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■娘たちのタイ紀行(31)

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「見つけるためのヒントが欲しい」
 
「そうですねぇ・・・・」
と言いながら千里はカードを引いていく。
 
剣の6が出る。
 
「船で行った方がよさそうですね」
「船!?」
「船旅を表すカードが出ているんですよ」
「それどこからの船?」
 
棒の2が出る。
 
湖か・・・・そういえばさっき死神も出たなというのに気づく。死・湖という所から千里は恐山湖を連想した。あそこは霊柱が2本立っているのでまさに棒の2だ。つまり下北半島か。
 
「下北半島の大間というところから函館へのフェリーが出ています。それを使って下さい」
 
「よし。同行するのは何人?」
 
金貨の8が出る。
 
「8人ですね」
「ふーん。。。今思いついていたのは6人なんだけど、2人増えるんだろうな」
「なるようになると思いますよ」
 
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「じゃ9人以上になったら、余分な人数は津軽海峡に放り込んで、足りない場合はあんたを拉致していこう」
 
また無茶なことを言っている。
 
「でもありがとね。北海道にはいつ帰るの?」
「今のところ帰る予定がありませんが」
「まあいいや、あとで呼び出すと思うけど」
「行きませんよ」
 
「それは何とかしよう。あ、そうそう。あんた来られない代わりに楽曲10個、今年中に」
「無理です!」
「100万円払うなら1月末まで期限を伸ばしてやる」
「じゃ1万円払いますから2月末までにしてください」
「全く素直じゃ無いな」
「先生の教育がいいので」
 

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ウィンターカップ、この日12月25日・3回戦の結果は下記である。
 
福井W高校○−×埼玉G高校
札幌P高校○−×千葉S高校
旭川N高校○−×愛知J学園
岡山H女子○−×福岡C学園
愛媛Q女子○−×高岡C高校
山形Y実業○−×東京E学園
東京T高校○−×福島W高校
岐阜F女子○−×金沢T高校
 
ベスト8が出そろったが、優勝候補の愛知J学園のほか、強豪の福岡C学園もここで消えてしまった。渚紗の後輩、秋田N高校は2回戦で福岡C学園と当たって消えている。U19代表候補にもなっていたセンター・富田路子を擁する大阪E女学院は2回戦で山形Y実業に敗れて消えている。
 
福岡C学園を破った岡山H女子校は元々結構な強豪なのだが、王子がいた倉敷K高校の方が県代表になることが多かった。ところがK高校の内紛で、K高校からH女子校に移籍した選手が大量に出た。それで突然H女子校が超強豪になってしまったのである。
 
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県予選では準決勝で倉敷K高校、決勝で王子が(書類の上だけ)在籍している岡山E女子高を破ってウィンターカップに出てきた。
 

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26日の4回戦の相手は東京T高校であった。中心選手は3年生でキャプテンのフォワード・大島陽奈と2年生センターの吉住杏子である。吉住は身長こそ175cmと並みのセンターだが、ポジション取りが物凄く上手い。千里はバスケ協会の期待が高い、愛知J学園の185cmセンター夢原円より、むしろこの子の方が才能があるのではという気もしていた。
 
実際この日、旭川N高校の正センター紅鹿・サブのセンター耶麻都、そして3年生で特例出場している揚羽も、ひたすら吉住に負け続けた。宇田先生としては来年の戦力と考えている1年生の由実も出してみたもののやはり全く歯が立たない。
 
しかし由実は結果的にはこの試合で吉住と激しい位置争いをしたことで、その後、大きく伸びることになる。
 
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試合はリバウンドでT高校が圧勝であったにも関わらず、N高校の《特例出場組》3年生ポイントガード・雪子が巧みにゲームをコントロールした上に、絵津子がT高校の大島ほかフォワード陣を翻弄し、結局6点差でN高校が勝利。1年ぶりの全国ベスト4を獲得した。
 

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この日の試合結果はこのようであった。
 
旭川N高校○−×東京T高校
岐阜F女子○−×岡山H女子
札幌P高校○−×山形Y実業
愛媛Q女子○−×福井W高校
 
これでベスト4が決まり、明日の準決勝は旭川N高校:岐阜F女子校、札幌P高校:愛媛Q女子校で争われることになった。
 
旭川N高校はこの日第1試合で、選手たちは第2試合を見てから宿舎に戻ることにしていたが、絵津子が千里に言った。
 
「他のチームの試合を見るより、たくさん練習したいです。千里さん、練習相手になってください」
 
「うん。じゃ、またあそこ行こうか」
 
そんなことを言っていたら久美子が
「私、玉拾いで付いていっていいですか?」
と言うので
 
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「うんうん、おいで」
と千里は笑顔で言った。
 

それで千里は宇田先生に許可を取ってから美鳳さんに転送してもらい、三度、月山神社に行った。
 
お祓いをしてもらってからお参りをし、その後裏手のバスケットコートに行く。久美子は凄い場所にコートがあるのでびっくりしている。
 
ここで千里と絵津子はひたすら1on1の練習をし続けた。久美子は本当に球拾い専任で付き合ってくれたのだが、ふたりの対決を見ているだけで久美子も得るものがあったようである。しかし・・・・
 
「あれ〜。全然抜けない」
と絵津子が言う。
 
「まあこないだたくさん抜かれたから、その後私も個人的に練習したし」
 
実は千里は江美子とふたりでひたすら夜間に練習していたのである。向こうも愛媛Q女子校の後輩・小松日奈をずっと鍛えていたらしい。向こうもここのコートに来ていたらしいが、美鳳さんが両者がかち合わないように「時空」を調整してくれていたようだ。
 
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例によって佳穂さんが焼き鳥や牛丼などを差し入れてくれて、千里と絵津子が食事をしている間に、久美子は黙々とシュート練習をしていた。
 
千里は久美子にもナイキのスポーツブラを買ってあげたが
「これ、凄い。動きやすい」
と言っていた。
 
「もういっそチーム全員に買ってあげようかな」
「あ、それいいかも」
「南野コーチや宇田先生にも」
「宇田先生はブラは不要だと思います」
 
3人の練習は26日のお昼前から27日午前3時頃まで、15時間ほど続いた。
 
その後、湯殿山の温泉で暖まり、筋肉をほぐしてから東京に戻してもらったが、絵津子も久美子も8時頃まで死んだように眠っていたらしい。
 

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27日。
 
この日は「絶対このくらいまでは残っていると思ったから今日来たぞ」
と言って、北海道から暢子・留実子・睦子の3人も応援に来てくれていた。留実子の旅費は暢子が出してあげたようだ。
 
「どのくらい君たちが強くなっているか、OGと現役とで対戦しよう」
などと暢子は言っていたものの、南野コーチが
「試合前にはやめようよ」
と言って停めてくれた。
 
この日から東京体育館はフロアに2面取る方式ではなく、中央に1面
だけ取る、センターコート方式に変更になる。
 
女子ではベスト4以上になったチームだけがこのセンターコートで試合をすることができる。
 
この日、旭川N高校と対戦した岐阜F女子校には、絵津子とライバルでありかつ昨年一時的にはチームメイトにもなっていたフォワードの鈴木志麻子、千里の愛弟子でインターハイのスリーポイント女王を取ったシューター神野晴鹿、そして1年生ながらもインターハイでアシスト女王を取った天才ポイントガード水原由姫がいる。
 
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そしてこの試合は、まさに絵津子:鈴木、雪子:水原という好ライバル同士の激しい勝負になった。
 
最初旭川N高校がリードするも、すぐにF女子校も追いつき、いったん引き離す。しかしN高校がそれに追いつく。
 
雪子と水原の天才ポイントガード同士の対決はお互いに相手の戦略を読み合い、各々サインでチームメイトにフォーメーションを指示するのだが、このサインは絵津子と神野が昨年「交換留学」していたおかげで1度お互いにバレている。それで今回はお互い新たに作ったサインで指示を出していた。
 
試合は第4ピリオドの終了間際に、3点ビハインドだったN高校が久美子のスリーで追いつき、延長戦になる。延長戦では最初N高校がリードしたものの今度は最後に神野のスリーで同点に持ち込み再延長になる。
 
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そしてサード・オーバータイムの最後にN高校の1年生由実が2点取ってN高校がリードしたものの、残り5秒から水原のロングスローイン→神野のスリーで逆転。
 
1点差でF女子校が勝利した。
 
どちらも死力を尽くした戦いで、試合終了後起き上がれない選手が何人もいた。
 

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一方の札幌P高校と愛媛Q女子校の戦いも激しかった。
 
P高校のエースでスモールフォワードの渡辺純子と、Q女子校の1年生センター・小松日奈という長身選手同士の対決が物凄かった。
 
ふたりはリバウンドも激しく争ったし、またお互いにマッチアップした。本来ならスモールフォワードの純子と、センターの小松がマッチングすることになるのは不自然なのだが、結局、純子は小松でなければ抑えきれず、小松も純子でなければ抑えきれなかったのである。
 
こちらも延長にもつれ込む激戦となり、最後は伊香秋子のスリーで札幌P高校が1点差の逆転勝ちをおさめた。
 
女子の試合が2試合とも延長になったため、この日は男子の試合時刻がずれることにもなった。
 
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27日の試合結果はこのようになった。
 
岐阜F女子校107−106旭川N高校
札幌P高校89−88愛媛Q女子校
 
どちらも1点差勝負である。この結果、明日の3位決定戦は旭川N高校:愛媛Q女子校、決勝戦は札幌P高校:岐阜F女子校で争われることになった。
 

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「絵津子、お前あと少し気合いが足りなかったな」
と言って、暢子が控え室で絵津子にヘッドロックを掛けながら言う。
 
「すみませーん」
と絵津子。
 
「暢子ちゃん、あまり責めないで。またこの子、丸刈りにしかねないから」
と南野コーチ。
「それは校則違反のはず」
と暢子は言う。
「それとも罰として性転換するか?男になったら丸刈りしてもいいぞ」
「男になるのは別にいいですけど、女子の試合に出られなくなるから困ります」
 

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「しかし感無量だ」
と宇田先生は言った。
 
「やはり今日の試合勝ちたかったですよね」
と川南が言うが、宇田先生は
「いや、もちろん勝ちたかったけどね」
と言ってから、こう言った。
 
「今年はやはり村山君・若生君・花和君が抜けて、戦力の大幅ダウンを指摘された。OG会からも『そんな布陣で大丈夫か?』と不安がられた。でも見たまえ。結局今年の最後の最後には、ウィンターカップの最終日まで戦うことになったじゃないか」
と宇田先生は、今日負けはしたものの、この結果に感激しているようである。
 
「先生、こんなところで感激していてはいけないです。明日勝ってメダルを持ち帰ってください」
と暢子が言った。
 
「いや、本当だ」
と宇田先生も相好を崩して答えた。
 
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「ああ。じゃ、本当に見つかったんですか」
と千里は雨宮先生からの電話で『捜し物』の探索結果を聞いた。
 
「あんたの言った通り、楽譜は地面の中に埋もれていたんだよ。それでその上に雪が積もってもあまり濡れずに済んだみたい」
 
「運が良いですね。中身は読めます?」
「結構読める。でもX線とかの写真も撮ってみようと思う」
「そのあたりは現代のハイテクを使えばけっこういけるでしょうね。最後は想像力でしょ?」
 
「うん。音楽理論で補える部分もあると思うんだよ」
「まあ音楽家であれば何とかなるでしょうね」
「それであんたも少し手伝って」
 
しまった。やられた!
 
「まあいいですよ。何曲くらいやればいいんですか?」
「あんたには特に読みにくいページの復元を。その代わり1月15日までの曲は12曲で勘弁してやるから」
 
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「分かりました。2月15日までの4曲はしっかり仕上げます」
「どさくさに紛れて締め切りをずらそうとしている。曲数まで減らそうとしている」
「お互い様です」
 
見つかった楽譜のノートは旭川の大学の研究室に雨宮先生の知人がいるということで、その人に様々な方法で撮影してもらうと言っていた。その後で、千里が復元を担当するページの「原本」を預かることにした。
 
原本からしか得られない情報があるのである。
 

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娘たちのタイ紀行(31)

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