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■春零(12)
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収録後、一同(表の)リビングに移動して、お茶を飲む。真珠と初海が全員にケーキと紅茶を配った。初海はラピスの取材中に来ていた。
「おやつね」
「ありがとうございまーす」
ここでお茶を飲んだのは、青葉、千里、ケイ、アクア、ラピスラズリの6人である。
「でもこの家は建築費いくら掛かったんですか?」
と朱美が尋ねる。
自身も家を建てたばかりなので気になるのだろう。ちなみに朱美が江戸川区に建てた家は、土地代4800万円+建設費2600万円で合計7400万円だった。朱美は土地代をキャッシュで払い、建築費はローンにしてもらった。銀行は入れずに播磨工務店と直接24回払いの契約をしたが、たぶん1年で返せるだろう。
「ここは土地代2000万円と建築費4600万円合計6600万円だよ」
「嘘!?そんなに安いんですか!私の建てた家より安い」
と朱美が驚いている。ここは朱美が買った土地の5倍くらいの広さがある。但し実は床面積はそう違わない。朱美の家は352H
2= 290m
2だが、この家は415H
2= 342m
2である。平屋と3フロア(B,1F,2F)構成の違いである。
(H
2=平方半間=1/2畳=1/4坪)
「田舎と東京区部では土地の値段が10倍違うからね〜。それに朱美ちゃんの家は栃木県産の檜(ひのき)を使ってるけど、この家は能登産のアテ(ヒバ)を使っているから材料費が少し安い」
「それにしてもかなり広いのに」
「何ならこの家と朱美ちゃんの家を交換する?」
「それやると、私がアクアの曲を書かないといけないんでしょ?」
「よく分かるね。朱美ちゃんが大宮万葉の代わりをしてくれたら青葉が休める」
と千里。
「その代わり、大宮先生は女装して私の代わりに。はること組んでラピスラズリしないといけませんよ」
と朱美。
「女装の自信が無いかも」
と青葉は笑いながら言った。
「あるいは朱美ちゃん、かほく市にもう1軒家を建てて、そこから仕事に通う?かほく市なら、土地代こことあまり変わらないと思うよ」
「それは通勤が大変すぎます」
「通勤用にF-16買うとか。東京まで30分も掛からないよ」
「売ってくれませんよ!」
「だいたいどこから飛び立ってどこに降りるのさ」
私F-16に乗せられたりしないよね?と青葉は一瞬不安を感じた。
6人がおしゃべりをしていると、庭に“招き猫”外装のトヨタアクアが入ってくる。
「あ、マネちゃんが来た」
とアクアが言う。
「え?え?」
と青葉が言うと
「今日3人目のゲストですね」
とラピスラズリが言った。
「今日は3人もやるの〜?」
「本当は昨日2人、今日2人にしたかったけど、スパイスミッションの仕事が遅くまで掛かったから今朝に回したんだよ」
とケイは言う。
「待って。少し休ませて」
と青葉は言う。
「うん。休んでて」
と千里は言うと、アクア、ラピスラズリを連れて庭に出る。ケイも一緒に行く。
「ヤッホー!呼ばれて飛んできてジャジャジャジャーン!」
「ウェルカム・トゥ・伏木」
と言って、朱美・はること舞音はハグしている。
「会長、ちょっとご報告があるのですが」
とマネージャーの悠木恵美が言った。
「どうしたの?」
「一応社長にもご報告したのですが」
と前提を置いてから話し始める。
「ここに来る途中、少し時間調整したほうが良さそうだったので海王丸パークに行ったんですよ」
「スパイス・ミッションが行ってたでしょ?」
「はい。それで総帆展帆してると聞いたので、それを観客に紛れて撮ってこようと思って見に行ったんですよ。イベントが終わると帆はたたんでしまうかも知れないけど、終わった直後ならまだ帆を開いている絵を撮れるかもしれないと思って」
と悠木恵美は言う。
「それでイベントの終わり際を狙って行ったのですが、行ったらまだやってたので終わるの待ってたのですが」
「私がクミンに見付かっちゃって」
と舞音が申し訳無さそうに言う。
「見付かって当然という気がする。舞音ちゃんパッと目立つもん」
と朱美。
「でも目立たないように、今着ている普通のセーラー服着て、ちゃんとマスクもしてたんだよ。もちろん海王丸の撮影はスパイス・ミッションのステージが終わった後にするつもりでカメラも出してなかった。でもクミンと目が合っちゃって」
「ああ」
「それで結局、ステージに呼ばれて。セーラー服のままスパイスミッションの『そうだ。みんなでセーラー服を着よう』のピアノ伴奏をしてきた」
「よく伴奏できるねー」
「UFOやスパイス・ミッションの曲なら大抵弾ける」
「すごい」
「それより彼女たちのイベントを邪魔してしまう形になって申し訳無かった」
と舞音は言う。
「取り敢えず私が向こうのマネージャーさんに謝っておきましたけど、すぐコスモス社長にも連絡しました。先程コスモス社長から、浦中副社長に電話して謝っておいたよという連絡がありました」
と悠木恵美はケイに報告する。
「問題無いと思うよ。事故みたいなものだし」
とケイは言った。
実際、浦中さんは後でコスモスに電話して来て
「現地に電話して確認したけど、お客さんはサプライズ企画と思って喜んでたらしいし、主催者も喜んでたから全く問題無い」
と笑って言っていたらしい。
現地の砂糖マネージャーもスパイス・ミッションたちもそもそも“トラブル”とは認識していなかったという。浦中さんは、むしろ舞音がいきなり言われた曲を即伴奏したのが凄いと言い、「さすがコスモスちゃんとこのタレントさんは総合力が高いね」と感心していたらしい。
しかし悠木恵美がすみやかにコスモスに報告し、コスモスもすぐ浦中さんに電話したから、それで収まったんだろうなとケイは思った。
「でも見付かってしまったから、結局総帆展帆した海王丸をバックにした舞音の撮影は、イベントの警備の人たちが壁を作ってくれて、他の観客無しの状態で撮ることができて助かりましたけど」
と悠木恵美は言っていた。せっかくだからというので、セーラー服から、水兵さんのコスプレに着替えて撮影したらしい。
「セーラー服とセーラーさんの服の違いか」
と朱美。
「セーラー万年筆を持ってるとよかったね」
と千里。
また舞音とスパイス・ミッションはサイン色紙を交換してハグしてきたらしい。
この海王丸をバックにした映像は『舞音がセーラーさんの真似をした』という曲のMVに(海王丸側の許可を取って)利用することになる。
帝王胡桃(貝瀬日南)は実はこの話を聞いて『精悍な青年が西南にセイルしたら性別が変わっちゃって今セーラー服着てる』という曲を書いたが、(○○プロの)前田制作部長から却下されたらしい!
なお新湊でのイベントの後、スパイス・ミッションは富山空港に行き、昨夜舞音が乗ってきたHonda-jet
Orangeに乗って熊谷に帰還している。
報告が終わった後で“舞音のアクア”(*32)の前に、アクア、舞音、ラピスラズリの4人が並んで記念撮影した。
「昨夜来てたんでしょ?」
と朱美が尋ねる。
「そそ。昨夜20時半に富山空港に着いた。高岡市内で1泊して、朝2時に起こされた」
「2時は朝なの〜?」
と、はるこ。
「舞音を2時に起こすために1時半に起きないといけない私の身になってほしいよ」
とマネージャーの悠木恵美。
「県道32号で、舞音が朝日に向かってスクーターで走る映像を撮影したからね。本番は4:37の日出だけど、天文薄明が2:46から始まるから、朝2時半までには現地に行ってないといけないし。撮影スタッフは現地で一晩明かしたらしい」
と恵美。
「よくやるなあ」
と朱美。
「夏至が来たばかりだからね〜」
と千里。
「スクーターの撮影の後は仮眠してた?」
とはるこが訊くが
「まさか」
と恵美・舞音・朱美・アクア。
「スクーターのCM撮影の後、早朝のあまり人が居ない内に、氷見市の“まんがロード”・光禅寺・忍者ハットリくんカラクリ時計、と撮影した」(*29)
「カラクリ時計がメインか」
「そそ。ロボット掃除機のCM」
高山のからくり人形、久留米の弓曳き童子などのシリーズである。
「多分それで終わりじゃないよね?」
と朱美。
「当然当然」
と舞音。
「腕時計のCM撮影用に高岡大仏で撮影して、ついでに“利長くん”(*30) に遭遇したから記念撮影した。それから南砺市の“木彫りの里・井波”(*31)に行って和風照明のCM撮影をした。でもまだ充分時間があるねと言って新湊に行ったら、面倒なことになっちゃって。でもいい絵は撮れた」
「ほんとに忙しいなあ」
「1日にバイク、ロボット掃除機、スポーツウォッチ、和風照明、帆船と5つも撮影やって、そのあとインタビューに来たのか」
「土日はだいたいそんなもん」
「恐ろしい」
(*29) 氷見市は藤子不二雄A(安孫子素雄)の出身地なので、それを記念して様々なモニュメントが作られている。光禅寺には、ハットリ君、怪物くん、プロゴルファー猿、喪黒福造の石像が立っている。“まんがロード”にも様々な漫画のキャラ像がある。
なお、相棒の藤子・F・不二雄(藤本弘)の出身地は高岡市でそちらの旧市街に様々な記念物があるので、遠くから来た人は一緒に訪れるといいと思う。更に余力ある人は輪島市まで行くと永井豪の記念館もあるので、そこまで行くと完璧。
(*30) “利長くん”は高岡市のゆるキャラ。前田利長をモデルにしたもの。
利長は前田利家の長男で、加賀・能登・越中の三国を支配する北陸の大藩“加賀藩”の初代藩主である。しかしあまりにも偉大な父・利家、32歳年下の弟で加賀藩の礎を築いた聡明な2代藩主・利常の間にはさまれて今一目立たない存在である。
(*31) 井波の道の駅に多数の木彫り製品の展示がなされている。この道の駅から歩いて10分ほどの所にある瑞泉寺前には、2011年に「世界一長い木製ベンチ」が作られてギネスに認定されたが、以前にも書いたように現在は既に解体されて消滅し、石川県志賀町のものが取り敢えず日本一に復帰した。、
(*32) このアクアは2022年春に発売された“アクアのアクア”ver3 "Virgo"である。アクア自体が2021年7月にモデルチェンジしたので、それをベースにしたアクアのアクアも2022年春に発売され、これに伴いバリエーションとして“舞音のアクア”(限定98台)も発売された。
アクアのアクア(2020)
限定車:花ちゃんのアクア、スピカのアクア、白鳥のアクア
アクアのアクア ver2 "Leo"(2021)
アクアのアクア ver3 "Virgo"(2022)
限定車:舞音のアクア、シンデレラのアクア
初代アクアのアクア(通称ver1)はトヨタ・アクアのクロスオーバータイプをベースにしていたので3ナンバー車であった。「アクアのアクアが欲しいけど3ナンバーは・・・」という声に応え、ver2 "Leo"ではアクアのGグレードをベースに制作して5ナンバーのサイズに収めた。2021年は限定車は出ていない。
今回は2021年7月に出た新型アクアのZグレード E-Four(電気式四輪駆動)をベースにしている。
今回は2種類の限定車が発売された(一般発売98台+1号車は舞音・ルビーにプレゼント:抽選の倍率が特に舞音版は100倍を超えていた)。
“舞音のアクア”はゴールドの塗装で、エンブレムは招き猫である。ステアリングにも招き猫の模様がプレスされているし、シートも黒白金赤青緑の招き猫模様である。ボンネットと側面に貼れる、白招き猫、黒招き猫のシールが付いているがさすがに本当に貼る人は少ないと思われる。貼りたい人で自分で貼る自信の無い人は、購入する時に販売店に頼めば貼ってくれる。常滑焼きの招き猫、舞音のコスプレ写真集もオマケで付いている。この写真集は単体でも買える。
“シンデレラのアクア”はルビーとビーナをモチーフにしている。エンブレムはガラスの靴である。座席の模様もガラスの靴とカボチャの馬車である。シンデレラの扮装をしたルビーの絵、シンドルの扮装をしたビーナの絵、カボチャの馬車の絵のシールが付属している。また希望のサイズのガラスの靴(アクリル製)、ルビーとビーナのシンデレラ・シンドルの写真集もおまけで付いている。このガラスの靴・写真集も単体で買える。
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春零(12)