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■女子中学生・進路は南(12)

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千里は羽幌町総合体育館に来ると、数子たちがいるのを見付けた。
 
「おはようー。なんかメンバーが足りなくなったんだって?」
「そうなんだよ。千里がいなくなっちゃったから、千里、代理を頼む」
「私が居なくなったんだ!」
「そうなんだよ」
「私ってよく消えるんだよね」
などと千里Rは言っている。他のメンバーは「どうなってんだ?」と思ってる。
 
しかしそれでこの日は午前中の試合を千里T、午後の決勝には千里Rが参加したのである。ちょうど、1年半前の新人戦で、午前中の2試合にRが出て、午後の試合にはYが出たのと同じような感じになった。
 
(千里TはYに近いので、あの時と逆パターンになったようなもの)
 

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そして14:00 R中との決勝戦が始まる。
 
R中は千里・留実子が入ったチームへの対抗策として、この2人に専用マーカーを付けるトライアングル2のゾーン・ディフェンスを組んだ。
 
しかしそんな対策は全く意味をなさなかった。
 
千里がどんどんマークを外してスリーを放り込むし、留実子はどんどんブロックし、リバウンドを支配し、どんどんダンクを決める
 
結局、これが1年間のブランクのある千里Tが出たのであれば、R中に封じられていたかも知れないが、身体能力の高いRが出たので、R中の誰も千里を止めることができなかった。そして千里が抑えられないと、留実子だけ封じてもどうにもならない。
 
それでついにR中は後半、千里にダブルチームを掛けた。しかしそれがかえって中途半端になり、留実子にもどんどんやられてしまった。それに“この”千里は2人でマークしたくらいでは全然停めることができなかった。
 
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かくしてS中はダブルスコアでR中に勝利した。
 
これでS中は女子バスケ部創設以来の留萌地区優勝を成し遂げ、北北海道大会に進出した。
 

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一方男子の方であるが、こちらも開始前にトラブった。
 
鞠古君はまだバストが大きいため
「君女子じゃないの?」
と咎められる。しかし伊藤先生が
 
「鞠古は病気治療のため女性ホルモンの投与を受けて身体が女性化していますが、医学的には男子です」
 
と言って、本人にバスケ協会の会員証と生徒手帳、それに医師の治療証明書を提示したことから男子の部への出場を認められた。
 
彼は特に性別検査は要求されなかった。
 
男子の方は今回組合せがよかった。1回戦は5人ギリギリしかいないチームで楽勝できたし準決勝はこちらと似た実力のチームだったが、キャプテンが怪我で出場できなかった(アシスタントコーチとしてベンチ入りしていた)。
 
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それでここに何とか辛勝して決勝戦に進出することができた。
 
さすがに決勝の相手のR中には負けるだろうと思っていたのだが、開始早々R中のセンターが反則で一発退場をくらう。それで向こうが大きく戦力ダウンというより混乱しているところで、こちらは菱田君・鞠古君の大活躍でいい勝負になったのである。
 
1年生の菱田君は7月に転入して加わったものだが185cmの長身を活かしてリバウンドを支配した。更に彼はスリーも上手かった。つまり近くからでも遠くからでも点が取れる。また鞠古君は春に女性ホルモンの投与が終了し、これまでの女性ホルモン優位の状態からホルモンニュートラルの状態に“性変”したことで筋力が少し戻って来ていた。
 
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そして最後はシーソーゲームとなったが田代君のブザービーターとなるスリーで、1点差で勝利を収めた。
 
これでS中バスケット部は男女アベックで北北海道大会に進出した。
 

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しかし千里Rは、試合の後「疲れたぁ」と言って消えてしまった。表彰式にも居なかったが、数子はいいことにした。
 
荷物については、コリンがぶつぶつ言いながら千里の荷物をまとめ、Gに転送してもらって留萌に戻った。
 

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かくして勾陳はこの日男性器を返してもらえず
「千里の嘘つきぃ。早く返してくれないとグレちゃうから」
などと言っていた。
 
「でも女の子のおしっこの仕方も悪くないわね」
と言っていたとか!?(なぜ女言葉?)
 
ちなみに勾陳はペニスが無くても女子トイレの使用を太陰から禁止された。
 
「あんたが女子トイレに入ったら射殺してよいと千里さんから許可を得てるから」
と言われる。それで勾陳は
 
「わたし今日は女の子と同じなのに」
などと言いながら男子トイレの個室を使っていた。
 

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一応彼は翌朝千里に「ごめんごめん」と言ってちゃんと男性器を戻してもらった。
 
「でもこうちゃんって元々女装好きだよね。去年もセーラー服着てたし」
「私、昔は女童(めのわらわ)として主人に仕えていたし」
「そうなんだ?」
「でみハマると性転換したくなるから我慢してます」
「ああ、1000年くらい若かったら可愛いメスの龍になれたかもね」
「あまり唆さないでください」
「でもちんちん別に要らないんでしょ?」
「無いと困ります。セックスできない」
「あるいはペニスは取らないでヴァギナだけ付けてあげようか?男女どちらともセックス出来る」
 
「・・・・・・」
 
こいつはきっと30年後には女の龍として私に仕えることになるな、と千里は思った。その前に青龍を可愛い女の子に性転換してあげないといけないけど。あの子はきっと美少女になる。
 
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勾陳も性転換すれば多分「こんなおばちゃんもいるかも」程度にはなるかも。何と言っても無害化するし!
 

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さて、この日Q神社でご奉仕していた千里Sはごく普通にお勤めをしていた。一緒にバイトをしていた映子は午後になって、ふと千里の腕時計に気がついた。
 
あれ〜!?千里ちゃん、腕時計ベルトが青だ。朝は確か黄色地に青の星模様だった気がするのに、ベルトを交換したのかな?
 
しかし夕方帰る時にふと見たら、千里はまた星模様の腕時計をしていた。
 
もしかして2種類の腕時計を交換しながら使ってるのだろうか??と疑問を感じた。
 

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その日(9/4 Sun)、P神社の翻田宮司は家祓いを頼まれており、
「七尾さん、明日ドライバーお願い」
「村山さん、明日家祓いに行くのに付き合って」
と前日2人にお願いしておいた。
 
宮司は正直“うちの”千里ちゃんと、霊能者の3代目の共演(競演?)を見てみたい気分だったのである。
 
ここで翻田宮司の依頼を聞いたのは千里Yに擬態した星子である。星子は元々千里Yが使用していた龍笛 No.222 (花姫) を使用している。
 
クライアントさんとの事前の話では宮司たちは、15時に現地に入ることになっており、そのためこちらを14時に出ることにしていた。
 

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ところが・・・その日の朝9時になってクライアントさんから電話が掛かってくる。
 
「実は夕方から急用ができて札幌に出ないといけなくなって、大変申し訳ないのですが、お祓いの時刻を例えば13時からとかに早められませんか」
 
「ちょっと確認してお電話します」
 
宮司はまず善美に電話する。彼女は今日はドライバーをするということで13時頃P神社に来ることになっていた。
 
「あ、七尾さん。今日のお祓いなんだけど、2時間早めてもいい?こちらを12時に出る」
「はい、いいですよ。じゃ11時頃神社に入れるようにします」
「すまないね」
 
続いて千里に電話する。千里も家祓いということで、午前中は身体を休めておいて、お昼すぎに出て行くことになっていた。
 
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実際には千里役をする星子は、この時W町の家でG・Vと打ち合わせしていた。宮司が自分の携帯に登録している千里の電話番号というのは千里Yの携帯 (DoCoMo F210i Happy Orange) の番号である。その携帯は河洛邑でYが消えたあと、バッグごとA大神がGに渡してくれて、今星子が持っている。一方元々この携帯にはクローン携帯が作られており、それは今Vが持っている。
 
宮司が電話を掛けた時、星子が持つ携帯とVが持つ携帯が同時に鳴った。2人は一瞬顔を見合わせる。発信者が“翻田常弥”と表示されるのでVは
「星子さん取って」
と言った。それで星子が取ろうとした。
 
が、その前に別の人物が取った。
 

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「はい、村山です」
と“千里Y”は答えた。
 
「あ、千里ちゃん。今日のお祓いなんだけど、2時間早めてもいい?こちらを12時に出る」
「今日何かのお祓いがあるんですか?」
 
は!?
 
「えーっと、今日家祓いに付き合ってと昨日ぼく言ったよね」
 
宮司も少し自信が無くなる。
 
「ああ、家祓いがあるんですね。了解です。きっと私が聞いたのに忘れてるんです。私何でもすぐ忘れるから」
「確かに!」
 
千里ちゃんって昨日言ったことを今日覚えてないというのがほんとによくある!(千里と付き合いのある人全員の認識)
 
「何時に行けばいいですか?」
「じゃ11時頃までにP神社に来てくれる?」
「分かりました!行きます!」
 
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翻田宮司は、千里ちゃんに電話入れてて良かったぁ、完全に忘れられていた、と思った。
 

Q神社から40mほど離れた位置で電話を受けた“千里Y”は黄色い腕時計で時刻を見て
 
「あまりゆっくりもできないな」
と呟いた。コンビニでこんぶおにぎり・あんぱんを買い(霊的な作業の前だからナマグサを避ける)、それから駅前のバス停に行く。羽幌町方面のバスが来たのに乗り、10時過ぎにC町で降りてP神社まで歩く。
 
「お早うございまーす」
と言って社務所に入った。
 
千里YがP神社に来たのは7月18日以来、48日ぶりである。
 
「なんかP神社に来たの久しぶりだなあ」
などと言ってP大神のほうを向いて
「随分長いこと留守にしました。ごめんなさい」
 
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などと言うので、P大神が困惑している。
 
しかしこの手の辻褄の合わない発言をするのは千里の常なので、何か頭のネジが200-300本!抜けてるのだろうと思う。
 

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司令室はパニックであった。
 
「なぜ突然Yが現れるの?」
「なんで黄色い携帯がもう1台あるの?」
 
と混乱の極致である。
 
現在J町のQ神社の所にはB(ブルー)のランプだけが点いており、電話を受けた千里はY(イエロー)のランプが点いていて、その黄色いランプの千里がバスで移動してP神社に移動した。つまりS=Bw+Y1が、BwとY1に分離して別行動していると推定される。
 
「でも考えてみたら去年も似たことがあった」
「うん。BsとYが重なっていた時、Yに電話が掛かって来たら40mほど離れた所にYが出現して電話を取った」
 
「釧路の出来事も似てるよ」
「うん。Bが出現していた時にRに電話が掛かって来たらBがRに切り替わって電話を取った」
 
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「千里って自分への電話で起動するのかも」
「あり得る。だからYが必要な時は電話すればいいんだよ」
「でもなんでYも電話持ってたの?」
とVは疑問を呈する。
 
Gは考えた。
 
「私がA大神様に『Yの荷物を下さい』と言った時、よく考えてみたら既にS=Bw+Y1が出現していた。だからA大神様が取ってくださったのは休眠中だったY2の荷物だよ。だからY1の荷物は本人が持っていた」
 
「え〜!?」
「コリンを使おう」
 
Gはコリン(鈿女神社の隣の、小春と共同の家に住んでいる)に電話した。
 
「今千里YがP神社に居るからバッグの中の荷物を整理するように言って。必要ならいくつかの荷物はコリンが持ってあげて」
「なんでYが居るの?」
「まだ良く分からないけど頼む」
「了解」
 
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それでコリンはP神社に“飛んで”急行する。途中の道にヒグマが寝転がっていてこちらを見たが、ヒグマは飛べないので!恨めしそうに見ていた。
 
神社に着くと人間体に変身して社務所に入る。“黄色い腕時計”をしている千里に声をかける。
 
「千里、バッグの中身を少し整理したら」
「あ、そういえばなんか適当に放り込んでるなあ」
 
と言って千里Yはいったんバッグの中身を畳の上にぶちまける。
 
「おにぎり。ひどい。これ賞味期限が2005.7.29じゃん」
「捨てよう」
「そだね」
と言ってゴミ箱に放り込む。
 
「龍笛。これ今日のお祓いにもってかなきゃ。きゃー。光辞の写しがあるじゃん。コリン、これコピーを取って原本は例の所へ、コピーも悧の所へ」
「了解」
 
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(この時、幸いにも高木姉妹は居なかった)
 
この部分の光辞は既に写しの原本がP神社の物置、コピーがP神社の桐箪笥に収められている。この新たな写しは追ってGの指示により鈿女神社の地下倉庫に収められた。
 
「あとはおやつのホワイトロリータと携帯、ノートと筆記具、生理用品、メイクセット」
 
メイクセットといっても中学生なので、入っているのは手鏡・ブラシ・眉毛切り・リップクリームに化粧水・コットン緯度である。
 
「携帯は充電大丈夫?」
「わっ。10%しかない。充電しよう」
と言って充電器をつないでいる。
 
ホワイトロリータは寄ってきた小学生たちが食べちゃった!
 
 
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