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■春零(4)

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7月2日(土).
 
晃と舞花はフラミンゴで“自主トレ”をして、結構汗を掻いたので帰ろうと思った。まだ練習している愛佳たちに声を掛けてから2階控室に行き着替える。
 
実は管理人さんの好意で“汗で濡れた服のまま帰ったら風邪を引くかも”という配慮から、自主トレをしている時も、H南高の女子生徒はフラミンゴの1号控室を使ってもいいことになった。またH南高の男子生徒はフラミンゴの2号控室を使ってよいことになった。
 
それで1号控室で着替えていた時、舞花は晃がお腹に手を当てているのに気がついた。
 
「どうかした?」
「2〜3日前からお腹が痛くて。最近少し涼しいからお腹冷やしたかなあ」
「どのあたりが痛いの?」
「この辺り」
と言って、晃は下腹部のあたりに手をやる。
 
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「うーん」
と舞花は腕を組んだ。
 
「きっと生理が近いのよ」
「え〜〜!?」
「今夜はこれを付けて寝なさい」
と言って四角く白くて、薄いビニールに包まれた小さなパックを渡す。
 

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まさかこれって・・・
 
「これナプキン?」
「そうそう。女の子が生理の時に必要なもの」
「うーん」
 
「晃は女の子になったんだから生理もちゃんと処理しなきゃね」
「別に女の子とかなってないけど」
「いや、間違い無く君はもう女の子だ」
 
でもぼく最近部活で女の子たちと一緒に着替えていても何も感じないし(“最近”ではない気がするぞ)、心が女の子に近くなってきているのかなあ、と晃は思った。
 
「一応もらっておこうかな」
「ちゃんとショーツ穿いて付けなさいよ。トランクスではそれ安定しないから」
「安定しないだろうね!」
「付け方は分かる?」
「うん」
 
やはり付けてみたことあるな、と舞花は思った。
 
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「交換する時は、トイレの棚にあるセンターイン使っていいから。センターインは私ので、お母ちゃんのはエリスだから」
「分かった」
 

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晃は帰宅して御飯を食べた後、ほんとにお腹の痛みが引かないので、姉に言われたようにナプキンをショーツに取り付けて寝た。最近実は“タップ”されているので、ショーツしか穿いてなかった。
 
翌朝(7/3 Sun)トイレに行くと、ナプキンが真っ赤になっているのでびっくりした。
 
「これってほんとに生理だったりして」
と思ってから
「まさかね」
と思う。
 
でもナプキンは交換した方がいいなと思い、ショーツから取り外し丸める。姉がセンターイン使えと言ってたなと思い、センターインの普通の日用を1枚取って、シールを剥がし、ショーツに取り付けた。そして剥がしたシールで交換したナプキンを包み、更にトレペで包んで汚物入れに捨てた。
 
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(↑ちゃんとナプキンの捨て方が分かっている)
 
これ日中に交換しないといけないかもと思い、晃はナプキンを更に2個取るとポケットに入れた。
 
「でもこれが生理だったら、ひょっとしてぼく、その内おっぱいも膨らんできたりして」
などと妄想した。
 
晃としては現在外見的に見える胸の膨らみはブレストフォームによるものと認識している。ブレストフォームなら触っても何も感じないし、心電図など取れないはずなのだが!?
 
「おっぱいも膨らんで来たら、2学期くらいからは女子制服で通学することになったりして??」
 
晃は既に自分が女子制服で通学しているという自覚が無い!
 

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この日もフラミンゴで自主トレをしたが、練習の終わり、ふたりで着替えている時に舞花は晃に言った。
 
「生理来たみたいね」
「さすがに生理が来るわけないけど、お股から出血して、お姉ちゃんに言われてナプキン付けてたおかげで下着を汚さずに済んだよ」
 
いや、それが生理だと思うぞ。
 
「あんた女の子になったんだからこれからは毎月生理来るからさ、好みのナプキン買っておくといいよ」
「え?毎月こんなこと起きるの?」
「当然当然。一緒に買いに行こう」
と言って、舞花は晃を連れてウェルシアに行った。そして一緒にナプキンコーナーに行って商品を見る。“晃が先に立って”ナプキンコーナーに行ったので、以前からこのコーナーに来てたなと舞花は思った。結局ソフィのボディフィット羽根つき、普通の日用と夜用を買った。
 
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「羽付きがいいの?お姉ちゃんから借りたのも羽が付いてたけど」
「スポーツするなら身体と下着がずれやすいから、羽無しでは絶対よれて外れてしまう。だからしっかり下着に固定される羽付きかいいんだよ」
 
「なるほどー」
 
「それと明日はこれ着けときなさい。明日は今日よりもっと多いから」
と言って、生理用ショーツを選んでくれた。
 
「これ着けてれば漏れても安心」
「うん」
 
お金は今日は舞花が出してあげた。後で母にもらうつもりである。
 

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その日帰宅してから、晃はお風呂に入って、
「いったいどこから出血してるんだろう?特に傷口とか見当たらないけどなあ」
 
なとど思いながらお股を“開いて”洗っていた。あちこち触ってみるが、特に傷みを感じる場所は無い。
 
「でももし傷口があったらいけないから、今日は湯船には浸からずにシャワーだけにしておこうかな」
 
などと呟いた。
 
(うん、それが良いと思うぞ)
 

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7月2日(土).
 
“墓場劇団”の新しい演目『炭泥物語』が金沢市内の小さな体育館を借りて上演された。この模様はいつものようにホーライTVの回線で中日本地区に有料ネット中継された(プレミアム会員は他地区からも視聴できる)。
 
「面白かった」
「いつもながら、いい意味で“くだらなかった”けど、結構笑った」
 
「カノンちゃん凄く女らしくなってる」
「セリフも多かったし、声が凄く女の子っぼくなってたね」
「もしかして去勢して声のピッチが上がったとか」
「実は性転換してたりして」
 
「通ってる中学のセーラー服着てる写真が投稿されてたね」
「セーラー服で通学してるの?」
「まさか。でもあれだけ女の子役がハマッてたら、いっそ本当に女の子にならない?とか、きっと言われてる」
「カノンは女の子になってもいいと思うよー」
「可愛いもんね〜」
 
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「弟の方は似合ってない女装が面白い」
「あの子こそ去勢してあげたら少しは女らしくなるかも」
「兄弟から姉妹への華麗なる変身だな」
 
「もうひとり弟が居て、その子は女の子と見紛う美少女らしいよ。カノンは可愛い系だけど、下の弟は、お母さん似の正統派美人だって話」
 
「それはその内登場してくれることを期待したい」
「そんなに美人なら、早めに去勢したほうがいいな」
「そんな美少女が男っぽくなったりしたら日本の損失だよね」
 
「成仏霊子さん、久しぶりの登場だったね」
「いや退団していたはず」
「そうだったんだ?」
「黒衣魔女が直前に体調崩して入院したからピンチヒッターらしいよ」
「へー。でも成仏さんの演技は見てて安心できる。絶対何か笑わせてくれるもん」
「機転の利かない黒衣より、成仏で良かったんじゃない?」
 
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7月2日(土).
 
彪志の休暇が終わり、浦和に戻るので、青葉はムーランエアーに電話して、この日のお昼くらいに、適当な機体で能登から熊谷まで飛びたいと申し込んでいた。すると
 
「その日ちょうど熊谷から能登に飛ぶ便があるので、その帰りの便でもよいですか」
と訊かれた。
 
青葉はあまり深く考えずに「いいですよ」と答えておいた。
 
青葉は結局、6月29日からこの日まで約4日間、伏木の自分の部屋で、ひたすら寝ていた。彪志はもっとイチャイチャしたかったが、疲れているのだろうと、ずっと寝せていた。食事の時だけ起こして居間に連れていった。
 
「ごめんねー。もっとセックスしたいよね」
「充分してるよ」
「私が寝てても勝手にしていいからね」
「触ったりするのは勝手にしてる」
 
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そういう訳で、青葉は結局家の中の様子なども見ていない!
 

青葉はこの日、ドライバーの初海を呼び出し、10時頃、マーチニスモで能登空港まで送ってもらった。マーチを使うのは1月23日に津幡から熊谷に逃亡!して以来だが、車は主として真珠が時々動かしてバッテリーが上がらないようにしてくれていたらしい。
 

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能登空港の駐車場に駐める。初海はトイレに行った後、車で待機していますというので青葉と彪志の2人で2階の出発ロビーに上がる。
 
一般の旅客機離着陸時間ではないようで、人は全然居ない。彪志が売店でお土産を買う。青葉は人目の無いのをいいことに、柱の陰で彪志とキスした。彪志が検査場を通るのを手を振って見送る。3階の送迎デッキに上り、Honda-JetDeepBlueが離陸していくのをやはり手を振って見送った。
 
「あれ〜、ホンダジェットのブルーの機体ってあんな色だったっけ?」
などと青葉は呟くように言った(*14).
 
青葉は帰ろうと思い、昂揚した気分のまま、エスカレーターで1階まで降りた。そこに青葉が予想しなかった人たちの姿があった。
 
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「大宮万葉先生、お帰りなさい。金メダルおめでとうございます」
と言って、満面の笑顔で青葉にケーキの箱を渡す秋風コスモスの姿である。
 
青葉は思わず
「ありがとう」
と言ってケーキの箱を受け取ってしまった。
 
その瞬間「負けた!」と思った。
 

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「大宮万葉先生、金メダルおめでとうございます」
と3人仲良く合唱するように、UFOのユニ・フーガ・オクの3人が笑顔で頭を下げた。そしてラピスラズリの町田朱美と東雲はるこも笑顔で会釈をした。
 
そして難しい顔をしたケイも
「青葉おかえり。待ってたよ」
と言った。
 
青葉は涙が出て来た。
「私、どこに連れて行かれるの?」
 
するとコスモスは笑顔で言った。
「大宮先生の御自宅にお邪魔していいてすか?」
 
「・・・いいけど」
 

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「道々話したいので先生の車に同乗させてください」
とコスモスが言う。
 
それで初海が運転する青葉のマーチ・ニスモにコスモスとケイが同乗。いつの間にか能登空港の駐車場に来ていた〒〒テレビの報道部の運転手さんが運転するエスティマに、UFOとラピスラズリが乗って、一緒に高岡市伏木の青葉の家に向かった。
 

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(*14) この機体は2022年3月に納入された新型"Elite S" である。ラピスラズリはこれまで2020年5月からレンタル使用し、2021年5月付けで§§ホールディングが買い取った"Blue"に乗っていたのだが、この機体はホンダジェットの初期仕様の機体で定員6名であった。他の5機は"Elite"という2018年仕様のものでトイレが座席としても使えるようになり定員7名となっている。そこでラビスラズリは7人乗りのこの新型"Deepsea Blue"の機体に移動することになったのである(*15).
 
※郷愁飛行場に駐機しているHonda-Jet
 
●§§ホールディング所有
2020.05.01 Blue (旧)Lapis Lazuli
2020.12.01 Red アクア
2021.04.24 Orange 常滑真音
2021.07.27 Yellow リズム・セシルなど
2021.07.27 Silver ビーナ・松梨詩恩など
2021.12 Tiger:(後述)
2022.03 Gold:
2022.03 Deepsea Blue:(新)Lapis Lazuli
 
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●その他
2022.02 Black 千里所有
2020.12 Green N航空所有
 

アクアにも
「新型に移動する?」
と尋ねたが
「赤に慣れてるから、そのままで」
ということだった。それで舞音に
 
「新型が空いてるけど移動する?」
と尋ねたら
「オレンジの機体にずっと乗ってて、それとともに売れてきてゲンがいいからそのままで」
 
ということであった。
 

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それで現在、Gold, (旧)Blueの2機が空いている。ただし最近セシルの移動が多いのでセシルにも専用機を割り当てる可能性がある。現在はリズム・ルビーなどと共用である。
 
Tigerは、今の所、夕波もえこ、薬王みなみ、古屋あらた、松島ふうか、付近が頻繁に使用している。Tigerの絵を描いたのも夕波もえこである。この4人は“常滑真音の次”を狙っているグループで、ギャラもかなり高額になってきつつある。鈴鹿あまめはこのグループのトップ(4人から“親分”と呼ばれている)だが、あけぼのテレビの事実上の看板キャスターなので、仕事の性質上、めったなことでは東京を離れられない。
 
しかし全世界で200機ちょっとしか飛んでいないホンダジェットの内、実に10機がこの飛行場に集まっている。写真を撮りに来るマニアも多いが、稼働率が高いので、なかなか多くの機体は撮影できないようである。今年の昇格試験の時は6機揃っていて、この撮影に成功した人が数人居た。Tigerはその直後に塗り直したので貴重な写真である。
 
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(*15) ホンダジェットの色は、初期版では red, silver, blue, green, yellow の5色だったが、2018年発売の"Elite"で、Ice Blue, Ruby Red, Monarch Orange の3色が追加された。そして2021年発売の"Elite S"で、Gunmetal, Luxe Gold, Deep Sea Blue が追加された。
 
千里のBlackはGunmetalに似ているが、更に黒い色で塗ったスペシャル塗装である。またGunmetalは縁取りが黄色だが、千里のブラックは縁取りシルバーである。
 
 
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