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■女子中学生・十三から娘(7)

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「ポジションの何とかガードとか言うのは?」
などと千里が訊くので、数子は呆れながらも教えてあげる。
 
「ポイントガード(Point Guard PG)あるいは1番は、チームの司令塔。攻撃を組み立て、全体の選手の配置を把握して、得点できそうな人にパスを出す」
 
「シューティングガード(Shooting guard SG)あるいは2番は、2つのタイプがあるけど、うちのチームでは主としてスリーポイント・シュートを撃つのが役目」
 
「ああ、あのゴールを中心に6mだか7mの半円が描かれている所の外から撃つのね」
「そうそう。別のタイプのシューティングガードもあるんだけど、今は考えなくていい。千里はシューティングガードだから、ボールもらったらどんどんスリーを撃って」
 
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「了解〜」
 
「スモールフォワード(Small forward SF)あるいは3番は、概して器用でスキルの高いプレイヤーか就くポジションで、チームの便利屋さん。ボール運び、パス回し、そして自ら中に進入して得点を挙げたり、時には外からスリーも撃つ何でも屋さん」
 
「へー。でも久子さんあまりシュート撃たなかったよ。新人戦の時」
「久子さんは本来ポイントガードなんだけど、雪子ちゃんという優秀なポイントガードが入ったし、うちにはスモールフォワードに相当する選手が実は居ないからスモールフォワードとして登録している」
「ああ、そういうことか」
 
「パワーフォワード(Power fowrard PF)あるいは4番は、実は次に説明するセンターの予備のようなポジションで、中学生くらいのチームだと、いちばん背の高い人がセンターになって、次に背の高い人がパワーフォワードになったりする」
 
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「でも数子ちゃん、そんなに背が高くないよね」
「背を伸ばしたいんだけどね〜。牛乳毎日飲んでるけど、なかなか伸びない。でも私はスモールフォワードやるほど器用じゃないから、パワーフォワードの登録にしてもらっている」
 
「ああ、選手のタイプの問題か」
「そうそう。がむしゃらに得点に行く、貪欲なタイプがパワーフォワードで、巧みにプレイして上手に得点するのがスモールフォワード」
「ああ、何となく分かった」
 
「そして最後にセンター(Center C)あるいは5番は、一般にチーム内で最も背の高いあるいは得点力のあるプレイヤーがなるのだけど、チームの大黒柱で、相手の防御を強引に突破してレイアップシュートを決めたり、相手のシュートをブロックしたり、リバウンドを取ったりする。ジャンプボールもだいたいセンターがやる」
 
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「リバウンドって?」
「シュートしたけど入らなかったボールがバックボードで跳ね返ってくるでしょ?それを確保して、自らシュートし直したり、あるいは誰かシュートしやすい位置に居る人にパスする」
 
などと説明しながら、数子は、何で今更こんな基本的なことを解説しなければならないんだ?と思っている。
 
「ああ、背の高い子が絶対有利だ」
「そうそう。だからるみちゃんがセンター」
 
「ありがとう。だいぶ分かった」
と千里は数子に感謝した。
 
千里は指を折っていた。
「ねぇ。今日来てる人私を入れても9人しか居なかったよね。私12番の背番号のユニフォームもらったけど、3人休んでるの?(←引き算よく出来ました!)」
「バスケットの背番号は4番から」
「そうなんだ!」
 
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「審判がスコアラーにファウルした人とか得点した人を指で示して伝えるのに、1から3までは得点の数やフリースローの数と紛らわしいから、背番号は4からにする」
 
「なるほどー」
 
「だから4番付けてる久子さんがキャプテンだよ」
「そういうことだったのか」
「5番が副キャプテンで、友子さんが付けてる」
「ああ」
 

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着替えた後で、数子はお弁当を食べていたが、千里(実は千里Y)も母からお弁当を渡されて食べる。
「あんたどこ行ってたのよ」
と母からも叱られた。
 
なお留実子のお弁当も千里の母が渡していたが、実際にこのお弁当を作ったのは千里Bである!
 
そして13:00。準決勝の試合が始まる。相手はC中である。昨年の秋の大会で3位決定戦を戦った相手で、その時は1点差で勝ってS中が女子バスケ部創設以来初めてのメダルを獲得している。新人戦では総当たり戦の第2試合で対戦し、千里のスリーと留実子の近くからのシュートがどんどん決まり、52-64で勝っている(この試合に出たのは千里R)。
 
向こうは最初から4番を付けた人が千里を、5番を付けた人か留実子をマークした。新人戦の時と同じマークの組合せである。
 
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しかし“この千里”は新人戦の時は、ここよりもっと強いR中の4番さんとやっていたので、C中の4番さんのマークは簡単に外してしまう。それでフリーになった所に雪子から鋭いパスが来るので、千里はすぐにスリーを撃つ。
 
それでこの試合は、千里のスリーが(フリースローを含めて)40分間に18本分入って54点。留実子も新人戦の時より進化してるので5番さんのマークをものともせずに得点を決めて28点をゲット。2人の得点だけで合計82点、全体では52-96の大差でS中が勝ち、決勝戦に進出した。C中も途中からもう諦め顔で、1年生で6番を付けている子を後半は下げて3位決定戦のために温存したようであった。
 

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なお、試合が終わると、千里はすぐ紐を付けられた!
 
「でも次の試合はユニフォームを着替えなくちゃ」
「下着も交換したーい」
ということで、紐を付けられたまま更衣室に行く。
 
それで下着を交換する。千里は小春が新たに渡してくれたスポーツブラとショーツを着けた上で、赤いユニフォームを着ける。
 
「ユニフォーム2色あるんだ?」
「そうそう。対戦するチームを区別できないいけないから、ユニフォームは、淡い色と濃い色の2色用意しておかないといけない」
「へー」
 
「決勝戦では対戦相手のR中が白を使って、うちが赤を使う」
「それで着替える訳か」
「うん」
「どっちが薄い色でどっちが濃い色ってどう決まるの?」
 
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「元々リーグとかでは、ホームが薄い色で、アウェイが濃い色なんだけど、中高生の大会みたいなノックアウト式のトーナメントでは、付けられた番号の若い方が淡い色を着る。ただし、着替えとかの都合で双方のチームが同意すれば、濃淡を交換して試合をする場合もある」
 
「なるほどー。できたら試合ごとに着替えたいよね」
「そうそう」
 

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留守番をしていた千里Vは、OL風の服を着てお化粧までした千里Gが入ってくると
 
「お帰り。お疲れ〜」
と言った。
 
「ただいまぁ。疲れた」
 
と言って、Gは座ると、メイクオフシートで顔を拭く。
 
「私たちも眷属が欲しいなあ。どこかに可愛い男の娘でも落ちてないかなあ」
「男の娘がいいの?」
 
「普通の男の子でもいいよ。女装が似合いそうだったら。それで去勢してからしもべにする」
「犬や猫並みの扱いだ」
 
「似たようなもんじゃない?そうだ。去勢といえば、福川君、去勢してあげたらダメかなあ。あの子最近かなりスカート穿いてるみたいだし。スカート姿がまた可愛いのよね〜。でも睾丸が付いたままだと、男っぽくなってしまってもったいない。13歳くらいが女の子らしい骨格になれる最後のチャンスたと思うのよね〜」
などとGは言っている。
 
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「やめときなよー。女の子になっちゃったら野球選手になれなくなるし」
「女子ソフトボール選手になればいいのよ」
「よけいな親切はやめよう」
 
全くである。勝手に女装常習者と勘違いされて去勢されたら、さすがに可哀想だ。
 
「だけど“車の免許持ってる”しもべが欲しいよね」
「ほんとほんと。お巡りさんに見付からないように運転するの大変だし」
 
「よくやるよ」
とVは呆れて言った。
 

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準決勝が終わって約30分後、決勝戦と3位決定戦が始まる。CコートでS中とR中の決勝戦、DコートでC中とH中の3位決定戦である。
 
R中は最初から千里にダブルチームを掛けて来た。更に向こうのキャプテンは留実子をマークする。結局、S中の得点はこの2人で大半を稼ぐので、この2人を何とか抑えればどうにかなるし、また抑えないと下手すればワンサイトゲームになる、という判断である。
 
向こうの厳しいマークに、さすがの千里と留実子も得点ができない。その前にボールを持たせてもらえない。ここで3対2になるので、R中は残りの2人でS中の3人と対峙しなければならないが、S中は、千里・留実子・雪子の3人と他のメンバーの実力差が大きいので、残りのメンバーの中で最も得点力のある数子でも、R中の選手には全く対抗できない。それで優秀なポイントガードである雪子も、得点力のある人が使えない状態では、ゲームの組み立てようが無かった。
 
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それで前半は24-14と、R中が大きくリードを奪う展開である(でも得点がどちらも凄く少ない)。千里はフリースローで取った6点だけである。
 
「第3ピリオドは向こうの3人も休むのでは?そしたらこちらのチャンス」
と久子はハーフタイムに言っていたが、千里・留実子をマークする3人は第3ピリオドになっても休まなかった!新人戦の時に、4番の人と5番の人が休んだら、その間に一気に40点取られて追いつかれたので、今回は一切休まないつもりのようである。
 
「これはどちらが先に体力が尽きるかの勝負だ」
と友子が言った(←友子は既にへばっている)。
 
第3ピリオドを終えて得点は38-22と相変わらずロースコアである。第4ピリオドに入り、千里もこのままやられるのは不愉快と思い、強引にシュートに行った。ブロックされるが、相手の手が千里の手に当たった。
 
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ファウルのコールでフリースローになる。
 
千里はきっちり3本決める。38-25.
 
向こうのシュートが外れたののリバウンドを留実子が取り、センターライン付近に居た千里に長いパスを送る。千里はドリブルでスリーポイントライン近くまで行くとすぐスリーを撃つ。ブロックされる。
 
ファウルのコールでフリースローになる。
 
千里はきっちり3本決める。38-28.
 
更に乱戦の中から雪子がボールをスティールして高速ドリブルで攻め込む。千里が追いかけていく。雪子は千里のほうを見もせずに、後ろ向きにパスを出す。千里は飛び付くようにキャッチして、シュートをする。
 
またブロックされる。ファウルのコールだが、何か審判が記録員に確認している、そして、今ファウルした選手に退場が命じられた。
 
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「何何?どうしたの?」
と千里が数子に尋ねる。
 
「ファウルの累積5回で退場をくらった」
「そういうルールがあるんだ!」
 

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千里はもちろんきっちりフリースローを3本とも決めて38-31.
 
この後、向こうが攻めて2点取り40-31.
 
千里はこれまで5番の人と6番の人にマークされていたのが、5番の人が退場になり、代わって7番の人がマークについた。しかしこの人は5番の人ほどうまくない。
 
千里はたくみにマークを外す。雪子から矢のようなパスが来る。すかさず撃つ。入って、40-34.
 
もう試合の行方は分からなくなった。
 
向こうも反撃してしっかり2点取る。
 
4番さんが千里のマークに付く。千里を4番さんと7番さんでマークし、留実子を6番さんがマークする。
 
これで千里の動きがまた封じられるが今度は留実子がマークを振り切って得点を入れ、42-36.
 
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しかし、4番さんは試合開始からここまで全く休まずにずっと出ている。少し疲れて来ているのではという気がした。4番さんが9番さんにやや無防備なパスを出した所に千里はダイビングでもするかのように飛び付いてカットした。
 
ボールが転がる。雪子が確保する。
 
態勢を立て直した千里にパス。
 
千里が撃つ。
 
入って42-39.
 
もうスリー1発で追いつくという得点になってしまう。
 

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しかしR中は次の攻撃では慎重に2点取り44-39. 数子が2点入れて44-41.向こうの攻撃が失敗した後、 こちらの攻撃で千里が巧みにフリーになってスリーを撃つが、向こうのキャプテンがブロックしようとして千里の手に触れてしまう。
 
ファウルの笛。
 
でも千里のシュートはゴールに飛び込んだ。
 
千里はゴールしたんだから、ファウルは関係無しかなと思ったのだが、フリースローを指示される。
 
「なんで?」
「ファウルされてゴールした場合は、バスケットカウント・ワンスローと言って、得点は認められた上でフリースローを1本もらえる」
と数子が説明する。
 
「お得だね!」
「シュートに対するファウルというのは悪質だから、その分のペナルティだよ」
 
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それで千里はこのフリースローもしっかり決める。
 
つまり一気に4点取って 44-45 と、この試合初めて、S中がリードを奪った。
 
そして千里にファウルした向こうのキャプテンはファイブ・ファウルで退場である!
 
キャプテンも副キャプテンも退場になり、6番さんがキャプテンマークを付けた。
 

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