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■娘たちのタイ紀行(25)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-10-08
 
そして江美子が3つ目の鈴について占おうとしていた時、サクラたちが何やら騒ぎながらこちらにやってきた。
 
「キラたち何食べてたの?」
「飲み物だけ」
「それではお腹空くでしょう」
「あ。マクドナルド買って来よう」
と言ってわいわい騒ぎながら、食べ物を買ってくる。
 
何だかハンバーガーを20個くらいとポテトも大量に買ってきて、どーんとテーブルに置く。
 
「一緒に食べよう」
「サンキュー」
 
占いの方はこの騒ぎで中断してしまった。
 
「でも面白いものゲットしたんですよ」
と王子が言っている。
 
「何?」
 
「これ性転換するんですよ」
「へ?」
 
王子が手にしているのはキーホルダーなのだが、見た目は背広を着た男性の姿をしている。それがピンを引っ張ると、内側に隠れていたビキニの女性の姿が露出するようになっている。
 
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「やはり性転換の国ですね〜」
などと王子が言っているが、桂華が
 
「それちょっと見せて」
と言って手に取っている。
 
「これMade in Japanって書いてあるけど」
「あ〜〜〜れ〜〜〜〜!?」
 
「いやこれ九州某所で似たのを見たことあったんで」
と桂華は言っている。
 
「このデパートは見てたら中東とかからの観光客が多いみたいだから、中東から来た人にはタイも日本も似たようなものかもね」
と千里は笑いながら言った。
 

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「ところでサクラはタイバーツを日本円に両替した?」
「忘れてた!」
とサクラ。
「あ、私も再両替しなきゃ」
と華香。
 
「このデパートの近くにもお店あったはずだよ。行っておいでよ」
と千里は言う。
 
サクラが高額の現金を持っており、彼女たちだけでは不安なので、デパート内にいるはずのアミさんを呼び出し一緒に行ってもらった。
 
彰恵・江美子・桂華も一緒に残金を両替すると言って付いて行った。千里と玲央美はバーツをちょうど使い切るくらいまで使っており、残金は少ないので両替せずに残りはそのまま持ち帰ることにした。
 

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手帳を見ていた玲央美が言った。
「今日はたぶん私と千里が大濠公園で会った日だよね」
「ああ。一緒にジョギングした日か」
「あれから何年経っているんだろう」
と玲央美は半分独り言のように言う。
 
「まあ歴史上は同じ日なんだけど、実際には半年経っているし、私の身体の年齢で言うと、あの日の私は2008年5月20日、今の私は2011年3月30日だよ。だから2年10ヶ月経っている」
 
「その約3年であの細かった腕がここまで太くなるのか」
などと言って玲央美は千里の腕を触っている。この子も結構腕フェチだよなと思う。
 
「女の子としてはちょっと悲しいけどね」
「でも千里って、彼氏ができたことで割と開き直って身体を鍛えたんでしょ?」
「それはあるかもねー。彼も私が身体を鍛えることを望んだし。玲央美はいいの?」
「私はそのうちバスケットボールと結婚式を挙げるから問題無い」
「なるほどー」
 
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玲央美もちょっとレズっぽいよなという気はする。恐らく男の子にはあまり興味は無いのではなかろうか。むしろ玲央美のような子を満足させきれる男の子というのも、めったに居ない気がする。
 
「あれ?」
と玲央美が声を出す。
 
「どうした?」
「2011年ってことは千里何歳になる?」
 
「身体の上では20歳になったばかりかな」
「アンダー19じゃない」
「心は19歳ということで」
「うーん。。。まあいっか。男でなければ」
「そうだね。女だからいいよね」
 

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「あ、そうそう。インターハイ、優勝おめでとう」
と千里は言った。
 
「ありがとう。純子が頑張ったね」
と玲央美。
 
「まあおかげで、うちはウィンターカップに行ける」
「この時点でN高校がウィンターカップに出場することを知っているのは私たちだけだね」
「うふふ」
 
この日日本の大阪ではインターハイの決勝戦が行われ、札幌P高校が東京T高校を下して2年連続優勝を達成した。MVPには札幌P高校の渡辺純子が選ばれた。純子は得点女王も取った。スリーポイント女王は岐阜F女子校の神野晴鹿が取った。千里の愛弟子である。
 
ベスト5には、渡辺純子、神野晴鹿、江森月絵(札幌P高校)、鈴木志麻子(岐阜F女子校)、夢原円(愛知J学園)が選ばれた。
 
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タイの千里たちは、一息ついたところで、タイ料理で有名らしいお店で夕食を取った。ここで早苗も合流した。その後、ずっとお世話になったアミさんにお礼を言って別れ、選手団一同はスワンナプーム国際空港に向かう。
 
「次は来年の10月、U20アジア選手権だからね〜。みんな予定空けておいてよ」
と高田コーチはみんなに声を掛けていた。
 
「日程はいつですか?」
と彰恵が訊く。
 
「10月14-25日が大会。4月に代表候補を発表して、その後何度も合宿をする。9月頃、最終的な代表を決める。まあ竹宮君や花和君たちも候補には招集されるだろうけど、君たちも間違い無く招集するからよろしく」
と高田さんは言う。
 
おそらく今回16年ぶりの決勝トーナメント進出ということで、バスケ協会の上の方からは、来年のアジア選手権も基本的にこのメンバー中心でと言われたのだろう。
 
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「場所はどこですか?」
「インドのチェンナイの予定」
「インドかぁ」
「それ、昔マドラスと言っていた町ですよね?」
「そうそう。現地名で呼ぶようになったから」
 
「ヨーロッパには行かないんですか?」
「アジア選手権だから」
「あっそうか!」
「次のU21世界選手権はアメリカのアトランタ」
「おぉ!行きたい」
「来年のアジア選手権でも優勝して、アトランタに行こうよ」
 
「私、日程大丈夫かな?」
と王子が言っているが、
 
「U20アジア選手権はもしかしたらウィンターカップの県予選とぶつかる可能性があるよね。でもそれは後輩たちに頑張ってもらおうよ」
と高田コーチは言っていた。
 
「U21世界選手権の方はどうですかね?」
と彰恵が心配そうに言う。
 
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王子が出られるのと出られないのとでは戦力がまるで違う。特に体格の良い外人選手相手に王子は絶対欲しい。
 
「U21世界選手権は例年7月末か8月にあっていて、いつもインターハイとぶつかっていたんだけど、2011年の場合、会場になるアトランタでその時期には別のイベントがあるらしくてね。それで6月になったんだよ」
 
「じゃインターハイとぶつかりませんね。良かった!」
 
「インターハイの県予選とはぶつかる可能性があるけどね」
と高田コーチ。
 
「キーミンは県予選には出ずにインターハイだけに出るということで」
とサクラが言う。
 
「まさにプリンスにふさわしい出場の仕方だな」
と江美子は言った。
 

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「でもU20アジア選手権,U21世界選手権は次が最後になりそうなんだよ」
と高田コーチは言う。
 
「無くなるんですか?」
「今度U16アジア選手権、U17世界選手権ができたんで、その代わりにU20/U21はやめようかという話なんだよね」
 
「あらぁ」
「君たちの世代まではU21をやるけど、その次の世代からはU19の後はもう大人の大会になるね。ただし大学生はユニバーシアードもある」
 
「ああ」
「この中で大学に進学している子には声が掛かると思うよ。次は2011年中国の深圳(シェンチェン)」
 
「今年うちの吉本が行って来ました。決勝ラウンドには行けずに9位でしたけど」
と朋美が言っている。
 
今年のユニバーシアードは7月1-11日にセルビア(旧ユーゴスラビア)のベオグラードで行われた。
 
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千里たちは23:50発の成田行きに搭乗し、翌日8月4日朝8:10に到着した。みんな機内ではひたすら眠っていた。
 
天津子のネックレスは通関の間《たいちゃん》に持ってもらっておいた。
 
『この方法なら、覚醒剤とかも密輸できるな』
などと《りくちゃん》が言う。
 
『そんなの密輸してどうすんの?』
『覚醒剤はあまり楽しくない。***が楽しい』
『私まだ人間辞めたくないから』
『千里が本当に人間なのかどうかは俺は疑問を感じる』
『ああ、私も時々自信無くなることある』
 
《りくちゃん》の言っている意味と千里の言っている意味は微妙に食い違っているのだが、お互い深く追求しないことにした。
 

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入国手続きをした後、都内のホテルに行く。ここでお揃いのパンツスーツ姿に着替えてから、まずバスケ協会会長でもある麻生太郎首相に結果報告をした。麻生会長(首相)は16年ぶりの決勝トーナメント進出7位、玲央美がアシスト女王、千里がスリーポイント女王というのに満面の笑みで「よくやったね。頑張ったね」と言って、選手全員と握手した。
 
記念品として白いオパールをブロンズ製のフレームで留めてバスケットボールの模様にした半球状のブローチと金一封の封筒をもらった。このブローチは世界大会で活躍した女子選手に贈るものらしいが、制作したのは久しぶりらしい。今回の大会で日本が決勝トーナメント進出を決めた段階で、急遽発注し、大急ぎで制作したと後から聞いた。
 
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「おお、金一封嬉しい!」
と王子が声を挙げるのを麻生会長は楽しそうに見ていた。
 

そのブローチを全員、スーツの胸に付けて記者会見をした。監督に続いて朋美キャプテンが成績報告と支援に対する感謝の言葉を言い、そのあと賞をもらった玲央美と千里もひとことずつ求められた。
 
千里は事前に高田コーチと一緒に作文した内容の感謝の言葉、そして今後更に研鑽してもっと上を目指しますという誓いの言葉を述べた。
 
その後、バスケ協会の幹部さんたちと一緒にそのホテルで昼食会をしてから解散となった。
 

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王子は都内に1泊してから、明日くらいの便でアメリカに戻ると言っていた。
 
「実家には顔を出さなくていいの?」
「え?顔出すもんですかね?」
「お母さんは顔を見たいと思うよ」
「そんなものかなあ」
「一度行っておいでよ」
 
と千里たちだけでなく、サクラや華香からも言われたので、結局王子は一度岡山に戻った後、再度アメリカに行くことにしたようである。
 
「タイに行って息子が性転換して女になってしまったりしてないか心配かもよ」
と百合絵が言うと
 
「大丈夫です。ちんちんはちゃんとあります」
と王子は言っている
 
朋美に没収されていたちんちんは飛行機に乗った後で返してもらっていた。
 
「息子が性別を隠して女子選手していたら、親としては気が気じゃ無いよね。そのうち本当の女になりたくなるのではって」
「あはは。私、お嫁さんもらうのもいいかなあ」
「キーミンのお嫁さんになりたいって言う女の子はきっとたくさんいる」
「私、人生考え直したくなるな」
 
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「でも実は倉敷までの電車賃が無くて」
などと王子は言い出す。
 
「それ私が出してあげるよ」
と千里は言った。
「すみませーん」
 
「ついでに、きみちゃん、みんなからいくら借りたか書き出してみてよ」
と千里は言った。
 
しかし王子は全く覚えていない。
 
それで千里は全員に王子にお金を貸していないか。貸したならいくら貸したかを聞き出した。高田コーチにも借りていたよと桂華が言うので、高田さんも呼び出した。
 
すると、ほぼ全員から合計40万円借りていたことが分かる。借りていなかったのは彰恵だけであった。「怖そうだったので」などと言っていた。彰恵が苦笑していた。
 
その全員に千里は代理で返済した。
 
高田コーチが「村山君はお金大丈夫なの?」と聞くが「ちょっと臨時収入があったので」と答えておく。
 
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全員に返し終わった所で
 
「あとはきみちゃんが私に返してくれたらいいから」
と王子に言った。
 
「分かりました!」
 
千里はこの問題は放置していたらチームの和を乱しかねないと心配したのである。お金の問題はみんな表面的にはあまり言わないものの、結構あとあとまで尾を引きやすい。
 
「それとこれ倉敷までの往復の新幹線代ね」
と言って1万円札を4枚渡した。
 
「助かります」
「少し多いと思うからお母さんに何かお土産でも買っていくといいよ」
「そうします」
 

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