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9月12日(月).
早朝武矢たちの船は一週間ぶりに出港して行ったが、いつまでこうやって手を振って出港を見送ることができるのだろう?と津気子は不安を感じた。
この週(9/12-16)にはこういう学校から先生やコーチなどがS中に来て勧誘して行った。
白老町(登別と苫小牧の中間くらい)のSK高校
札幌のS1高校
札幌のR高校
函館のCW女子高
旭川のE女子高
旭川のL女子高
CW女子高・E女子高・L女子高は千里だけの勧誘かと思ったら
「ぜひ工藤さんも一緒に」
「工藤は男子ですが」
「同じ支庁に村山さん・木里さんがおられたから男子に出ておられたんでしょう?高校からはもちろん女子の部に来られますよね」
などと言われて、公世も一緒に話を聞く羽目になった。
(全国的にそう思われているようである:今更男子には戻れなかったりして)
勧誘の先生たちが帰った後で千里はL女子高の学校案内で女子制服紹介のページ(L女子高に男子制服は無い!!)を開けて公世に言った。
「ミッションの制服って可愛いよね。きみちゃんもこの制服着る?」
「いやだぁ!」
と公世はまた泣いていた!
直接来なくても、電話連絡の上、学校案内や各部の実績表・練習場の写真などを送って来た学校は多数あった。道内の高校だけでなく内地の高校からも多数来ている。
東京のKS高校
大阪市のSM学院高校(昨年の大会で会った青木姉の在籍校。多分弟も来年入る)
京都市のHZ高校(中等部に森田姉弟が在籍中)
兵庫県姫路市のH高校(今回千里が当たった島根さんのお姉さんが在籍中)
愛媛県今治市のSK高校
福岡市のNK学園女子高(昨年清香に勝った菊池さんがいる)
福岡市のCS女学園高校(中等部に今回出て来た坂口さんがいる)
などなど。
資料を送ってきた学校は30校を越えていた。
ちなみにNK学園女子高もCS女学園も「村山千里様・工藤公世様・顧問様」で送られてきている。資料が送られてきた所の実に3割が女子高で宛名はやはり村山・工藤で来ている。
「CS女学園の制服は高校もセーラー服なんだね。セーラー服の高校というのもいいよね。九州は剣道が盛んで、福岡も強い人多いみたいだし、きみちゃん、セーラー服着る?」
「いやだぁ!」
と公世はまた泣いていた!
(そろそろ諦めて潔く女の子になろうか?ちんちん取るだけじゃん)
9月12-15日(月〜木).
R中は、愛・地球博の見学を含む修学旅行に行った。
この期間に清香を勧誘に来た学校の先生にはR中の校長と、安藤先生が対応して「必ず本人に伝えますから」と言っておいた。
清香自身は
「親がこんな時に私、修学旅行とかに行っていいのかなあ」
と悩んでいたが、千里は
「これは学校の行事だもん。ちゃんと参加すべき」
と言ったし、安渡先生が新早川ラボを訪れて
「これ修学旅行のお小遣い」
と言ってお金を渡してくれた。
「この御恩は忘れません。経済的余裕ができたら必ず返しますから」
「いいのよ。私こそ清香ちゃんのおかげでこの3年間、いい夢を見させてもらったから、そのお返し」
と安藤先生は言っていた。
「でも村山さんは大丈夫なの?この子よく食べるでしょ?」
と安藤先生は千里の家計を心配する。
「ああ、うちにはたくさん食べる子が大勢居ますから大丈夫です」
なんせ熊一頭を数時間で食べちゃう連中がいるからなあ。
「村山さんのお父さん、会社か何かやってるんだけ?」
9月17日(土).
公世は“凄く快適な気分”で目が覚めた。この感覚は何度も味わっている。
自分の身体を確認する。
またかよ!
トイレに行きおしっこが“ストレス無く”落ちて行くのを感じながらぼーっとしていたが、下腹部に微かな痛みを感じハッとする。おしっこの出て来た所をペーパーで拭き、部屋に戻る。生理用ショーツに換えてナプキンを装着した。
考えてみると今日は先月生理が来た8月16日から約1ヶ月経っている、28日より少し長い気がするが(←32日経ってるよ)、やはりこれ周期的に来るのだろうか。そしてその度に自分は女の子になるのだろうか?
9月17日(土).
千里GとVはケーキとチキンを買ってきて星子の誕生日を祝ってあげた。
「ハッピーバースデイ」
「わっありがとうございます」
「何歳になったかは詮索しないことで」
「はい、それがいいです」
9月18日(日).
三連休の真ん中であるが、∧∧∧音楽教室の松戸市内の幾つかの教室合同で、発表会が開かれた。
龍虎は今年もメゾピアノの可愛いドレスを着て照絵と一緒に出掛けた。出掛けにドレスを着せる時、ちんちんが無いような気がしたのは、きっと気のせい。この日は龍虎は女の子下着を着けたがった。
ステージでは映画『スティング』のテーマ曲『ジ・エンタテナー』を格好良く弾きこなし
「すごい。ジャズのリズムになってる」
「ちゃんとスイングしてる」
「ノリがいいねー」
というので高い評価を得たようである。
凄い拍手をもらって、龍虎はカーテシーをして拍手に応えた。
この様子も照絵がしっかり撮影しており、後に中学生になった龍虎が見て「恥ずかしー」と言うことになる。
(龍虎の小さい頃の写真やビデオは全部女の子の服を着ているものばかりである)
9月18日(日・なる).
この日もP神社では結婚式が行われた。また浅美さんに来てもらい、善美と2人で三三九度を執り行った。恵香が笛、千里(V)が太鼓を叩き、高校生巫女2人と沙苗が巫女舞を舞った。
P大神は
「なるほど、普段は代理の眷属に任せておいて、こういう大事な儀式の時は千里Yが自分で出てくるんだな」
と思った。
9月19日(月).
「だいぶ収まってきたかな」
と公世は思いながらナプキンを交換した。女の子が生理の時は憂鬱な気分だというのが分かる。確かに自分自身の感情自体が不安定になっている気もするけど実際問題として身体が結構つらいもん!
「でもこの3日間、ちょうど休みで良かった」
とも思う。平日だったら、昼間のナプキン交換に困る所だった。
学校の男子トイレには汚物入れが無い!
今回の3日間は早川ラボで練習していたので、ナプキンもラボのトイレで交換した。自宅で交換すると、母や姉に見付かり
「生理おめでとう。ちゃんと定期的に来るようになったね」
などと言われそうである。
でも来月はどうしよう?
9月20日(火).
S中はこの日から衣替えとなった。
沙苗とセナはもうずっと女子生徒をしているので普通にセーラー服の冬服を着て出て行った。雅海と司も女子生徒になってしまったので、ちゃんとセーラー服を着て出て行った。この2人は2学期初めからブラウスにスカートという格好で通学していたので、スカートを穿くことは今更である。
潮尾由紀はとうとう学校でもセーラー服デビューした。ボトムはもちろんスカートである。彼女は剣道の表彰式でセーラー服を着て公世をサポートしているところが全校生徒に繰り返し見られているし、宿泊体験や水泳の授業で女子水着姿を披露しているので、もはや今更だった。
セーラー服を着たことから、彼女はこの日からほぼ女子生徒扱いとなった。彼女に生理があることはもう2年の生徒全員が知っている、
公世の場合はこうだった。
衣替え前夜母は言った。
「きみちゃん、あんたのセーラー服、クリーニングに出しといてあげたから、明日からはこれ着て行きなさいね」
「拒否。僕は男の子だからセーラー服なんて着ないもんね。学生服着ていくよ」
「でもあんた生理も来たんでしょう?もう完全な女の子じゃん。女の子が学生服着ちゃいけないよ」
「ぼく男の子だもん」
朝になっても母は再度
「あんた学生服とか考え直さない?あんたがセーラー服着てても誰も変に思わないよ」
と言ったが
「僕は男の子だからこれ着ていく」
と言って、それを着て出掛けた。
でも校門のところで立っていた先生に
「何ふざけて詰め襟とか着てるの?ちゃんとセーラー服着なさい」
と言われた。この時は偶然近くに司が居て
「工藤さんは特に男子制服の着用を認められているんです」
と言ったので
「あ、そうなの?」
と言われて通してもらった!
公世はこの日も昼間トイレでナプキンを交換したが、厚手のビニール袋を持って行っていたので,交換したナプキンはそれに入れておき、放課後、わざわざ早川ラボに行き、千里たちと手合わせするついでにそこのトイレで捨てさせてもらった。
公世の身体は9月21日(火)の朝には男の子の形に戻っていて、公世はホッとした。
9月22日(木).
S中の職員玄関のところに展示されていた、全日本剣道大会のトロフィ・カップ、メダル、木刀が千里・公世に返還された。清香も同様にR中から返還された、千里も清香も返還されたものを新早川ラボに持ち帰った。
9月23-25日(祝土日).
千里Rは清香・公世と一緒に旭川に出た。3人とも全日本剣道大会で頂いた賞状や記念品を持って行く。瑞江がまたセレナで迎えに来てくれたが、今回は新早川ラボに泊めた。公世は明け方、お母さんが車で新早川ラボに連れてきてくれた。
越智さんは現在“多忙な無職”なので、金曜日から来て3人を指導してくれた。
「村山さんと木里さんが双方1位で、工藤さんが2位か。素晴らしい」
と言って、表彰式のビデオも熱心に見ていた。
「それでこれが記念にもらった木刀か。素晴らしいね」
「どっちがどっちのか分からなくならないように即名前を書きました」
「賢明だね。木里さん、すぐ折りそうだもん」
ああ、清香の性格よく分かってると思う。
「越智さんは次のお仕事とか決まりました?」
「当面は剣道の先生で食いつなぐよ。一応警察の剣道部の嘱託になってるんだよ」
「ああ、そういうのもいいですね」
「いちばん下の子供が来春高校を卒業するから、そのタイミングで女房の実家のある町に引っ越そうかと思ってる」
「へー。お子さん何人おられるんですか?」
「長男は今東京の大学の4年生で卒業後はそのまま東京の企業に勤めるつもりのようだ」
「凄い。優秀。東京まで行くとか」
「あまり名の通ってない私立だけどね」
「へー」
「長女は関西の国立大学に通っている」
「関西の国立大学って関西大学ですか?」
「関西大学は私立!」
「あ、そうなんだっけ」
「もしかして阪大とか」
「そんないい大学には行ってない。もっと下」
「でもよく女の子を関西までやりましたね」
「実は女房の実家が姫路にあって、そこから通ってるんだよ」
「ああ、そういうことですか」
「それで僕と女房も来年の春にはその女房の実家の近くに移動するつもり」
「実家の近く?」
「実家に同居したら色々大変じゃん」
「そうですよね。人間関係面倒くさそう」
「ご実家は何かの家業をなさってるんですか?」
「揖保乃糸(いぼのいと)を作ってるんだよ」
「おぉ!」
「同居したりしたら、後を継いでくれとか言われかねん」
「大変そう」
「でもだから、村山さんほかを指導してあげられるのも今回が最後かも知れない。これからしばらくは旭川と姫路の往復になる」
「ああ」
「いやここ2年ほど本当にお世話になりました」
と千里は言う。
千里が越智さんから指導を受けるようになったのは2年前の7月が最初である」
この3日間、3人はみっちり越智さんから最後の指導を受けた。早川ラボの道田さんではもはやこのレベルの人の指導が困難になっているが、越智さんは適格なアドバイスで指導をしていく。
今回は剣道の稽古優先で、ピアノ、フルート、龍笛の指導はお休みにした。
今回の部屋割は単純で、No.2=千里、No.3=清香、No.4=公世てある。
2日目、9月24日の夜、夕食後の軽い練習も終えた後、お風呂に入ってから自分の部屋に入り、公世が寝ようとしていた時、金色の千里ちゃんが出現した。妹ちゃんのほうである。
「こんな時間に珍しいね」
今はまた21時くらいである。ゴールド千里ちゃんは24時過ぎに出てくることが多い。
「きみちゃん、女の子にしてあげようか」
「何を唐突に。ぼくはちんちん無くしたくないから」
「どうしてもちんちん要るのならこんなのはどう?ちんちんはそのままで、割れ目ちゃんだけ造るんだよ。そうすると、ちんちんがあるから立っておしっこできる。それなのに普段はちんちんを割れ目ちゃんの中に隠しておけば、女の子の股間みたいに見えるから女湯にも入れるよ」
「女湯に入るつもりは無い!」
「それと、きみちゃん、ヴァギナの口を開けようよ。また次に生理が来た時に生理の出てくる穴が無いと困るから」
「もしかしてぼくってヴァギナが存在する?」
「あるけど口が開いてないから今は生理の出てくる所がない」
「うーん・・・」
「最初から穴が開いていれば生理の度に女の子の身体に変わらなくて済むよ」
そうなのか?でもヴァギナが開口してたらそれが既に女の子の身体ということは?
「割れ目ちゃんがあると、ちんちんもヴァギナもその中に収納できる」
「えーっと」
「ちんちんがあってヴァギナの入口もあれば、男の子とも女の子ともセックスできるのに」
公世は急に不安になった。
「ぼくお嫁さんに行かないといけないってことないよね?」
「きみちゃんと結婚したいと思ってる男の子はたくさんいるよ。女の子でもレスビアンの子なら、きみちゃんと結婚したいと思うかも」
「ぼくやはり女の子なのかなあ」
と公世が不安そうに訊く。それに対してGold千里ちゃんは明快に答えた。
「男になりたいか女になりたいかは、きみちゃんの気持ち次第だよ」
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女子中学生・進路は南(16)