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■女子中学生・進路は南(14)

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善美は西側に勝手口があることに気付いた。千里とアイコンタクト。千里も気付いたようである。
 
「この玄関の方角がよくないんです。御主人も奥様もここからは出入りしないようにして、勝手口を玄関代わりにしたほうがいいですよ」
 
「そうですか!」
「御主人、奧さん、3人のお子さん。全員南は凶方位で西が吉方位なんですよね」
「なんと」
 
夫:1958男 乾
妻:1964女 乾
長男:1992男 艮
次男:1993男 兌
娘♥:1996女なら艮
 
全員東四命!
 
「玄関はお客様専用でもいいかも」
「いっそそうするか」
 
「それから御主人はお仕事、お子さんたちは学校で日中、家におられませんが、奥様も習い事か何かでいいので、できるだけ家に居ないほうがいいです。この手の霊障は、家に居ることの多いご隠居さんや奧さんに真っ先に来るんですよ」
 
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「それでお向かいはお母さん、お隣は奧さんが亡くなったのか」
「私、前から言ってたけどパートに出ていい?」
「じゃその件はあとで」
 
きっと奧さんが仕事に出たいというのを、夫が渋っていたのだろう。
 
最後に千里は言った。
「今日のお祓いで5年くらいだけ守りました。これが限界です。ここにずっと住んでいたら、命がありません。ローン返済が大変なのは分かりますが、命のほうが大切です。どこかアパートでも借りて引っ越したほうがいいです」
 
「分かりました。考えます」
と御主人は言った。
 

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帰りの車の中で運転しながら善美は助手席の千里に“直信”で尋ねた。
 
以下は2人が直信で話した内容である。
 
「千里ちゃん、もしかして見ただけで相手の年齢が分かるの?」
「生年月日・性別・本当の名前が分かりますが、普通の人は見えないみたいですね」
「それはかなり凄い才能だと思う」
「そうなのかなあ」
 
「それと最後に何をしたんです?」
「ああ、やはり善美さんには分かったか」
と千里は言う。
 
「オーバーパスを作っただけだよ」
と千里。
「オーバーパスって?」
 
「東側から西側へ霊たちが流れてくるから、家の上を跨いで流れるように橋を架けた。その橋から漏れて家に入ってくる霊や妖怪も結構あるだろうけど、あれであの家は大河の本流からは外れる」
 
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「凄い」
 
「ただあの橋はせいぜい持って7年だと思う」
「だから5年以内に引っ越せと言ったのか」
 
「でもこのお祓い、10万円しかもらってないんでしょ?」
と善美。
「だから霊能者って、真面目に商売すると儲からないよね」
と千里は言った。
 
「全く全く」
と善美も答えた。
 

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そして帰りの車が羽幌町総合体育館にさしかかった時、善美が“普通の声で”
「あれ?中学のバスケットの大会とかやってるんだ?」
と言った(Vから言えと直信された)。
 
「あ、ほんとだ。千里ちゃん、応援していく?」
「そうだなあ。うちのバスケ部ならきっと決勝まで残ってるだろうし。寄っていこうかな」
 
ということで、ここで千里(Y1)は降りた。そして体育館の玄関に向かう途中で30mルールにより消滅した!
 

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この瞬間、Q神社でご奉仕していた千里(Bw)の腕時計が青いベルトから、黄色地に青の星模様に変化した。それで映子は「また腕時計が変わってる」と思うことになる。
 

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なお千里たちがお祓いした家であるが、千里から引越を勧められたものの、やはり30年ローンを抱えていることから御主人は引越に消極的だった。実際あのお祓いのおかげでポルターガイストの類いはほとんど無くなり、このままここに居てもいいのではと思っているようだった。
 
しかし10月には斜め向かいの家の奧さんがまだ20代なのに急性白血病で亡くなった。それで年末、あの家の奧さんは「私もうここを出る」と宣言して、一番下の娘(?)を連れて家を出て、旭川市内のアパートに引っ越してしまった。上の2人の子供も春までには母親のところに移動した。
 
それで御主人も考え直し、翌年の夏には家を放置して自分も旭川に引越して家族一緒に暮らすようになった。
 
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そして翌年10月の水害であの地帯一帯は鉄砲水にやられ、死者まで出た。一家は
「引っ越してて良かったぁ!」
と言った。
 
そして保険金と義援金でローンは完済され、一家は30年ローンから解放された。
 
御主人はP神社に「無事で済んだのは引っ越せと強く言ってくれたお陰」と言って20万円の寄付をしてくれた。
 

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9月4日(日).
 
この日は留萌市の公営プール“ぷるも”で、ぷるも祭りが行われた。司と雅海は誘い合ってこのイベントに参加。昨年ガトーキングダムで着た可愛い水着を着てお祭りを楽しんだ。このイベントには、恵香や麦美も参加したが
 
「司ちゃんも雅海ちゃんも、すっごい可愛い水着着てる」
と言っていた。
 
「いや、これ去年、友だちにノセられて買った水着」
「ああ、自分ではさすがにこんな可愛い水着買わないよね」
「2人ともノセられやすそうだからなあ」
 
うまく乗せられて女の子になっちゃいました!
 

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9月5日(月).
 
普段の週なら武矢たちの船は出港の日だが、この日は台風14号接近中のため今週は休漁する。
 

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この日村山家に居る千里Sは“ワイシャツにズボン”を穿いて「行ってきまーす」と言って家を出た。津気子がとても変な顔をしていた。
 
玲羅は
 
「なるほどー。このお姉ちゃんは“お兄ちゃん”の方か」
と納得した。それでもこの千里は玲羅が『お姉ちゃん』と呼んであげると嬉しそうにしていた。
 
なおSが家から出てすぐにコリンが車で千里をピックアップし、旧天野道場の所に置かれたユニットハウスに連れていき、千里Sは平日の日中はここで勉強していた。
 
それで玲羅は男子制服を着て家を出たはずの千里が校内では女子制服を着ているので「いったいどうなってんだ?」と思っていた。
 
この千里(S)は「学校に行けば自分は男扱いされるから行きたくない」と思っているようである(多分それが昨年5月にBが消えた理由)。実際Sが男子制服を着るのは村山家に出入りする時だけであり、旧天野道場の家の中ではスカートを穿いている。
 
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9月5日(月).
 
S中では校内のプールで水泳大会で行われた。
 
セナは女子25mに出て平和にブービーだった。もちろん最下位は優美絵である。優美絵はほとんどの区間を歩いて向こう側まで到達した。そしてセナのひとつ上が雅海であった。(雅海は昨年男子25mに出て女子でも最弱級の記録)
 
沙苗は女子100mに出て8人中6位だったが
「手抜きはいかんなあ」
と玖美子に言われていた。
 
司は女子200mに出て、留実子、杏子、玖美子に次ぐ4位である。
「司ちゃん、手抜きしてない?」
「してないよー」
 
ちなみに千里(R)は女子200mの6位で
「手抜きが酷すぎる」
と玖美子からも沙苗からも言われていた。
 
(千里Sは村山家から出掛けるが、学校には来ない。そもそも女子水着姿をみんなに見せるのを恥ずかしがると思う)
 
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潮尾由紀は女子の100mに出ない?と言われたが
「わたし、男子生徒だから」
と可愛いソプラノボイスで答えて男子100mに出た。もちろん女子水着を着る。
 
「ぼく女子水着着てもいいですか?」
と体育の先生に訊いたが
「もちろん。君が男子水着を着たらうちの校長が逮捕されるからくれぐれも男子水着は着ないように」
と言われた。
 
でも2年男子で100mに参加した生徒8人の中で3位だった。やはり毎朝10kmジョギングしているので脚力がものすごく付いているようである。
 
公世は不本意に女子水着を着けたが女子200mに出るよう言われたのを拒否。
「僕は男の子だよ」
と言って男子200mに出場。水泳部の(男子)元キャプテンと争ったが僅差で1位になった。
 
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「でも僕女子水着を着けてた分だけ彼より有利だったと思う」
と言っていた。
 
でも公世については
 
もちろん彼の股間に突起物が無いことをみんなが認識した上で
 
「工藤さん(きみよちゃん)、ますます身体付きが女らしくなってる」
「生理が来たという噂があるよ」
「だから女らしくなったんだ」
「やはり衣替えからはセーラー服着るんじゃない?」
などと言われていた。
 

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9月6日(火).
 
S中では身体測定が行われた。
 
セナと沙苗は前から女子生徒なので、普通に女子と一緒に身体測定を受けた。雅海も以前から女子と一緒に測定されていたので、普通に女子と一緒に測定された。司はここしばらく個別測定されていたのだが、今回から女子と一緒の測定になった。修学旅行で女子と一緒に女湯に入った以上、今更である。
 
由紀は「潮尾さん、女子と一緒の測定でいいよね?」と保健委員とクラス委員に言われたものの「個別測定でお願いします」と言って個別に測定された。
 
公世は普通に個別測定された!
 

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なお、この日の午前中、留実子は身体測定ではなく、中体連が指定する病院で性別検査を受けさせられた。日曜日にバスケ大会でかなり性別を疑われたのでその検査である。
 
留実子は朝食を食べずに朝から来てくれた三井先生の車で病院に行き検査を受ける。でも留実子はワイシャツに男子用学生ズボンである!
 
最初におしっこを取るが、これはもちろん男子トイレで取る!
 
その後、身長・体重・胸囲!・腰回り(男子式の測定法)を測られた。血圧検査の上で採血される。その上で内科医の所に行く。
 
「あれ?君ブラジャー着けてるの?」
「着けたくないんですけど、着けないと邪魔になるので」
「胸が膨らんでるね。もしかしたら肝臓疾患かも知れない。これいつ頃から膨らんで来ました?」
「小学5年生頃からですけど」
 
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「ほんとに肝臓疾患かも。ちょっと待って」
といっていったん廊下に出て待機することになる。また診察室に呼ばれる。
 
「君、女性ホルモンの数値も凄い高いね。ちょっと2〜3日入院して精密検査受けない?これやばいよ」
と内科医は難しい顔で言っている。
「親御さんは?」
「・・・・今日は学校の先生と来たんですが」
「ちょっとその先生を呼んでくれる?」
 

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それで三井先生が呼ばれる。そして
「この子は女子生徒なんですけど」
と言われて内科医が
「え〜〜!?」
と驚く。
「もしかして女性ホルモン飲んでる?」
「いえ。この子は天然女性ですよ」
「嘘!?」
 
それで本当に天然女性なのかMRIに掛けて検査される。
 
「確かに卵巣・子宮・膣がありますね」
と内科医はまだ信じられない様子であった。
 
「もしかして君、FTMさん?」
「男になりたいけど、彼氏が居るので赤ちゃん産むまでは性転換しないでほしいと言われて、男性ホルモン飲むのも我慢しています」
「なるほどー」
 
それで医師はカルテの性別を女性に変更した上で
「クライアントは間違い無く女性であり、女性の性腺を持ち、ホルモン的にも女性ホルモン優位である」
という診断書を書いてくれた。これで日曜日のバスケット大会のS中優勝が取り消されることなく確定した。
 
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台風14号は2005年8月29日21時頃、マリアナ諸島付近で発生した。西進して沖ノ鳥島・大東島付近を通過、奄美付近に達してから進路を北に変える。九州西岸を北上して6日14時に長崎県諫早市付近に上陸。夜には福岡県岡垣町付近から山陰沖に抜けた。
 
その後、速度を上げて日本海を北東進した後、9月7日夜に北海道檜山支庁せたな町に再上陸した。そして8日朝にオホーツク海に抜けた。9月8日15時頃普通の低気圧に変化した。
 
この台風により、九州・中国・四国・北陸・関東・東北などで大きな被害が発生。死者不明者は宮崎を中心に29名に達した。
 

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9月8日(木)、豪華客船“飛鳥”(*6)(*7) が留萌港に来港し、11日まで留萌からサハリンのコルサコフ港までを往復するツアーが行われた。料金がバカ高い(*8)ので、さすがに地元から参加した人は少数だったようである。
 
なお台風が7日に北海道に来たので、このツアーは台風が行った直後に行われた。
 
(*6) 豪華客船“飛鳥”はこの翌年2006年2月11日に最後のツアーから横浜港に戻り、その後、ドイツの船会社、フェニックス・ライゼンに売却されて“アマデア”と改名された。“飛鳥”の後継・豪華客船“飛鳥II”(元・クリスタル・クルーズ所有のクリスタル・ハーモニー)は、2006年3月17日から運用開始された。
 
なお“飛鳥”“飛鳥II”を保有する郵船クルーズも、“クリスタル・ハーモニー”を所有していたクリスタル・クルーズも、どちらも日本郵船の関連会社である。営業活動していた地域の違いで、これは同じグループ内で船を移籍しただけである。“飛鳥”も“飛鳥II”も三菱重工業長崎造船所で建造された。
 
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(*7) このツアーは2005.9.07-10 に予定されていた。延期されたという根拠情報を見付けることはできなかったが、台風のさなかの出港はあり得ないので延期されたことが推測される。
 
(*8) ロイヤルスイート 60万円、最も安いリステートルームで13.8万円。
 

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女子中学生・進路は南(14)

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