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「そうだ。それでちょっと相談があるんだけど」
「何?女性ホルモンを入手したいなら、買える所、教えてあげるよ」
「それは少し興味があるけど、それよりこれ見てくれない?」
と言って、司はワンピースを脱いで、ブラ付きキャミソールも脱いだ。
「こないだ一度女の子にしてもらった副作用だと思うんだけど、乳首が大きくなったままで、これだと水泳の授業に出られなくて」
「うーん・・・」
「何かうまい手が無いかなあ」
「女子用スクール水着を着たら?」
「え〜〜〜!?」
「そしたら乳首は隠せるよ」
「女子用スクール水着で水泳の授業受けるなんて恥ずかしいよぉ」
「軟弱な」
と千里は言ったが、チラリと、きーちゃんを見る。頷いている。
「それ何とかしてあげるから、今夜はここに泊まらない?」
「女の子の家に泊まったりしたら変に誤解されるよ」
「女同士だから問題無いと思うけどなあ」
と千里は言ったが、きーちゃんと素早く交信する。
「じゃ今夜は身代わりさんを司ちゃんの家には帰宅させるから」
「身代わり〜〜!?」
「ボロが出ないように、御飯食べたらすぐ寝てしまうように言っておく」
「でもそんな身代わりとか用意できるんだ?」
「これは夢の中のできごとだからね」
「へー」
「だから今日は御飯食べてここで寝なよ。朝起きたら乳首は小さくなってると思う」
「ほんと?」
「ついでに睾丸を取りたければ取ってあげるけど」
「取りたい気持ちはあるけどパスで」
千里はきーちゃんを見る。何だか焦ってる感じなのは何だろうと思ったが、処理してくれるようだ。
「じゃ御飯食べよう」
と言って、千里は台所から、唐揚げがたくさんできているのを持って来た。
「美味しそう!」
「御飯とお味噌汁もよそうね」
それで司はこの唐揚げをたくさん食べて満腹した。司の記憶はそこで途切れている。
朝目が覚めたら自分の家の自分の部屋に寝ていた。胸を触ってみると乳首が小さくなっていたので「助かったぁ」と思った。ちょっと惜しいけどね!
でもそれで布団から出て、ふと机の上を見たら、女子用スクール水着が置かれているのでギョッとした。
ぼく・・・女の子の服の隠し場所がもう無いよぉ。どうしよう?
6月16日(水).
沙苗は母と2人で旭川に出て、家庭裁判所で面談を受けた。面談は沙苗ひとりで母の見ていない所で受けた上で、母もその後でいくつかの質問をされた。
6月19日(土).
中体連野球留萌地区大会。S中はR中との決勝戦に臨んだが、エース野中はR中の強力打線に打ち込まれ、4回までに18-0の大差となる。決勝戦なのでコールドにはならないが、野中の投球数が多すぎるので5回から2年生の前川がマウンドに立ち、捕手も福川に交替した。
ストレート主体で時折カーブを混ぜる投球の野中に対して、前川は変化球主体のピッチングである。ボールにスピードが無いので簡単に打ち崩せそうなのにR中打線はこの変化球にやられて全くミートできずに凡打を重ねていく。
もっとも前川の投球は、全然要求した所に来ない(本人もどこに行くか分からない)ので福川は彼のボールを捕球するのが大変である。振り逃げになりかけたのもあったが、ギリギリ送球が間に合い、アウトにできた。
バッターの打ち損ないがあそこに当たってしまったこともあった。
さすがに痛いので一瞬倒れるが、すぐに起き上がって、転がっているボールを拾いピッチャーに返す。
「君大丈夫?」
とアンパイアから心配される。
「はい。大丈夫です」
「いやあそこに当たった気がしたから」
「当たりましたけど、ぼくのタマタマは鉄製なので平気です」
と福川が言うと
「それは凄いね。走塁の時、重くない?」
「キン力(きんりょく)トレーニングです」
と言うと、アンパイアさんも心配して寄ってきていた1塁手の小林君も笑っていた。
司は、ぼくの睾丸一度無くなって再生したから丈夫になったのかも、と思っていた。
結局この試合の後半は、福川の好リードもあり、R中はひとりも走者を出すことができず、9者凡退となる(この3回だけなら完全試合!)。
9者の内訳は、内野ゴロ5、外野フライ3で、三振は振り逃げ失敗になった1つだけである。前川はスピードボールが無いので、ビシッと三振を取るようなピッチャーではない。
そういう訳で後半完全に抑えられたので、18-0の大差で試合には勝ったもののR中ベンチはお葬式ムードだった。
「あれきっと試合が終わったら監督から殴られるよ」
「そんな気がする。可哀想」
「熱血監督だからなあ」
「うちみたいに、いつもニコニコしてるだけって監督さんはレアだよね〜」
「そうそう。名前は強飯(こわい)だけど、優しい監督」
そういう訳で、S中は今大会は地区準優勝となったのである。
2004年6月21-23日(月火水)には、1学期の期末テストが行われた。このテストの期間中もBは出現しなかったので、数学の試験はYが受けた。
Yは中間テストでは60点しか取れなかったのだが、今回は75点取ることができて
「中間の時よりは改善してる」
と数学の緒方先生から褒められた。
Yは花絵さんから渡されている算数ドリルが、とうとう小学6年生のところまで辿り付き
「君は私が思っていたのよりも速く算数ができるようになってきた。偉い。やはり君はできる子だったんだよ」
と言われていた。
実を言うと、Yと同じ問題をVもずっとやっているので、YとVの学習効果が相乗効果を出し、倍の量の練習問題をしているような状態になっているのもあったのである。
(RとGはまだ小学4年生の問題をやっている。でもRとGもやっと繰り上がり・繰り下がりの意味を理解したし、九九は間違えずに言えるようになった:玲羅はまだ九九が怪しい。「さぶろく・じゅうろく」などと言っている)
6月25日(金).
貴司がバスケ部の練習でメイン体育館に出て行くと、先に剣道部に来ていた千里(千里R)が道着のまま寄ってきて
「クッキー焼いたからあげる」
と言って、ビニールの包みに入れてリボンまで付けたクッキーを渡した。
「おぉぉぉぉ!!」
と言って貴司が凄く喜んでいるので、男の子って可愛い、と千里Rは思った。
「ついでにハッピーバースデイ」
「サンキュ、サンキュ」
それで千里Rは貴司と握手だけして剣道部の方に戻った。(例によって周囲からは「キスキスキス」という声があったがスルーした!)
様子を見ていた小春とカノ子は顔を見合わせた。
「貴司君と別れるという件は保留しようか」
「Rが貴司君のこと好きになってしまったみたい」
「Bがもし復活したら三角関係になるよ」
「貴司君は元々二股・三股しやすい性格」
「当面放置するか」
ということで、結果的に“B消失の後始末”についても取り敢えず保留することにした。
7月2日(金)にはS中で球技大会が開かれた。1組女子はこのような種目に振り分けた。
Basket 恵香・萌花・絵梨・佐奈恵・美都
Tennis 世那・沙苗
PingPong 優美絵・千里
Softball 蓮菜・玖美子・雅海・穂花・小春
男の子なのか女の子なのかよく分からない雅海は、男女混合チームで出場するソフトに出すことになった。男子5人・女子4人・性別不明1人というチームである(性別以前に人間ではない子が混じっている気もするが)。
昨年、優美絵と千里のペアはテニスに出場してあっさり負けたのだが、今年は卓球に出た。しかし元々この2人は小学校の時の卓球の最弱ペアなので今回は実質1ポイントも取れないストレート負け(11-1, 11-1, 11-1. (*21) )を喫した。
(*21) "1"は「ラブゲーム回避」でもらった点数。卓球では「相手が0点のゲームをするのは失礼である」として、10-0になった時点でわざとミスして相手に1点だけポイントを与える習慣がある。但し「勝負事でそういうことをすること自体が相手を馬鹿にしたプレイであり、最後まで全力でプレイすることこそマナー」という考え方もあり、近年は「ラブゲーム回避」を敢えてしない選手も増えてきたし、ラブゲームをしても非難されることは少なくなりつつある。
この球技大会は基本的には「部活でやっている種目には出ない」という方針である。セナは小学4年生の時にテニス部だったので微妙だったが、3年半もブランクがあるならいいだろうということで出すことにした。
「え〜?テニスなの?私、4年生の時にテニス部やってたよ」
と本人も言ったのだが
「セナ君、スコート穿きたいでしょ?テニスに出るならスコート穿けるよ」
というので落ちた!
沙苗はショートパンツで出場し
「スコート穿けばいいのに」
と言われていた。
でもこの“男の娘ペア”は(むろん女子の部に出ているが)一回戦で1年生の(女子)ペアに1ゲームも取れずに負け、その後の交流戦でもあっさり負けて最弱を証明した!
「思ったように身体が動かない感じだった」
とセナ。
「やはり睾丸を取ったので筋肉が落ちたんだろうね」
と恵香から言われる。
「うん。それは結構感じる」
とセナも認めた。
男の子だった頃ほど体力がもたない感じなのである。瞬発力や反射神経もかなり落ちた気がしている。睾丸のあるなしの差をひしひしと感じていて、男女を分けて競技するのはもっともだと思っていた。
千里Bはひたすら眠っていた。
長い夢を見て、ひとつの夢が終わると次の夢が始まるという感じだった。日中は千里Yか千里R(たいていはY)に相乗りして学校やP神社での出来事も、それもまた夢のように体験している。しかし夜間は独自の夢を見ていた。
ある時はこんな夢を見た。
貴司が瀬越駅(留萌駅から増毛方面に1つ行った駅)で人を待っている感じである。貴司何してるんだろう?と思ったら、貴司の所に女の子が1人歩いてくる。まさかデートか!?
千里は怒りが爆発した。
その子と貴司が会った所に出ていく。
「あんた何よ」
「これから貴司とデートするんだけど」
「貴司とデートの約束をしたのは私だよ」
「貴司は私以外とはデートしないよ」
千里と女の子は睨み合う。貴司が「やば〜」という顔をしている。
「だいたいあんた男じゅないの?貴司ってホモなの?」
「私は女だけど」
「女を主張するのは勝手だけど、あんたおっぱいも無いでしょ?」
「おっぱいくらいあるけど」
「豊胸手術でもしたの?でもセックスできないでしょ?」
「セックスくらいしてるけど。これまで貴司と3回したよ」
そんな覚えは無い。無実だ〜!と貴司は思っている。
「お尻の穴にでも入れさせたの?」
「貴司は私のヴァギナに入れてるよ」
「そんなものあるの?」
「何なら、裸になってみようか?」
「よし。じゃ、そこのドラッグストアのトイレに行こうよ」
「うん」
それで焦っている貴司を連行して、千里と女の子はドラッグストアに行く。そして女子トイレに入る、
「ぼくも女子トイレに入るの〜?」
「当然。見届けてもらわないといけないから」
「ひー」
それで女子トイレの中、貴司と女の子の前で千里は服を全部脱ぎ全裸になってみせた。
「ごめん。あんた本当に女だったのね。やはりモロッコで性転換手術してきたの?でも悪かった。あんたがそこまでしてたのなら私身を引くよ。幸せにね」
と言って、彼女は帰って行った。
貴司は困惑してる。
「千里、性転換手術しちゃったの?」
「そんな手術受けてないけど」
「だって女の子にしか見えない」
「ほんとうに女の子なのかどうか、ホテルに行って確認してみる?そのままセックスしてもいいよ。避妊具も持ってるし」
貴司はゴクリと唾を飲み込む。彼は過去に多数の女の子とデートしているし、キスも千里を含めて何人かとしている。でもセックスの経験はまだない。セックス・・・・してみたい!千里は間違い無くさせてくれる。避妊具も持っていると言うし。
でも・・・
「こんな狭い町で、中学生がホテル行ったら、バレるよ!」
「こんな狭い町で、浮気しようとしたら、バレるよ」
「ごめーん」
「じゃ代わりにケンタッキーでもおごってよ」
「うん。そのくらいなら」
それで貴司は千里とケンタッキーで楽しく食事をし、その後少し散歩して楽しい1日を送ったのであった。
「貴司、誰にも渡さないんだから」
などと寝言を言いながら、千里Bは安らかな顔で熟睡していた。
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女子中学生・十三から娘(32)