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■娘たちのタイ紀行(21)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-10-07
 
検討会が終わった後、10時頃ホテルを出て10時半すぎに会場に入った。
 
千里が持ち込んだ「活力の出る鈴」の音をひとりひとり耳元で聞いてからフロアに出て行く。そして名前を呼ばれてスターティング5がコートに入る。この日のスターターは、このようになっていた。
 
PG.早苗/SG.千里/SF.玲央美/PF.王子/C.サクラ
 
今日はポイントガードは1・3ピリオドで早苗、2・4ピリオドで朋美を使おうという計画である。
 
対するリトアニアのスターターはこのようである。
 
PG.メイルティーテ/SF.シェイト/PF.ランカイテ/PF.ソロカイテ/C.ジェーマンタウスカイテ
 
恐らく向こうのベストメンバーと思われる。
 
ティップオフはジェーマンタウスカイテとサクラで争うが、ジェーマンタウスカイテが勝ち、メイルティーテがドリブルで攻め上がってくる。早苗がその前に回り込んで対峙する。
 
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王子はランカイテに付き、玲央美がソロカイテ、千里がシェイトに付く。サクラもティップオフの後、そのままジェーマンタウスカイテに付いた。
 
早苗がスティールに行くが、それをかわして中に進入する。玲央美がフォローに来る。それで玲央美が付いていたソロカイテがフリーになったように見えたのでメイルティーテはソロカイテにパスする。
 
ところがソロカイテの所には千里が走り寄っており、パスをカットする。日本側はマークが変わった時のカバーパターンを様々なケースで連携練習しているので、簡単にはフリーのプレイヤーを出さない。
 
それで攻守反転して千里がドリブルで攻め上がる。シェイトが急いでその前に回り込もうとするが、千里は早苗にパスする。早苗はそのまま王子に送る。王子の攻撃をランカイテが防ごうとする。王子は彼女の直前でステップを変え、あたかも抜くかのような動作を見せる。それでシェイトがフォローに走ろうとするが、王子は身体を回転させ、千里にバウンドパスする。
 
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千里はスリーポイントラインの所に居た。
 
「あっ」
とシェイトが声を挙げて千里の所に戻ろうとしたものの、その前に千里は撃っていた。
 
0-3.
 
この試合では日本が先行した。
 

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先取点こそ日本が取ったものの、その後試合はややリトアニアが優勢の状態で進む。
 
リトアニアは予想通りゾーンを敷いた。このゾーンがなかなか強固で王子や玲央美が進入を試みたものの、跳ね返されてしまう感じである。
 
そこで千里や玲央美がスリーを撃って攻めるパターンを多用する。
 
また向こうは攻撃の時にはゆっくりと時間を使い、パス回しをしながら攻撃できる場所を探している雰囲気だったが、日本側がマンツーマンで付いていてそう簡単には振り切られないので、攻めあぐねている感じだった。最終的にはかなり強引に進入してきてシュートを狙うので、結構ファウルがかさんでいた。
 
特に王子は片平コーチに「ランカイテは任せて下さい」と言った手前、彼女を徹底的にマークし、ランカイテはその王子のディフェンスを破るためにこのピリオド2つもファウルを取られた。一方の王子はひとつもファウルになっていない。
 
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相手がゾーンを使うので、日本は向こうのゾーンがきちんとできる前を狙って速攻を繰り出していたのだが、何度かやると、足の速いソロカイテが浅い位置に控えていて、日本の速攻に対応するようになる。
 
しかしそのためにどうしてもソロカイテのファウルも取られる。第1ピリオドだけで彼女も2度ファウルを取られた。
 

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第2ピリオドはソロカイテに代えてベセライテを投入して、彼女に浅い位置で守らせるようにしていた。日本側は速攻の連続で王子がかなり消耗していたので、江美子を投入。また勝負は後半になると見て、千里も渚紗に交代させる。さらにこのピリオドではポイントガードは朋美を使わずに彰恵をその役で投入した。
 
リトアニアは、日本のスリーが思っていた以上の確率でゴールに飛び込んでいるので、こちらのシューターに専任マーカーを付けて、ダイヤモンド1の形のゾーンに切り替えた。
 
しかしマーカーを出すことによって、どうしてもゾーン自体は弱くなる。そこで彰恵は玲央美や江美子と組んでスクリーンを仕掛け、相手の動きによってはピック&ロールなどに切り替えて、たくみに相手のディフェンスを崩して行く。
 
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彰恵は、自らもゴールを奪う能力が高いので、こういうコンビネーションプレイには最適である。
 
それでこのピリオドでは、スリーよりむしろ連携プレイから中に進入して点を取るパターンの方が多くなった。渚紗はむしろ囮役に徹したが、向こうが渚紗にあまり警戒していないと見ると着実にスリーを放り込んで、やはり軽視できないことを認識させる。
 
それで一時期は日本が4点差まで迫ったのだが、その後リトアニアも頑張って突き放し、結局前半は36-28と8点差で終了した。
 
比較的ロースコアの展開である。
 

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ハーフタイムに千里から鈴を預かったトレーナーの森山さんが選手全員の耳元で「おまじない、おまじない」と言って鈴を振っていたが、
 
「これ何か本当に活力が湧いてくるような気がするね」
と数人言っていた。
 
「よし。リトアニアを倒して来よう」
とキャプテンの朋美が言い、円陣を作って
「頑張るぞ!」
と掛け声を掛けて出て行く。
 

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第3ピリオド。
 
リトアニアは優秀なシューターのいる日本相手にゾーンはあまり有効ではないということを悟ったようで、マンツーマン・ディフェンスに切り替えてきた。また、このあたりで点差をもっと付けたいという感じでガードを使わずに、フォワードを4人投入してきた。
 
それでマーカーは攻守ともに
 
ランカイテ−王子、シェイト−千里、ソロカイテ−玲央美、クツカイテ−朋美、アンドリジャウスカイテ−サクラ
 
という組み合わせになった。
 

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ここで(観客にとって)見所となったのがランカイテと王子の所であった。
 
王子はランカイテと第1ピリオドも対峙していて、基本的な実力ではかなわないものの、しつこく彼女をマークして、かなりイライラさせていた。しかしこのピリオドでは彼女もディフェンスの時に王子のマーカーになり、王子からボールを奪うことに燃えていた。
 
実際このピリオドで王子は最初の内2度続けてランカイテからボールを奪われてターンオーバーとなっている。しかし王子も逆にランカイテからボールを奪うことに成功する。
 
朋美はその様子を見て、むしろ積極的に王子の所にボールを供給した。一方のランカイテの方も王子と対決している内に、かなり楽しくなってきた感じであった。ふたりは身長はほとんど同じなのだが、体格的には王子の方がガッシリしている。体重では王子の方が15-16kg重い感じだ。ランカイテはヨーロッパ人にしては割と華奢なフォワードである。
 
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ふたりの対決は女子の試合らしからぬ豪快さがあって、随分観客を沸かせていた。会場全体から
 
「ランカイテ!」
「タカハシ!」
 
と声援が送られ、どちらかがスティールを成功させたりすると、拍手や歓声もあがっていた。
 

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王子とランカイテの対決は最初の5分ではランカイテが7割くらい勝っていたものの、次第に王子の勝率が上昇する。王子は先日から玲央美や千里などに練習相手になってもらい、マッチングの練習をかなりしていたのだが、今日はそういう「テクニック」はあまり使わずに、彼女の本来の持ち味であるパワーとスピードで突破しようとしていた。またランカイテもそういう対決を望んでいたようである。
 
このピリオドの点数としては、フォワード4人を使ったリトアニア側の攻撃が功を奏して22-16と6点差を付け、総得点でも58-44と点差は14点に広がった。もっとも、リトアニアとしては、もっと点差を付けたかった感じである。
 

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第4ピリオド、最初は王子を休ませ、早苗/千里/渚紗/彰恵/華香といったシューターを2人入れたオーダーで出て行く。向こうもランカイテを休ませ、メイルティーテ/シュウナイテ/ベセライテ/ジェーマンタウスカイテ/バイツィウケビツィカイテというオーダーで始めた。おそらくシェイトやランカイテは後半投入するつもりだろう。
 
むろんどちらもマンツーマンである。千里はシュウナイテ、渚紗はベセライテと攻守ともにマッチングした。
 
全体的にスピード型の選手が多いチームなのだが、シュウナイテはスモールフォワード登録なだけあって、瞬発力も充分あり、千里の動きに結構付いてきた。しかし彼女が他の選手の動きを見ようとして一瞬視線を外す瞬間に、千里は気配だけ残して音もなく移動してしまう。それでシュウナイテが再度目の前を見た時には千里は居ないのである。
 
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こういう千里の動きは、今日初めて対決した人には簡単にはフォローできない。それで千里は随分フリーになって、スリーを放り込んだ。
 
最初の3分で千里が3本、渚紗も1本スリーを放り込み、一気に点差が8点まで縮んだ所で、リトアニアのベンチはシュウナイテを下げて、ここまで出番のなかったガードのクルレイビーテを投入した。彼女はどうも監督から「ゲーム全体を見なくていいからムラヤマだけを見てろ」と言われたようである。
 
それでクルレイビーテは一切千里から目を離さなかった。彰恵や華香が中に進入して他の選手が激しく入り乱れていても、彼女はひたすら千里をディナイしようとしていた。
 
そこで千里はクルレイビーテが出てきてから、わざとたくさん走り回った。それも左に動いて急停止のあと反転するとか、逆に反転するかと思わせておいて、再度左に走るとか、複雑な動きをする。彼女は頑張ってそれに付いてきていたが・・・・・
 
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3分もすると相手は息切れしてくる。
 
シャトルランに近いことをこれだけの時間、ひたすらやっていれば体力を激しく消耗する。千里はスタミナが物凄いので、これに耐えられるのだが、相手はとても付いてこられないので、やがて次にどちらに行くかを山勘で判断しようとしていたが、それが当たる訳が無い。急停止の後、更に同じ方向にダッシュなどとやった時に置いてけぼりになる。
 
そこに早苗から矢のようなボールが来る。ボールをもらったら即撃つ。クルレイビーテはブロックする位置までたどり着けない。
 
これを2度やって、とうとう点差が4点まで縮んだところで、リトアニアはここまでかと見て、とうとうシェイトを投入してきた。あわせてランカイテ・ソロカイテも入れてくる。日本も渚紗と彰恵を下げて、玲央美と王子を投入した。
 
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ランカイテが笑顔で王子に手を振る。王子もランカイテに笑顔で手を振る。
 
ランカイテは睨み合ったりしたらテクニカルファウルを取られるのが分かっているので、好敵手に対して笑顔を送るのである。王子もこの方法はいいですねと後で言っていた。
 
「睨み合うのが男の子流なら、笑顔が女の子流ですよね〜」
と王子は言っていた。
「キーミンは女の子なんだっけ?」
「キーミンは男の子だと思っていた」
「ちんちん取られちゃったから」
 

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再び王子とランカイテの対決が行われ、これに観客が沸く。一方で千里はシェイトと、玲央美はソロカイテと対決していた。
 
シェイトは前半にも千里とやっていて、千里の動きの「ロジック」を推測していたようであった。こちらの次の動きを予測して、できるだけ無駄のない守りで大量の消耗を押さえながら千里をフォローしていた。クルレイビーテの山勘よりは随分的中率が高い。
 
それで千里は敢えて最初何度か相手の予想通りの動きをしてみせる。それで向こうは千里封じに自信を持った雰囲気もあった。
 
しかし突然ロジックを変える!
 
それでシェイトとの距離を取ってスリーを撃つ。シェイトが「あれ?」という顔をしている。
 
この後、千里はこれまで使っていたロジックを使うかと思えば別のロジックを使ったりして、シェイトを混乱に陥れる。やがて彼女は、推測は当てにならないと判断したようで、その後は目に見える動きだけを頼りに千里に対抗してきたが、単純な瞬発力では千里にやや及ばない感じであった。
 
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それで第4ピリオドの後半でも千里のスリーが炸裂したし、玲央美もソロカイテを圧倒していた。
 
そして残り1:10の所で日本はとうとう70-70の同点に追いついた。
 

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