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■娘たちのタイ紀行(29)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-10-09
 
千里は玲央美をP高校の宿舎となっている旅館に送り届けた後、N高校の宿舎になっているV高校の研修施設に戻った。
 
もう朝御飯の準備はあらかたできていたが、千里は茶碗や箸を並べたりする手伝いをした。タイでお土産に買ったフルーツジュースは選手たちに出すには少ないのでOGの8人で分けた。ビールは・・・とりあえずインプに積んだままだ!
 
「またタイに行ってきたの?」
「そうそう」
「何の用事?」
「うーん。何だろう?」
「タイといえば性転換手術では?」
「いや千里は小学生の内に手術終わっている」
 
私ってみんなに理解されているなあと千里は思う。
 

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生徒たちが朝食を取っている間に千里は藍川さんに電話を掛けた。
 
「おっはよー。元気?」
と藍川さんは明るい声で答えた。
 
「1ヶ月間の夢の旅、楽しませて頂きました」
「これで結構バスケやる気になったでしょ?」
「4年後のU21では世界の頂点を極めますよ」
「まあその意気で頑張ってね」
「それで、向こうの時間でお借りした100万円ですけど、返したいので口座番号教えて下さい」
「了解了解」
と言って、藍川さんは口座番号を教えてくれた。
 
「利子は要らないからね。それと返すのはいつでもいいから無理しないでね。分割でもいいし」
 
「ありがとうございます」
「ところでさ」
「はい?」
「私って幽霊じゃん」
「と言っておられましたね」
「なぜか人間みたいな生活してるけど、いつあの世に昇天してしまうか分からないと思うんだよね」
「うーん・・・」
「でも私、子供もいないし、両親は既に亡くなっているし。身寄りが全く無いんだよ。それで私が死んだときは、自分の財産は全て村山千里に贈るという遺言書を公正証書で書いているから、よろしく」
 
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「私にですか?」
「私や死んだ夫がもらった賞状とかメダルとか楯とかも千里に管理してもらおうかなと思ってね」
「藍川真璃子・田中一郎記念館でも作りましょうか」
「それは大げさすぎる。あと、その時点で私がどこかのコーチとかしてたら、それも引き継いで」
 
「それはそのチームさんと話してから」
「だからコーチライセンスとか審判ライセンスは取っておいてよね」
「そうですね。それは取っておこうかな」
 

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千里は現金が必要になるなと思ったので、藍川との電話の後、自分のパソコンを夏恋に教えてもらってネットにつなぎ、所有していた東京電力株、50単元全部の売却予約を入れた。市場が開いたら始値で売却されるはずである。今日売れたら3営業日後の25日(金)に代金が証券会社の口座に入金され、即出金指示を掛けると28日(月)に銀行口座に振り込まれるはずである。
 

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朝食が終わってから一休みした後、現役組vsOG組で練習試合をした。今回の遠征に来ているメンバーでベンチ枠の子はこのようになっている。
 
3年生 PF.揚羽 PG.雪子 PF.志緒
2年生 SF.絵津子 PF.不二子 SG.ソフィア C.耶麻都 PG.愛実 C.紅鹿 SF.久美子 SF.胡蝶 SG.智加
1年生 PG.紫 C.由実 SG.花夜
 
胡蝶は元々はポイントガードなのだが、このチームではポイントガードが既に雪子・愛実・紫と3人もいるのでスモールフォワード登録になっている。彼女は166cmの背丈なので、日本国内ではフォワードですと言っても通る体格である。もっとも実は今年のN高校のポイントガードの問題点は人数はいても誰1人として雪子のバックアップポイントガードとして安心しては任せられないという問題があった!
 
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これに対してOG組はこういうメンツである。
 
PG.敦子(J大学)
SG.千里(Rocutes)夏恋(LA大学)
SF.麻野春恵(KQ鉄道)月原天音(横浜ミカンズ)
PF.川南(K大学)薫(Rocutes)山口宏歌(AS製薬)田崎舞(W大学)
 
そしてこの練習試合はこのようなメンツで始めた。
 
現役 雪子/ソフィア/絵津子/不二子/紅鹿
OG 敦子/千里/夏恋/宏歌/薫
 

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この試合で千里は現役組を圧倒した。
 
絵津子はこの1年で随分成長した。名実ともに旭川N高校のエースとして成長したのだが、千里の前に全く歯が立たなかった。雪子にしてもソフィアや不二子にしても千里を全く抜けないし、全く停めきれない。
 
その千里の物凄さを敦子がうまく使って効果的に現役組を叩く。OG組の主将兼監督は宏歌なのだが「千里ちゃん、凄いね」などと言いながらプレイしていた。
 
練習試合は40分やる予定だったのだが、宇田先生は20分で終了を宣言した。ここまでの点数は16-54のトリプルスコアでOG組の勝ちである。千里はその内の実に24点を叩きだしている。他に夏恋が10点、宏歌と春恵が6点ずつ、敦子と薫も4点ずつ取っている。
 
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「出番が無かったぁ!」
と川南が言っている。
 
「ごめん、ごめん。後半投入するつもりだった」
と宏歌さんが言う。
 
「私はこのチームで戦うレベルじゃないわ」
と天音さんが言う。
 
彼女は横浜ミカンズというクラブチームにいるが、趣味でバスケをしているチームで神奈川県クラブバスケ協会にも登録していない。週に1回2時間ほど市内の体育館で練習しているらしい。
 
「私はマネージャーか何かにして」
と言っているので
「じゃ、あんた監督代わってよ」
と宏歌さんが言い
「OKOK」
と天音さんは答えていた。
 
「千里ずるい」
と薫が言う。
 
「どうかした?」
「昨日の純正堂カップとは別人だもん」
「そうかな」
 
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千里は元の時間では昨日12月20日に千葉ローキューツのメンバーで純正堂カップという大会に出て優勝している。薫が言うのは、昨日その大会でプレイしていた時と今の試合での千里がまるで別人のように凄いプレイをするということである。
 
実際には千里はこのその間に1ヶ月ほどの時を過ごし、日本代表のメンバーと一緒に練習し、山形D銀行で鍛えてもらい、サマーキャンプでWリーグのプロチームとの対戦をした上で、タイで世界のトップレベルの選手たちと死闘をしたのである。千里自身、この1ヶ月の間にバスケに対する姿勢、練習の仕方などからして、完全に変わっていた。
 
「やはりあれ、オープン大会ってことで手を抜いてたのね?」
「私はこの1日で成長したんだよ」
「ほんとに〜!?」
 
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宇田監督はOG組に大敗して、半ばショックを受けている風の現役組に言う。
 
「今のままならウィンターカップはこのOG組で出て、君たちは撮影係や掃除係だな」
「え〜〜!?」
 
「宇田先生」
と千里は言った。
 
「うん?」
「絵津子ちゃんを私に預けて下さい。これから3日間、徹底的に鍛えますから」
「うん、頼む」
 
それで絵津子は千里と2人で特別メニューの練習をすることになった。
 

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千里は絵津子に外出の用意をするように言う。
 
「防寒具しっかり持ってね」
「どこか別の場所で練習するんですか?」
「そそ。これから2日間半、60時間くらい練習しようよ」
「あのぉ、睡眠は?」
「寝ながらバスケする」
「え〜〜〜!?」
 
それで千里は絵津子を連れて月山山頂まで美鳳さんに運んでもらった。絵津子は周囲が突然変わって「え?え?」と驚いている。
 
美鳳さんが2人にお祓いをして、月山神社にお参りする。
 
12月なので月山は完全に雪の中である。冬山スキーなどを楽しむ人がたまにやってくる程度で、普通の人はまず近寄らない。
 
お参りをした後、神社の裏手に行くと、プレハブのような建物が建っている。
 
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「ここで練習するよ」
「わあ、こんな所にコートが」
「半分だけだけどね」
 

プレハブの中は結構寒い。親切にも置いてある温度計を見たら零下5度である。しかし身体を動かし始めると、充分温かくなった。
 
千里は絵津子とふたりでここでひたすらマッチングの練習をした。
 
一応2時間マッチング練習したら“休憩”と称してミドルシュートの練習を100本やる。そしてまたマッチング練習である。
 
最初の内は絵津子は全く千里を抜けなかったものの、彼女はそれでめげるような子ではない。千里を抜けなければ毎回何か新しいことを考えて試してみて、何とか抜こうとする。
 
逆に千里の攻撃も何とかして停めようとする。
 
最初の24時間くらい、絵津子はひたすら千里に負け続けたのだが、24時間を過ぎたあたりで、偶然にも1回千里を抜くことができた。
 
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「抜いたね」
「今の凄くうまく行きました」
と絵津子は喜んでいる。
 
「じゃ2度目3度目も抜けるように」
「はい」
 
しかし次に絵津子が千里を抜いたのは6時間後であった。
 

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ふたりは2時間練習したら少し“休憩”というのを繰り返し、途中何度か佳穂さんが、焼き鳥、おにぎり、団子汁、キリタンポ鍋、などなどを差し入れてくれるのを食べては練習を続けた。むろん水はたっぷり取った。月山の山中で湧き出ている「元気の出る水」で、実は冬山修行の時によく飲んでいるのだが、千里は念のためドーピングに引っかかる成分が無いか1度藻江さんに確認してもらったことがある。この手の「元気になる」系の水には天然の覚醒剤のようなものが含まれていることがよくある。
 
「禁止薬物はうちの大学のコンピュータでスキャンした限りは認められなかった。アミノ酸やブドウ糖にカフェイン類似物質が入っているね。あとイソフラボンも結構含まれている」
 
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と藻江さんは言っていた。彼女の《エイリアス》のひとつは山形大学の職員をしていて検査機器を自由に使える立場にある。
 
「取り敢えず女性が飲むのには問題無さそうですね」
「男の娘にもお勧め」
「なるほどー」
 

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汗を掻くので途中何度も着替えた。着替えは佳穂さんの眷属っぽい天狗の女の子が洗濯をしてくれた。人間でいえば12-13歳くらいに見える。絵津子は「可愛い女の子ですね〜」と言っていた。
 
「千里さん、おっぱい大きい」
などと絵津子が言う。
「Cカップしか無いよ」
と千里は言う。
「それ女性ホルモンだけで大きくなったんですか?」
「そうだよ。私、小学4年生頃から女性ホルモン飲んでたから」
「すごーい」
 
「えっちゃんだって、それBカップはあるでしょ?」
「結構邪魔なんですけどねー。もう胸だけ性転換したいくらい」
「しっかりしたスポーツブラ付けるといいよ。これこの胸を支えるには弱すぎると思う」
と千里は彼女のブラに触りながら言う。
 
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「しっかりしたの付けたら、動きやすくなります?」
「なると思う。ふつうの下着屋さんのではダメだよ。スポーツ用品ブランドのを使った方がいい」
 
「そっかー」
「ブラ交換しようよ。佳穂さん?」
 
と言って、千里は付き合ってくれていた佳穂さんに向かって言う。
 
「OKOK」
 

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