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「生理ってどこから出てくるの?」
と5年生の子が質問する。
「生理はヴァギナから出てくる。この陰裂の中のいちばん奥の所の穴」
「そこから出てくるのか」
「赤ちゃん産む時は、赤ちゃんもここから出てくる」
「嘘!?赤ちゃんがそんな狭い所通るの?」
「ヴァギナは伸縮性があるから。赤ちゃんの頭は通過できる。ただし胎内であまり育てすぎるとでかすぎて、出てこられなくなるから要注意だ」
「だから妊婦は食事制限される」
と千里!が言っている。
「あとどんなにヴァギナが伸びても、骨盤の穴を通らないほどでかい赤ちゃんは膣からの出産は無理」
「骨はどうしようもないね」
「その場合どうするの?」
「昔は母子ともに死ぬ以外の道が無かったけど、現代では帝王切開で取り出す」
「帝王切開も痛そう」
「男の子は骨盤の穴が小さいから、男の子が妊娠した場合は、ほぼ帝王切開しかないだろうね」
「男の子はヴァギナが無いから、そもそも膣からの出産は無理だと思う」
「性転換手術でヴァギナを作っていた場合は?」
「性転換手術ではペニスを再利用してヴァギナを作るけど、本物のヴァギナと違って、ペニスは赤ちゃんの頭サイズまでは伸びない」
「確かにそんなには伸びそうにない」
「無理矢理通そうとすると破裂するだろうね」
「おそろしー」
「だからやはり帝王切開しか無い」
セナは、ぼく妊娠したら、帝王切開で産むしかないのかなあ。痛そう。あ、でもこないだ骨盤の骨を動かしてもらって女の子と同様の形にしてもらったから、ちゃんと普通に産めるかな?などと思いながら、女性のお股の模型をまじまじと見ていた。
セナは26-28日(月火水)は普通に学校に出て行き、部活・勉強会をして帰宅した。29日(祝)は少し可愛い服を着て、母・姉と一緒にジャスコまで行き、“ファンシーショップ”をのぞいて、シナモロールのポーチを買ってもらった。
ファンシーショップなどというものに入るのが初体験で、またひとつ女の子の世界に触れ、女の子って男の子とは全然違う世界で生きているのでは、という気がしてきた。同じ地球上に住んでいるのに!
ファンシーショップの後は、婦人服売場で、普段着の可愛いサマーセーターと、これからの季節で穿けそうな明るいグリーンのスカートを買ってもらった。亜蘭は高校生らしい、もっと落ち着いた雰囲気のスカートを買ってもらっていた。
セナたちがスカートを選んでいる時、近くでやはりスカートを選んでいる女の子がいた。どこかで見たことがある気がするものの、誰かは分からなかった。
司はその日、トップにはやや中性的なトレーナーを着て、ボトムには先日旭川で買った紺色のスカートを穿き、バスでジャスコまで行った。知り合いと遭遇する危険はあるのだが、留萌の中心部のお店などよりは随分遭遇確率が低いはずである。
そして婦人服売場に行ったものの、なかなか近づく勇気が無い。近づいてはまるで通り掛かっただけのように離れ、そのまま向こうまで行く、というのをさっきから5〜6回繰り返して居た。
「別に悪いことするわけじゃないし。今度こそ行くぞ」
と自分に言い聞かせて、なんとか婦人服売場で足を停めた。
変に思われないかなあとドキドキしながら、スカートを売っている所に行く。値札を見て「ひゃー」と思う。スカートってこんなに高いの!?いくつか見てみるが、みんな5000円以上する。
お小遣い3000円も持って来たのに買えないじゃん。
でも折角勇気出して婦人服売場に来たのだから何か買って帰りたいと思う。ワゴン!に「婦人ブラウス1000円」と書かれているのを見る。あ、ブラウスって着てみたいと思った。それで見るが、サイズが分からない!
スカートは自分のウェストサイズを計って69cmで適合することを確認していたのだが、ブラウスのそもそもサイズの見方が分からない。
(売場のお姉さんに声を掛けてサイズを調べてもらえばいいのだが、彼はとても売場のお姉さんに声を掛ける勇気が無い)
それでブラウスを諦めて、なおも婦人服売場を歩いていたら、ショーツが並んでいた。
ショーツなら、結構サイズにゆとりがあるんじゃないかなあと思う。おそらく自分はLでいけるのではないかと思った。しかしショーツだって結構高い。
女の子の服って高いんだなあと思って見ていたら、3枚セット500円というのがあった! これいい!と思い、いちばん“穿くのに抵抗の少なそう”な★型のプリントのあるショーツのL、色違い3枚セット(グレイ・黒・青)を選んだ。
ドキドキしながらレジの所に行く。咎められないかなあと不安だったが、レジのお姉さんは特に何も言わずに会計してくれた。消費税込み525円を払い、レジ袋に入れてもらったショーツ3枚セットを持って、司は引き上げた。
バスまで少し時間があったので“トイレ”に行ってくることにし、司はジャスコの女子トイレに入った。列ができているので並ぶ。少しずつ列が進む。やがて個室が空くのでそこに入り、座っておしっこをする。
司はこの「座っておしっこする」というのにハマってしまいつつある。最近、自宅ではいつも(ズボンを穿いていても)座ってするようにしている。座ってするのに慣れてしまうと、立っておしっこするのは野蛮な感じさえする。
出た所をトレペで拭き、流す。その後、買ったショーツのセットのパッケージを開け、中身のショーツだけバッグに入れた。個室を出てから手を洗い、開封したパッケージはゴミ箱に捨てた。そして女子トイレを出るとバス乗り場に行った。
4月30日(金)は平日なので、セナは普通に学校に行き、部活後、P神社の勉強会に行く。この時、沙苗に呼ばれて別室でブレストフォームを剥離液を使い、外してもらった。
「じゃ次は5月9日・日曜日の夜に貼り付けてあげるよ。5日までは私、某所に籠もって合宿やってるから、5日は遅くなると思うし。6-7日は学校だけど2日くらいは大丈夫だよね」
「うん。何とかなると思う。何なら月曜日の夕方でもいいよ。普段の体育の着替えとかはわりと誤魔化せるし」
「じゃ、そうさせてもらおうかな」
「でも凄いねー。やはり強い人はたくさん練習するから強くなるのかなあ」
「セナちゃんは今は楽しんで剣道してればいいと思うよ」
「うん。そのつもり」
とセナは笑顔で答えて、『あ、この笑顔、凄く女の子っぽい』と思った。
5月1-2日、セナはP神社に行き、巫女服を身につけて、勉強会をしながら、お客さんがあると、物販・おみくじなどの対応をした。ここのおみくじは御籤(みくじ)の筒を振って1本、竹籤(たけひご)を取りだし、その番号に相当する紙を渡すという本格的なものなので、人気がある。わざわざ旭川や札幌からここに来る人もあるくらいである。もっとも遠くから来た人とみたら、この作業は巫女長の梨花さんや千里などがやり、顔見知りだとセナや小町がしていた(普段は実はここ1年ほどは沙苗がすることが多かった)。
セナは5月1日に神社に出て行った時、千里が居たので
「あれ?千里ちゃんは、合宿に行ったんじゃなかったのね」
と言った。
「合宿?そんなのする予定は無いよ」
と千里が言うので、セナは『あれ〜。千里ちゃん・沙苗ちゃん・玖美子ちゃんの3人で合宿すると聞いた気がしたのに』と思った。
休日は小中学生は18時で切り上げて帰宅させる。その後まで残るのは、宮司の孫でここに住んでいる花絵さん、巫女長の梨花さん、千里、小町の4人のみである。
「小町ちゃんもそういえばこの神社に住んでるんだったな。宮司さんの親戚か何かだっけ?」
などとセナは思ったものの、千里ちゃんはなぜまだ遅くまで残るんだろう?とも思った。
2日の夕方、セナが帰宅すると母が言った。
「明日から5日まで、旅行に行くよ」
「え〜〜!?」
「トマムのチケットをもらっちゃったのよ」
「トマムなんて高いのに」
「芳村さんがさ、急用ができて行けなくなっちゃったんだって。あそこもうちもちょうど家族5人でしょ?キャンセルしてもキャンセル料100%らしいのよね」
「つまり返金無し!?」
「だから、そちら行けそうだったら行きませんかと言われて」
「じゃトマムに2泊3日?」
「明日は、万華(ばんか)の湯に泊まって、4日がトマム泊」
「ばんかってどこだっけ?」
「富良野温泉」
「へー!富良野に温泉があったのか。でもトマムに行く途中だね」
「だから予約したらしい。トマム2泊じゃ高いじゃん」
「確かに!」
「だから、明日は温泉、明後日はプールね」
ギョッとする。
「温泉って・・・・個室にお風呂あるんだっけ?」
「共同浴場だよ。でもあんた性転換手術受けたから、もう女湯に入っても問題無いよね?」
「え〜〜〜!?」
「女湯に入れない人が、女子の大会に出場するはずはないよ」
などと姉が言ってる!
セナは重大な問題について考えていた。どうしよう?と思った時、千里がまだ神社に残っていたのを思い出す。
それで母に言った。
「明日から旅行なら、ちょっと神社に置いて来た荷物取ってくる」
「うん」
セナは自分の部屋で、ブレストフォームを入れているピアノのレッスンバッグを持つと、P神社まで走って行った。
「あら、セナちゃんどうしたの?」
と花絵さんが訊く。
「千里ちゃん、まだ居ますか?」
「今帰ったんだけど」
「え〜〜〜!?」
「でも急用なら呼び出してあげるよ」
「すみません!」
それで花絵さんが電話で呼ぶと、どうも千里はまだ自宅に戻る途中だったようで、1分もしない内に来てくれた。
「セナちゃん、どうしたの?」
「内密に、緊急に相談があって」
「じゃ、いつもの勉強部屋に行こうか」
「うん」
それで勉強部屋まで一緒に行ったセナは、明日から突然旅行に行くことになって温泉とプールに入らないといけないので、プレストフォームを貼り付けてもらえないだろうかと頼んだ。
「いつも沙苗ちゃんに、貼り付けと剥がしと、してもらってたんだけど、沙苗ちゃん合宿に行ってるから。千里ちゃんなら、たぶん分かるんじゃないかと思って」
「できるよ」
それでセナは胸の汗をきれいに拭き取った上で、プレストフォームを専用接着剤で貼り付けてもらったのであった。
「温泉とかプールとか入るなら、戻って来たら一度ここにおいでよ。取り外してあげるから」
「それ悪いよ。帰宅するの遅くなると思うし」
「温泉やプールの水が、ブレストフォームの内側に入りこんだの、そのままにしておくと炎症を起こしやすいんだよ。だから取り外して一度きれいに真水で洗ったほうがいい」
「なるほどー。でもそれ月曜日の夕方でもいいかも。沙苗ちゃんにも月曜日の夕方に装着してもらうことにしてたんだよ。木金と月曜日は何とか誤魔化すことにして」
「じゃ、月曜日の夕方、部活は休んで学校終わったらすぐP神社においでよ。みんなが来る前に外してあげるから。そして勉強会の間、肌を休めておいて、その後の装着は沙苗に任せた」
「うん。そうしようか」
「でもありがとう。助かる」
「ついでにタックもきれいに接着してあげようか。5日くらいは平気なようにできるよ」
「・・・してもらおうかな」
それで千里はセナのタックをきれいに直してあげた。千里は「あれ?セナちゃん、睾丸取っちゃったんだ?」と驚いたが、個人の問題だしと思って何も言わなかった。“この千里”は、セナは単に女の子の服を着たいだけで、身体改造までするつもりは“まだ”無いと思っていたので意外だった。
また千里はタックをしてあげながら、セナの腰の骨が女性的な形をしていることにも気付いた。更にそもそもちんちんのサイズが4cm程度しかない。これは小学2-3年生のサイズだ。セナちゃん、これたぶん小学3-4年生の頃からずっと抗男性ホルモン、そしてここ1-2年は女性ホルモンを飲んでいたのだろう。ただそれにしては、おっぱいの成長が遅いけど。でもこの子、ほんとに女の子になりたかったのか、と思った。
「ついでに“付け陰毛”を貼り付けておくね。毛が無いと目立つし」
「ありがとう!」
「これでいいよ。タックはしっかり接着したから温泉やプールに入っても一週間くらいは補修とかも不要だよ」
「助かるー」
実は旅館の部屋だと家族と一緒だから、タックを直す場所が無いと悩んでいたので、一週間くらい補修しなくていいのなら本当に助かる。
「逆に“外すのが大変”かもしれないから、これも月曜日の夕方、ブレストフォームと一緒にいったん外してあげるよ」
「うん。お願い」
セナへの“処置”を終えてから、千里がチラッと“そちら”に視線をやると、P大神がギクッとして目をそらすのを見た。
なるほどね〜。
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女子中学生・十三から娘(14)