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■女子中学生・十三から娘(20)

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一方のセナだが、お腹がずっと痛いので、月曜日は早めに寝た。そして火曜日の朝、トイレに行くと、着けていたナプキンが真っ赤になっていた。
 
ホントに生理が来たんだ!
 
とセナは驚いたものの、「ぼくまた1歩女の子に近づいたのかも」などと思い、お股をトイレットペーパーで拭き、ナプキンは新しいのに交換。経血を吸ったナプキンは巻いて保護シートで包み、トイレの汚物入れに捨てた。
 
そしてトイレを出てから母に
「私、生理来ちゃった」
と言うと、
「おお、おめでとう」
と言ってくれた(母はジョークと思っている)。
 
「じゃ今夜はお赤飯にするから、学校の帰り、甘納豆買ってきてよ」
「OK」
 
なお学校に行って千里に「やはり生理来ちゃった」と言うと「おめでとう」と言った上で
「タックば生理が落ち着いてから、木曜か金曜くらいに外そうか」
と言った。
「うん。ありがとう」
 
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傍で聞いていた蓮菜と玖美子は、どうなってんだ?と首を傾げていた。
 

5月11日(火).
 
雅海が学校から帰宅すると、母から
「なんか荷物来てたよ」
と言われた。
 
差出人を見ると「&&エージェンシー・マネージング部長・白浜藍子」と書かれている。ここで開けるとヤバい気がしたので、自分の部屋に持っていって開ける。
 
すると、なんと先日のパーキング・サービスのライブで、バックダンサーのパトロール・ガールズとして踊った時の衣裳である。青のブラウス、オレンジ色のブラウス、ミニスカ、帽子などが入っている。
 
そして白浜さんの直筆!の手紙が入っている。
 
「先日はありがとうね。こないだの衣裳をクリーニングして、ネームも入れたから送っておくね。また北海道でライブがあった時はよろしく」
 
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見ると、女性警察官風の、肩章入りブラウス、ミニスカート、ネクタイ、帽子の各々に "Masami" という刺繍のネームが入っている。
 
「わぁ。もらえるんだったんだ!」
と思い、取り敢えず着てみた。
 
鏡に映してみると「可愛いし、かっこいい!」と思った。
 
(雅海の部屋には高さ1.6mの姿見がある)
 
それで自分の姿に見とれていたら、いきなりドアが開いて
「何買ったの〜?」
と母の声。
 
ギクッ!とする。
 
「あれ?いらっしゃい。雅海のお友達ですか?」
と母。
 
雅海は真っ赤になりながら
「お母ちゃん、ぼくだよ」
と言った。
 
母はマジマジと雅海を見詰めた。
 
「びっくりした!でも可愛い服じゃん。高かったんじゃないの?」
 
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「買ったんじゃないんだよ。こないだ札幌行った時、実はパーキング・サービスのライブでバックダンス踊る子が足りないとかでさ。大通公園で人を集めていて、それでぼくも声を掛けられて参加したんだよ。その時の衣裳にネームを入れて送って来てくれたみたい」
 
「あんた、ライブのバックダンサーしたの?」
「直前に人数足りないの発覚して、とにかく誰でもいいから女子中高生を集めたみたいだった」
 
「へー!あんたがアイドルのバックダンサーね〜」
「楽しかったけどね」
「あら、それ手紙?」
「うん」
「また北海道でライブある時はよろしくって」
「それでこの衣裳を送って来てくれたんだと思う」
 
「じゃあんたもアイドル?」
「ただのバックダンサーだよぉ」
「でもあんた女の子アイドルになるんだったら、とりあえず睾丸だけでも取ったほうがいいよ」
「え?え!?」
「私、行けばすぐ睾丸取る手術してくれる病院、教えてもらったのよ。土日もやってるらしいから、今度の土曜日にでも行って、手術してもらおうか」
「ちょっと待って〜!」
 
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「一緒にちんちんも取る?ちんちん取るのもしてくれるらしいよ」
 
ぼく男の子やめることになるのかな?やめてもいいけど、いきなりは心の準備が。でもこれだと、そのまま性転換手術されてしまいそう!!
 

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そんなことを考えた時、雅海は思いついた。
 
「お母ちゃん、ごめん。実はぼくもう睾丸取っちゃったんだ」
「そうだったの!?」
 
「あまり男性化したくなかったから。でも言うと叱られると思って黙ってたの」
「でも手術代高かったんじゃないの?」
「手術代については訊かないで。人に迷惑掛けちゃうから。悪いことだけはしてないから」
「分かった。でもあんたが決断して、そうしたのなら、お母ちゃんもお父ちゃんも反対しないよ」
「ありがとう。ほんとにごめんね。勝手なことして」
「ううん。あんた自身の身体だもん」
と言ってから、母は言った。
 
「だったら、あんた学校にセーラー服で通う?」
 
う・・・一難去ってまた一難。
 
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「それは少し考えさせて」
「うん。いいよ。睾丸取って男性化を停めたのなら、あとは急がないよね」
 
あはは。
 

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5月11日の午後、沙苗は母と一緒に札幌に行き、S医大で診察を受けた。
 
「月経が起きた!?」
と主治医が仰天し、すぐ診たいということでその日の内に訪問したのである。
 
すぐにMRIを撮られたのだが、医師は首をひねっている。
 
「確かに、先日観察していた穴がヴァギナ状に成長しています。そしてその先に子宮らしきもの、卵管らしきもの、卵巣らしきものも見られます」
と医師は写真を見ながら言う。
 
「じゃその卵巣・子宮が月経を起こしたのでしょうか?」
「それが考えにくいんですよ。MRIに映っている卵巣や子宮はとても小さなもので生まれたてという感じ。赤ちゃんサイズなんです。こんな小さな卵巣・子宮が月経を起こすとは思えないんですよね」
 
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「では不正出血か何かでしょうか?」
「経血を分析した結果では、ごく普通の経血ですね。だから不正出血とかではなく、これは確かに月経だと思います」
 
医師もかなり悩んでいたが、取り敢えず“異常ではない”という診断だった。そして経過観察することになった。
 

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5月12日(水)は変則時間割で、実力テストが行われた。今回の勉強会メンツの成績はこのようになっていた(昨春→夏→冬→今回)。生徒数は81人である。
 
玖美子1-1-1-1 蓮菜2-3-2-3 田代3-2-3-2 美那22-14-12-10 穂花25-16-11-9 千里40-26-22-16 恵香43-32-28-22 沙苗65-41-36-32 留実子74-58-47-44 セナ78-81-68-69
 
玖美子は部活もたくさんやっているのに勉強でもトップをキープしているというのは本当に凄い。まさに文武両道である。穂花と美那がとうとう10位以内に入った。沙苗と留実子はちょうど全体の真ん中付近である。入学時は底辺付近だったのに、よく頑張っている。セナは前回より下がってる!
 
「セナ、女の子するのに夢中で勉強がおろそかになっているのでは」
「そういう訳じゃないけど」
「3月までは勉強するためじゃなくて、女の子するために、ここに来てたからなあ」
 
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5月14日(金)は、校内マラソン大会が行われた。昨年同様、男子は5km、女子は3kmのコースで行われる。昨年セナは男子として参加したのに、女子としてのゴール票を渡され、それも“男子と女子の人数が合わない”問題のひとつの原因になったのだが、今年は最初から女子として参加する。
 
「まさみちゃん、女子の方に行かなくていいの?」
なとと祐川君は、他の男子からからかわれていたものの本人が
「どうしよう?」
と悩んでいる様子なので、からかった男子たちが顔を見合わせていた。
 
女子の体育委員・優美絵が気付いて
「まさみちゃん、女子の方に参加したいなら、広沢先生に言ってあげるよ」
と声を掛けた。
 
「そんなのいいのかなあ」
などと本人は言っているが、優美絵は
 
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「まさみちゃん、女の子になりたいんでしょ?そういう子は最近多いからあまり悩むことないよ。おいでおいで」
と言って、本当に彼を広沢先生の所に連れていき、女子としての参加許可を取ってしまった。それで広沢先生は、雅海が付けていた、男子を表す青いタグを回収し、代わりに女子を表す赤いタグをくれた。
 
「まさみちゃんは入賞の可能性は無いから、わりと性別は緩くみてもらえる」
と優美絵は言う。
 
「たしかにぼくは男子ではビリ争いするグループだし」
「女子なら平均くらい行けるかもね」
 
それで彼は今日は3km走れば済むことになったのである。
 
広沢先生からもらった赤いタグを体操服に付けたが、赤いタグで先日のパーキング・サービスのライブを思い出した。
 
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女の子するのもいいかもね。
 

マラソン大会で、セナは恵香や沙苗・小春・千里と一緒に、極めてのんびり走り、結局、女子の中でもビリに近いグループでゴールした。沙苗は生理中なので無理しなかったのだが、セナも沙苗と一緒だと心強かった。セナは自分が生理中であることは言わなかった(千里は聞いているが人のことを話したりしない)。
 
雅海は女子の部で走るのに少し罪悪感を感じながら走っていたものの、千里と蓮菜・優美絵などと一緒になり(雅海が折り返して少し走った所で、往路を走っていた蓮菜たちに声を掛けられ彼女たちを待っていた)、その後、のんびりしたペースでゴールまで走った。
 
「雅海ちゃん、実は結構女装で出歩いてるんでしょ?学校にもセーラー服で出てこない?」
と優美絵が言う。
 
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「その件で、千里ちゃん、ちょっと後で相談に乗ってくれない?」
と雅海が言った。
 
「・・・いいよ」
と千里は答える。
 
「だけど、雅海ちゃんが女の子になっちゃうのは、みんな“織り込み済み”だから、あまり悩まなくてもいいよ」
「だいたい、もう睾丸取っちゃったんでしょ?」
「へ!?」
「だってね〜」
「旭川の某病院前で雅海ちゃんを見たという証言が」
 
それもしかしてお母ちゃんが言ってた病院かなあ。なんでみんな知ってるの?
 
「ゴールデンウィーク中に睾丸を取ったらしいと、女子はみんな噂してたよ」
 
そんな話になってんの〜〜〜!?
 
「クラスのみんなが、雅海ちゃんは女の子になりたいんだろうと思ってたよ」
「そうなの!?」
 
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「セーラー服着て出歩いているの見た子たくさん居るし」
「婦人服売場でスカート選んでるの見た子も何人もいるし」
 
きゃー。結構見られてる。
 
「女の子の声が出せることは全員知ってるし」
 
嘘!?秘密にしてたのに(←恵香が言いふらした)
 
「多くの子は雅海ちゃんは実は声変わりしてないけど、男の子みたいな声を開発して、声変わりを装ってるだけと思ってる」
「うーん・・・」
「時々ブラジャー着けてるのもみんな認識してるし」
 
あはは。こないだもブラ跡指摘されたし。
 
「だから恥ずかしがらなくてもいいよ」
「6月から衣替えだし、それを機会に女子制服着て学校に出ておいでよ」
「うーん・・・」
 

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なお、女子のトップは例によって留実子であった。千里と玖美子も並んで走って12位・13位になっていた。上位はやはり運動部の中核メンバーがランクインしていた。2-4位は全員陸上部員だった。
 
なお例によって
「2年生でゴールした女子が在籍数より多い」
と言って先生たちが悩んでいた。
 
渡したタグは学年と性別で色分けされている。3年生はオレンジとグリーン、2年生は赤と青、1年生は紫と黄である。2年生は在籍者は男45女36だが、祐川雅海が女子として出場したので、本来男44女37のはずだった。しかしゴールした2年生は、男は44人だが女は40人いた。
 
(千里が2人多いのと小春がいるから)
 

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千里VはGが疲れて帰ってきた様子を見て
「お疲れ〜」
と言った。
 
「2km近く走ったらやはりきつい」
「お疲れお疲れ」
 
「Bが途中で消えちゃって、優美絵ちゃんがどこか溝にでも落ちた?とか騒いでたから、慌てて私が出現して残りを走ったけど、きつかった。でもなんでBは消えたのかなあ」
 
とGは訳が分からないようである。Gはゴールまで走ってからこちらに戻ってきた。小春の目には「Bが先にゴールしていたRのそばに近づいたから消えた」ように見えただろう。
 
(自分を含む千里の誰かを短距離・転送出現させる能力はA大神から借りている)
 
「疲れたからじゃない?」
「何か疲れたから消えるってBがいちばん多い気がする」
「もしかしてB自体が消えかかっているとか?」
とVは言った。
 
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「その可能性あると思う?」
「Bは3人の中でいちばん存在感が薄いもん。バスケの練習にも週に2回くらいしか出てないし。最近授業も数学以外出てない」
「そうなんだよね。だから理科はほとんどYが出てる」
 
各千里は自分の苦手な授業の前には勝手に消えてしまうので、GやVが介入して、その授業を受けてくれそうな千里を出現させている。3人とも嫌がった時はGかVが出ている:だからGやVもセーラー服や体操服を用意している。
 
英語は3人とも得意だからその前の時間との兼ね合いで3人が平均して出ている。でも前回の授業内容を知らない!
 
「Rよりはマシだもんね」
「そうそう。私もRも精密思考ができない」
「勘でほぼ正しい答え出すから実用上問題無い気がするなあ」
「Bが消えちゃったら、貴司君との交際はどうしよう?」
「貴司君はすぐ次の恋人見付けると思うよ」
「確かにそうだ!」
とGは呆れるように言った。
 
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