広告:メイプル戦記 (第2巻) (白泉社文庫)
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■娘たちのタイ紀行(22)

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リトアニアが攻めて来る。シェイトに千里、ソロカイテに玲央美、そして、ランカイテに王子が付く。
 
リトアニアは普段通りにゆっくりとしたパス回しから、突破できる所を探す。ランカイテがボールをくれ〜という顔をしているので、メイルティーテが彼女にパスする。
 
ランカイテと王子の勝負である。
 
ドリブルしながら右側に軽くステップする。王子がそちらに身体を揺らすが、重心は移動させていない。それでランカイテはそのまま右を突破しようとする。王子が手を伸ばす。わずかに及ばずランカイテが王子を抜いて中に進入する。サクラがフォローに来るが、衝突しながらシュート。
 
成功して72-70.
 
ランカイテが王子に視線をやる。
 
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スマイル&スマイルである。
 
しかしこのふたりのスマイルを篠原監督は「まるでジェームズ・ボンドとジョーズが出会い頭お互い笑顔を作るみたいで怖い」などと後で言っていたが、その話が分かったのはアクション映画好きの百合絵だけだったようである。
 
残り50秒。
 

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日本は速攻する。ここをゆっくり攻めてしまうと、日本は再度の攻撃機会が無くなるのである。
 
朋美から玲央美につなぎ、玲央美がスリーを撃つ。しかし惜しくも外れる。しかし千里が落ちてきたボールを確保。そのままコート端のスリーポイントラインの外側までドリブルしていく。エンドラインとサイドラインが交わるコーナーの部分である。そしてリトアニア側が戻って来る前に再度スリーを撃つ。
 
この角度からのスリーは、バックボードを利用できないのでダイレクトに入れる必要がある。しかしもとより千里はダイレクトに入れるのが大得意である。
 
これが決まって72-73.
 
逆転!
 
残り41.2秒。
 

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リトアニアが慎重に攻め上がる。
 
リトアニアとしては点は取らなければならないものの、日本にあまり時間を残したくない。ひじょうに微妙なところである。
 
王子がさっきランカイテにやられたので、次は負けないぞとばかり、頑張ってランカイテが走り回るのに付いて行っている。それを見てメイルティーテはソロカイテにパスする。
 
ソロカイテと玲央美の対決。
 
ソロカイテが何度かフェイントを入れるものの、玲央美に全く隙が無い感じである。それでソロカイテはドリブルを中止してボールを右手に持ち、シェイトに向かってパスする態勢から・・・・
 
シュートに切り替えた!
 

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しかし玲央美はこれを読んでいた。
 
思いっきりジャンプして、このボールを叩く。
 
ボールが転がる。
 
王子とランカイテがほとんど同時にボールに飛びつく。
 
両者譲らない。
 
それで笛が吹かれて、ジャンピングボール・シチュエイションになる。
 
みんなポゼッション・アローを見る。
 
ティップオフでリトアニアが取り、第2ピリオドは日本、第3ピリオドはリトアニア、第4ピリオドは日本がオルタネーティング・ポゼッションによりボールを所持した。
 
この試合ではヘルドボールが一度も起きていなかったので、ポゼッション・アローはリトアニアを指している。
 
それを見て王子が天を仰いだ。
 
リトアニアのスローインで再開されることになるが、リトアニアが継続してボールを所持しているので24秒計はリセットされない。
 
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ところが24秒計の残りはわずか2秒である!
 
その残り秒数を見て、今度はランカイテが首を振っている。
 

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メイルティーテがスローインしてシェイトにボールを送るが千里は身体を割り込ませてキャッチを妨害する。しかしシェイトが再度千里を押しのけて何とかボールを確保する。
 
この瞬間、24秒計は2秒の所から再度動き出す。
 
千里が執拗にシェイトに近接ディフェンスするのでシェイトはシュートもパスもできない。
 
24秒計が鳴ってしまう。
 
シェイトが脱力するようにして目を瞑り大きく息をついた。
 

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結局残り17.2秒で日本ボールとなる。
 
もう24秒計は消えてしまう。
 
朋美がスローインするが、リトアニアが物凄いプレスを掛ける。
 
玲央美の前で執拗にソロカイテが動き回るので千里がシェイトを連れたままヘルプに行く。玲央美の近くで停止する。玲央美が千里の身体を壁にして何とかソロカイテを振り切ると、先攻して走っている王子にパスする。
 
一瞬早くランカイテが飛び出してボールをカットするも、こぼれたボールを素早く朋美が確保する。そのままドリブルでセンターラインを突破。しかしメイルティーテがその前に回り込む。朋美は複雑なフェイントを入れてメイルティーテを抜く・・・・
 
と見せて、真後ろにボールを放り上げる。千里がそれをキャッチするが、シェイトが千里にしっかり食いついている。
 
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そのまま王子にパスする。
 
今度は王子も横取りされずにしっかりとキャッチ。ドリブルで侵攻するが、ランカイテが必死で走って王子の前に回り込む。
 
一瞬の気合いの勝負。
 
王子は強引にランカイテを抜いた。
 
そのままレイアップシュートに行く。
 
ジェーマンタウスカイテが走り寄ってきたものの、それより王子のシュートの方が早かった。
 

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これが入って72-75.
 
残りは4.8秒。
 
メイルティーテがリトアニア語で何か叫んでいる。みんな走って行っている。5秒ルールの限界ギリギりでボールを遠投する。
 
サクラが一瞬キャッチしたものの、ジェーマンタウスカイテが強引に奪い取る。体勢を崩しながらシェイトにパスしようとしたものの、シェイトは千里にパス筋を塞がれている。
 
やむを得ず倒れながらランカイテにパスする。ランカイテがボールを取ると大股に2歩動いて、スリーポイントラインの外側に出る。
 
王子が猛烈な勢いでランカイテに走り寄る。
 
ランカイテは後ろに迫る王子の足音を聞きながら、片足で踏み切って身体を回転させながらシュートする。
 
直後に試合終了のブザーが鳴る。
 
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王子が思いっきりジャンプした。
 

王子の指がわずかにボールに触れた。
 
ボールの軌道が変わる。
 
ボールはバックボードにも当たらず、向こう側へ飛んで行った。
 
ランカイテが苦渋の表情を見せた。が思い直したように王子に手を伸ばす。王子は笑顔で握手する。ランカイテも苦笑気味に笑顔を作った。
 

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整列する。
 
「75 to 72 Japan won」
と審判が告げる。
 
お互いに握手したりハグしたりして健闘を称え合った。
 

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「最後何とか勝てたね〜」
と百合絵が嬉しそうである。
 
「これで7位かぁ」
「まあ8位より7位が良い」
 
「今回勝ったのは、マリ、ロシア、中国、そして今日のリトアニア。4つ。4勝5敗。フランス、アメリカ、スペイン、オーストラリア、カナダに負けた」
「それで7位はお得な気がする」
 
「フランスはマリ、日本、中国、アルゼンチン、ブラジルと5ヶ国に勝っているのに9位。5勝3敗。ロシア、アメリカ、スペインに負けた」
 
「うーん・・・」
 
「やはり、どこで勝つかが重要なんだね」
「フランスの場合はロシアに8点差で負けたのが響いたんだよね。日本はフランスに1点差負け。負け方が小さかったので二次リーグを生き延びることができた」
 
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「8点差なんて僅差の範囲なのに」
 
「得失点1点の差で明暗が別れることもあるからね」
 

この日日本の大阪ではインターハイの準決勝が行われ、東京T高校が愛知J学園を倒し、札幌P高校が岐阜F女子校を倒した。
 
「まあ後輩たちの試合はお互い恨みっこなしで」
と玲央美(P高校出身)は昨日彰恵(F女子校出身)が言っていた台詞を言っていた。彰恵が苦笑していた。
 
「しかしこれで今年のウィンターカップは、北海道と東京は1校多く出られるわけか」
 
「うちの学校は張り切っていると思うよ」
と千里は言う。
「ふだんの年は、札幌P高校に勝ってウィンターカップに出て行くなんて無理だから」
 
「あきらめがいいな」
 
「実際、愛媛・岐阜・愛知・北海道はもう最初から出てくる学校が決まっているからなあ」
と桂華が言う。
 
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「福岡もほとんど指定席でしょ?」
「いやK女学園とかS女子校にやられたことが何度かある」
「なるほど。そのあたりがあったか」
 
「しかし福岡は女子高が強いな」
 
福岡C学園も女子高である。
 
「うーん。女子高が強いのは全国的な傾向という気がするよ」
 

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この日タイの世界選手権では、日本の試合の後、5位決定戦はカナダ、3位決定戦はオーストラリア、そして決勝戦はアメリカが勝った。この結果、全ての順位が確定した。
 
1.USA 2.ESP 3.AUS 4.RUS 5.CAN 6.CZE 7.JPN 8.LTU 9.FRA 10.BRA 11.ARG 12.CHN 13.KOR 14.TUN 15.MLI 16.THA
 
夕方20:30から表彰式・閉会式が行われる。
 
タイの女子高生たちによる美しい踊りが披露される。
 
「あの中央で踊っているのは元男の子らしいよ。アミさん言ってた」
「へー。凄い美人なのに」
「去年は男の子の身体のまま、全国女子高生ダンスコンクールで優勝して話題になってたって。そのあと性転換手術受けたらしい。そして今年も優勝して2連覇」
「すごーい」
 
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「男の子でも女子高生コンクールに出られるんだ?」
「学籍簿上女子だったらしい。性別女の生徒手帳を持ってたから出場を認めたんだって」
「ほほぉ!」
 
彼女たちのパフォーマンスの後、今日最後まで残った8チームの選手・コーチ・アシスタントコーチ・マネージャーが大会のテーマ曲にあわせて行進して入場する。
 
最初に成績が発表される。8位から順に名前を呼ばれ、代表者が出て賞状を受け取ってくる。日本はキャプテンの朋美が出て行き7位の賞状をもらってきた。4位まで賞状をもらった後、3位のオーストラリアは全員が前方に置かれた表彰台の右側に登る。賞状と楯をもらう。2位のスペインが呼ばれて全員表彰台の左側に登る。賞状と楯をもらう。そして最後にアメリカチームが登って特に大きな歓声を受け、賞状をもらった後、FIBA役員のカナダ人女性Nancy Adamsさんの手で優勝トロフィーが渡された。
 
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その後、表彰台に登っている全員がメダルを掛けてもらう。金メダルはAdamsさん、銀メダルはタイバスケット協会の会長、銅メダルは同理事さんが、各選手に掛けてあげた。
 
そして『星条旗』の曲が流れる中、アメリカの国旗が掲揚された。
 

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このあと、いったん選手たちが元の位置に戻ってから個人表彰が行われる。
 
「Most Valuable Player, Sandy Summit from United States of America」
 
「All-Tournament Team, Sandy Summit (C), Diana Greenwood (PG) from United States of America, Maria Sara Fernandez (PF) from Kingdom of Spain, Laura Hammond (SG) from Commonwealth of Australia,
Irina Petrovna Kuzina from Russian Federation」
 
ベスト5に選ばれた5人が出て行き、各々賞状と記念品をもらっていた。カナダのケイト・クラーク(PF)もかなり良い成績を残しているが、チーム順位が優先されて選ばれたのであろう。
 
各部門のリーダーも発表される。
 
「Scoring Leader, Sandy Summit from United States of America,
Rebounds Leader, Maria Sara Fernandez from Kingdom of Spain,
Assists Leader, Reomi Sato from Japan,
Three point field goals Leader Chisato Murayama from Japan」
 
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千里も玲央美もびっくりしたものの、握手して一緒に前に出る。リバウンド女王を取ったフェルナンデスがふたりを認めて笑顔で握手してくれた。ついでに(?)サミットも握手してくれた。フェルナンデスもサミットも力強い手であった。
 
賞状と記念品をもらう。
 
記念品はZepterのボールペンか何かのようであった。
 
玲央美がフェルナンデスに小さな声のスペイン語で話しかける。
「Cual fue el Premio de quinteto ideal?(ベスト5の賞品は何でしたか?)」
「Zepter Reloj de pulsera(ゼプターの腕時計だよ)」
とフェルナンデスが答える。
 
「Que bonito!」
 
Zepterは筆記具、時計、鍋や食器などまで作っている総合製造メーカーである。
 
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Nancy Adamsさんのメッセージがあった後、再びテーマ曲が流れる中、選手退場となった。退場後はロビーで各国選手が入り乱れて、握手したりハグしたり、記念写真を撮りあったりする姿が見られた。
 
千里もロシアのクジーナやモロゾヴァ、スペインのフェルナンデスやイグレシアス、リトアニアのシェイトやランカイテと遭遇して、お互いに記念写真を撮り合った。(ただし千里は自分で写真を撮る自信が無いので、全部《きーちゃん》に撮ってもらった)
 

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娘たちのタイ紀行(22)

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