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病院に着くと、まずおしっこを採取する。公世はこれを男子トイレの個室で採取したが、出たところで男性医師が入ってきて
「君、女子トイレが混んでいるからって男子トイレ使うのはやめなさい」
と注意された。
それを検査室で提出し、身長・体重・TB/UB, W, H を計測される。
「あら、あなたノーブラなの?」
と言われる。
「好きじゃないので」
「でも女の子は胸が小さくてもちゃんとブラジャー着けたほうがいいよ」
などと50代の女性看護師さんは言っていた。
血圧を測ってから採血される。MRI室に行き、MRIで下腹部の付近を念入りに調べられていた。
泌尿器科に行く。
「あなたの身体には一見睾丸と陰嚢かと思われるような身体の部位がありますね。組織検査をさせてもらっていいですか」
と医師から言われた。
睾丸と陰嚢かと思われるような部位って睾丸と陰嚢だと思うけどと思う。一応公世は
「どうぞ」
と答える。
皮膚に浸透する麻酔薬が塗られ、組織採取用の針が刺される。
ここで男性であれば麻酔が掛かっていてもある程度の痛みを感じるのだが、公世は特に痛みを感じなかった。クライアントが全く痛がってないようだということから、医師はやはりこれは睾丸ではないなと判断した。
婦人科に行かされる。多分婦人科での検査もあるだろうと覚悟していたので気合を入れて婦人科の診察室に行く。
全部服を脱ぐ。
「あら、あなた男物の下着を着けてるの?」
「僕は男ですから」
「でもブラ跡はあるし、普段はブラジャー着けてるんでしょ?」
「僕はスポーツをするので、運動中邪魔にならないようにスポーツブラを着けるだけです。サポーターのようなものです。普段は着けません」
「ああ、なるほどね。でもあなたの乳首かなり大きいけどブラつけないと、すれて痛いということは無い?」
「平気ですよ」
実はそのために普段ジュニアブラやAカップのブラを着けているのだが、そのことは言わない。
全裸の状態を女性医師に観察される。
「股間に男性器に似たものが付いてる以外は完璧に女性体型ね」
男性器に似たものじゃなくて男性器だと思うけど。
「上半身だけ服着ていいですよ」
と言われるので、Tシャツを着る。
「内診台に乗ってもらっていい?」
「いいですよ」
司から聞いて内診台なるものがどういうものかは知っている。もっとも僕の身体は“内診”不能だと思うけど。
それで下半身裸のまま内診台に乗り、下半身を持ち上げられる。
「あなた膣口が無いのね」
「僕、女ではないので。膣はありません」
しかしMRIにはしっかりヴァギナが映っている。
「でも生理は来てるでしょ?」
「僕は男の子だから生理とか来ません」
「やはり、自分では男の子だという意識なのね」
「はいそうです」
意識は公世がペニスだと思っているものにも触っている。
「あなたのクリトリスかなり大きいね。それに尿道が癒着してるし」
「それはペニスです」
「ああ、あなたはこれがペニスだという意識なのね」
「はい。クリトリスではありません」
実際にはこの器官は体内では左右に分かれ深く埋もれていてクリトリスの形をしているのが観察されている。
下半身も服着ていいですよと言われるのでトランクスを穿き、ジーンズを穿いた。
「あなたスカートは穿かないの?」
「どうしても穿けと言われたら穿きますけど。普段は穿きません」
医師は頷いていた。医師は基本的にこの子は女性半陰陽ではあるが意識がかなり明確な男性の意識だと判断したのである。
公世は退出して廊下で待つ。少し待ってから母が呼ばれて診察室に入る。かなり長時間話し合っていたようである。
やがて母は出て来て公世に言った。
「あんたはお股に変な物が付いてるけど内部的にはほぼ女性だって。だからお股に付いてる変な物を手術で除去して完全な女性になって、それで法的な性別もちゃんと女の子に変更するのが本来ならお勧めしたいところだって」
「それ絶対嫌」
「昔なら本人の意志は無視してそういう治療をしていた所だけど、今は性別は医学的な性より、精神的な発達に合わせるべきだという考え方なんだって。だからあんたがどうしても男として生きたいというのであれば、そのまま男として暮らすのもありだと先生はおっしゃった」
「僕は男の子だよ」
「分かった。だったらあんたの法的な性別を変更する件は保留にしよう」
「僕は女の子にはならないよ」
かくして公世はギリギリの所で男の子に留まったのである。
さて2学期からS中に転入になった高木姉妹であるが、姉の紀美は3年3組に組み込まれた、出席番号は女子35番である。34を司が取ったので紀美はその次の35となった。
一方妹の貞美のほうは玲羅と同じ1年1組に組み込まれた。貞美は神社でもよく玲羅と話しているのでこれは心強かった、席も玲羅の1つ前にしてもらった。
紀美のほうは、あまり群れる性格ではないものの、同じクラスに神社で一緒の美那がいるので、何かの時は頼れるなという気がした。
3年3組は席替えを実施して、紀美の後ろにその美那が来るようにし、また司をこれまでの男子の並びから女子の並びに座るように変更した。
ちなみに美那は神社に常駐しているグループの中で最も霊感が無いとみんなから言われている。あまりの勘の悪さに、P大神も呆れている。しかし紀美も勘の悪さではなかなか良い勝負である!
馬糞に気付かず踏んじゃうのが美那、気付いてるのに踏んじゃうのが紀美、というのが蓮菜の分析である。
ところで千里の夏休みの宿題であるが、五教科の問題は今T(Bs+Y2), S(Bw+Y1) が手分けしてやっている。絵に関しては今年も絵の得意なGが描いた。
Gは8月上旬、今年も六合を呼び出して伊勢の二見ヶ浦に連れていってもらい、夫婦石の絵を写生した。
「千里さん、ほんと絵がうまいですね」
と彼は感心していた。
(Gが7/29に河洛邑にジャンプできたのは、そこに小春がいたから。Gは行ったことのある場所、特に親しい人が居る所以外は、2km程度以内しかジャンプできない。ちなみに河洛邑(四日市市の近く)より伊勢のほうが遠い。そもそも遠距離までのジャンプは物凄く体力を使う)
読書感想文については、Vが『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』を読んで感想文を1800字程度にまとめた。テキストエディタで書いてプリンタで印刷し、Gが描いた絵とともに、8月22日にRに提出させた。
「ああ、二見ヶ浦だね」
「はい。剣道大会の会場近くだったので、息抜きを兼ねて行って描いてきました(と言えと言われた)」
沙苗は二見ヶ浦には行ったけど絵を描く時間なんて無かったはずなのにと思った。
ちなみに沙苗の夏休みの宿題は五教科はやったもの、絵・感想文・音楽ができてない。これは9月中に出してと言われている。
千里の音楽の宿題は今年もヴァイオリンを使った。昨年はメンデルスゾーンの協奏曲(通称メンコン)を弾いたので今年はモーツァルト『ヴァイオリン協奏曲第5番イ短調 K219』第1楽章を弾いてOKをもらった。実際に演奏したのは3分程度である。もちろん夏休み中、GとVが練習していたのでRも弾けた。ピアノ伴奏の録音はVが弾いたものである。
Rは先生に
「五教科の宿題はあと少し残っているのでもうちょっと待ってください」
と言った。
「いいよいいよ、忙しかったろうしね」
と先生は言っていた。
(Rは自分では宿題をやる気は全く無い)
ところで留実子は夏休みが終わったので応援団から3年生は引退。旗手も2年生の子に引き継いだ。
「るみちゃん、髪伸ばす?」
と蓮菜が訊いたが
「めんどくさーい。丸刈りが楽」
と言っていた。
「確かに楽かもね。私も丸刈りにしようかなあ」
「蓮菜のお母さんがショック死するからやめなさい」
と恵香が停めていた。
留実子は数子から「バスケット部の練習に参加してくれない?」
と言われ、
「いいよ」
と言って2学期は放課後女子バスケット部で練習するようになった。実際問題として身体を動かしているのが好きな留実子にとっては応援団を引退したからといって、運動をやめるのは寂しかった。バスケ部の練習はちょうど良かったのである。
留実子がダンクを決めると
「すごーい!」
と1〜2年生たちが感激して見ていた。
さて新学期が始まると、千里T(Bs+Y2), S(Bw+Y1) の行動に変化が認められた。T(Bs+Y2) は「学校行かなきゃ!」と言うので、コリンが時間割りを見せたら、自分の得意な数学と理科の授業だけに出たのでRにはそれ以外の授業に出るようにGは誘導した。
ここで学校に出るのはT(Bs+Y2)(旧・早川ラボの管理人室に住んでいるほう)のみであった。一方土日にQ神社に出てご奉仕するのはS(Bw+Y1) (旧・天野道場の土地に置いたユニットハウスに住んでいるほう)だけだった。
「もしかしたらT(Tamago/Tiger)はY(Yellow)の影響が強いから、今までの延長で学校に行こうとするのかも」
「S(Sky/Sparrow)の方はB(Blue)の影響が強いからQ神社に行こうとするのかも」
とG(Gtace)とV(Victoria)は話した。
理科と数学の授業にだけ出る千里Tは、その日の授業が終わると(正確にはその日最後の数学または理科の授業が終わると)旧早川ラボの管理人室に現れ、ひたすら宿題をしていた。ご飯は毎朝夕、小糸が運んだ。
御飯は実際にはコリンが作り、小糸が持ってコリンが運転する車で早川ラボまで行く。コリンの家から早川ラボまでは車で2分ほどである。コリンが付いていくのは万一熊が出た場合の用心である。普段何か用事があって小糸を呼ぶ時は、千里Tが召喚することにより小糸はそこに移動することができる。
8月23日(火).
留萌地区の剣道連盟から連絡があり、全国大会で優勝した千里と清香に特別に三段の段位を授与するということだった。千里と清香は各々の顧問と一緒に連盟に赴いた。
千里は一応道着に着替えて、防具と竹刀のセットも持ち、鶴野先生の車で連盟まで行った。清香も道着を着て、防具・竹刀を持ち、安藤先生と一緒に来ていた。
特に審査の実技とかもなく、三段の免状が渡された。
「本来は三段は高校生以上ですが、とても優秀な実績があったので特に授与します。2人はこれから3年後には四段の審査を受けられますから」
と説明があった。
本来は四段は19歳以上であるが、これで2人は高校在学中に四段を取れる可能性が出て来た。
「インターハイで優勝したら(*4) 高校2年生くらいで四段をもらえたりしてね」
と安藤先生がいうと
「僕の個人的な感想ではそれはあり得ると思うよ」
と理事さんも言っていた。
(*4) 高校剣道の四大大会の中で個人戦があるのはインターハイのみ。4大大会とは、インターハイ(8月)、選抜(3月.愛知)、玉竜旗(7月.福岡)、魁星旗(3月.秋田)であるが、インターハイ以外は団体戦のみである。
だからインターハイ以外の大会に出て上位に行くにはその学校自体が強くなければ厳しい。それで千里と清香は“北海道で優勝が狙える”程度の強い高校に行きたいと思っている。
玉竜旗・魁星旗はインターハイ・選抜と時期が重なるが、オープン大会なので都道府県予選が無い。インターハイと選抜は各都道府県で予選が行われる。選抜が愛知で行われるのはJR東海が創設したからである。
連盟では1時間くらいお話があったが、千里は元々面倒な話が苦手である。千里は疲れてしまった。鶴野先生がC町バス停まで送ってくれたが、そこで消えちゃった!
8月24日(水).
千里Rは終わりの会が終わると、公世・沙苗・竹田君と一緒にバスでMR町のバス停まで行き、そこから軽いジョギングでY町の“新早川ラボ”に到達した。この4人にとってはこの距離は“軽いジョギング”で行ける距離である。一方清香と所沢君は学校からやはり軽いジョギングでここに到達した。
今日から各々の学校の剣道部を引退したこのメンツで稽古をしようということになっていたのである。
この新早川ラボは、一応管理人が忌部さん(太陰)、道場主が道田さんということになっている。ちなみに会費は1ヶ月1000円である。会員証も発行している。実際には、会費はおやつ代の一部に充当されている。ここは基本的に千里が練習したいから、練習できる場所を確保しただけである。
だいたい17時くらいに集まり1時間は体操・素振りなどの基礎練習、後半の1時間で掛かり稽古をする。6人居るので、千里−清香、公世−沙苗、竹田−所沢という組合せでひたすら稽古する。道田さんは公世・沙苗・竹田・所沢にはいろいろ指導するが、千里・清香は既に指導できるレベルを超えているので「そろそろ少し休もうか」とか「怪我しないようにね」といった程度の声掛けに留めている。
そして・・・・練習が終わった後、千里は疲れたので消えちゃった!
ところで、千里たちが7月に家祓いをした小平町の家だが、その後御主人の病気も奧さんの病気も嘘のように治ってしまった。ただし御主人は禁酒は継続した。高校生の次女さんは生理不順も治り、女らしさが増していった、小学生の次男さんは男らしくなり、自分のことを「俺」というようになった。
そんな状況で、家祓いの時は祈祷料10万円を払っていたのだが、あとで追加で100万円も払ってくれた。
そして中学生の長男(三女?)さんは女らしさが増し!この夏とうとう旭川のレジャープールで女子水着デビュー。2学期からはセーラー服で登校を始めた。
クラスメイトたちは
「ひろちゃんセーラー服着ればいいのにと思ってたよ」
と彼女の女子制服通学を応援してくれた。
彼女に小さなバストがあることは身体測定の際に女子のクラスメイトたちにより確認された。本人は「おっぱい小っちゃいし」と恥ずかしがっていたが。クラスメイトたちは彼女のショーツに変な盛り上がりが無いことも確認していた。
彼女は11月の宿泊学習の際に、水着を着けてではあるが、女湯デビューした。もっとも本人はかなり恥ずかしそうにしていたという。
「今の子たちはみんな家のお風呂に入ってるから人がたくさん入るお風呂の経験が無くて恥ずかしがる子が多いよね」
などと保健室の先生は言っていたようである。
彼女はなかなか生理が来なくて母親も心配していたのだが、年明けの1月には初潮が来て母親もホッとしたらしい!?