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■娘たちのタイ紀行(8)

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アンスポの後なので、日本が得点しても更に日本のスローインからゲーム再開である。千里がスローインし、王子にパスする。王子はモロゾヴァのガードをほとんど強引に破って中に進入する。一瞬審判がファウルを取るかどうか悩んだ風ではあったものの、ファウルは取られなかった。
 
華麗なダンクを決めて47-61.
 
点差が開き始める。
 
しかしロシアも202cmのクジーナが入っている。
 
ゲームはこちらの予測通りモロゾヴァが司令塔役になるようである。彼女のドリブルで攻め上がってくる。クジーナに送る。クジーナは王子の前で複雑なフェイントを入れて突破。中に飛び込んでサクラも押しのけて豪快なダンクを決めた。49-61.
 
王子をきっと睨む。ダンク仕返したぞ、という雰囲気だが、王子もにらみ返す。こちらも負けてはいない。
 
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この後、ゲームは王子とクジーナのダンク合戦の様相を呈した。千里のスリー、ペトロヴァの2ポイントシュートもあったものの、残り3分まで行った所でクジーナが10回中8回もダンクを成功させたのに対して、王子も5回中3回ダンクを成功させた。
 
日本が攻める時、王子に最初はモロゾヴァが付いていたのだが、ゲームの途中からクジーナが付くようになっていた。クジーナが王子を好敵手と認め、自ら対決を望んだのであろう。
 
ふたりはお互いダンクを決める度に睨み合っていたが、これは本来はしてはいけない行為である。おかげで2度も審判から警告を受けていた。
 
しかしクジーナの活躍で、ここまでの得点は68-70とわずか2点差である。
 
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日本側が江美子のドリブルで攻めあがって行く。
 
千里にボールを送るもペトロヴァが必死にガードしている。そこで千里はいったん玲央美にボールを送る。玲央美は受け取ると即王子にボールを回した。
 
王子がフェイントなど入れずにいきなりクジーナの右を抜こうとする。クジーナが止めようとして弾かれ、反動で倒れてしまった。しかし王子は構わず中に突進する。コフツノフスカヤが止めようとしたものの、王子は直前で進路を変えて、コフツノフスカヤの右側、エンドライン側に移動してからゴールそばに迫ろうとした。コフツノフスカヤが必死に手を伸ばして王子を止めようとするが、王子はその手をはねのけて逆にコフツノフスカヤを手で押しのけるようにしながらシュートを撃った。
 
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コフツノフスカヤがバランスを崩して倒れる。
 
ボールはゴール飛び込んだ。
 
笛が吹かれる。
 

審判は王子のイリーガル・ユース・オブ・ハンズを取った。
 
千里は、今のプレイでどちらが悪いかは、かなり微妙ではないか、ひょっとしたらダブルファウルでは、と思ったのだが、審判の判断には従う必要がある。
 
王子は素直に手を挙げてファウルを認めた上で、「Sorry」とコフツノフスカヤに言った。コフツノフスカヤも「OK,OK」と言っている。
 
ところがそこに今起き上がったクジーナが腰をさすりながら寄ってくると、王子に何かロシア語で文句を言った。
 
しかし王子はロシア語が分からないのでキョトンとしている。するとその態度がクジーナには面白くなかったようで、更に何か早口のロシア語でまくし立てている。どうも今まで我慢していたのが、とうとう堪忍袋の緒が切れたという感じだ。
 
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王子は日本語で「喧嘩はやめようぜ。バスケットで片を付ければいいじゃん」と言ったのだが、向こうは日本語は分からない。なんか反論されたみたいと思ったようで、ますます激高する。
 
モロゾヴァがクジーナを止める。千里も王子をクジーナから引き離そうとする。
 
審判が寄ってくる。厳しい表情をしている。
 
「What are you two doing? I have already warned twice!」
とふたりに英語で言う。
 
これまでもふたりが度々睨み合っていたのを、審判が警告していたのである。
 
審判に言われて、やっとクジーナも口を閉じる。
 
そして審判はふたりにテクニカルファウルを宣告した。
 
モロゾヴァと千里が頭を抱える。クジーナが「しまったぁ!」という顔をしている。自分が既に4ファウルであることを一瞬忘れていたのだろう。
 
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王子は今のイリーガル・ユース・オブ・ハンズに続けてのテクニカルファウルで、4つ目のファウルになるが、クジーナは5つ目のファウルである。
 
従ってクジーナは退場になる。
 
悔しそうな顔をしてクジーナがベンチに退く。
 
ロシア側の応援席が動揺している。日本を激しく追撃していた中心選手の退場はあまりにも痛すぎる。
 
日本側も王子を下げて彰恵を入れた。王子は監督から
「相手選手が激高していてもこちらは無言を貫け」
 
と叱られていた。王子としては不満そうだ。単に喧嘩は止めようよと言っただけなのだが、言葉が通じないと、言い返しているようにしか聞こえない。
 
ちなみにクジーナが言っていたのは「てめえ、押しのけるにしても限度があるだろう?今のは酷すぎる。だいたい、てめえ本当は男じゃないのか?チンコ付いてるだろう?それとも、付いてたけど、手術して取ったのか?」などといった言葉であった。
 
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千里はロシア語が分かるので、聞いていて少し呆れていたのだが、ポーカーフェイスで聞こえないふりをしていた。
 

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ロシアは再度ゼレンコフスカヤを入れて来た。彼女もかなりの長身だ。
 
ファウルが立て続けに起きて訳が分からなくなったが、王子のファウルの後なので、ロシアの攻撃からである。ボールを繋いでいってペトロヴァのシュート。これが失敗するも、リバウンドを今入って来たゼレンコフスカヤが取って自らシュートを決める。これで点数は70-70。とうとう同点になってしまった。残りは1:56である。ロシアの応援席が物凄く盛り上がる。
 
しかし次の攻撃で日本は今入った彰恵が得点して70-72.日本応援席が盛り上がる。しかし次の攻撃でロシアが得点し72-72の同点に戻す。ロシア応援席の興奮度が上がる。
 
残り1:28.
 
日本が攻めて行く。江美子から玲央美にボールが送られ、玲央美が中に進入するも堅い守りに阻まれてゴール近くまで寄れない。いったん千里に返す。千里はそのままシュートに行こうとするが、マシェンナが千里のそばに寄ると、空手の突きでもするようなポーズを取った。
 
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その途端、ボールが千里の手の中から飛び上がるようにした。
 
へ!?
 
千里は慌てて再度つかもうとしたものの、ボールは転がっていく。千里が追うが、マシェンナが先にボールを確保した。彼女はそのままドリブルで走って行く。日本は必死で戻る。
 
結局、日本側では千里が最速で戻り、マシェンナの前に回り込んだ。
 
マシェンナはそのまま千里に向かってくる。そしてその時千里はハッキリと見た。
 
マシェンナの身体から西洋のドラゴンのようなものが飛び出して、千里を威嚇しようとした。あまりこの手のものを「見る」ことのない千里にも見えるというのは珍しい。
 
『こうちゃん!』
 
と千里が呼びかけるのと同時に《こうちゃん》が飛び出すと、一瞬でそのドラゴンのようなものを食べちゃった!!
 
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マシェンナが崩れるようにして倒れた。
 
千里は直立している。
 
笛が吹かれたものの、審判は走り寄って千里との距離を見て、ふたりの間には身体的な接触は起きてないようだと判断した。
 
モロゾヴァがマシェンナのそばに寄ってきて呼びかけている。どうも彼女は気を失っているようである。
 
結局担架で運び出された。
 
しかしまあ担架のよく活躍する試合である。
 
審判は単純な怪我に準じて扱うことにしたようで、ロシア側のスローインで再開される。マシェンナの代わりにはクリモナが入った。
 
そのクリモナからコフツノフスカヤにつなぎ、彼女がダンクを叩き込んで74-72.
 
ロシアがとうとう逆転した。
 
ロシアの応援席が物凄く沸く。残り時間は54.7秒である。
 
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日本はここで江美子を下げて朋美を入れる。その朋美がドリブルでボールをフロントコートに運ぶ。
 
彰恵にボールを送るが、それと同時に玲央美とサクラが同時に制限エリアに走り込む。彰恵は玲央美にパスする。
 
玲央美がシュートしようとしたところでコフツノフスカヤが止めようとしたがこれがファウルを取られる。
 
コフツノフスカヤは5ファウルで退場になる。
 
トベルドフスカヤが代わって入る。
 

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玲央美はフリースローをきっちり2つ決めて74-74.
 
同点に戻す。日本の応援席が沸く。残りは35.2秒。
 
ロシアが攻めて来る。クジーナ、コフツノフスカヤといった中心選手の退場、更にはマシェンナの失神で、ペトロヴァは、ここは自分がやらなければと燃えていたようである。玲央美とのマッチングで絶妙なフェイント合戦に勝ち、玲央美を抜く。玲央美がバックステップしようとする。ところがペトロヴァは玲央美を抜いた直後に停止した。
 
実は玲央美が抜かれた後、バックステップで相手の前に再度出る技は、抜いた直後のところで停止されると出せないのである。
 
千里は凄いと思った。
 
玲央美のこの技を試合中に破った選手は初めて見た。
 
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やはりこれが世界のレベルなんだと納得する。
 
ペトロヴァがそこからきれいにミドルシュートを決める。
 
76-74. 12.8秒。
 

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千里は実は玲央美が抜かれた瞬間、走り出していた。
 
ゴール下のエンドラインに立った朋美が全力でふりかぶってボールを投げる。
 
モロゾヴァは一瞬反応が遅れた。必死で千里の後を追うものの、千里の全力疾走には追いつけない。朋美のボールが飛んでくる。千里の所に到達する直前、千里は振り向きながらボールをキャッチする。両足で同時に着地する。モロゾヴァが千里の左手から迫る。千里は彼女が自分の所に到達する瞬間、ドリブルで彼女が来た方角に進む。モロゾヴァは逆を突かれた形になり、千里と距離が離れる。
 
千里はそのままドリブルで、わざわざスリーポイントラインの外側まで出た。
 
そしてシュートする。その瞬間全力疾走で追いついてきたペトロヴァが千里に抱きつくようにした。
 
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しかし千里は体勢を崩しながらもきれいにボールをシュートしていた。
 

ボールはゴールに飛び込む。審判がスリーポイントゴールのジェスチャーをしている。
 
76-77.
 
再逆転!
 
そして、ペトロヴァのアンスポーツマンライク・ファウルが取られて、千里はフリースローももらう。しかもペトロヴァは2度目のアンスポなので退場だ!
 
今日のロシアチームで3人目の退場である。ミハイロヴァが入る。
 
千里がきれいにフリースローを決める。
 
これで76-78. 残り3.8秒。
 

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ロシアはタイムを取った。
 
どうもロシアはロングスローインから同点のゴールを狙う作戦を取るようである。日本も、対抗するため、サクラ、華香、王子、玲央美、と180cm台の選手4人と勘の良い千里を入れて対抗する。
 
プロツェンコがボールをスローインする。
 
そしてキャッチしたのは、何とモロゾヴァであった。彼女はスリーポイントラインのそばに居る。
 
ロシアは3点取っていきなり逆転という博打を打ってきたのだ。
 
モロゾヴァがボールをセットする。
 
シュートする。
 
そしてその瞬間千里は全力でジャンプしていた。
 

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千里の指がボールにわずかに触れた。
 
ボールの軌道がずれる。
 
ボールはバックボードには当たったものの、ゴールには入らずに落ちてくる。
 
ゴール近くにいる選手たちが一斉にジャンプする。
 

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ボールを取ったのはサクラであった。
 
彼女はそれを取られないように、すぐ王子に送る。王子がガッシリとボールを胸に抱いた所で、試合終了のブザーが鳴る。
 
 
 
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