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5月15日(土)の朝、雅海は爽快に目が覚めた。
「あれ?ここぼくの家??」
彼は自宅の自分の部屋に寝ていたのである。
「ぼくいつ家に戻ったんだろう?」
雅海は昨日の夕方、“あの家”で食事が終わった後、千里が
「これからのことは夢だよ」
と言ったのを思いだした。
あれ?夢だったのかな?
おそるおそるお股に手を伸ばしてみる。
あれ〜〜!?ちんちんある。
やはり千里ちゃんが、ぼくのちんちんとタマタマを掴んで引き抜いたのは夢だったのかなあ。あんな簡単に、ちんちんが引き抜けるわけないよね。痛みも無かったし。ああ、せめてタマタマだけでも無くなればいいのに、と思う。それで玉も触ろうとしたのだが・・・
あっ。
玉は無くなってる!?
雅海は単に体内に入り込んでいるということはないかと思い、お腹に力を入れてみたり、指で探したりしたが、やはり睾丸は消失していることを確認できた。
嬉しい!無くなった!
これで男っぽい身体にならなくて済む!
雅海は思った。あれは夢と現実が混ざり合った世界だったのかも。
ちなみに今は現実だろうか?
不安になったので、頬を叩いてみた。
痛い。
ということは今は現実だ。
夢の中ではちんちん・たまたま双方取ってもらったけど、実際にはタマタマだけが無くなったということかな。ぼく自身の、ちんちんもたまたまも無くしたいという願望が強く出たのかもしれない、と雅海は思った。
雅海は「今日はこれ着ようかな」と思い、トレーナーにロングスカートを穿いて居間に出行くと、母と2番目の姉・夏絵が起きていて
「おはよう」
と言った。雅海も
「おはよう」
と言って食卓の所に座る。
母も姉も雅海がスカートを穿いているのを見ても何も言わない。
そして自分が居ることに驚く様子もないので、やはり昨夜千里ちゃんの親戚の家?に泊まったという話は認識されていないようだと思う。あそこの家に着いたあたりから、既に夢の一部になっていたのかもしれない。
なお、この家は、子供が5人いるので、元々は6畳サイズの部屋が4つある4LDKだったのをその内の3つの部屋をパーティションで仕切って子供部屋を6つ作っており(もうひとつの6畳は夫婦の部屋)、5人の子供が3畳サイズの個室を使用している。もうひとつの3畳部屋は「もうひとりくらいできるかもと思ったが出来なかった」という話で現在は、母と姉たちの衣裳部屋と化している。
1984.5 竹夜(旭川で女子大生をしている) 163
1986.7 夏絵(高3) 166
1988.4 羽月(高1) 165
1990.9 雅海(中2) 164
1992.8 山登(小6) 170
なお羽月の読み方は「はるな」だがたいてい「はづき」と読まれ、本人もそれでいいことにしている。“はづき”と読まれてしまうと8月生まれと誤解されるが春の4月生まれなので“はるな”である。親しい友人からは「るなちゃん」と呼ばれる。
両親が雅海の“女子化”に許容的なのは、やはり弟がいるからだろうなあと雅海は時々思う。山登(やまと)はしばしば、ちんちんをぶらざらさせながら家の中を歩いているので、姉たちから「パンツ穿かないとちょん切るぞ!」などと言われている。しかし雅海は山登のちんちんを目にして「ぼくのよりずっと大きい」と思っていた(むろん「あんなに大きくなくて良かった」と思っている)。
お昼過ぎ、沙苗ちゃんがやってきて
「まさみちゃん、タックを知らないみたいだから教えてあげるよ」
と言った。
タック?ダンスの名前?(それはタップ!)
それでやってもらったら、まるでちんちんが無くなって女の子のお股になってしまったかのように見えるので「すごーい」と思った。
「これのいい所はこのままおしっこできることなんだよ。だから適宜メンテしてれば4〜5日もつよ」
「すごーい。こんな画期的なちんちん隠しの方法があったなんて」
「思いついた人は天才だよね」
でも沙苗ちゃんはぼくの睾丸が無いことに驚かないんだなと思った。昨夜の夢?では、ぼくに「ちんちんも取っちゃえば」と煽ってたけど、やはりぼくも沙苗ちゃんみたいになりたいという気持ちがあるから、そういう役割になったのかなあなどとも思った。
「でも沙苗ちゃん、ぼくに睾丸が無いこと驚かないんだね」
と訊いてみた。
「え?だって雅海ちゃん、春休みに去勢手術受けたんでしょ?」
「え?」
「女子の間ではそう噂されてるけど」
「あはは」
「去勢までしたのなら、セーラー服で学校に出てくればいいのに」
「あはははは」
「取り敢えずタックしてたら、男物のパンツは合わないよ。もういつも女の子用のパンティ穿いておくようにしなよ」
「でも学校の体育の時間が」
「雅海ちゃんが女の子パンティ穿いてても誰も変には思わないよ」
雅海は少し考えた。
「そうかもしんない!」
そして雅海はその日沙苗が帰った後で、重大な問題に気がついた。
タックしてたら、立っておしっこをすることはできない!!!
月曜日から学校で雅海は(男子トイレの)個室しか使わなくなり、男子たちの間に「とうとう祐川はチンコ取ったようだ」という噂が広まることになる。
5月15日(土)の朝、千里Rは朝7時のバスで旭川に出た。
留萌駅前7:06-9:10旭川駅前
毎月1度の、笛の指導を、きーちゃんから受けるためである。笛のついでにピアノの指導も受け、また越智さんから剣道の指導も受ける。更についでに、きーちゃんから不意打ちの訓練も受ける!
(ちなみに昨夜のN町の古家に千里Rは行ってない。きーちゃんも行ってない)
でも、きーちゃんとのセッションは、今月か来月くらいまでという話であった。昨年6月から始めて約1年指導してもらったが、まだまだ習いたい気分だったので寂しくなるなと千里Rは思っていた。
しかしこの日きーちゃんは
「取り敢えず7月まではやるよ」
と言った。
「その後のことについてはたぶん7月31日に分かると思う」
「へー」
「まあその先のことについては守秘義務で言ってはいけないんだよ」
「分かった」
と千里は言ったが、
『この子、その後もセッションが続くことが“分かった”のでは?』
と、きーちゃんは思った。
この子には、嘘や隠し事が通じない。
H大神が旭川に眷属の住まいを確保させたということは、自分を含む十二天将は、この子に付くということしか考えられない。
旭川近辺にいる霊能者として、他に桃源の妹弟子にあたる海藤天津子がいるが、XX教の“生き神様”をしている。そういう邪宗にどっぷり浸っている子に出羽が味方することは考えられない。そうなると、正統な神道の訓練を受けている千里が最も考えやすい。きっとこの子は中学を出たら旭川の高校に進学するのだろう。L女子高に興味持ってたから、そこかな?この子が例えば75歳くらいになるまで付き合うと60年間くらいの付き合いになるからH大神の言う「長い仕事」というのも分かる(←やはり1桁勘違いしている)。
いつものように、午前中はフルートを習い、12時になったらお昼を食べる。
今回、千里はコリンを連れてきて、食事の準備や雑用を彼女にさせた。
千里は、きーちゃんの補助?をしている“鳥さん”に気付いた。
「木村櫃美さん」
と千里はいきなり彼女の名前を呼んだ。
「ああ、バレちゃいますよね」
と言って、姿を現す。櫃美は、東京でお焚き上げした時にはいきなり真名(まことのな)を呼ばれたからなあと思い、姿を現した。彼女はセッション中の雑用を引き受けるために来ていた。
(お焚き上げの時に真名を呼んだのは千里Gで今ここに居るのは千里Rだが、櫃美は2人の違いに気付かない。きーちゃんもまさか別人とは思っていない。そもそも東京でGはRの振りをしていた)
「あなたかなり酷い怪我してる」
「ええ。先日も言ったように事故にあって」
「それ痛いでしょ?私の所に、そうだなあ、2ヶ月くらい来ない?治してあげるから」
櫃美が、きーちゃんを見る。
「いいんじゃない?」
「じゃお願いします」
と櫃美が言うと、千里は彼女を“吸収”した。
「どこに行ったの?」
「私は“海”と呼んでる。人間や精霊をそこに入れておくと、疲労や怪我から回復するんだよ」
と千里は言う。
コリンが言う。
「実は私も瀕死の重傷を負っていたのですが、千里さんに助けられて3ヶ月掛けて治してもらったんです。怪我から回復した後、自由だよと言われたけど、千里さんに付きたいと言って、眷属にしてもらったんです」
「そういう能力があるのか」
「疲れてるだけなら半日も入っていると元気になるよ」
「そういう能力ってどうやって覚えたの?」
「さるお方が勝手に私の身体を使ってた。その内、自分でもできるようになった」
実は、エアガンで怪我した小春、罠で怪我した小町もP大神が千里のこの機能を勝手に!使って治療した。後には、ここは眷属たちの“常宿”と化し、単に寝るためだけにここに入るようになる。更には、きーちゃんやこうちゃんが千里に無断で勝手に傷ついた人の治療に使うようになる!
「なるほどねー」
「自分を癒やすことはできないのが難点」
「あはは」
やはりこの子は天性の巫女なんだ。ひとつ間違えば、天津子のように“生き神様”に仕立て上げられている。この子は育つ環境に物凄く恵まれていたと、きーちゃんは考えた。
ともかくも櫃美はこのまま千里の“海”の中で7月まで2ヶ月間休眠することになる。
「今回のセッションでの雑用は私がしますから」
とコリン。
「うん。よろしくー」
と、きーちゃんも言った。
土曜日の午後はピアノのレッスンをする。そしておやつを食べてから今度は龍笛を習う。そして1泊してから、翌日の午前中は越智さんから剣道を習う。きーちゃんが先日建ててくれた剣道練習場を使うが広いので練習がしやすかった。お昼を一緒に食べた後、午後から龍笛とフルートを習って今回のセッションを終えた。
今回のセッションでも、きーちゃんは千里に5回くらい不意打ちを掛けたが、千里はしっかり防御するので、きーちゃんも満足であった。
でも千里は、越智さんと真剣勝負してる最中の不意打ちは勘弁して〜と思った(さすがに越智さんから面を取られた:不意打ちは防御しないと死ぬので、そちらが当然優先)。
夕方には天子の所に行き、夕飯を千里が作って、瑞江と3人で食べた。そして最終JRで帰った(ことにした!)。
旭川19:16-19:46深川20:10-21:05留萌
例によって、千里の荷物はコリンが留萌駅まで運んで小春にリレーした。
※バスの最終は、旭川駅前18:20-20:17留萌駅前
なお天子の所には、千里Y、千里Gも毎月1度は来るので瑞江は3人の千里が分担して1回ずつ来るのだろうと思っている(瑞江には3人の区別が付かない)。
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女子中学生・十三から娘(23)