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千里GとVはこの4人が統合された千里 Bw+Y1+Bs+Y2 に暫定的?な名前を付けることにした。
「4人が結合したから union で千里U」
(実はあと1ステップで“第二次統合千里”になる:それが起きるのは1月)
「USA FlagのUだったりして」
「名前はUで始まる名前で、Ursula アーシュラかな。昔。アーシュラ・アンドレス(*18) という女優さんがいた」
「アーシュラなら、あしゅら男爵(*19)だったりして」
「まあ男と女が合体してるよね」
どうもそれでもいいようである。
(*18) アーシュラ・アンドレス (Ursula Andres) は「007 Dr.No」(1962)に出演した女優さん。一般に“ボンドガール第1号”と言われる。“アーシュラ”は英語読みだが、最近日本ではドイツ語式に“ウルスラ”と書かれることが多い。映画「ドクター・ノー」の中では、(当時としては)大胆な水着姿を披露しており、当時の日本では“アンドレス”が Un-dress (服を着てない)に通じるとして、セックス・シンボル的な扱いを受けた。
後にイオン・プロ以外の制作者が作ったパロディ映画『カジノ・ロワイヤル』で女007役を演じている。
(*19) “あしゅら男爵”は『マジンガーZ』に出てくる敵キャラで、顔・身体の右半分が女で左半分が男。ちなみにインドのアルダナーリーシュヴァラは右が男で左が女で、あしゅら男爵と左右が逆である。
あしゅら男爵がトイレはどちらに入るのかは謎である!
性別曖昧なキャラということで『ガッチャマン』のベルクカッツェ(山猫)と混同している人がたまにある。
そして10月9日。
千里Uが数子たちと一緒に留萌に戻ると、なんだか父と母が言い争いをしている。
千里は奥の部屋で漫画を読んでいる玲羅の所に寄って小さな声で訊いた。
「また喧嘩したの?」
両親の喧嘩は日常茶飯事である。
「どうもお父ちゃんの船、廃船になるみたい」
と玲羅は言う。
「ああ、とうとうか」
と千里は言った。
父の船が限界なのは千里や玲羅も認識していた。そこに今回の事故である。もはや修理より廃船の道を選んだのだろう。
やがて父は家を飛び出していってしまう。千里が台所に行ってあり合わせの材料でチャーハンを作っていたら、母も立ってきて「ごめんね」と言ってお味噌汁を作ってくれた。
それで母と千里(U)・玲羅の3人で夕飯を食べる。
「お父ちゃんの船が廃船になるんだよ」
と母は言った。
「まあ時間の問題だとは思ってた」
と千里は言う。玲羅も頷いている。
「それで清算するけど、実は銀行・漁協・更には消費者金融とかからまでかなりの借金がある。ここ1年くらいはほとんど利益が出てないのに漁船員さんたちには給料を払い続けていた」
「1年前に廃業すべきだったね」
と千里は言う。
「でもその内漁獲高が回復すればと思ってたんだろうね」
と母は言う。
「それでうちの父ちゃんも個人名義で500万借りてるらしい」
「自己破産推奨」
と千里は言った。
「でも破産すると、借金の一部に弾児さんが保証人になってくれているものや私が保証人になっているものもある」
「わぁ」
「私が巻き添えくらうのはまだいいけど、弾児さんには迷惑掛けられない」
「返すしかないじゃん」
「私が保証人になってる分は私の印鑑、勝手に押してたらしい」
「ああ。それで喧嘩になったのか」
「私だって怒るよ」
と実際母はまだ怒っているようだ。
「千里、だからうちからは高校の授業料とか部活の費用とか全然支援できないけど、あんた姫路の高校でひとりで授業料払える?」
と母は訊いた。
「姫路?何それ?」
と“この”千里は言った。
母は困惑している。
「あんた姫路の高校に・・・行くんだよね?」
「え〜!?唐突に姫路と言われても、私は旭川のA高校狙い」
と千里は答える。
玲羅は「ああ、姫路に行くのはたぶん“赤”のお姉ちゃんで、このお姉ちゃんは進路先まだ未定だなと思った。しかし黄色と青の星条旗?のお姉ちゃんは初めて見た。また新顔だろうか」などと思っている。
母はまだ困惑しているが言った。
「あんた旭川の高校行くなら、自分で学費稼ぎながら通うことを考えて。例えばA高校やM高校の定時制とか」
「う・・・・分かった。考えてみる」
と千里はさすがにショックなようで、悩むようにして答えた。
母も玲羅も、千里は実際は自分の学費くらい楽に稼げるだろうと思っている。
(“この”千里も雨宮三森との出会いのお陰で高校3年間に7-8000万円程度の収入を得ることになる)
10月11日(火).
衆議院に再提出された郵政民営化法案は賛成71%の圧倒的多数で可決され、参議院に送られた。
さて、千里Sと千里Tが合体して千里Uができた後、この“合体千里”がどのような行動を取るかGとVは見守っていたのだが、こういう行動を取った。
・夜は村山家で過ごす(千里Sが表面に出ている感じ)。
・学校では数学と理科だけを受ける(千里Tが表面に出ている感じ)
・土日祝にはQ神社でご奉仕する(千里Sか?)
どうも千里Sと千里Tが交替で表面に出ているっぽい。
結果的に、旧早川ラボの管理人室(Tが夜を過ごしていた)も、旧天野道場の場所に置いたユニットハウス(Sが日中そこで過ごしていた)も使わない。千里Gは取り敢えず、両方に置かれたパソコンと京ぽんを回収しておいた。
GはRに電話して、話が面倒になるのでしばらく実家には戻らないでと言った。
「こちらは清香ちゃんに毎日餌をあげないといけないから、その方が都合がいい」
「まるでペットだね」
「よく食べるペットだよ」
「9日は代替したけど、ほんとによく食べるね!」
「でも消費してるんだよ。練習量が凄いもん」
「さすが日本一だね。姫路の高校決まったら連絡してよ」
「OKOK」
10月11日(火).
千里と清香は入試代わりに提出するように言われていた小論文を書き上げ、コリンに頼んで(司令室の)プリンターで印刷してもらい、姫路H高校宛てに郵送した。
実際には清香はこの手の作文が全く駄目なので、千里が彼女の分も代筆した。プリンタなのでどうせ筆跡は分からない。最後の署名だけ本人に書かせた。
安藤先生は「私が代筆しないといけないかと思ってた。村山さんありがとう」と言っていた!
10月14日(金).
参議院で郵政民営化法案は賛成134・反対100で可決され、成立した。
この結果、郵政公社は、次の6つの組織に分割されることになった。
日本郵政株式会社(持ち株会社)
郵便局株式会社(郵便局の運営)
郵便事業株式会社(郵便事業)
株式会社ゆうちょ銀行(貯金事業)
株式会社かんぽ生命保険(生命保険)
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独立行政法人・郵便貯金簡易生命保険管理機構(現在の貯金と保険の契約を承継)
後の2012年に郵便局株式会社が郵便事業株式会社を吸収合併し、日本郵便株式会社となっている。それまでに郵便事業株式会社は1000億円を超える大赤字を出して経営感覚や社員の気質を批判された。
武矢の弟・弾児は、郵便局株式会社の所属となり、郵便局を運営するだけの仕事となって「仕事が減った。給料安くなった」とぼやいていた。奧さんの光江さんがパートに出たりして大変だったようである。(当時子供は小6と小2)
弾児の収入が減ったことから、天子への仕送りも
「ごめん。今きつくて送れない」
というので止まってしまったが、千里Vは武矢の名前で毎月充分な送金をしていた。
弾児一家が札幌に転勤して天子のアパートを離れたとき、最初の約束では、弾児と武矢が毎月5万ずつ天子に送金することにしていた。天子は息子たちの送金と年金で暮らす。弾児は毎月送金してくれていたが、武矢は最初1度送金しただけでその後送っていない。しかし千里が武矢の名前で送金し続けた。
弾児の送金が止まってしまった後は、千里は天子に10万送るようにした。天子も実際に送金しているのが武矢ではなく千里のようだというのは感じていたが、その送金が無いと年金だけでは厳しいので、中高生の孫に申し訳無いとは思ったが、ありがたく受け取っていた。
10月14日(金).
千里と清香が(暫定的に?)住んでいる(新)早川ラボに姫路H高校からお手紙が届いた。千里と清香の推薦入試合格のお知らせであった。
「やったね。これで進学先が確定したね」
「千里と同じ高校に行ったら毎日対戦だな」
「もちろん」
千里は、鶴野先生に電話して合格の通知が来たことを連絡した。
「良かったね。おめでとう」
と先生は言ってくれた。
ちなみに千里のH高校進学に関する話は、主として鶴野先生・岩永先生と教頭先生で処理されており、担任の吉永先生はあまり関わっていない。
RはGにも連絡して合格を伝えた。
「おめでとう。どこに住むの?」
「まだ何にも考えてないんだよね」
GとしてはRが住む所から2km程度離れた場所に司令室を造りたい。実は先日一度姫路に行って下調べをしていたのだが、この話は冗長になるので割愛する。
ただ姫路という町は、海岸近くの市街地を除くと、何本もの険しい谷で構成された町であると把握していた。だから鉄鋼の町なのに豊かな自然も持っている。その深い自然と豊かな名水が名酒や美味しい素麺などを作るのだろう。
千里Rが通うH高校はその市街地の北端に位置している。そこより北は谷間に小さな町が散在している。越智さんの奧さんの実家の素麺製作所も、清香の父が継ぐことになった酒蔵も別の谷に存在している。
10月15-16日(土日).
この土日は北海道では七五三の集中日である。北海道では11月15日はもう真冬なので、だいたい10月15日に七五三を行う。普段閑散としているP神社もこの日はひじょうに賑わう。子供を連れて昇殿祈祷する人も多いし、御守り、千歳飴、縁起物などがたくさん売れる、おみくじの客も多い。
ここのおみくじは巫女さんが筒を振って出て来た竹の棒に書かれた数字の御籤を渡す、本格的なものなのでこれを引くためにわざわざ遠くから来る人もいる。おみくじ係は通常は沙苗や世那、不在の時は、小学生の仁美あたりが担当している。でもわざわざ遠方から来たと思われる客には、妊娠中を押して出て来た梨花がこの週末は担当していた。
「妊娠中の巫女さんのおみくじは“当たり”そう」
と人気だった。
前日の10月14日(金)から神社はかなり忙しくなっていた。Q神社の方はもっと忙しく、ふだん土日だけ出ている中高生巫女さんたちに、可能なら金曜日も学校が終わってから出て来てという伝達があっていた。
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女子中学生・進路は南(22)