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■女子中学生・進路は南(1)

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8月15日(月).
 
東京付近の16の野球場を使って全日本中学生硬式野球選手権大会が開幕した。この大会に北海道代表として出場した苫小牧のK中は、1回戦を女子のピッチャーが投げて試合途中から東京のメディアが取材に来るなどして注目された。
 
チームは翌日の2回戦を別のピッチャーが投げて敗れ、BEST16で終わったものの、彼女の活躍が中学硬式野球における女子選手解禁への議論のきっかけとなった。
 
この時は北海道予選で他校の女子ピッチャー(むろん司のこと)とも投げ合ったことが紹介され、司がこの道大会で無失点だったことも紹介される。実際に司がファストボールとチェンジアップの巧みな組み合わせで男子のバッターを次々と打ち取るビデオも紹介される。すると中学野球ならまだ男女の体力差が少ないので元々女子でもピッチャーとかなら行けるのかもと言われた。
 
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(内野手はランナーとクロスプレイになった時の肉体接触の問題がある)
 

そして・・・・浜崎君はもう今更男に戻ることは出来なくなった!!
 
実際彼はブラジャーやショーツを着けてスカートを穿いて出歩くことに味をしめ、すっかり女の子ライフにハマってしまった。親は呆れていたものの、2学期から(自分の)セーラー服で通学し、完全に女子中学生になってしまった。
 
浜崎君には生理が来たらしいという噂もあったが、きっと根も葉もない噂だろう。
 
でも司同様、男子野球部員からの告白ラッシュに閉口した!
 
(ほんとに女子野球に来たりして。彼はきっと札幌SY高校のライバルである苫小牧KZ高校に行くかも?もし女子として認められたら!?)
 
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8月16日(火).
 
この日、産婦人科で診察を受けた義浜ハイジは
「おめでとうございます。妊娠しています」
と言われた。
 
ハイジは最終月経を7月6日と申告したので、現在妊娠2ヶ月となり、出産予定日は4月12日になる。5ヶ月目の戌日は、10月29日・11月10日・11月22日である。
 
本当はこれは7月20日にハイジ自身の月経周期にあわせて、ハイジの冷凍精液と、佐藤小登愛(2003.12.26死去)の卵子を受精させ、数日後にハイジの子宮に移植したものであり、ハイジは実は自分を遺伝子的な父親とする子供を妊娠したことになる。
 
なお、田中音香は代理母の報酬として2000万円もらったが、ハイジは何ももらってない!!
 
ハイジが出産したら、次は裕恵に妊娠させるのがきーちゃんの計画である。
 
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(同時妊娠すると妊婦のお世話ができないので交替で妊娠させることにした)
 

ハイジは現在主として夜間に、人工栽培きのこの監視をする仕事をしている。雇い主は
「妊娠したのなら昼間のシフトに切り替えようか」
と言ったか
「私、もう10年以上、夜間の仕事をしてます。だから昼間寝て夜起きてるほうが調子いいんです」
と言い、そのまま夜間のシフトにしてもらうことにした。
 
労働法規では“妊婦が要求したら”使用者は妊婦に深夜労働をさせてはならない(労働基準法・第六十六条の3)ことになっているが、妊婦本人がしたいと言ってるなら全然問題無い。
 
ただし出産予定日の3ヶ月前の1月12日から半年間を産休(*1)にすることにした。
 
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(*1) 労働基準法で定められている産休は予定日の6週間前から、出産日の8週間後までだがH新鮮産業は、予定日の3ヶ月前から、出産日の3ヶ月後までとしている。産休の間は給与は支払われないが、健康保険等から、給与の5-7割程度の給付金が受け取れる。但しH新鮮産業ではシングルマザーおよび配偶者の収入が低い場合には産休中も平均給与と同じ額を支給している。むろんハイジはこれに該当しない。
 
ハイジと裕恵はどちらが夫でどちらが妻か分かりにくいが、法的にはハイジが妻で裕恵が夫である。(実質的にはハイジが夫の役割をしているが)
 

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千里や公世は全国大会を前に旭川の貴子の家で合宿をしていた。
 
8月16日(火).
 
明け方、公世はまた夢を見ていた。
 
母が出て来て公世に言う。
「あんた2学期からはちゃんと女子制服で学校に行こうね」
「嫌だよぉ」
「もう男物は使わないだろうから全部処分しておくね」
「やめてー」
 
姉が出て来て公世に言う。
「あんたちんちんは要らないよね。だから手術して取ってもらおう」
「ちんちん要るよぉ、手術なんてしないよぉ」
「だってあんた女の子なのに、ちんちん付いてちゃまずいよ。病院予約しておくね」
「予約なんてやめてー」
 
場面が変わる。公世はなぜか裸で森を歩いていた。そしたらちんちんがお股から抜け落ちちゃった!「あ、困る。ちんちん無くなっちゃったら、僕女の子にならないといけないじゃん」と思って拾おうするが、ちんちんは転がって泉の中に落ちちゃった。
 
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ちんちん、ころりん、ぽっちゃーん!
 
泉の中から女神様が出て来た。なんか女神様の顔が千里ちゃんに似てる。
 
「あなたが落としたのは、この汚い男のちんちんですか?それともこのきれいな女のちんちんですか?」
 
「男のちんちんです!」
 
「あなたは正直者ですね。ではあなたにはご褒美にこのきれいな女のちんちんをあげましょう」
 
「え〜〜!?そんなの困るー!」
と思った所で目が覚めた。
 

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公世は何だか嫌な予感がして、そっとお股を触ってみる。
 
案の定。
 
やだぁ!男の子に戻してよぉ!
 

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その日の朝御飯の席で、公世がお腹に手を当てていたら千里ちゃんから訊かれた。
 
「どうかしたの?」
と千里が訊く。
「なんか昨日あたりからお腹が痛くて。昨日はそれほどでも無かったんだけど今日はかなり痛い感じ。寝冷えでもしたかなあ。大会前なのに」
 
「どの辺りが痛いの?」
「このあたり・・・」
「・・・・・」
 
千里も沙苗も腕を組む。
「それPMSだと思う」
と沙苗が言う。
 
「PMS?何かの病気?」
「Pre-Menstrual Syndrome, 生理前症候群だよ」
「何だっけ?」
「つまり生理が近いということ」
「うっそー!?」
 
「今日かなり痛いというなら、今日明日中にも生理は来ると思う。ナプキン付けておいたほうがいい」
「そんなあ」
「トイレ行って付けてきなよ」
「ナプキンなんて持ってない」
「女の子なら、ちゃんと持ってなきゃだめじゃん。私の貸してあげるよ」
と言って千里は自分のバッグからナプキンの袋を取り出すと、5包ほど取り出して公世にあげた。
 
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「すぐ付けたほうがいい」
「分かった」
 
「あ、公世ちゃん、これ貸してあげる」
と言って沙苗が何か渡す。
 
「何だっけ?」
「生理用ショーツ。剣道は動きが激しいから、これ付けてないと袴を汚すよ」
「分かった。でも沙苗ちゃんはいいの?」
「私は生理終わった所だから」
「ああ」
 
この様子を眺めていた竹田君は
「やはり工藤さん女の子なんだ?生理が来るんだもん」
と思った。
 

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公世は千里にもらったナプキンと沙苗が貸してくれた生理用ショーツを持ち、トイレに入った。
 
「ほんとに生理来るのかなあ。やだなあ」
と思う。
 
公世は溜息を付くとナプキンの包みを開け、シールを剥がして生理用ショーツに貼り付けた。羽根部分を二重になっているクロッチの間に織り込む(←ちゃんと使い方分かってるじゃん)。
 
それで今まで穿いていたショーツを脱いで生理用ショーツを穿いた。そして袴を穿いた。
 

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公世は午前中の基礎練習をしていた時、急に何か出て来た感覚があり「え?」と思った。それで「ちょっとごめん」と言って練習を中断し、トイレに入る。袴を脱いでチェックすると生理用ショーツに付けていたナプキンが真っ赤になっていた。
 
やはり生理来たんだ?えーん。生理までくるなんて、ぼくもう完全な女の子になっちゃったみたいじゃん!
 
(初潮おめでとう!!)
 
ちょっと落ち込むが、気を取り直す。ナプキンを交換して、また袴を穿いた。沙苗が心配している。
「来た?」
「うん」
「もしかして生理になったの初めて?」
「うん」
「だったら午前中の練習は休んだ方がいい」
「そうかな」
 
千里が自分の稽古の手を休めてこちらに来ると言った。
 
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「弓枝さん、きみちゃんをドラッグストアに連れてって、生理用品を一式買うのに付き合ってあげてくれませんか。この子、生理の知識全然無さそうだし」
「OKOK」
と弓枝は楽しそうである。
 
なんか女性ホルモンまで買わされそうと公世は思った(そんなの処方箋無しでは買えません)。
 

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それでミッキーが車を出して、弓枝と公世をドラッグストアに運んだ。それで公世は姉のアドバイスで、センターイン羽根付きの、多い日用、軽い日用、またパンティライナー、そしてサニタリーショーツも5枚買った。今1日に下着を4回くらい交換しているので、このくらい用意しておかないと、足りないと思われた。また適当なナプキン入れを100円ショップで買った。ナプキンを3枚またはナプキン2枚とパンティライナー2枚を持ち歩けるタイプである。
 
しかし姉はとっても楽しそうだ!
「とうとう完全な女の子になれたね。おめでとう。妹ができて嬉しい」
「きっと何かの間違いだよ。そのうち男に戻るよ」
 
「でも今日は夕方のジョギングは休みなさい」
「そうしようかな」
 
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公世は留萌での海岸ジョギングを司や由紀が生理の間は休んでいたのを思い出しとうとう自分も生理が来てしまったとショックだった。しかし姉は言った。
 
「今生理が来たら19日くらいまでには収まるから、20日の本番は卵胞期で迎えられるよ」
「ランボーきって何だっけ?」
 
「女の身体は生理があった14日後に排卵が起きて、排卵の14日後に生理が起きる。生理から排卵までを卵胞期、排卵から生理までを黄体期と言うんだよ」
「へー」
 
「そして女子選手は一般に卵胞期のほうが調子が良くて試合で良い成績を出せる。おとなの選手だとピル使って試合が生理の後になるように調整する人もいる。きみちゃんも卵胞期なら体調が良くて優勝できるかもよ」
 
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「へー!」
調子の良い時期に個人戦の日がぶつかるというのは良いことだと公世は思った。でもピルって何だろう?
 

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公世はその日午前中の稽古は休んだが、午後からは軽めの稽古をした。ふだん15分稽古して5分休むのを、その日は10分稽古して10分休むようにした。
 
越智さんが
「どうかしたの?」
と訊くと沙苗が
「生理の初日なので軽めにしてます」
と答える。
 
「あ、それなら問題無い。逆に今生理が来たのなら、本番前にちょうど終わってるじゃん」
「そうなんですよ。だから本番がうまい具合に卵胞期になるんですよね」
「凄く調子のいい状態で本番を迎えられるね」
 
と越智さんも笑顔だった。公世はこの日はジョギングを休んだが、翌日の朝は他の人と同じ3kmのジョギングをしてから午前中の稽古をした。
 

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8月17日(水).
 
杉村古広はこの日18歳になったので、黒沢柚美との婚姻届けを出し、あわせて既に胎児認知済みで3月に生まれていた黒沢新一の入籍届けを出した。これで父母子の戸籍がひとつにまとまる。
 
柚美は子育てしながらも卒論を何とかまとめつつあり、来春大学を卒業できる見込みである。
 
古広はこの結婚と子供ができたことが学校にバレなければ!来春高校を卒業できる見込みである。
 

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8月17日(水).
 
千里Rたちは全国中学校剣道大会の開催地へ移動した。午前中まで越智さんに指導してもらい、お昼頃上がる。全員シャワーを浴び、昼食にはジンギスカンを食べる。お肉を張り切って2kg用意していたのにそれが全部無くなって、越智さんが呆れていた。
 
荷物をまとめ、旭川空港に向かう。ここで顧問の先生たちと合流する。S中・R中の校長、そして生徒代表で生徒会長、応援団長(河合)と旗手(留実子)が来てくれている。彼らに激励されて千里たちは旅立った。
 
三重に行く人:千里・公世・清香(選手)、沙苗・由紀・詩歌(練習相手)、岩永・鶴野・安藤(顧問)
 
弓枝はS中の校長の車に同乗させてもらって留萌に戻る。
 
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千里たちの行程
 
旭川空港16:15(ANA326) 18:10中部国際空港18:50(名鉄快特)19:18名鉄名古屋/近鉄名古屋19:45(特急)21:04伊勢市
 
晩御飯は、セントレア空港でお弁当を買い、名古屋までの特急の中で食べた。でも名駅でまたおやつを買って大いに食べた。
 
伊勢市駅からは、先生たちがひとつのタクシーで引率者用宿舎へ、清香と詩歌がひとつのタクシーでR中に用意された旅館へ、そしてS中の4人がひとつのタクシーでS中に用意されている宿舎に向かった。
 
今回の大会の会場は三重県伊勢市の県営サンアリーナ。景勝地・二見ヶ浦の近くである。鉄道(近鉄・JR)の伊勢市駅/宇治山田駅からは送迎バスで30分ほど掛かる。日程はこのようになっている。
 
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17(水)女子団体戦練習
18(木)女子団体戦/男子団体戦練習
19(金)男子団体戦/男女個人戦練習
20(土)男女個人戦
 
女子の団体戦に出る人以外の大半は17日に来て20日の個人戦まで見て帰る。滞在費用などの関係でそれより遅く来たり、早く帰る人もある。
 

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女子中学生・進路は南(1)

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