[*
前頁][0
目次][#
次頁]
朝御飯を食べてから、水着を身につけてみた。
鏡に映したら、可愛い女の子の水着姿がそこにはある。ぼくが男の子ならつい声を掛けたくなるくらい。あれ?ぼく女の子だっけ?男の子だっけ?分からなくなっちゃった。
それでその服の上に昨日買ってもらったワンピースを着て市郊外のレジャープール、アクアルネサンス旭川まで出掛けた。受付で貴子さんが
「大人1枚、中学生1枚」
と言うと、こちらを見て赤いタグの付いた鍵を2つくれた。
それで一緒に入場し、女性を表す絵が描かれている、赤い色の入口から更衣室に入る。
ドキドキ。
女子更衣室の中には水着の女性だけでなく、裸になっている女性もいるので、司はキャーっと思ったが、今は司自身が女の子なので、男子更衣室に行くことはできない。
ふたりとも服を脱ぐと下に水着を着ている。貴子さんはワンピース水着だが、上品なデザインだよなと思った。実は水着売場で「貴子さんはビキニ着ないの?」と訊いてみたのだが「ビキニは300年前に卒業した」などと言っていた。300年前にビキニってあったんだっけ!?
(ビキニが発表されたのは1946年である)
水泳帽をかぶり、、ゴーグルを持って、シャワーエリアを通り、プールエリアに入る。ここは小学生時代(まだ男の子だった時!)にも来たことがあるが、結構広い。大きな遊泳プール(深さ1.2m)の他に、25mプール(深さ1.5m)、子供用プール、波のあるプールなど、変わったプールも並び、建物の外までぐるっと回る一周100mのウォーキングプールもある。
そしてスライダーがある!
「スライダー行こうよ」
「ぼくも大好きです」
それでこの日はスライダーを滑りまくった。スライダーはABCの3コースがあったが、一度Aコースを滑ってスタンプをもらわいとBコースは滑られない。そしてBコースを滑ってスタンプをもらわないとCコースは滑られない。でも貴子さんと司はAABBCCと2回ずつ6回滑ってから少し休憩し、遊泳プールで少し泳いだ。
「君結構泳ぐね」
「泳ぐのも結構好きです」
「じゃ25mプール行こう」
「行きましょうか」
ここは監視員さんがいて「途中の立ち止まり禁止」である。つまり最低でも25mは泳げないと利用できない。浮き輪などの遊具も禁止である。最初司は向こうまで泳いでは立ち、また向き直って泳いでいたが、
「ターンできないの?」
と言われて、少し指導してもらった。それで20分くらいやっている内にできるようになる。ターンができると連続して泳げるので、凄く楽しくなった。これで10往復くらいした。
その後、またスライダーに行き、ここで今回はCコースをひたすら滑った。それでお昼になったのであがることにする。プール内でホットドッグとドリンクのセットを食べてから、シャワーエリアを通り更衣室に戻る。
「このままスパに行こうよ」
と言われる。
「スパ?」
「ここの地下はお風呂になってるのよ」
「そうだったんですか?」
以前来た時はプールだけで帰ったので、それは知らなかった。
貴子さんが水着を脱いでしまうので驚く。
「もしかして裸になるんですか?」
「お風呂だもん」
「きゃー」
「スパは男女別れてるから大丈夫だよ」
そうだった。ぼく女の子だったんだ。
それで司も水着を脱ぎ裸になる。水着はロッカー内に入れていた水着入れに入れる。そして裸のまま貴子さんと一緒にエレベーターの所に行き、地下に降りた。
「このエレベータは地下にしか行かないんだよ。間違って2階の食堂街に行ったら大変だから」
「裸の女性が出て来たらびっくりします」
「ボーイさんがお皿を落とすかもね」
それで地下のお風呂に行った。
中は裸の女の人だらけである。
クラクラと来る。
でも今はぼくも女の子だから、ここに居てもいいんだよね、と考える。できるだけ他の女の人の裸を直視しないようにしたが、27-28歳くらいの女性が凄くきれいなお椀のように丸いおっぱいを曝しているのを見て
「きれーい」
と思った。ぼくにもあんなおっぱいがあったらいいなあ、などと考えてしまう。
ここは5m四方くらいの中型の浴槽が多数並んでおり、それぞれに何とかの湯と書かれているようだ。司と貴子はまずは洗い場に行き、用意されているシャンプーで髪を洗い、ボディシャンプーで身体も洗った。
胸を洗う時にドキドキした。
いいよなあ、これ。
お股を洗う!
物凄くドキドキする。
よく分からないけどデリケートなエリアというのは想像が付く。ボディソープを両手に取り泡を立ててから、割れ目ちゃんをそっと開いて中を優しく洗った。心臓が激しく打っている、ぼく心臓麻痺で死んだりしないだろうか?などと不安になる中、(多分)きれいに割れ目ちゃんの中を洗った。もっとじっくり観察したい気分だが、こんな所でそんなことしてたら変なので、平常心、平常心と言いきかせて洗い終える。シャワーを弱く当てて洗い流す。
その後も足も洗って、身体全体に再度シャワーを掛けてから、浴槽に入った。浴槽は、薬草の湯とか、ワインの湯とか、桧湯とか、バブルバスとか、電気バスとか、色々ある。楊貴妃の湯というのもあったけど誰だっけ?
その楊貴妃の湯に15分くらい浸かって貴子さんとおしゃべりした。貴子さんが(多分)30歳くらいなのに、10代の男女の話題にも詳しいので凄いなあと思う。8人もいるNEWSのメンバーの名前を全部フルネームで言えるのも凄いと想った(*20). ぼくだって苗字でしか言えないのに(←男の子でそれが言えるのは充分凄い)。女子中生の親戚がよく来てると言ってたから、その子と話していて、その方面の知識もあるのかなと思った。
(*20)この当時は結成当初の9人から森内貴寛(後のONE OK ROCKのTaka)が抜けて8人の時代。この後、2005年に内博貴、2006年に草野博紀が抜けて6人の時代(小山慶一郎・錦戸亮・山下智久・増田貴久・加藤成亮・手越祐也)が長くなる。
お風呂から上がるとエレベータで1階の更衣室に戻り、バスタオルで身体を拭いてから、パンティとブラジャーを着ける。ブラのホックはまた貴子さんに留めてもらった。
「これ練習するといいよ」
「練習しようかな」
「両手にホックの所を持って、後ろで合わせるようにすればいいんだよ」
と言って貴子さんは自分でやってみせる。
それで要領は分かったけど、これって結構練習が必要だと思った。女の子をするのも大変だ!
それでワンピースを着て退場した。
取り敢えず貴子さんの家に戻る。戻って来たのが14時半頃だった。
「少し遅くなったね。1時間ほど寝てて。その間に男の子に戻してあげるから」
司が悩んでいるようなので貴子は言った。
「それともこのまま女の子にしておこうか」
どうしよう?と司は思った。
「何なら1ヶ月後くらいにまた会おうか?1ヶ月くらい女の子ライフを満喫してから男の子に戻るとかは?」
司は悩んだ。女の子の身体を1ヶ月も味わえたら凄くいい気がする。でもその身体で学校に行ったら・・・大騒ぎになる。やはり無理だよぉ。
「惜しいけど男に戻して下さい」
「了解了解。でも女の子になりたくなったら、私の所に来るといいよ」
「もしかしたら来るかも」
それで司は昨夜泊まった個室に入り、ベッドに横になる。目を瞑るとプールで3時間くらい遊んだ疲れもあり、すぐ眠ってしまった。
司はやや不快な気分で目を覚ました。
そっとお股に手をやる。
ちんちんがあるので、溜息をつく。
胸も触ってみるがバストは消失している。
「やはり女の子のままにしてもらえば良かったかなあ」
と後悔する気持ちが出たが、自分で男に戻して欲しいと言ったのだから仕方ない。
テーブルの上に、司がここに来る時に着ていたスカートとポロシャツ、ショーツとアンダーシャツがある。
結局女物だ!
司はその服には“着替えずに”居間に出た。
「おはようございます」
「おはよう。着替えないの?」
「結局スカートだし」
「まあそうだね。じゃミット買いに行こうか」
「はい」
「身体の調子はどう?」
「不愉快だけど仕方ないです」
「あはは」
「特にちんちんがショーツから飛び出してしまうのは困っちゃって」
「後ろ向きに収納すればいいじゃん」
「後ろ向き?」
それで貴子さんが、やってくれたら、ちゃんとショーツ内に収納できるので「こんな方法があったのか!」と感激した。
(女性に触られてもちんちんが大きくならなかったことに彼は何も疑問を感じていない)
結局、着てきた服は持参のリュックに入れ、ワンピースのまま貴子さんの車に乗り、旭川市内の大きなスポーツ用品店に行った。貴子さんは
「勝手に性転換したお詫びにミットの代金も私が払ってあげるよ」
と言った。
「でもお母ちゃんからもミット代もらったんだけど」
「それは女の子の服を買う資金にしたら?」
司は少し考えた。
「そうしちゃおう!」
「うん」
お店でキャッチャーミットが欲しいと言うと、ソフトボール用のミットと思われたが「硬式野球なんです」と言う。
「ああ、女子野球ですか」
とお店の人は納得したように言う。やはり片岡安祐美の活躍もあるのだろう。女子で野球をする人も増えている気はしていた。
(“ナックル姫”こと吉田えりが話題になるのはこの数年後である)
それで手のサイズや形なども見た上で、お店の人が
「これなどどうです」
と勧めてくれた。
凄く着け心地がいい。それに凄くしなやか。凄くいい革を使ってるみたい。
でも凄く高い!
「でもこれ高いよ」
と貴子さんに言うが、貴子さんは
「値段は気にしない」
と言う。それでこれを買うことにした。
ミットを買った後で、貴子さんは司をポスフールに連れていき、レディスのジーンズのパンツを買ってくれた。試着してみたが、結構ピッタリである。
「あなた、一回女の子にした後遺症で体型がやや女性的になっちゃったみたい。たぶんレディスの服が適合するんじゃないかと思ったらやはりそうだった」
と言う。
司は不安になった。
「ぼく学生ズボン入るかなあ」
「念のためそれも買おうか」
「うん」
それで制服コーナーで“女子生徒用”として売られている学生ズボンを2着、試着して買った。
「ごめーん。だいぶ余計なお金使わせて」
「お金持ちの道楽だから気にしないで」
「はい」
「野球部のユニフォームは行けると思う?」
「あれは元々色々な人が着ることを前提に作られているから、ベルトをしっかり締めればいけると思います」
「かもね、不都合があったら呼んでね。何か手を打つから」
「すみません。お願いします」
ミットやズボンなどを買っていたら、17時半くらいになる。それでそのまま旭川駅前まで送ってもらい別れた。買ってもらった女物の服の類いは昨日買ってもらっていたスポーツバッグに全部詰めた。
そしてワンピース姿のまま、よくよくお礼を言って、貴子さんとは別れた。その格好で留萌行きに乗った。
あ!おやつでも買っておけば良かったかな?と思っていた時、発車時刻ギリギリに飛び込んで来た女子中生がいた。
うっ。
「あれ〜、司ちゃんじゃん。今日はすっごく可愛いワンピース着てるね」
などと言っている。
村山さんだった。
「旅のお供におやつ買い込んでるからさ。留萌まで、これ摘まみながら、おしゃべりして行こうよ」
と言って、彼女は司の隣に座った。
あはははは。
村山さんの性格なら、ぼくが女の子の格好してたこと、他人に言いふらしたりはしないだろうけど、ぼくどこで男の子の格好に戻ろう?
司が人生が変わるような“大冒険”をした1週間前。
2004年5月28日(金)は、松原珠妃の17歳の誕生日であった。
★★レコードの加藤銀河主任補佐(係長代理から高岡事件の責任で降格)は巧みにζζプロの普正堂行社長を口説き落とし、松原珠妃の17歳バースデイ企画として、かつて南沙織が歌い、森高千里もカバーした『17才』を珠妃が歌ったシングルを発売した。
カップリング曲は、普正社長の強い希望で、演歌の大御所・ロイヤル高島さんが詩を書き、東郷誠一さんが曲を付けた『江ノ島恋の渚』という曲を入れている。もっとも東郷さんはこの曲はヨナ抜き音階を使いつつ、ポップスに近い作りをしている。こういう作りにしたのはむろん加藤および珠妃のマネージャー青嶋の要請によるものである。
普正社長はこの曲の作りに不満があったようだが、東郷先生の作品ということであれば文句も言えないし、社長も『哀しい峠』よりはできが良いことを認めざるを得なかった。
このCDはゴールドディスクにこそ到達しなかったものの、8万枚ほど売れ、結構FMなどでも流してくれた。
『17才』は本当に17歳の女の子にしか歌えない曲なので、このCDはDVD付きの物が多数売れた。奄美の海岸で撮影してきたビデオがひじょうに好評だった。このビデオには『黒潮』の写真集で共演した“ピコ”(後のローズ+リリーのケイ)も一緒に映っていた。写真集も発売されたが、好評でこの年の写真集売り上げBEST3に入ることになる。
[*
前頁][0
目次][#
次頁]
女子中学生・十三から娘(27)