広告:放浪息子(9)-BEAM-COMIX-志村貴子
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■春零(10)

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貝瀬日南のペンネーム“ 帝王胡桃”は“カイゼルナッツ”と読む。歌手としての芸名“貝瀬日南”と出生名:平世夏美の変形?“ヘーゼルナッツ”の混成語。
 
篠田その歌は出生名が“三池ムタ子”で、制作者名の苗字“三池”はこの出生姓を使用したものである。アンネというのは、彼女の名前が元々、アンネ・ゾフィー・ムターから採ったものであることに由来する。現役時代、熱心なファンは彼女を“アンネ”と呼んでいた。彼女は2014年に##放送の牟田一彦(2022年現在はプロデューサー)と結婚したので、本名が牟田ムタ子になった!
 
ケイは篠田の初期のバックバンド(初代のボーラスター)でヴァイオリンあるいはキーボードを弾いていた。
 
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貝瀬日南・篠田その歌のメインライターは秋穂夢久(あいお・むく)、つまりローズ+リリーだった!
 
ただし秋穂夢久が実はローズ+リリーであることは、その歌には引退するまで伏せていたし、日南にも2016年に至るまで知らせていなかった。
 
秋穂夢久の正体は仲介している丸花さん以外には、その歌・日南のみが知っていたのだが、2017年頃から一部の関係者には知られるようになり、昨年(2021年)12月に和泉がテレビ番組で述べて一般公開してしまった。
 
「そろそろ仮面を外すべきだよ」
と和泉は言っていた。でもまあかなりバレかかっていた!
 
秋穂夢久の正体は、歌詞の内容から1985-1990年くらいに生まれた女性作家と推定され、大西典香、夏風ロビン、谷崎潤子、松原珠妃、青島リンナ、百瀬みゆき、などが候補者として名前を挙げられていたが、ローズ+リリーと分かり(作曲量として)「あり得ない」と多くの人が言った。
 
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また秋穂夢久の歌詞にはしばしば文法間違いがあることから、専門家ではなく、恐らくは本業が歌手かタレントさんと言われたのだが、実はこれは秋穂夢久の作品を作る時、ケイがマリの歌詞を敢えて校正せず、歌詞の勢いを優先していたことによるものだったことも、和泉はバラしていた。
 

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樋口花圃は若手作曲家のひとり。UFOのメインライター吉原揚巻とわりと似たポジションである。随分長く作曲家として活動していたものの、スパイス・ミッションがブレイクするまでは「名前は通っているがヒット曲が無い」と言われていたのも吉原揚巻と似ている。
 
吉原揚巻同様、実は“東郷誠一”の“中の人”のひとりであった。ボニアート・アサドのデビュー曲『暖かい心』は彼女が東郷誠一の名前で書いた曲で実際の制作指導も彼女がしている。だからスパイス・ミッションは実はボニアート・アサドの妹分にもなっている。それで事務所は違うものの結構な交流がある。
 
樋口花圃とケイの関係は実は、パトロール・ガールズ仲間である。同じステージで踊ったこともある。パトロールガールズは、アイドルグループ“パーキングサービス”のバックダンサーであるが、地方公演の費用節約で、各地区にパトロールガールズが居て、北海道公演なら北海道のパトロールガールズ、福岡公演なら九州のパトロールガールズがバックで踊っていた。ケイの場合はパトロールガールズ関東に所属していたものの、上手いので“パトロールガールズ本部生”と一緒に、結構地方公演にも帯同しており、各地のパトロールガールズと交流があった。
 
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樋口花圃はパトロールガールズ北海道の第1期メンバーであるが、コメディアンの内野音子、チェリーツインのヨーコ、などもこのパトロールガールズ北海道の一期生。この北海道一期生は“出世率”が高い。XANFUSの光帆などはパトロールガールズ北陸の出身。あの組織は多数のミュージシャン・タレントの“ゆりかご”になったのである。
 
§§ミュージックの“地方信濃町ガールズ”の制度は、地方パトロールガールズの制度を下敷きにしているのでは?と千里は指摘している。
 

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星鷹は“スターホーク”と読む。本名の星居隆明から1文字取った“星”にステージ名“タカ”にちなんで鷹を付けた。MVの制作現場のみでなく、音源の制作現場にもかなりよく姿を現して、三池の良き相談相手になっている。音楽理論的に微妙な部分は彼が判断していることが多い。
 
彼は近年テレビなどにはほぼ女装で現れるし、スパイスミッションの制作現場にも、ワンピースなど着てくるが、本人は「俺は女装趣味は無い」と言っている!?
 
帝王胡桃(カイゼルナッツ)も星鷹(スターホーク)もナレーター泣かせである。知らないと絶対読めない。
 
事実上のプロデューサーである三池アンネは元アイドル歌手という立場から、スパイス・ミッションのメンバーの良き相談相手にもなっており、“あねご”と呼ばれて親しまれている。
 
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4人の呼ばれ方:−
 
帝王胡桃(貝瀬日南)カイザー
樋口花圃:カホ先生
三池アンネ(篠田その歌):あねご
星鷹(タカ)おタカさん
 
この呼び方は内々のもので、人前では、カイザー先生、樋口先生、三池先生、星居先生と呼んでいる。
 

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インタビューに話を戻す。
 
「伏木って、気象観測所で有名ですよね」
とクミンが言った。
 
「よく知ってるね!」
「富山県の伏木では・・・ってよく聞くから」
 
「ここは元々、越中国の国府が置かれていた場所なんだよ、それで経済活動も盛んで、明治16年に回船問屋・藤井能三によってプライベートな気象観測所が開設された。ところが始めてみると運営に結構な費用が掛かる。それで県に陳情して、施設は提供するから運営は県にしてもらうことにした。名前も県立伏木測候所となる。昭和に入ってから国の管理下になって、中央気象台伏木観測所となり、その後、伏木測候所、伏木特別地域気象観測所と改名されている」
 
と青葉は簡単に説明した。
 
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「よく“富山県の伏木で”と聞くから“伏木市”とかあるのかと思ってました」
 
「伏木町(ふしきまち)だった時代もあるね。まあ1500年以上の歴史を持つ古い町だね」
「大伴家持(おおともの・やかもち)とかが住んでたんですよね」
 

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「そうそう。令和の元号の件でも話題になったね(*28)。当時は布勢水海(ふせのみずうみ)という大きな湖もあって、そこに船を浮かべて和歌を詠んだりしていた。この湖は長い間に干拓されて小さな池みたいになってしまい、現在は十二町潟と呼ばれている」
 
「私、乙女の歌好きです」
「春の苑(その)、紅匂う桃の花、下照る道に出立つ乙女、だね」
「美しい風景ですねー」
「あれは実際、家持(やかもち)が仕事を終えて帰宅した時、奧さんが表に出て『お帰りなさい』と言ってくれたのを歌に詠んだらしいね」
「奧さん、美人だったんでしょうね〜」
 
(*28) “令和”の出典は万葉集巻五815 の前に置かれた大伴旅人の文章からである。
 
天平二年正月十三日(Greg.730.2.8 土)、師老の宅に萃(あつま)りて、宴会を申べつ。時に初春の“令月”にして、気淑く風“和やか”に、梅は鏡前の粉ひ(よそほひ)を披き、蘭は珮後(はいご)の香を薫しぬ。
 
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大伴旅人(おおとものたびと)は桃の歌を詠んだ大伴家持の父である。この梅の宴は九州の太宰府政庁近くにあった旅人の自宅で開かれたものとされる。
 

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スパイス・ミッションの4人は盛岡の芸能スクールで知り合った仲で、東北出身ということでも、宮城県栗原市出身のボニアート・アサドとはお互い親近感を感じるようである。しかし青森・岩手の出身ということから、大船渡出身の青葉ともかなりローカル・ネタで話が弾んだ。ラピスラズリの2人も興味深そうに聴いていた。
 
「スパイス・ミッションは、アルファベットのイニシャルを取ってはいけないという話があって」
などと町田朱美が言う。
 
その瞬間青葉が気付いて「あぁ!」と言った。
 
「略すと住友三井さんの商標とかになって使っちゃいけないんでしたよね」
とタイム。
「いや、そういう話じゃねーだろ」
と朱美。
「これ小学生とかも見てますから」
「うん。確かに言ってはいけない」
 
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「うちのファンクラブも最初マネージャーさんがムニャムニャ・クラブって付けようとして社長に叱られたらしいです」
「あはは」
 
隅で収録を見ているマネージャーの砂糖茶々も声は出さずに笑っている。
 
「結局ファンクラブの名前はどうなったの?」
と青葉。
「炭焼き小屋だよねー」
と朱美。
「はい。そうなんです。会員は炭焼き人です。入会すると備長炭が1本ブレゼントされます」
「私ももらったよー。あの時は大量に備長炭が売れたな」
「入会ありがとうございます。ブレイクした時たいへんだったみたいです」
 
「ちなみに海外向けサイトでは、SPM という略語を前面に出しています」
「苦しいな」
 

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歌に行くことになる。昨日のUFO同様、掃き出し窓から出て、濡れ縁を歩いてピアノルームに行く。
 
「あの右手の建物は?」
「あれはお隣の家なんだけどね」
「お隣さんですか!でも廊下が繋がってますね」
「§§ミュージックさんの施設なんだよ。あそこでたくさんお仕事しないといけないみたい」
「お仕事が家まで追いかけてきたんですね!」
「そんな感じ」
「大変ですね」
 
濡れ縁を抜けていったん屋内に入る。昨日はζζプロの大物アーティストのポスターが貼られていたが、今日は保坂早穂、貝瀬日南、南藤由梨奈、森風夕子といった○○プロのアーティストのポスターである。篠田その歌(三池アンネ)は正式に引退しているからここには出ない。原野妃登美はリストラされちゃったからここには出ない。貝瀬日南は“引退”ではなく“歌手活動休休業中”だからラインナップに入れたようである。
 
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「わあ、カイザーだ」
とスパイス・ミッションたちが言っている。カイザーとは帝王胡桃(貝瀬日南)のことである。
 
「この4人を選んだのは“主”(ぬし:保坂早穂のこと)だよ」
「偉大なる先輩です」
 
○○プロの礎(いしづえ)は保坂早穂により作られた。彼女のブレイクで、○○プロは中堅の芸能事務所から大手芸能事務所のひとつに成長したのである。早穂は現在○○プロの筆頭株主であり、次期社長になるのは多くの社員と所属タレントのコンセンサスとなっている。
 

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ということでピアノルームに入る。
 
「広ーい」
「天井が高い。ここ2階建てなのかと思った」
 
「響きを確保するために天井を高くして、振動する空気の量を増やした設計だね」
とケイが解説する。
「なるほどー」
 

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町田朱美がピアノの前に座り、彼女の伴奏でスパイス・ミッションのヒット曲『カレドニアで彼がカレーを食べてるのカレイドスコープで六面観察だ』を歌った。ダジャレ好きの帝王胡桃(貝瀬日南)さんの曲である。
 
「この歌の歌詞って、ほとんど意味が無いよね」
と朱美が遠慮無く言う。
「はい、カイザー先生もただのダジャレだからと言っておられました」
とタイムも笑って言っていた。
 
「ポワンカレがアンカレッジ大学のカレッジでカレンダーを見るとか」
「カレー港から華麗なる旅に彼のカー、レッツゴーとか」
「枯れ木にカトレア咲かせましょうとか、枯葉が可憐に落ちてくるとか」
「カレントのカレンシーの動きにお疲れさんとか」
「彼氏の名前はカレン・カーレンターとか少し苦しいです」
「それ男なのか女なのかよく分からない」
「全体的にシチュエーションがよく分からない所も多いですよね」
と彼女たちも笑っていた。
 
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「でも『僕もスパイス・ミッションに六面観察されたいです』というファンメールたくさん頂きました」
「まあ妄想で我慢してもらうということで」
 
彼女たちも高校生になったのでできる“おとなの会話”だった!
 

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スパイス・ミッションの撮影で今回の取材は終わりかと思ったら
「お昼を食べてから午後からラピスラズリの取材をするね」
とケイは言った。
 
「ああ。まあいいですよ」
と青葉は答える。
 
スパイス・ミッションの取材が終わったのが11:00頃で、撮影後、青葉たちはLDKに移動し、そこに千里が明恵と2人で全員に松花堂のようなお弁当と、お吸い物を配った。真珠は夕方からまた稼働してもらうので仮眠中である。
 
「醍醐先生、すみません!」
とスパイス・ミッションが恐縮していた。
 
「立ってる者は社長でも使えと言うしね」
「うちの社長(丸花茂行)を使うのは怖すぎます!」
「あはは。社長や副社長(浦中)の顔を見るとヤクザの親分でもビビるらしいし」
 
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「元警視総監なんでしょう?」
「警視総監までは出世してないけど警視正だったんだよ。会社でいえば部長クラス。浦中さんはその時の部下の警視」
とケイが言う。
 
「やはりお偉方だったんですね」
 

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丸花は東大出身のキャリア組で順調に行けばいづれ本当に警視総監になっていたかも知れない。しかし1985年に重要事件の被疑者がマスコミなどが大勢いる中で事件の被害者に刺殺される事件があり、その警備や捜査指揮に関する責任を問われて辞職。友人から誘われて芸能プロに入ったのがこの世界との関わり始めである。この時、部下の浦中活秋と津田昭弘(現在の津田アキ。津田民謡教室主宰)も丸花と一緒に辞職した。
 
やがてその芸能プロが倒産した時、契約していたタレントたちの受け皿作りのために○○プロを数人で共同設立。その後幾度かの合併・分裂などを経て、いつの間にか自分が経営者になっていた、と本人は言う。
 
“大分裂”の直後は丸花・浦中・津田が同等の権限を持っていた。しかし津田は性転換手術を受けるために離脱。丸花も病気のためほとんど会社に顔を見せなくなり、かなり長期間、浦中が代表権の無い取締役のまま会社を動かしていた。
 
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丸花もかなり怖い顔だが、浦中はヤクザの大親分にしか見えない!この事務所に入った若いタレントが
「ここもしかして“ヤ”の系統の事務所ですか?」
と恐る恐る先輩に尋ねるらしい。
 
しかし過去の経歴から丸花も浦中も警察・自衛隊などに幅広い人脈を持つ。特に浦中は「ヤクザより怖い」と、よく言われる。
 
鈴木社長の∞∞プロ同様、やる気のあるマネージャーを担当タレントと一緒に独立させたり、また経営力に難のあるプロダクションに部下を送り込んで建て直したりして、多数の系列事務所ができている。△△社やUTPもそういう系列事務所である。
 

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