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司は爽快に目が覚めた。かなり熟睡したみたいと思って携帯を見ると3:33 PMである。あ、数字の並びがきれいだと思った。
1時間くらい寝ちゃったかな。何か物凄く爽快な気分である。身体が軽くなったかのようである。司は起き上がると、ベッドを直して(←行儀が良い)部屋を出た。
「ありがとうございます。ぐっすり寝ました」
「良かった、良かった」
「すみません。トイレどこでしたっけ?」
「玄関横の♀マークのある所」
「あ、はい」
そうか。ぼくスカート穿いてるし、女子トイレ使わないといけないよなと思い、玄関そばの♀マークのついたドアを開ける。バスルームの隣に洗面台が2つ並んでいて、その隣に♀マークが2つ並んでいる。でもあれ?♂マークは無いの?男子トイレは別の場所にあるんだろうか?
などと考えながらトイレに入る。スカート穿いてるから座ってトイレをする。この座ってトイレするのに最近司は完全にハマってしまっていた。
スカートをめくり、パンティを下げて便座に腰掛ける。排尿機構を開放するとおしっこが出る。
え!?
おしっこの“出方”が全然違うのである。
なんで!?
と思ったが、取り敢えず出るだけ出してしまう。そしてトイレットペーパーを少し取り、いつものようにおしっこの出た所を拭こうとしたが空振りする。通常ちんちちんのある場所にちんちんが無かったのである。
へ?
と思って、そのあたりを反対側の手で探ると、ちんちんもたまたまの袋も見当たらない。でも濡れている部分はあったので、そこをトイレットペーパーで拭いた。
司は、スカートを脱いでみた。パンティも脱いで、その付近をよくよく見る。
嘘!?
お股には、ちんちんもたまたまの入った袋も無く、代わりに縦の割れ目がある。おしっこはその割れ目の中から出て来たようである。
司はしばらく思考停止していたが、やがて自分は女になってしまったのではないかという結論に到達する。
うっそー!?
ふと気がついて胸に触ってみる。
わぁ。
そこには豊かな2つの膨らみができている。
全身女になっちゃった!?
司は取り敢えず水を流し、手を洗い、パンティを穿いてスカートを再度穿いてからトイレを出た。
「あのぉ、貴子さん」
「うん?」
「ぼく女の子になっちゃったみたい」
「そうそう。なんかあなたが男の子の身体になってたから、修正してちゃんと普通の女の子に直してあげたよ」
ぼく性転換手術とかされたのかな?
「玉は無い方がいいとか、女の方がいいとかも言ってたし」
言った覚えがある!
「でも困りますー」
「あら、気に入らなかった?」
「だって、これじゃ男子制服着られないし」
「女子制服着ればいいじゃん」
「急に女になったらお父ちゃんに叱られそうだし」
「娘がひとりできたら喜んでくれるよ」
「それに女になってしまったら野球部やめないといけないし」
「女子はダメ?」
「うちの野球部は男子しか入れてくれないです」
「困ったね〜。ソフトボール部にしばらく在籍しておいて、女子野球部のある高校に進学したら?札幌新陽高校とか女子野球部あるよ」
「男に戻せないんですか〜?」
「男に戻りたい?」
司は迷った。女になるのも悪くない気がする。でも突然の性転換で予想される様々な激風に自分は耐える自信が無い。だって、原田さんとか凄い苦労してるみたいだもん。
「戻りたいです」
「そう?じゃ戻してあげるよ」
「お願いします」
お願いはしたものの、凄く惜しい気がした。せっかく女の子になれたのに!
「でも性別を1度変えると24時間は再度変更できないのよ(←大嘘)。明日の14時くらいまで待ってもらえない?そしたら男の子に戻してあげるから」
「分かりました」
「それまでうちに居て欲しいから、お母さんにお泊まりの許可取れる?」
「じゃ小学校時代の同級生に会って、泊まっていかないかと誘われたと言おうかな」
「じゃ私がそのお友達のお母さんのふりをしてあげるよ」
それで司は母に電話をした。予定通り途中から貴子さんに代わり、挨拶までしてもらったら「ではよろしくお願いします」ということになった。
「じゃ明日の14時まで24時間限定の女の子ライフを楽しもうよ」
「あ、はい」
それいいかも!と司は思った。
せっかくだからお出かけしようよと言われるが、その前に少し修正しようと言われた。
「おなた眉毛が太すぎるのよ。それでリードされちゃう」
「リード?」
「男装・女装する人が、ちゃんと装っている性に見てもらえることをパスという。例えば女装している人を他の人が見て女性と判断されている状態がパス。でも「こいつ男じゃん」と思われてしまうのがリード」
「へー。でもぼくこれまで女子トイレとかで変な目で見られたことないですよ」
「それはあなたが中学生だし、痴漢とは明らかに雰囲気が違うから、男の娘さんかなと思われて、許容してもらっていたのだと思うよ。でもいつも許容されるとは限らない。悲鳴あげる人や『君男の子じゃないの?』とか声掛けてくる人があるかもしれない」
「そうだったかも」
「だから女の子として行動する時は、完璧に女の子を装ったほうがいい。そして女子トイレとか入る前にセルフチェックする」
「それどうやるんですか?」
「鏡チェックとかコンビニチェックとかあるよ」
「コンビニ?」
コンビニに性別チェッカーとか売ってたかなあ。
「コンビニでお会計すると、売上傾向分析のため、客層ボタンを押される。10代、20代、30代、40代とかいう年代の区分と、男女の区分があるから、コンビニで赤いボタンを押されたら、女の子だと思われたということ」
「そんなのがあったんだ!」
「あと一般に大型店舗ではトイレ入口の手前に壁が全面鏡になっている部分があることが多い。これはトイレを出た人が自分の服装に乱れが無いがチェックするためのものなんだけど、このエリアで自分の姿を見てみて、女の子に見えるか、変な所はないか確認してから女子トイレに入る」
「それ気をつけよう」
と司が言うので、この子、やはり男の子(男の娘?)に戻っても女子トイレ使う気満々だと、貴子は思った。
それで貴子は司の眉毛を細くカットしたが、鏡を見た司は
「凄い。これだけで凄く女の子っぽくなった」
と言った。
「眉は重要なんだよ。でも君、凄く可愛くなれる。男の子にもてるよ。やはり女の子のままでいいと思い直したら遠慮無く言ってね」
「あはは」
ブラジャーも渡されるが着け方が分からないので後ろのホックを留めてもらった。胸を締められるとなんか凄く気持ちいい。これハマりそう、と司は思う(←間違いなく既にハマった)。
キャミソールを着けて、ショーツも少し可愛いのを穿く。ショーツを穿いた時に余計なものが無いから、ショーツがピタリとフィットする。この感覚いいなあと想った。ちんちんが飛び出す心配も無いし。
ライトブルーのカットソーに、ライトピンクのフレアースカートを穿くと、凄く可愛い女の子の出来上がりである。鏡に映して「ほんとに可愛い〜」と思った。
(↑ちゃんとこういう服を用意しているのが計画的犯行)
それでお出かけする。
「どこ行くんですか?」
「今夜は夕食を取ってからお買い物しようよ。あ、心配しないで、お金は全部私が出すから。私、わりとお金持ちだから、気にしないでね」
「はい。そうだ。ここお部屋がたくさんあるし、トイレと洗面台も2つずつだし、どなたか妹さんか誰かと住んでるんですか?」
「親戚の女子中生とそのお友達とかをよく泊めるからね」
「へー」
じゃ基本的にはひとり暮らしなのかな。
「そうだ。トイレが2つとも♀マーク貼ってありますけど、男性が来ることはないんですか?」
「男の人が来ることはあるけど、女子トイレを使ってもらう。便座を上げて使うのは禁止。座ってしてもらう」
「座ってするのって楽でいいですよね」
「慣れちゃうと、そう言う男の人は多い」
「なるほどー」
出掛ける前に念のためトイレに行くが、さっきはぼんやりとしたものの今回は意識しておしっこしたら、この出方、凄くストレスが無いという気がした。おしっこは身体から直接真下に落ちていくので、ちんちんの向きとか皮のかぶりかたとかを考える必要が無い。なんか男って凄く面倒なおしっこの仕方をしているのでは?という気がしてきた。
ただし、どうしても男より広い範囲が濡れるから、きちんと拭かないとまずい。そこは女の面倒さかなという気はする。
貴子さんの車に乗って旭川駅前まで行き、駐車場に駐めて、西武デパートに入った。レストランに入り、好きなもの頼んでと言われたので、ハンバーグセットを頼む。「貧乏性ね」と貴子さんは笑い、自分はチキンステーキセットを頼んでいた。
食事をしていたら、フルーツゼリーのグラスが1つずつテーブルに置かれる。
「女性のお客様にサービスです」
と言われた。
「こういうのってよくあるんですか?」
「時々あるよ。女はお得だよね」
「思いました!」
食事の後、トイレに行ってから、お店の中で買物をする。ついでにミットも買おうかなと思ったのだが「男の子に戻ると手のサイズも変わるかもしれないから男の子に戻ってから買ったほうがいい」と言われた。そんなものまで変わるのか!そういえば、性別が変わったのにびっくりしすぎてあまり意識してなかったけど、手が心持ち小さくなったかも知れない気がした。そういえば身長も少し縮んでる!?
貴子さんは、婦人服売場で、ワンピースを2着、スカート3着、中性的なデザインのポロシャツなどを買ってくれた。
「このくらいのデザインなら男装してても着れるよ」
「そうかも」
「ウェストは今66だけど、男に戻ると69くらいになってるかもね。だからそのくらいのサイズで買っておこうね」
と言って、ウェストの一部がゴムになっていたり、アジャスターの付いているのを選んでくれた。元々の身体では69cmのスカートを穿いてたから、多分それで行けるだろうと司も思った。
また下着売場に行き、女子中高生らしいショーツを10枚、ブラジャーも5枚買ってくれる。
「男の子に戻ったらアンダーが今より大きくなるかもしれないけど、その分カップが小さくなるからわりと入ると思う。アンダーが足りなかったらこれを使って」
と言って、スーパーフックも5個買ってくれた。こんなアイテムがあったとは全然知らなかった。ついでにウレタン製のバストパッドも買ってくれた。
「これを入れておくと、何かで胸を触られてもちゃんと胸があるように感じるよ」
「色々便利なアイテムがあるんですね」
「女の子もこういうの入れると1カップ大きいブラを着けられるから」
「そういうの、女の子って結構自分の外見を演出してますよね」
「女の子は99%が演出だから」
「そうかも」
「だから男の娘さんも同じ手法で演出できる」
「なるほどー」
そのあとバッグコーナーでやはり中性的なカジュアルバッグとスポーツバッグを買ってくれた。
「女装で出歩く時も男の子の格好でも、このくらいのデザインのは使えるでしょ?」
「使える気がします」
でも貴子さんって、なにげにぼくが男の子の身体のまま女の子の服を着て出歩くことができるようなアイテムを買ってくれている気がする!?
男の娘レッスン!?
ぼくついこないだまでは女装する趣味も無かったのに、あのトイレ間違いをきっかけに男の娘まっしぐらになってる気がする(←既に男の娘になっていることを認識していない)。
この日はその後、水着コーナーに行く。
「明日の午前中、プール行こうよ」
「プール」
ちょっとくらくらするけど、それって女の子の身体でないと体験できないし、思い切って体験しておくのもいいかもと思った。
「ビキニ着る?」
「自信無いです!」
結局普通のワンピース水着を上下に切ったようなデザインの水着を買ってくれた。タンキニというのだそうだが、すっごく可愛い。ぼくにこんな可愛い水着、着れるかなあと思ったが、せっかく女の子になってるから、思いっきり女の子であることを楽しまなくちゃね!
それでその日はおやつなども買って引き上げた。
少し疲れた気がしたので、その日は帰ったらすぐ寝た。
翌朝とっても爽快に目が覚める。部屋を出て、居間に居る貴子さんに
「おはようございまーす」
と声を掛けてからトイレに入る。
おしっこをしながら、こういうおしっこをずっとしていられたらいいなと思い、男に戻るのが本当に惜しい気がした。でもぼく、女の子としてやっていく自信無いしと思う。いっそ、生まれた時から女の子だったら良かったのに。
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女子中学生・十三から娘(26)