点なら延長ということになる可能性が高い。
 
フランス選手が慎重にボールをセットする。
 
撃つ。
 
外れる!
 
観客がどよめく。
 
シュートする選手にチームメイトが「落ち着いて」とか「何も考えるな」とか声を掛けている。
 
撃つ。
 
ボールがリングの端で跳ね上がる。
 
フランス・日本、双方の選手が駆け上がってジャンプする。
 
しかし跳ね上がったボールはリングのど真ん中に落ちてきた。
 

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85-84.
 
フランスが1点のリード。
 
残りは1.2秒のままである。
 
審判からボールを受け取った朋美が思いっきりボールを投げる。激しいキャッチ争いになる。一瞬華香がボールを取ったのだが、フランス選手がそれを強引に奪い取った。
 
そのまま試合終了のブザーが鳴る。
 
千里は頭を抱えた。
 

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最後にボールを取った選手はそのボールを胸にしっかり抱いたまま、華香と見つめ合っていた。しかし、やがて審判が整列を促すと、ふっと息をつき、華香に手を伸ばした。華香も悔しそうな表情がらも彼女と握手した。
 
「85 to 84, France won」
朋美と相手チームのキャプテン代行さんとで握手をし、その後は、お互いに握手したり、あるいは肩などを叩いたりしながら健闘を称え合った。
 
こうして日本はあとわずかの所でフランスに敗れたのであった。
 

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試合後、サクラが悩んでいた。
 
「あの場面、僕は相手選手を止めない方が良かったですかね?」
「いや、あのシュートは止めなければ入っていたと思う。結果的に2点取られる所を1点に抑えたんだから、サクラのファインプレイだと思う」
と彰恵が言った。
 
「でも負けたら1点も2点も関係無かったかなという気もして」
とサクラが更に悩んでいたのだが、そのサクラに高田コーチが声を掛けた。
 
「この試合の結果、日本とフランスとロシアがみんな2勝1敗になった。これは決勝トーナメント進出は得失点差の勝負になる可能性が出てきたから案外この1点の差が効くかも知れないよ」
 

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この日の結果は下記の通りである。
 
GrpA CAN 61-58 ARG / AUS 99-41 KOR
GrpB CZE 97-45 THA / LTU 69-65 BRA
GrpC RUS 93-27 MLI / FRA 85-84 JPN
GrpD ESP 77-75 CHN / USA 100-38 TUN
 
これで一次リーグ(Preliminary Round)は終了し、二次リーグ(Eighth-final round)に進出する12チームが確定した。
 
GrpE : A(CAN AUS ARG) B(CZE BRA LTU)
GrpF : C(RUS JPN FRA) D(ESP USA CHN)
 
アジア勢では日本と中国は二次リーグに進出したものの、韓国(KOR)は3敗で脱落である。13-16位決定戦に回ることになる。13-16位決定戦に出る他のチームはタイ(THA)、マリ(MLI)、チュニジア(TUN)である。
 
グループCでは、ロシア・フランス・日本がいづれも2勝1敗になったものの、相互得失点率で1位ロシア(1.0483)、2位日本(1.0062)、3位フランス(0.9492)となった。
 
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26日(日)は全チーム休養日となった。
 
千里は午前中許可を取ってホテルから外出する。天津子はレンタカーでホテルまで千里を迎えに来た。
 
「ちょっと家系に関わる呪いの処理をしていたんですよ」
と天津子は説明する。
 
「クライアントは日本人なんですけどね。依頼者のお祖父さんが、昭和初期に商売でインドシナ方面に来ていて、そこであるヨーロッパ軍人から恨みを買ってしまった」
 
と天津子は言うが千里は質問をはさまない。こういう問題は余計な興味を持つことは、自分自身を危険にさらす。
 
「逆恨みもいいとこなんですけどね。そのヨーロッパ軍人がタイ人女性に悪いことしようとしていたのを彼が停めたんです。しかしそれで事が明るみになったことから憲兵に取り調べられて、それでその人、過去に何人か現地の女の人に悪いことして、しかも2人殺していたことが分かった。それで軍規違反ということで銃殺刑になった。その処刑される前にその日本人商人に呪いを掛けたんです」
 
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千里はポーカーフェイスである。
 
「まあそれで呪いの生まれた地で処理しちゃおうということなんですよ。呪いって元から絶たないとダメだから」
 
と言って天津子はある公園の駐車場に車を駐めた。
 

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歩いて公園の一角にある慰霊碑のような所に行く。天津子が杖のようなもので地面に魔法陣を描いた。そこにビニール袋に入った何か赤黒いものを3つ並べた。
 
「それは身代わり?」
と千里は初めて質問した。
 
「身代わりでもあり、本体でもあります。3つとも呪いを受けた人の体内から摘出したものなんです」
 
千里は具体的に何なのかは聞かない方が良さそうと思った。しかしよくまあ人体の一部とかを日本から持ち込めたものだ。
 
「ちなみに、これ左から、クライアントさんの肝臓の一部、その長男さんの十二指腸、次男さんの陰茎海綿体と睾丸です」
と天津子は言う。
 
訊いてないのに!
 
しかし肝臓は肝臓癌か何か、十二指腸は十二指腸潰瘍か何かだろうか。陰茎海綿体と睾丸って、まさか性転換手術でもしたの!?そんなものを取った以上もう「男」の身体ではなくなっているはずだ。
 
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天津子がマントラのようなものを唱える。千里は霊鎧をまとったままその声を聞いていたが、やがて巨大な虫のようなものが慰霊碑の向こうの方から来るのを感じる。その虫(千里はこういうのが見えないがカマキリか何かのように感じた)は身代わりの並べられた魔法陣の中におびき寄せられるようにやってきたが、そこに掃除機か何かで物凄く強い勢いで吸引する風のようなものが吹き、その虫のようなものは、魔法陣の中に吸い込まれてしまった。
 
千里は、ごきぶりホイホイにゴキブリが掛かった様を連想した。
 
直後魔法陣が燃え上がる。
 
青い炎なので、かなりの高温のように見える。
 
千里は天津子の呪文を聞きながら、じっと見つめていた。炎は15分ほどで消えた。身代わりにした「体内から摘出したもの」は全部燃えて灰になっていた。蛋白質が焼けたような臭いがした。
 
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雨が降ってきた。
 
千里は手に持っていた傘を差して天津子をその下に入れた。
 
「ありがとう」
「終わったの?」
「終わりました」
 
「静かに消えて行ったね」
「地獄送りにしましたから。後は閻魔様にお任せです。でも千里さんがなんで傘を持ってきたんだろうと思ってたら、ここで雨が降るからだったんですね」
 
「うん。必要なものは分かるんだよ」
「さすがですね。さっきまで晴れていたのに」
「ところでさ」
「はい」
「物凄くお腹が空いたんだけど」
 
「ですよねー。凄まじいパワー使ったもん」
「バスケットの試合2つ連続でした後みたいな気分」
 
「3つくらいかも。マンゴツリーかトンクルアンにでも行きましょうか?どちらも美味しいタイ料理を食べさせるんですよ」
 
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「そろそろタイ料理飽きてきたんだけど、日本食とか無い?」
「ええ。いいですよ。焼肉がいいですか?お寿司がいいですか?」
 
天津子は様々な事後処理でまだ1週間くらいタイに残るという話であった。
 

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千里が天津子に送ってもらってホテルに戻ると、ロビーでサクラ・華香・王子がなにやら話していたのが、千里を見てビクッとした顔をした。
 
千里はサクラにヘッドロックを掛ける。
 
「こらこら、あんたたち、悪い相談してたでしょう?」
 
「いや、タイに来たらオカマショーとか見てみたいねとか話していたんだけどね」
とサクラ。
 
「見に行ってもいいけど、全部の日程が終わってからにしなよ、その手のものは」
と千里。
「あ、私と同じ意見だ」
と華香。
 
「ああいう人って、やはり全部取っちゃった人なんですかね」
「半々だと思うよ。おっぱいは大きくしてる人がほとんどだろうけど、玉だけ取った人がおそらく半分と、まだどちらも付いてる人が半分」
 
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「あれ?性転換手術済みの人は?」
「多少はいると思うけど、手術済みの人はふつうの女の子を置いてるお店に行くかもね」
「なるほどー」
 

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「いや、それで盛り上がっていたのは、金玉って言うけど、あれって金色なんですかね?」
と王子が訊く。
 
「内臓の一種だからね。お肉っぽい色、まあピンク色じゃないの?私は見たことないけど」
と千里は答える。
 
「千里、手術して取った時は見なかったの?」
と華香が訊く。
 
「見てないなあ。それに昔のことだし」
と千里は言う。
 
「小学校の3〜4年生くらいで取ったんだっけ?」
「うーん。その噂、なんか結構流布しているみたいだけど、あながち間違いでもない気もする」
「やはり、そのくらい前に取ったのか」
「千里って骨格が女の子だもんね」
 
「じゃ、金色じゃなかったら、なんで金玉って言うんですかね?」
 
「色々説はあるみたいだよ。『きのたま』が音便で『きんたま』になったのは確かなんだけど『き』とは何かというので諸説ある。気力の元だというので『気の玉』という説、貴重なものだから『貴の玉』という説、生命を生み出す元だから『生の玉』という説、更には精液の色がドブロクに似ているから『酒の玉』から来たという説」
 
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「精液ってどんな色なんですか?」
「白濁した色だよ。ドブロクも見たことあるけど、まあ似ているといえば似ているかも知れない」
 
「精液はやはり自分のを見たんですか?」
「彼氏のを見たんだよ。私、自分では精液を出したことないし」
「おぉ!」
「おとなの世界だ」
「だって千里は小学3〜4年生で玉取っちゃったんだから、自分では精液出た訳ないよね」
 
「玉取ったら精液出ないんだっけ?」
と王子が訊く。
「出ないでしょ」
と華香とサクラは言うが、千里は
「出るよ」
と答える。
 
「嘘!?」
「精子の入ってない精液が出るんだよ」
「へー!」
「まあ私はそれも出たことないけどね」
「やはり」
 

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娘たちのタイ紀行(10)

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