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■女子中学生・進路は南(21)

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10月8-9日(土日).
 
P神社ではこの土日は結婚式の集中日だった。
 
10月8日(土)友引・たいら
10月9日(日)先負・さだん
 
特に8日は友引で十二直も“たいら”の結婚吉日なので、この日だけで結婚式が3組も入っていた。
 
P神社のような町外れの神社で1日に3組の結婚式をあげたなんてのは、恵香の記憶ではたぶん4〜5年ぶりと思った。
 
この日は千里Vは後述する事故のためP神社には来られなかったのでこの日P神社に居たのは星子である。P大神は「ああ、疲れてダウンして今日は全部代理か」と思っていた。
 
9日にも2件の結婚式があったので、千里Gは昨日姫路から戻ったばかりのRをP神社に転送した。
 
「え?私がここの巫女やるの?」
「千里、私が笛を吹くから太鼓よろしくね」
「待って。太鼓なんてもう3年近くやってない。事前に練習させて」
 
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だって昨日も叩いたじゃん。
 

それで合わせてみるとメチャクチャである。
 
「千里どうしたのよ?」
「だって久しぶりだもん」
 
“この”千里が赤い腕時計をしているのを見て沙苗が言う。
 
「笛と太鼓を逆にしてみたら」
 
それで恵香が太鼓、千里(R)が笛を吹くと、千里は笛が物凄く上手い。
 
「千里龍笛がすごい上達してる」
 
と恵香が驚き、この日の2件の結婚式では、恵香が太鼓を叩き千里が笛を吹いた(P神社の神楽のメロディー自体は2年半ぶりだったが覚えていた)。
 
「なんだ?この物凄い響きは?」
と翻田宮司が驚いたし、結婚式の参列者も
「巫女さんの笛が凄い気合入ってる」
と驚いていた。
 
P大神は「赤い千里は凄く上手くなってる」と感心していた。
 
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この日は結婚式の最中に2回とも多数の龍が集まって来て、祝砲を落としてくれた。でも彼らは九重たちに捉まって、そのあと熊肉パーティーを楽しんだようである!
 
「へー。銀流さんっていうの?このお近く?」
「鯛尾さん、お酒強そうね。まま、もう一杯」
「西風さんって美形だね。もてない?」
「あ、俺女だから」
「え〜?」
「それなのによく言い寄ってくる女がいるから困る」
「抱いてやればいいじゃん。そっちも行けるんでしょ?」
 

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10月8日(土).
 
S中の男女バスケット部は、北北海道大会(10/8-10)に参加するため旭川に出て行った、
 
予算の豊かな野球部とか剣道部はバスを借りたりするのだが、あいにくバスケ部はこれまで支庁大会を突破したことが無かったこともあり低予算である。保護者の車に分乗して旭川に向かう。
 
数子の母:数子・留実子・千里(3年生)
雅代の母:雪子・雅代・泰子(2年生)
真鈴の母:由紀・真鈴・治実(1年生)
 
数子の母の車は、先日の支庁大会の時と同様に、留実子の家の前に停めて、留実子と千里を待つ。やがて先日と同じように家の中から留実子が出て来て、前方ら千里(T)が走ってくる。千里は黄色いトレーナーとジャージのズボンを穿いていた。
 
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それで3人が乗った所で出発する。
 

「北北海道大会なんて初めてだね」
「強い所ばかりなんだろうなあ」
「R中がいつも1回戦で負けてたんだからあれ以上に強い所ぞろいだと思う」
「ゾーンティフェンスの学校が多いらしいからそのつもりでいないと」
「でも千里とるみちゃんがいれば結構いい勝負できると思うよ」
と数子は言う。
「頑張らなければ」
などと言いあっていた。
 
その時。
 
「あっ」
 
という大きな声で数子の母が急ブレーキを踏む。数子が見ると、青い服を着た髪の長い少女が目の前に居て、向こう側に飛ぶように倒れた。数子の母はその少女の動きを見て「はねちゃった!」と思った。
 
車が停止する。
 
全員飛び出す。
 
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「大丈夫ですか?」
と言って数子の母が抱き起こす。
 
とそれは千里である!
 
「え!?」
 
「車に乗ってた千里ちゃんは?」
 
居ない1?
 
「どうなってるの!??」
 

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千里が意識を回復する。
 
「千里大丈夫?」
と数子が訊く。
「あれ?数子ちゃん。私どうしたのかな。急にふらついて倒れたみたい」
と千里。
「貧血じゃないの?」
と留実子。
「あ、るみちゃん。ごめーん。私朝弱いから」
「確かに君はわりと遅刻が多い」
と数子は言う。
 
「接触・・・してないかな?」
と数子の母が不安そうに言う。
 
「千里の靴がそこに落ちてるけど、車が止まった位置から3mくらい前だから接触してないと思いますよ」
と留実子は言う。
 
「きっと、たまたま車が近づいた時に千里が貧血で倒れただけでしょう」
 
留実子は複雑なことを考えるのが苦手なので、物事を単純化しがちである。
 
「で何が起きたんだっけ?」
と数子。
 
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「何も問題は起きてない気がする。数子ちゃんも千里も僕も居る。誰も怪我してない。このまま車に乗って旭川に向かうだけだ」
と留実子は言った。
 
「そうかも」
と言うことで全員車に乗る。
 

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「えっ?私も乗るの?」
と千里。
「少し寝ぼけてないか?」
と留実子。
「どこか行くの?」
と千里は数子の隣に乗りこみながら尋ねた。
「今から旭川で大会があるから」
「ああ。大会があるんだ?頑張ってね」
 
数子は頭を抱えたが留実子は言った。
「千里もういいから少し寝てろ。寝て覚めたらきっと少しはまともになる」
「うーん。眠たいし寝てようかな。あ、でも神社に連絡しなくちゃ。数子ちゃん電話貸して」
「うん、いいよ」
 
それで“この千里”はQ神社に電話し今日は急用で休みますと伝えた。
 
その後、千里は本当に寝てしまった。その時数子は千里が黄色と青の星条旗(*16) っぽいマークを付けた服を着ていることに気がついた。
 
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(*16) 横道にそれるがアメリカ国旗(星条旗)のことを英語では The Stars and Stripes, The Star-Spangled Banner, Old Glory などと言う。複数の言い方があるのは「日の丸」「日章旗」のようなものと思えば多分良い。
 
ちなみにアメリカ国歌『星条旗』は『The Star-Spangled Banner』、スーザ作曲『星条旗よ永遠に』は『Stars and Stripes Forever』である。
 
(だいたいこの2曲を混同する日本人は多い。両方続けて聞くと「あぁ」と思うが1日経つと分からなくなる。『ワシントン・ポスト』あたりまで入れると更に分からなくなる)
 

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「何が起きたの〜〜!?」
 
と司令室はパニックだった。
 
「ちょっと状況を整理してみよう」
とGは混乱する自分の頭の中を無理矢理まとめようとしながら言った。
 
・黄色い服を着て縞模様の時計をした千里T(Bs+Y2)が車に乗っていた。
 
・青い服を着て星模様の時計をした千里S(Bw+Y1)が前を歩いていた。
 
・両者が10m以内に近づいた時“10mルール”により車内の千里Tが消えた。
 
・同時に車の前方に居る“千里”が貧血?で倒れた。この時、“千里”の身体は数メートル、前に飛んだ。
 
・数子母が急ブレーキを掛けて車は千里と接触しない距離で停止した。
 

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「そして今いる“千里”の所には青いランプ2個と黄色いランプ2個が点いてる」
とGはまだ頭の中が混乱したまま言う。
 
「4人合体したのでは?」
と千里Vは無責任に言った。
 
「反発係数ゼロの完全非弾性衝突だよ」
とVは言う。
 
「やはりそういうことかな」
 
「『おれがあいつであいつがおれで』の場合は男の子と女の子がふつかったら中身が入れ替わっちゃった。あれは反発係数1の完全弾性衝突。理科の実験で、右から来た球と左から来た球が衝突すると運動量が入れ替わる。でも反発係数ゼロの非弾性衝突だと両者合体しちゃう。運動量の総和は元々ゼロだから、運動量保存の法則は保たれている」
とVは物理用語を使って説明する。
 
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(わざわざ絵を描くほどのことか?「千里はいい加減な奴だ」でいいじゃん)
 

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「『おれがあいつであいつがおれで』では運動量ではなく性別が入れ替わった。千里の場合は根性無いから、完全非弾性衝突でそのまま合体しちゃった。Bwは男の子でBsは女の子だからきっと合体後は男の娘になる」
と千里Vは説明している。
 
「うーん・・確かに千里は根性無い」
とGは他人事(ひとごと)のように言う。
 
「星模様の千里と縞模様の千里が合体して今は stars and stripes になってるのよ」
 

 
「うーん・・・・・・・・」
 
「あの時車は停止したけど、きっと千里はシートベルトしてること“忘れてて”千里Tの身体だけ車体をすり抜けて前方に飛び出して千里Sとぶつかったんだよ」
 
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「千里ってうっかり屋だもんねー」
とGも言った。
 

一方A大神は
「もう知らん!」
と半ば思考停止して放置した。
 
「千里という奴はさっっぱり訳が分からん」
とA大神は楽しそうに言った。
 

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さて旭川に着いた千里たちのことを簡単に書いておく。このようなことが起きた。
 
・練習タイムには千里(Bw+Y1+Bs+Y2) も参加して、ぽんぽんスリーを放り込んだ。
 
・これをたまたま見て驚いた旭川N高校の宇田正臣教諭は「凄い子がいる」と思い、千里に声を掛け、名前と在籍校を尋ねる。そして千里がまだどこからもスカウトされてないと聞くと、物凄く興味を持った。
 
・宇田先生は、こんな子がいるチームは今日は勝つだろうから、勝つかどうか微妙だった別のチーム(若生暢子の学校)の試合を見ようと思い、そちらに行った。
 
・ところが試合直前になって千里は「私は男の子だから女子の試合には出られない」と言った。
 
数子は「この子は試合に出てくれないほうの千里かぁ!」と天を仰いだ。朝最初に車に乗った千里は「出てくれる千里」だった。でも多分あの事故?の時に入れ替わってしまったんだ!(*17)
 
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・千里が出ないので留実子だけで頑張ったが惜しい所で敗れてしまった。
 
・S中が負けたと聞いて驚いた宇田先生は、友人が顧問をしている中学とS中の練習試合を翌日組んだ。
 
・それを見た宇田先生は「この子は本当に凄い子だ」と思い、正式に勧誘すべく準備を始める。
 

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(*17) 1年生たちには千里の行動が理解不能なので、留実子に
「これどうなってるんですか」
と訊いた。
 
「ぼくもよく分からないんだけど、千里にはどうも自分は女だと思っていて女子の試合に出る千里と、自分は男だと主張して絶対に女子の試合には出ない千里がいるみたいなんだよ」
 
「もしかして双子の姉弟とか?」
「ひょっとするとそうなのかも知れない気がする。朝はちゃんと試合に出てくれるはずの千里を乗せたんだけどなあ」
 
「ひょっとして剣道してるのがお姉さんで、ここに居るのが弟さんだとか」
「その可能性もあるけど、よく分からない」
 

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Timeline
7日
1700頃 武矢の船が事故
2300 武矢たち帰港
8日
7:00 ☆Sが村山家から出掛ける
7:10 ≡Tが旧早川ラボから来て車に乗る
7:15 $SとTが合体!
9:00 $宇田先生がポンポンとスリーを放り込む千里に注目
1000 $千里が出場拒否して敗戦
1400 ●Rが姫路から戻り母に願書を書いてもらう
1700 ●Rが消滅
9日
1000 ●RがP神社に送り込まれ結婚式の笛を吹く
1500 武矢が帰宅し廃船になることを告げる
1700 $Uが帰宅して両親の喧嘩を見る
1710 武矢は家を飛び出して行く
1720 $千里Uは高校の学費は自分で稼いでと言われる
 

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