広告:ここはグリーン・ウッド (第5巻) (白泉社文庫)
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■娘たちのタイ紀行(15)

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この日の結果。
 
GrpE CZE 74-73 CAN / ARG 61-57 LTU / AUS 72-51 BRA
GrpF ESP 81-80 JPN / USA 75-56 RUS / FRA 59-45 CHN
 
GrpE順位 1.AUS(5-1) 2.CZE(4-2 h2W) 3.CAN(4-2 h2L) 4.LTU(3-3 h2W) 5.BRA(3-3 h2L) 6.ARG(2-4)
GrpF順位 1.ESP(6-0) 2.USA(5-1) 3.RUS(3-3 1-1/1.0483) 4.JPN(3-3 1-1/1.0062) 5.FRA(3-3 1-1/0.9492) 6.CHN(1-5)
 
※h2W:直接対決で勝利 h2L:直接対決で敗北
 

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ジーナさんはこれで帰るということで、会場からそのままタクシーでスワンナプーム国際空港に向かい、23:59の便で関西空港行きで帰国するということであった。
 
千里たちは彼女と別れてホテルに戻り、夜食を取った。夕食はアメリカ−ロシア戦の後半を見ずに会場近くの食堂に行って取っていたのだが、ホテルでの夜食は、決勝トーナメント進出のお祝いという感じになる。
 
「負けたのにお祝いは変だけどね」
「まあ、より小さく負けたということだよね」
 

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30日。
 
この日は決勝トーナメントを前にした休養日で全ての試合が休みなのだが、千里はまた天津子に呼び出された。
 
彼女がレンタカーでホテルまで迎えに来てくれるので、彼女の運転するベンツに乗って出かける。しかし彼女に連れてこられた場所を見て困惑する。
 
「ここで何するの?」
「あそこに居るカマキリさんの御用事を果たすんです」
「カマキリ?カマキリがどこかに居るの?」
 
「千里さんも冗談がきついなあ。あれが見えない訳ないですよね?いくら何でも」
 
などと言って彼女はさっさと歩いて行くので千里も付いていく。
 

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彼女はここのところ毎日千里が試合をしているユースセンター体育館の所まで来た。
 
「先日の呪いを掛けた人物はインドシナ地方特有のテンダッカというカマキリの妖怪を使役して呪いを掛けていたんです」
 
確かにカマキリっぽかったなと千里は思った。
 
「それであそこにおられるのが、そのテンダッカの親分なんですよ。最初はこの親分さんにお願いして、子分さんを召還してもらい、呪いをキャンセルできないかと思ったのですが、そんな下っ端の対処もできない奴とはそもそも話もできんとおっしゃるので、こちらで勝手に処分させてもらいました」
 
なるほどー。あの体育館の屋根の上に、そのカマキリの親分がいるわけか。それであの体育館は重苦しい雰囲気だった訳だ。
 
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「そのテンダッカ子分は地獄送りになったんだっけ?」
「呪者の魂と一体化していたので、どうにもなりませんでした」
「ああ」
 
「でもそしたら、このテンダッカ親分からお使いが来ましてね」
「うん」
「何か文句言われるかなあと思ったのですが、お話ししたら、悪いことした奴は罰を受けなければいけないからあれでいいということと、自分が本来の場所にいないために、ああいう困った子を出してしまったと謝っておられましてね。それで自分が本来の場所に帰る手伝いをしてくれとおっしゃるんですよ」
 
「はあ」
 
「何でも戦時中に本来の居場所が演習とかに使われていて居られなくなってここに引っ越してきておられたらしいんですよ。最初はあちらのプールの方におられたらしいんですが、向こうが建て直すことになったらしくて、それでこちらの体育館に方に来られたものの、こちらも屋根の改修工事が始まって、居づらいなあと思われたということで。それで自分の本来のおうちに戻ろうかと。でもこの公園からの出口がないので、それを作ってくれないかと言われたんです」
 
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と天津子は説明する。
 
「こういう大きな作業は、私ひとりではできませんけど、私と千里さんと、それから日本にいる友人2人、4人が一緒に力を出せば行けそうな気がするんですよ」
 
その2人というのは実は、彼女の姉弟子の桃源と、青葉である。最初天津子はこんな大きなお仕事は師匠の羽衣を頼ろうと思ったものの、どこに行っているのやら、弟子の誰も所在を知らなかったのである(実は瞬嶽に術を掛けて殺そうとして返り討ちに遭い、瀕死の状態で寝ていたことが後に分かる−これは実は羽衣と瞬嶽の「楽しい命を賭けたお遊び」なのである)。
 
それで桃源とも話し合い、桃源は過去の事件で青葉や千里のパワーを見ているので、この4人でならできるという結論になったらしい。
 
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「それを今日やるんだ?」
 
「千里さんがこの日空くということでしたので、それに合わせてもらいました」
 
「ごめんねー」
 

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「でもこのカマキリさんが屋根に留まっていたら、中で試合やっていても消耗が激しかったでしょう。ここに居るだけで疲れるはずですよ」
 
「まあそれは思ったけど、自分1人では対処できなさそうだなと思った」
と千里は正直に言う。
 
天津子も頷いている。
 
実は体育館の雰囲気が変だというのは気づいていたので《とうちゃん》に相談したら、自分たちにも手が負えないと言われたのである。有害という訳でもないし、この大会で使うだけだから、我慢しておいた方がよいと思うと言っていたので、千里もそれでいいことにしていた。
 
「ちょっと大きな魔法陣を書きます」
と言って天津子はその体育館の前に素敵な雰囲気の杖を使って直径50mはある巨大な魔法陣を描いた。先日の呪いを封じた時の杖とは別のものである。恐らくは用途によって杖を使い分けているのだろう。
 
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そして天津子は携帯2台で別々の人を呼び出していた。
 
「OK。つながりました」
「私は何をすればいいの?」
「良かったら私の後ろに座っていて下さい。これ普通の霊鎧では完全には防御できないので私が特殊なバリアを張ります」
 
「分かった」
 

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それで天津子が電話2台を左右の耳に当てたまま呪文を唱え始める。
 
すると、しばらくする内に何か異様な空気になる。
 
千里はえ!?と思い、最強の霊鎧を発動し、《くうちゃん》のアドバイスで、天津子と彼女が両手に持つ携帯電話の先に居る人物までも、その霊鎧で覆ってしまった。
 
強烈な空気の塊のようなものが動く。
 
体育館の屋根を覆っていたブルーシートが吹き飛んで空に舞う。千里の近くで多数の樹木が折れる音を聞いた。何か凄まじい破壊音が聞こえる。道路で事故でも起きたような音が聞こえる。
 
『巨大なもの』は大きな痕跡を残して去って行った。
 
天津子は腰を抜かしたようで座り込んでいる。彼女が手にした携帯電話は2台とも潰れている。
 
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天津子は座ったまま身体を半回転させ、『何か』が去って行った向こうの方角を見ていた。どうもチビに様子を見に行かせているような雰囲気だ。本人はまだ立つ元気がないようだ。
 
「あ、無事にご自分の居場所の湖に戻ることができたようです」
と天津子は5分以上経ってから言った。
 
「それは良かった」
と千里。
 
「でもびっくりした。私が千里さんや他の2人も守るつもりが、逆に千里さんのバリアに助けられました。さすがですね。ありがとうございます」
と天津子。
 
「いや、今のはやばいと思ったから」
と千里は言う。
 
「千里さん、携帯はお持ちですか?」
「うん」
「貸して下さい」
「いいよ」
 
それで天津子は千里の携帯でどこか2ヶ所に電話していた。協力してくれた2人なのだろう。
 
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まず1人に掛けて話している口調が友達口調だ。向こうも女の子のようなので年の近い姉妹弟子なのかなと思う。
 
「オカマ野郎は無事でした。残念」
などと天津子は電話を切ってから言っている。
 
「オカマ??」
「本当は世界中のオカマを絶滅させたいんですけどね〜。今回はクライアントの次男もオカマだし、こいつもオカマだし」
などと天津子は言っている。
 
天津子がクライアントのことを他人に話すのは珍しいが、恐らく今の大王様の移動によほど驚いたのだろう。
 
もうひとり電話をしているが、こちらは敬語で話している。こちらも相手は女性のようだが、師匠か年の離れた姉弟子なのだろう。
 
「姉弟子も驚いたそうです。やられる!と思った所で千里さんのバリアで助かったと言っていました」
と実際に天津子は電話を切ってから言った。
 
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「まあ助かったのなら良かった」
 

「しかし派手な移動だなあ」
と天津子は座り込んだまま言った。
 
このスポーツセンターの樹木が数十本は倒れている。この体育館より道路側にあったプールの建物は派手に壊れている。しかし建て直すという話だったようなので、もしかしたら壊す手間が省けたかも知れない。道路ではどうも大型トラックが潰れたようだが、《りくちゃん》に見てきてもらったら死者は出ていないようである。また道路の向こうの方でも多数の建物に被害が出たようだ。
 
「面倒な事に関わらないうちに逃げましょうか」
と天津子。
「そうだね」
と千里は座ったまま言う。
 
「千里さん、大丈夫ですか?」
「ごめん。立てない。なんか凄い疲労感」
と千里。
 
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「あぁ・・・あれ?私も立てない」
と天津子。
 
彼女も力を使い切ったのだろう。
 
その時、体育館から西洋人っぽい人が数人出てきた。
 
「ムラヤマ?」
「ペトロヴァ?クジーナ?」
 
それはロシア人選手たちであった。
 
「どうかしました?」
と彼女たちがロシア語で尋ねる。
 
「気分が悪くなってしまって立てないんです」
と千里は正直にロシア語で答える。
 
「車か何かできてる?」
「ええ。そちらの駐車場に」
 
「じゃ運んであげるよ」
「スパシーバ!(ありがとう)」
 
それでクジーナが千里を、コフツノフスカヤが天津子を抱え上げて駐車場まで運んでくれた。
 
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