広告:ここはグリーン・ウッド (第2巻) (白泉社文庫)
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■春零(32)

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青葉が声をあげた次の瞬間、青葉は目の前にも自分が居るのを見た。
 
「うっそー!?」
「これで間に合うだろう。頑張れ」
「ちょっとぉー、美鳳さん」
 

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「ちなみにお前たちは鏡像的に生成したから、片方は右利きで片方は左利きだ」
「え?」
と言って2人の青葉は自分の手を確認している。
 
「あ、私は右利きだ」
「私は左利きだ」
 
「じゃ左利きが本体で右利きは鏡像ですか?」
「どちらも本体だけどな。仮に青葉Lと青葉Rとでも呼べばよい」
「分子の異性体みたい」
「まあ確かにお前たちは異性だ」
「え?」
と言ってふたりの青葉はお股を確認する。
 
「私女みたい」
「私女みたい」
 
「2人とも女だが、中に入っている女性器が違うのさ」
と美鳳は言った。
 
「どういうことですか?」
 
「青葉、よくお聞き。小学1年生の時のことを思い出しなさい」
「はい」
「小学1年生の5月、お前が最初に出羽に来た少し後、私が『睾丸を失った男の子がいるから、お前睾丸が要らないならあげてもいい?』と訊き、お前は『あげてください』と言うからお前の身体から睾丸を取らせてもらった」
 
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「はい!」
 

「そしてその年の秋に、今度は『お前に女の組織を入れてあげる』と言って、卵巣・卵管・子宮・膣を入れてあげた」
 
「・・・そんな夢を見た気がします(“女の素(もと)”と言われた記憶があるけど)」
「夢と思ったかもしれないけど実際にそういう操作をした」
 
「じゃ私の身体には小学1年生の時から卵巣や子宮があったんですか?」
「お前、小学4年生の時に生理が始まったろ?生理があるということは当然卵巣と子宮があるということだよ」
 
「そうだったんですか!」
 
そんな話を7-8年前に千里姉から言われた気がするぞ。自分やケイさんに生理があるのは、卵巣・子宮があるからだって。
 
「ただ当時の青葉は、男の身体に女の性器が埋め込まれている状態だった。ところが千里の暴走でお前は3年前に女に性転換されてしまった」
 
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「あ、はい」
「その時、お前は本当の女の身体になり、女の生殖器ができた」
 
青葉は考えた。
 
「それどうなるんですか?」
「だからそれ以来、お前の身体の中には2系統の女性器が併存していたんだな」
「え〜!?」
 
「そして今、青葉Rの身体には青葉自身の遺伝子を持つ女性生殖器、青葉Lの身体の中には小学1年生の時に埋め込んだ女性生殖器が入っている」
「え〜〜〜〜!?」
 

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「妊娠しているのはどちらか分かるか?」
 
ふたりの青葉は自分のお腹に手を当ててみた。
 
「私妊娠してます」
と青葉Lが言い
「私妊娠してません」
と青葉Rが言った。
 
「つまり妊娠したのは、小学1年生の時に私が埋め込んだ方の生殖器だ」
と美鳳は言う。
 
「待ってください。これ本来は誰の生殖器なんですか?」
 
桃姉に「青葉に血の繋がった家族ができる」と言われたけど、今私のお腹の中にいる赤ちゃんは私とは無縁の子供?と青葉は思った。ところが美鳳の言葉は意外なものだった。
 
「それは銀杏の女性器だよ」
 
へ!?
 
「銀杏って誰か分かるか?」
「・・・彪志の亡くなったお姉さんですか?」
「そうそう」
 
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「だったらこれって姉弟の間に出来た子供?」
「まさか」
「え?でも」
「小学1年生の時に交通事故で睾丸を失い、青葉の睾丸をもらった男の子というのが彪志なのさ」
 
「え〜〜〜〜〜〜〜!?」
 

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「だから青葉のお腹の中に居る子供は遺伝子的には、青葉を父とし、彪志のお姉さんを母とする子供だよ。だからできる子供は、間違い無く青葉の子供だし、文月さんの孫なのさ」
 
「・・・・」
 
「だから近親相姦はしてないから心配するな」
「でも待ってください。私彪志とたくさんセックスしてるんですが、そしたら彪志は自分のお姉さんのヴァギナにインサートしていたのでしょうか」
 
「そういう事態にならないよう、実は膣だけ別の女性のものを使った」
「すみません。それは誰の?」
「桃香の妹だよ。流産した」
「あぁ・・・」
「桃香の妹ならそう問題はあるまい」
「じゃ私、身体の一部が本当に桃姉と姉妹なんですね」
「ま、そういうこと。だから安心してその子供を産むが良い」
 
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「でもこの子、彪志の子供じゃないんですね」
「彪志からは姪になるな。でも子供が、おじ・おばに似るのはよくあること」
「そうかも知れない」
 
(↑さりげなく子供が女の子であることを教えたが青葉は気付いていない)
 

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「まあ次回はちゃんと彪志の遺伝子的な子供になるらしいから」
 
「どうやって?」
「そうだなあ。彪志君に女になってもらって、青葉を父とし、彪志君を母とする子供にしたりして。いっそ彪志君に出産させるか?」
「うーん・・・」
 
結局私、お父さんなの〜?嫌だなあ(←彪志が女になるのは気にしてない)
 
「ま実は私も詳しくは知らんのだよ。知っているのは大神(出羽のH大神)様だけ」
と美鳳は言っていた。
 

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「じゃ2人で手分けして頑張りなさい。夜間は妊娠してない青葉Rが担当するといいぞ」
「そうします」
 
それで美鳳は姿を消した。
 
「じゃLは寝ててよ。私が容子ちゃんたちと作業を続ける」
と青葉Rは言った。
 
「うん。じゃ、よろしくね」
と言って青葉Lは布団の中に潜り込んだ。
 
それで青葉Rは昼間の服装に着替えてスタジオに向い
「目が覚めちゃって」
などと言って夜中2時まで作業を続けた。
 

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翌日の18日は次のように分担して作業した。
 
9:00-13:00 青葉L
13:00-17:00 青葉R
17:00-21;00 青葉L
22;00-26:00 青葉R
 
一応21時になったら『寝るね〜』と言って青葉L(妊娠中)がスタジオを出るが、1時間後に青葉R(妊娠してない)が『目が覚めちゃった』と言ってスタジオに姿を見せ、26時まで作業する。
 
青葉Lは朝4時頃起きて、早朝にロンドから送られてきたアクアの歌唱を聴き、意見を書いてロンドに送信する。青葉が自分で歌ってみせた録音なども送る。朝食後9時から13時までスタジオに入る。その後Rと交替してお昼寝し、17時から21時までスタジオ作業して21時に引き上げたら本当に寝る(実働12時間)。
 
青葉Rは朝8時頃起きて午前中は一応完成とした曲の最終調整をする。お昼を食べてからLと交替し、夕方までスタジオに入る。17時に離脱して夕食を食べ、少し仮眠してから、Lがスタジオ作業している間に次の曲の下準備をする。そして22時にスタジオに姿を見せ、容子たちと一緒に夜中2時まで作業する(実働16時間)。
 
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合計1日28時間仕事してる!!
 
青葉Lはこれまで通り青葉の部屋で寝起きするが、青葉Rの方は、地下の資料保存室に布団を持ち込み、ここで寝泊まりすることにした。
 
資料保存室には千里の部屋にある隠しエレベータでしかアクセスできない。この部屋の存在を知っているのは千里と青葉だけである。
 

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18日夜に朋子・桃香・千里が帰って来たが、スタジオは別棟なので、青葉が夜間そこで作業していることは気付かれない。“青葉”は“青葉の部屋”で寝てるし!!
 
19日は青葉Lが朝から転送されて浦和に行ったので、青葉Rの方がこの日は朝から夕方までスタジオでの作業を続けた。
 
朋子が
「結婚祝いに何か作るよ」
と声を掛けたので青葉は容子と紀子に
 
「夜中にも作業してることは叱られるからうちの母や姉には言わないでね」
と言った上で一緒にリビングに行き、鯛・鰤や鰹(今の時期は上り鰹)、甘エビなどのお刺し身を炊きたての御飯で食べた。
 
「私あまり上品な料理できないし」
と朋子は言ったが
「いや炊きたて御飯に新鮮なお魚って最高に贅沢な料理ですよ」
と紀子は言っていた。
 
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グルメ番組などにも出て結構舌が肥えている紀子が
「このお魚ほんとに美味しい」
と感心していた。
 

この日(19日)は夕方青葉Lが戻って来たので、Rは夕方から21時までの作業をそちらに任せて仮眠した。そしてまた22時にスタジオに出て行き、夜間の作業をした。
 
20日は記者会見があったので、青葉Lを金沢に行かせ、その間はずっと青葉Rが作業をしていた。結果的にRは19-20日の2日間はほとんど休みなく働いた。
 
21日以降はまた18日と同じパターンで進めた。
 
22日は千里から
「午前中2-3時間“どちらか空いてる方”顔を貸して」
と言われたので、午前中スタジオに入っていないRが出て行った。
 
つまり千里は青葉の分裂を知っている訳だ!
 
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容子と紀子は最初は「大宮先生、妊娠しているのに、ほんとにこんなに長時間作業して大丈夫なのかな」と思ったものの、2人はすぐに気がついた。
 
「大宮先生は、右手で字を書く時と左手で字を書く時がある」
 
そして2人は夜中に作業している時は、大宮先生が必ず右手で字を書くことに気付いた。それで2人は判断した。
 
「大宮先生って2人居る!」
「夜間作業するのは必ず“大宮万葉(右)”!」
「そちらが桜蘭有好(おうらん・あるす)先生かも」
「きっと右利きだから“アール”なのよ」
「なるほどー!」
 
↑美鳳もびっくりの説。
 
更に2人は、午前中の青葉の服装と夕方から21時までの青葉の服装が同じで、午後の青葉の服装と夜間の青葉の服装が同じであることにも気付いた(←青葉本人は服のことは、なーんにも考えていない)
 
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「だってアクアが3人、醍醐先生は5人、コスモス社長は7人、ケイ先生は10人居るという噂だもんね」
 
「アクアは男の子M、男の娘N、女の子Fだよね」
「男の子M、女の子F、女の娘Gという説もある」
「女の娘って何?」
「よく分かんない」
 
「ケイ先生は、1番ケイがマリさんと夫婦、2番亜麻野蘭子が水沢歌月、3番紅石恵子が夢紗蒼依専務、4番秋穂夢久が木原さんと夫婦、5番若山冬鶴、6番岡原加奈、7番岡原世奈、8番柊洋子あるいはピコがヨーコージ、9番美冬舞子がサマーガールズ出版社長、10番唐本冬子が§§ミュージック会長。これ米本愛心さんの推理」
と容子。(←きっと米本愛心と花ちゃんが一緒に考えたもの)
 
「そうそう、私聞いたんだけど、醍醐先生は使っている車でだいたい見当がつくらしいよ。1番ブルーはヴィッツ、2番オレンジはオーリス、3番イエローがアテンザ、4番レッドがインプレッサ, 5番グリーンがRX-8 らしい」
 
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と紀子(←色対応が丸山アイの推察と違うのできっと葵照子あたりの情報。でもどっちみち車の対応情報が古い!)。
 
「なんかダイゴレンジャーという感じだ」
と容子。
 
「それなら大宮先生が2人居てもおかしくない」
「そもそも1人でできる量を遙かに越えてたよね。水泳選手、アナウンサー、霊能者、作曲家。どれも1つだけで相当多忙になる仕事」
 
「水泳選手やってるだけで疲れ果てて他の仕事はできないよね」
 
ということで容子と紀子はそれ以降は青葉の身体を心配しなくなった。
 

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そして2人の青葉がフル稼働で頑張った結果、予定より1日早い7月27日までに全ての楽曲を花咲ロンドに送信終えることができたのである。
 
容子・紀子・青葉は、コーラで祝杯をあげた。
 
「2人ともお疲れさん。本来の労働時間を越えてだいぶ頑張ってもらった」
「この業界では普通です」
「大宮先生も2人がかりでお疲れ様でした」
 
あれ!?
 
それでコスモスとも話し合いの上、容子と紀子は29-30日は休暇とした。2人ともほぼ寝てた。30日午後には真珠に頼んで、高岡大仏と海王丸を見せに連れて行った。31日のHonda-Jet で東京に帰還させた。
 
一方(妊娠していない)青葉Rは容子たちを伏木に置いたまま28日、美鳳さんに転送してもらって東京に乗り込み、アクアの歌唱を直接聴いて最終調整をした。結局『沖に娘だ』は、伴奏流用をせずに、エレメントガードに自分たちの解釈で演奏してもらい、それを聴きながら再度アクアに歌を乗せてもらった。最終的には元の『お気に召すまま』も録り直した。
 
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また、青葉、ロンド、和泉さんの3人でアルバムの曲順を決めた。青葉が思った通り、和泉さんは『ごめんね。私女の子だったの』にかなり文句を言っていた!
 
それでアルバムの音源は7月31日(日)夕方までに仕上がり、技術者さんとわりと休んでいて元気な和泉さんの2人で夜通しでマスタリング。8月1日朝、工場に持ち込まれてプレスが始まった。
 

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アルバムの制作が終わった後、青葉Rは
「美鳳さん、ありがとうございます。お陰でアルバムが予定通り完成しました。伏木に戻してもらえますか?」
と頼んだ。
 
それで青葉は転送してもらったが、どうも伏木ではないようである。
 
青葉がキョロキョロしていると。目の前に千里姉が居た。
 
「青葉、お疲れ様。丸1ヶ月泳いでないと、プールが恋しいでしょ。ここで遠慮無く、いくらでも泳いでね」
と千里姉は言った。
 
「ここは・・・もしかしてグラナダ?」
「そそ。美鳳さんから青葉をここに転送するからお世話よろしくと言われたから、受け入れ体勢を整えて待ってた」
 
この千里姉は・・・3番??
 
「確かにプールは恋しかった。時間の余裕が無くて伏木の家でも全く泳げなかったけど。妊娠が発覚してからは水泳自体禁止と言われたし」
 
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「だからここで思いっきり泳ぐといいね。ここに“も”青葉がいるなんて誰も思わないから」
 
「分かった。泳いでこようかな。でも水着が無いかも」
「水着は普通の練習用水着を青葉の部屋に用意してるよ」
「サンキュー」
 
それで青葉はパソコンとキーボードの荷物を部屋に置くと、テーブルの上に置かれていた水着に着替え、地下2階のプールで泳ぎ始めた。
 
 
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