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■女子中学生・進路は南(31)

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11月1日(火).
 
潮尾由紀(うしお・よしのり)のクラス担任はわざわざ潮尾家を訪ねてお母さんと話し合った。
 
「潮尾さんがずっと女子制服を着て登校しているようなのですが」
「すみません。いけませんでしたでしょうか。これも制服だから問題無いはずと言って着せてました」
「いえ、それはいいんですけど、今の状態では身分証明に問題が起きかねないと思いまして」
「あ、はい」
「生徒手帳で学生服を着た写真が載っているのに本人がセーラー服だと同一人物と認めてもらえない危険があると思うんですよ」
「あ、はい」
 
「それで養護教諭や教頭などとも話したのですが、潮尾さんがずっと女子制服で通学するのであれば生徒手帳のほうをそれに合わせてはどうかという提案が教頭のほうからあったんですよ」
「いいんですか?」
 
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女性であり、性別問題に理解のある山口桃恵教頭だから出て来た話であろう。
 
それで由紀は生徒手帳を作り直すことになったのである。写真のうまい先生にセーラー服を着た由紀の写真を取ってもらい、それを転写した生徒手帳を印刷屋さんで制作してもらった。
 
この生徒手帳では、読みがなを「うしお・よしのり」ではなく「うしお・ゆき」にした。また、生徒手帳の性別欄を抹消した!(特定の事項を外して印刷するのはわりと簡単)
 
これで由紀は“ほとんど”女子中学生になった。但し出席番号は男子の番号のままである。
 

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11月1日(火).
 
11月1日お昼、姫路の新居は完成した。
 
10.17夜 今のコンクリートを撤去。穴を作る(地面をどかす:掘るのではない)。またどこかに(どこ?)素材工場を建てたらしい。ここでPCを作る。
 
10.18夜 地下室作り込み
(PCが固まるのを待つ。10.25は三隣亡なので24夜と25夜はお休み)
 
10.26夜 基礎工事(PC使用)
10.27夜 本棟部分の組み立て
10.28-29 配線・内装など
10.30朝 できた“ことにした”
11.01朝 きーちゃん(一級建築士の資格を持っている)が検査してOKをもらう。
 
PC:プレキャスト・コンクリート。工場内でコンクリートを必要な形に成形すること。天候や気温に左右されずにコンクリートを作ることが出来る。
 
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コンクリートが工場内で固まるのを待っている間に、その付近の山奥でイノシシを捕まえてきて猪肉パーティーしていたらしい。
 
関西は元々の九重・清川の地盤(元々の拠点は奈良県)だけあり、結構なコネがあってそのネットワークをフル活用したらしい。
 
千里Gも完成の連絡を受けて10月31日コリンに車を出してもらって新千歳に行き、一緒に伊丹に飛んだ。それで11月1日の朝、千里Gと貴子で、引き渡しを受けた。
 
それに先立ち、コリンは10月31日、留萌市役所に転出届けを出した。そして11月1日、姫路市役所に転入届けを出し、印鑑登録をして印鑑証明も取った。
 
そのあと、中古車屋さんに行き、予めネットで予約しておいた70万円のエルフ2tトラック(バン型)を購入した。
 
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九重・清川・南田兄弟の4人は、11月1日の夜、旭川に来た千里Vが召喚することにより、旭川に来た。これに留萌から召喚した羅笛兄弟も参加させた。
 
この6人で、貴子の家の横に建っている道場の配管などを外し、太陽光パネルを屋根から降ろし、シャワーユニットやトイレなども“ボルトを外して”分離。そして6人で四隅と中央2ヶ所を持ち「ヨイショ」と持ち上げた。
 
これを千里Vと、旭川の“貴子”(2番のルミナ)が見守った。
 
6人は夜通し、自衛隊のレーダーにひっかからない低空を運んで行き、11月2日の早朝4時頃、姫路の新居の後ろに、そっと?置いた。
 
これを貴子1(ノエル)と千里Gが見守った。
 
(貴子1はこちらに居るのがRで旭川で作業をしたのは千里Yだと思っている)
 
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「あとは配管・配線を調整するだけです」
「あんたたちお疲れさん。ひと休みしてから作業するといいよ」
「この道場運んだご褒美ください」
「よしよし」
 
それで千里は6人にご褒美として、母里酒造(清香の大伯父の酒蔵)の純米酒1斗樽をあげたら6人で一晩で飲んでしまった。全員完璧にダウンしていた。
 
(龍がとぐろを巻いている?)
 
おかげで配管・配線の作業は翌々日の11月4日になった!!
 
「全部終わったあとで、ご褒美をあげるべきだった」
と千里は呟いた。
 

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この後、きーちゃんは家電品、寝具、調理器具などの買い揃えなどを自身の眷属を使って進めた。弟の天野香山(あまの・かぐやま)にも力仕事などを手伝ってもらった。
 
「姉貴、姫路に引っ越すの?」
「しばらくは旭川と姫路の二重生活かな」
「へー。今度は姫路の男の娘を2000人、女の子に変えてあげるの?」
「私、旭川で2000人も性転換させてないよ!」
 
せいぜい20人くらいかな、と貴子は思った。
 
(↑毎月1〜2人の犠牲者が出てるじゃん)
 

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11月2日(水).
 
この日、S中では午前中に身体測定があり、潮尾由紀は先月同様、他の女子生徒と一緒に身体測定を受けた。由紀も女子と一緒の身体測定2度目だとだいぷ開き直りもできてきた。
 
この日の午後には体育があった。
 
「ゆきちゃん、着替えはもう女子更衣室においでよ」
「そうだなあ」
「絶対解剖したりしないって、みんなに根回ししておいたからさあ」
「それは勘弁して。世界の平和を守るために」
 
実は女子のクラス委員と保健委員が中心になって危なそうな子に事前に釘を刺しておいたのである。
 
それで由紀はこの日は半ば連行されるように女子更衣室に行って普通に着替えた。
 
「そもそも剣道の大会の時とかは普通に女子更衣室使ってるんでしょ?」
「私を知ってる人があまり居ないから気楽な面がある」
「ああ、それはあるね」
「性別に疑問を持たれた時、男子の生徒手帳持ってたら言い訳ができない問題はあったんだけどね。男子更衣室には入れないもん」
「女の子が男子更衣室に入れるわけない」
「生徒手帳は女子になったしね〜」
 
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「私剣道では小学校の時以来女子更衣室使ってた」
「それが当たり前だと思う」
 

それで由紀はその日、バスケットで5回のシュート機会の内3本を決めて大活躍だった。
 
体育が終わった後
「汗掻いたぁ」
と言って、由紀はブラを外した。
 
みんなの視線が集中する。でも由紀はその視線に気付かないふりをしてタオルで汗を拭いてから洗濯済みのブラを着けた。
 
汗をたっぷり吸ったパンティを脱ぐ。みんなの視線がもっと集中する。でも由紀は全然気付かないふりして洗濯済みのパンティを穿いた。更衣室内の緊張感がゆるむ。
 
それで由紀はその後、清水好花などとおしゃべりしながら、ブラウスを着てセーラー服上下を身に付けた。そのあとタイツを履いた。
 
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ちなみに「みんなが見てる所で下着を交換しなよ」と助言したのはその好花である。みんなの“疑惑”を払拭しておかないと、そのうち人の少ない時に解剖検査されちゃうよ、といってわざと多数の女子の前で裸体を曝させたのである。
 

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11月2日(水).
 
P大神は伊勢での神様会議から留萌にお戻りになった。
 
「千里、今年は随分頑張ったな。来年からも頼むぞ」
「私、姫路に行っても、秋祭りのあとはここに戻ってくるんですか〜〜?」
「当然、当然。そうだ。“洞門の鏡”を授けよう」
などと大神は言っている。
 
「それって、何かある度に頻繁に留萌に来いということですか」
「よく分かるな」
 
「そうだ。今回のお留守番のご褒美を何かやろうか?」
 
千里Vは考えるようにして(演技!)言った。
 

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「大神様、実は8月までN町に置いていた早川ラボのことなのですが」
「ああ。Y町に移転したんだったな」
「はい。私が居ない時にヒグマが出るとまずいので。あそこの管理人を今、出羽のH大神からお借りしている眷属の太陰というものにやってもらっているのですが、そのグループも留萌を離れるので後任が必要なんですよ」
 
「その管理をすればいいのか?」
「はい。仕事は毎朝鍵を開けて、夜鍵を締めて。あと誰か万一怪我した人がいたら病院に連れて行くとか、押し売りを追い返したり、みたいな要するに雑用係なんですけどね」
 
「剣道の指導はしなくてよいのか?」
「それは道場主の道田さんがします。だからあの“施設”の管理をしてくれればいいんですよ」
 
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「だったらカノ子、お前がやってやれ」
とP大神はおっしゃった。
 
「え〜〜!?私、剣道なんて分かりませんよ」
「竹刀(しない)と面(めん)の区別ができればいいよ」
「そのくらいは分かると思いますが」
 
「お前、千里と別れがたい。姫路に付いていきたいくらいだと言っていたではないか。千里の所有物件の管理人になればずっと関わっていられるぞ。そうだ、お前が管理人になったら、洞門の鏡の片方は道場に置こう。そしたら千里といつでも会える」
 
「あはは、それはいいかも」
「じゃカノ子さん、よろしくねー」
 
ということで太陰がしている早川ラボ・管理人の仕事はカノ子が引き継ぐことになったのである。
 

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「カノ子さんがしてくれるのなら、もうひとつ頼んでいい?」
「何でしょ?」
「今旧早川ラボ近辺で捕獲したヒグマやエゾシカを解体して、熊肉カレーにしたり、骨を全国的な資材企業に引き取ってもらったり、皮を札幌の皮革業者さんに売却したりしてるんですが、その元締めをお願い出来ませんか。これはちゃんとお給料も払いますので」
 
「お給料とかもらっても私使い道が無いのですが」
「大神様の口座に入れてもいいけど」
「じゃそれで。でも私熊の解体とか分かりませんけど」
「具体的な作業の指揮は先日知り合いになった西風さんっていう男装の似合う女性の龍がしてくれることになったから、カノ子さんにはその総元締めをお願いしたいんですよ」
 
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「うーん。よく分からないけど、細かいことはその人に頼めばいいんですね」
「そそ。分からなかったら私に連絡してもらえばいいし」
「毎日電話するかも」
「じゃ連絡用の電話番号教えておくから」
と言って“天野産業”の業務用に確保した携帯の番号を伝える。この電話は多分深川司令室を任されるVが管理することになる。
 
「この件は羅笛兄弟が中心になって進めるんだけど、あまり営業には向かないから西風さんにフロントに立ってもらう」
「ああ、あのふたりは気はいいんだけど、営業向きじゃないですね」
「だから、西風さんが営業部長、カノ子さんが社長って感じで」
「私が社長なんですか〜?」
「で私が会長ね」
「千里さんが会長ならしていいですよ」
「じゃよろしくー」
 
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大神様も頷いていた。大神様としては千里の“事業”が留萌に残ることで、千里との関係が続くことが大きいようである。
 

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