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【春二】(5)

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真理奈(広瀬みづほ)は先に東京に帰ることになったので、部屋から荷物を取ってくる。母も姉(弥日古:広瀬のぞみ)も熟睡しているようだ。一応メモを残す。
 
米沢さん(コリン)が来て、真理奈は彼女の運転するVolvo XC40 の後部座席でぐっすり眠りながら小浜に?向かった。
 
「お姉さんとお母さんは別便で運ぶから」
ということだった。
 
真理奈が目を覚ました時、スマホを見ると6:06だった。車が停まるので、小浜のミューズ飛行場に着いたのかなと思った(*44).
 
「ん?」
 
周りを見たら、飛行場ではないようである。再度スマホで“日時”を確認するが10/4 6:06 である。午後ではなくAM 6:06 である。
 

「着きましたよ」
と言われるので
「ありがとうございました」
と言って車を降りる。
 
「あれ〜?ここ龍宮城(*41)じゃん」
 
それで中に入っていくと、女性の警備員さん(*42)が
「お早うございます。広瀬さん」
と笑顔で迎えてくれた(*43)。それで真理奈は
「お早うございます。お疲れ様です」
と挨拶してから自分の部屋に帰った。
 
「うーん。まあいいか」
と思った。それでトイレに行くと、お股には変な物はなかった。おしっこも普段の位置から出た。。
 
「やはり変な夢でも見たんだろうな」
と思う。
 
しかしおしっこが凄い量出たのは疲れたせいかなと思った。舞音ちゃんと付き合うとほんとに凄い仕事することになる。舞音ちゃんあれが毎日というのはほんとに凄い
 
トイレを出てから布団の上に寝転がったが、唐突に思い至った。
 
「あ、ちんちんある間に立ち小便と男の子オナニーしてみれば良かった!」
 

(*41) 女子寮の正式名は "Palais de la mer" (パレ・ドラ・メール), 海の城ということで、龍宮城のことである。タイやヒラメが舞い踊る場所ということで海浜ひまわりの命名。
 
(*42) ここの警備は女性の警備員さんのみで構成している。ただし一部男の娘さんもいるらしい(警備員など志望する人には男らしい天然女性も多いのもあり誰が男の娘さんかは全く分からない。きっとこの人は間違い無く天然女性だろうと思うような女らしい人が男の娘!)。
 
コスモスは警備会社に「ホルモンの摂取または外科手術により、男性能力の無い人なら問題無い。ペニスの有無は問わない」と伝えている。
 
男子として国体柔道にも出たことのある性転換者もいるらしい。コスモスは「凄く頼もしくていいじゃないですか」と言った。でもそれが誰か分からない!「彼女は男子選手時代も試合前に毎回性別確認されてたらしいです」と警備会社の部長さんは言っていた。
 
(*43) idカードを持った人が玄関を通過すると警備室のディスプレイには名前が表示される。名前が表示されない場合は部外者なので、警備員は警戒する。ケイや千里、青葉などもちゃんとidカードを持っている。
 
(*44) 千里はコリンに“2時間程度”走り回るよう命じている。典佳が姫路分室を出たのは3:55頃であった。(仮歌入れが終わったのが3:45)
 

真理奈が部屋に戻ると、すぐに朝食が配送されてくる。(*45)
 
「そうか!学校行かなきゃいけないんだ」
と思う。昨夜の段階では今日まで休むつもりになっていたので、行かなければならないというのは、なかなかきつい。
 
朝食を食べてから歯を磨き、顔を洗って軽くシャワーを浴び、新しい下着を着ける。あれ〜?ブラジャーがきつい気がする。なんでかなあ。いったん外してから、フックを外側のほうで留め直した。いつもは内側で留めていたのである。しかし外側で留めてもきつい気がした。ブラウスを着るがボタンが留めにくい。これ明らかに胸が大きくなってる。
 
それから黒いタイツを履く。
 
その時気がついた。
 
傷が・・・無い!??
 
嘘!?
 

真理奈は小学生の時に、乗っていたバスが事故に遭った。居眠り運転の大型ダンプがセンターラインを越えてバスに正面衝突したものだった、死者も出たし、真理奈自身大きな怪我をして1ヶ月くらい入院した。それまでやっていた水泳教室を辞めたし、1年近くエレクトーンの右ペダル(主として音量を調整する)が弾けなかった。体育も1年くらい見学していた。そして大きな傷跡が残り、それが事故に遭ったショック以上に、自身の心にも大きな傷跡として残った。
 
こんな傷があったら女優さんとかなれないよね、などと言っていた時「だけどアクアちゃんはお腹の手術跡を平気で曝してるよ」と弥日古から言われる。写真集を見せてもらったら、お腹に大きな傷があるのにビキニ姿になって可愛い写真を撮られている。
 
すごーい!と思って自分もここの事務所ならと思い、信濃町ガールズの地方生に応募し合格した。足の傷のことはその時も申告したが「そんなもの気にすることない」と審査してくれた先生に言われ自信が持てた。そして昇格試験を受けて本部生になった。この時も「ガールズのユニフォームにはズボンもあるから」と言われた。
 
宮崎の学校でもこちらの学校でもスカートの代わりにズボンを穿いたり、あるいは夏でもタイツを履いてよい許可をもらっている。信濃町ガールズでも当初ズボンのユニフォームを着ていたが、副社長と話し合い、肌色の不透明タイツ(特注品!)+スカートにした。
 

その傷跡が見当たらないのである。
 
なんで〜〜〜?
 
と思ったが
「これも夢かも知れない」
と思い、そのことは考えないことにして、制服の上下を身に付け、教科書をチェック。学校に出る準備をして地下駐車場に行った。(学校への送迎車は地下から出る)
 
すると車の乗り場で舞音ちゃんが手を振っている(真理奈と舞音は同じ学校)。
「おはようございます」
「おはようございます」
「そちらも帰ってきたんですか?」
「うん。仕事と重なってない限りは学校に出なさいと琴沢先生に言われた。空世ちゃん(悠木恵美)は多分昼まで寝てる」
「どうやってここに戻ってきたんですかね」
「まあ深く考えないほうがいいね」
「そうですね!」
 
「ところでマリちゃん、そのブレザーきつくない?」
「なんか私のバストが急成長したみたいで」
「ああ、そういう時ってあるよね」
 

(*45) 真理奈が戻って来たので警備員さんから制御室に連絡が行き、制御室から厨房に連絡が行って朝食が配送されたものと思われる。仕事で早出する子がいるので、朝御飯は特に前もって依頼してない限り5:30-6:00 頃に在室している子全員に配送される。2人部屋には2食配送される。制御室には、だいたい稲田姉妹が交替で詰めている。たまに海浜ひるがお・七石プリムなどがいる時もある。
 
稲田姉妹(*46) は交替で寝ていて、いつもどちらか片方は起きているようである。でもきつい時は多分ひるがおなどに下請けに出している。プリムは“おキツネ様”に使役されている!
 
(*46) 寮生の間では稲田姉妹は実は3人ではないか?という噂があり、稲田あかり・ひかりの妹“ゆかり”と勝手に名前が付けられている。あかりは右利き、ひかりは左利きだが、ゆかりはどちらも使えるのではと噂されている。
 

一方朝5時、姫路分室で弥日古は目が覚めた。自分の身体を確認する。
 
嬉しい!あの見たくもない、おぞましいものは無くなってる。指でしっかりあそこの形を確認する。ちゃんと女の子に戻れた!おっぱいも戻ってる。トイレに行き、おしっこが女の子の位置から出るのを確認する。凄く嬉しい。いったん男の子に戻されて悲しかったからよけいに嬉しい。
 
トイレから戻った時、真理奈のメモが残されていることに気付く。ちょうど母も起きた。
 
「真理奈は先に出るって。忙しいのかも」
「大変だね!」
「陽気なフィドル、黄金の流星、お気に召すまま、と立て続けに出演したから結構引き合いがあるらしいよ。今ファンメールが毎月100通くらい来てるらしい」
「凄いね」
 

飛行場に移動するのに表に出るが、弥日古と母、松崎典佳(月城たみよ)、それに「私寝てる間に置いてかれた」と言っている舞音の写真家・春山サクラと霊的ボディガードの仙北龍美さんの5人である。
 
「これだけ?」
「舞音ちゃん本人と専属マネージャーの悠木恵美、それに広瀬みづほちゃんは先に行きました」
と千里さん。
 
「私たちよく舞音ちゃんに置いてけぼりにされる」
と春山さん。
「多分30-40代の私たちにはハードすぎるという判断だと思う」
と仙北さん。
「うん。若い内でないとあの忙しさには耐えられない」
「それでも仕事の9割は断ってるらしいですよ」
「きゃー」
 
「舞音ちゃんのスケジュールって鬼畜ですよね」
「でもアクアほどではない」
「恐ろしい」
「多分みづほちゃんが付き人兼任で付いて行ったのでは」
と松崎典佳が言っている。
「私もよく舞音ちゃんの付き添いするんですけどほんとに凄いですね」
「ああ」
 
このところ、月城たみよ・広瀬みづほ・麻生ルミナ・川泉スピンなどがよく舞音の付き添いに使われている。これは彼女たち固有の仕事がまだ少ないからである!彼女らとだいたい同列扱いのプリムやパフェは男の子(男の娘)なのでこういう用途には使いにくい。
 

「どうする?のぞみちゃん、こんなに忙しい仕事でもやります?」
と典佳が訊く。
 
「高校出て、ファミレスのフロア係とかの仕事するより楽しそうだからやりたい」
と弥日古。
 
「ファミレスのフロア係30年はできないだろうね」(*47)
 
「まあいいんじゃないの?若い内しかできないことだし。27-28歳までやったらお嫁さんに行けば」
などと母は言っている。
 
やはりお嫁さんに行くのか。
 
「何なら一緒に東京に行って契約します?お母さんも来ていることだし」
と千里が訊く。
 
「ああ、それでもいい気がします」
 

(*47) 筆者の祖母は博多中州で飲食店のウェイトレス(仲居?)を40歳頃から70歳頃まで30年ほど勤めた。(後半20年は西洋料理店)
 
そしてその前半5人ほどの男性と2年おきくらいに結婚し母が呆れていた。
 
(その前にも少なくとも2度結婚しており母は最初の夫の子供。でも最初の結婚前もかなり男と遊んでいたらしい:あんまり“翔んでた”からまじめそうな男と結婚させられた、と本人が言っていた。でもその最初の夫は母が生まれてすぐ亡くなった。2度目の夫は酷い暴力男ですぐ別れたと、いうか逮捕された)
 
ただし50歳頃に知り合った最後の夫とは30年間、夫が死ぬまで添い遂げた。彼と出会って自分は変わったと本人も言っていた。
 
祖母はウェイトレス引退後も元気で100歳まで生きた。物凄いヘビースモーカーだったのに。しかもいつも凄い高カロリーの食事をしていたのに。
 
(祖母のことを考えると世の中の様々な“健康法”“長寿法”ってあてにならんと思う)
 
しかし全く若い人だった。
 

そういうわけで、全員東京に行くことにした。
 
舞音のドライバーも兼任している仙北さんの運転するスカイラインに春山・松崎典佳・元恵・弥日古と乗って、小浜市のミューズ飛行場へ向かう。
 
「皆さん寝てて下さいね」
と仙北さんが言うので、実際、弥日古も典佳も熟睡していた。元恵は仙北さんに
「ひとりで大丈夫ですか?運転交替しましょうか?」
と言ったが
「私訓練受けてるから72時間くらい寝なくても平気ですから。悠木マネが私を置いていったのは私にドライバーしてくれという意味だと思います」
と言っていた。
 
「へー!凄い訓練ですね。自衛隊か何かのご出身ですか?」
「ああ。F15でも操縦できますよ」
「凄い!イーグル・ドライバーですか!」
 

結局元恵も寝ていた。
 
それでミューズ飛行場に着くと30分ほど休み、ホンダジェットに搭乗する。舞音の使用機Orangeが残されているので、Orangeの機長・渡辺浩子さんと若い副操縦士の米田渚紗さんが操縦席に座り、弥日古・典佳が前向きの席(タレントが常に最優先される)、元恵と春山さんが後ろ向きの席、仙北さんが補助席に座って飛行機は7時半頃、離陸した(何か時間がおかしくない?今更だけど)
 
仙北さんが補助席なのは、彼女はホンダジェットも操縦できるので万一の場合は操縦するためだと言っていた。
 
飛行機は30分ほどの飛行で熊谷市の郷愁飛行場に着陸。ここで仙北・春山は熊谷で待機。弥日古・元恵・典佳がSCCのドライバーさんの車で東京に向かう。途中で信濃町ガールズ担当の鎌倉マネージャーから電話があり、信濃町の事務所に来てほしいという。それで東京に着いたら、最初に典佳を学校で降ろし、そのあと車は新宿信濃町の§§ミュージック本社に行った。これが10時半頃だった。
 

本社ではコスモス社長が歓迎してくれる。信濃町ガールズを総括している佐々木春夏マネージャーから細かい説明があり、契約内容に同意。12:20頃(*48)、双方サインして、弥日古は信濃町ガールズになった。お部屋は妹の真理奈と同室でいいことにする。ただし弥日古は現在高校3年生なので実際に活動に参加するのは高校卒業後ということにした。ただ、どうしてもという仕事がある時はお願いする。また冬休みの期間は東京に出てくることにする。またあらためて家族を含めて感染対策をしっかり頼むと言われた。
 
どうかした事務所なら高校は退学させるところだが§§ミュージックは、高校までは“一応”学業優先にしてくれる。
 
「タレントに大事なのは社会生活の経験だと思うんですよね。それが無いと一般の人の感覚から懸け離れたタレントになってしまう。そういう芸能活動以外は何も知らない芸能馬鹿を作ってはいけないと思うんですよ。だから若い子たちには片想いでもいいから恋をしろと言ってます。10代で恋愛を経験してない子は異性を見る目が育ちませんよ。よく恋愛禁止されていた元アイドルが変な男に引っかかるのはそのせいですね」
 
とコスモス社長は話していた。
 
「この人、若いのにしっかりしてる」
と母は思った。
 
弥日古たちは今日小浜から飛んできたので、夕方また宮崎に飛ぶというのは体力的に辛いだろうからということで明日宮崎に帰ることにした。学校を3日間休むことになるがやむをえない。今夜は真理奈の部屋(約6畳)に3人で泊まる。かくして都城(みやこのじょう)の藤家では今夜もカップ麺かレトルト食品の晩御飯になること確実である!
 
(*48) 12:48からボイドに入るのでその前にサインできるよう時間調整している。コスモスには、もしボイドに突入したら19:20に抜けるまでサインを待つよう連絡している。
 

真理奈(広瀬みづほ)は学校が15時に終わったがその後、あけぼのテレビ五反野サテライトで仕事をして、21時に上がった。そして21時半頃女子寮に帰宅する。
 
「お帰り。お疲れさーん」
と弥日古と母が声を掛ける。
 
「ただいまあ、疲れたぁ!」
と言って横になる。無防備に横になっている妹の胸の盛り上がりを弥日古はまぶしく感じた。
 
真理奈は弥日古が契約したということ、3月からは東京に出て来てここに同居するという話に
「結局私とやー姉ちゃんとの同居に戻るのね」
と嬉しそうに言っていた。
「女の子のことたくさん教えてあげるね」
「お手柔らかに」
 
「あっそうだ」
と言って真理奈はブレザーを脱ぎ、ブラウスを脱ぎ、ブラジャーも外す。
 
真理奈が上半身裸になってしまったので、弥日古は慌てて後ろを向く。
「別に恥ずかしがらなくていいのに。姉妹なんだから」
「いやちょっと」
 
「マリ、それ跡が付いてるじゃん」
と母が言う。
 

「なんかブラジャーが小さくなって。お母ちゃん、これサイズいくらかなあ」
と真理奈が言うので母がメジャーで測ってみる。
 
「アンダーが76cm トップが91cm これはC75で行けると思う」
「やはりCかぁ!」
 
それで真理奈はフロントに電話する。海浜ひるがお(海浜ひまわりの従妹)が出る。
 
「すみません、何か私の胸が急成長したみたいでブラが入らなくなったんで、追って自分で買いますけど明日用にブラ1枚もらません?」
「うん。いいよ。サイズは?」
「C75です」
「それブラウスは大丈夫?」
「あ、ブラウスも1枚ください」
「じゃ持ってくね」
 
それで電話を切るが母が驚いていた。
「下着とかもらえるんだ?」
「そそ。忙しくて洗濯できずに不足してしまう人とかもいるし、下着の類い、靴下やストッキングももらえる」
 

「それ逆に洗濯してないブラウスとか着てたらテレビ局なんかで顰蹙だよね」
と弥日古が言う。
「うん。だからこういう制度になってる」
「ああ」
「元々はアクアがデビューした途端に無茶苦茶忙しくなってマジで洗濯する時間が無いから、寮母的な役割をしていた、当時の紅川社長の奥さんがアクアの下着をたくさん買ってあげたらしい。それからこの制度は始まったんだよ」
 
「ああ、それが女子にも拡大されたんだ」
「アクアは女子の下着しか着けないと思うけど」
「・・・やはりアクアちゃんって女の子なんだっけ?」
「アクアが男の子だなんて思ってる人はいないよ」
「確かに」
と弥日古も言った。
 
「だいたい女子寮に住んでたし、ちんちんが無いのはたくさんの寮生に目撃されてるし」
「うーん・・・」
と母は悩んでいた。
 

やがて海浜ひるがおが夕食と、ブラジャー・ブラウスを持って来てくれたので受け取った。
 
「ありがとうございます」
 
「あ、のぞみゃんも信濃町ガールズに入るんだって?」
「はい。未熟者ですが、よろしくお願いします」
「いや、デビューなんて遙か彼方の雲の上だけど、信濃町ガールズに入るのもチョモランマの上という感じだからね。私なんか『君には絶対無理』と言われた」
 
「そんなもんですかねー。私はガールズの姉妹だからって簡単に勧誘されたけど」
「でもアバサちゃんは不合格だったよ。姉妹であっても実力はちゃんと見てるよ」
「アバサちゃんは自分でも『私歌下手だし』と言ってました」
 
「それに信濃町ガールズの姉妹を勧誘するのはこの12月までで終了するみたいね」
「あ?そうなんですか」
「昇格試験ルートに統一する。ビデオガール・コンテストも不要ではという意見も根強い。実際コンテストの最終予選進出者はほとんどが地方ガールズ」
「ああ」
「ただ川泉パフェちゃんが地方ガールズを経ずにコンテストで優勝したからね。議論はあったみたいだけど。あの子は青森の凄い田舎の出身だったからね。物理的に昨年までの体制では地方ガールズのレッスンにとても参加できなかった」
「ですよね。うぢでもレッスンの度に鳥栖(*49) まで行くの大変だった」
「でも今後はネットレッスンを拡充することでカバーできるのではという意見もある」
 
「そのあたりはコロナが時代を変えてしまった面もありますね」
 
(*49) §§ミュージック音楽教室の九州支部は鳥栖(とす)市にある。ここは鳥栖JCTもあり九州全体から集まりやすいことから選定された。鳥栖は交通的な位置づけが、ちょうど関東の高崎、関西の米原などに近い。
 
以前も書いたが戦後アメリカ軍が進駐してきた時、九州では最初に鳥栖に拠点を置いた。ここが交通の要所であると判断したためと言われる。
 

「そうだ。亜蘭さん」
と真理奈は訊いた。
 
(秋本亜蘭は海浜ひるがおの本名。海浜ひまわり(八重夏津美)とはお母さん同士が姉妹)
 
「ひまわりちゃんの弟さんが“女装して大阪支店長さんの所にお嫁に行った”という件の真相はどうなんですか?“弟”というのは男らしい妹だとか、弟さんはMTFだとか、支店長さんは女性だとか、色々な噂があって。情報通のスピカちゃんも真相不明と言ってますけど。もしよかったらこっそり教えてください。誰にも言いませんから(←みんなに言いふらすという意味)」
 
「ああ。夏津美ちゃんの弟の秋人君でしょ。今は秋代ちゃんだけど」
「やはり性転換したんですか!」
 
「本人は『お嫁さんに行ってって無茶な。ぼく男の子なのに』とか最初は言ってたんだけどね。でも本人はいつも女の子に間違われるような可愛い子だったんだよ。20歳すぎても声変わりもしてなかったし、ひげも生えてなかったし。成人式では欺して振袖着せちゃったし。だから何とか説得してウェディングドレス着せてお嫁さんにした」(*50)
 
「うーん」
 

「小さい頃からスカートがよく似合うから穿かせられてたし。下着は女の子下着を物心付く頃から渡してたからそれ着けてたし。本人もショーツ穿くのが普通になってたし」
 
それって強制女子化教育では?
 
「そういう可愛い子は女の子下着でいい気がする」
と真理奈は言ってる。
 
「でしょ?お嫁さんになるのに男名前では恥ずかしいというから裁判所に申請して名前は女の子らしい“秋代”に変更したけどね」
 
「ああ」
 
「支店長さんと仲良くやってるみたいだからいいんじゃない?」
 
「まあ仲良くしてるのならいいか」
「今年赤ちゃんも生まれしたし」
 
「なんで赤ちゃんができるんですか!?」
「結婚したら赤ちゃんできるんだよ。コウノトリが運んで来るんだよ」
「え〜〜〜!?」
「のぞみちゃんも、きっといいお嫁さんになって可愛いいベイビーを産めるよ」
「ほ、ぼくが赤ちゃん産むの!?」
「ああ、やー姉ちゃんは赤ちゃん産めると思う」
 

(*50) 米本愛心によると、ひまわりの弟さんというのは凄い“美少女”で歌も姉よりずっとうまく、紅川さんが
「ぜひ海浜ひまわりの妹の“海浜すずらん”とかでデビューしない?」
と勧誘したものの、男の子と聞いて仰天したらしい。
 
本人は「ぼく女の子になりたくはないですー」と可愛く!言っていたが、それでも女の子にしか見えなかったという。普通にスカート穿いてたし。彼女(でいいと思う)がどうしてもデビューを拒んだのがアクアの強力な売り出しに繋がった。また秋人ちゃんの勧誘で年齢的ギャップも感じたので、アクアのプロデュースは少しでも年の近いコスモスに任せた。
 
秋代の結婚について花ちゃんは口が堅いが、花咲ロンドによると(*51)、ひまわりが卵子を提供して夫の坂口さんの精子と受精させ、代理母さんに産んでもらったのではないかということだった。つまり、ひまわりは結婚してくれず、弟?は優しすぎて後継ぎとしては不適格(あの子に経営は無理とひまわりも言う)なので、社内の人望が高い坂口さんに無理をお願いしてこういう変則的なことをしたらしい。
 
坂口さんは秋代をとても愛してくれているという。
「普通の女の子と何も変わらないし」
と言っていたという。
 
関係者は明言しないが、やはり「女の子になりたいわけではない」と言っているのを何とか口説き落として性転換手術を受けさせたとか??
 

「手術とか嫌だよぉ、ぼく女の子になりたくないよぉ」
「あんたは女の子になったほうがいいんだよ。きっと可愛いお嫁さんになれるよ」
「お嫁さんとかなりたくないよぉ」
「先方は女の子であれば元男の子でもかまわないと言ってるから」
「そんなあ」
「手術はすぐ終わるから」
「私たちの可愛い娘になってね」
「先生お願いします」
「うん。君、可愛い女の子にしてあげるからね」
「やめてー」
 
麻酔を打たれて意識を失う。
 
「連れていけ」
 
(以上ロンドの妄想でした!)
 

(*51) 以上は花咲ロンドの見解だが、月嶋優羽の見解はまた少し?違う。支店長さんは、社長から親族の娘との縁談をたくさん紹介され、困っていたので、実は自分はゲイなので女性を愛せないのだと告白した。
 
「なんだ。それならうちの息子と結婚してよ」
と言って秋人君と結婚してもらった。
 
秋人は女の子になりたいと思っていたが、(体力が無いこともあり)性転換手術を受ける踏ん切りが付かず、取り敢えず名前だけ秋代に変えていた。それで父から男性と結婚してと言われ、まあいいかなと思って結婚したら、自分がまだ男の身体なのに、たくさん愛してくれるから、凄く仲良くやっている。
 
秋人は身体はいじってないものの外見は女にしか見えない。身長も150cm程度で女性としても背の低いほうである。ウェディングドレスも普通に着こなした。声変わりもしてないし、ひげも生えないので、普通に支店長夫人をしている。
 
やがて赤ちゃんも生まれたので(←この部分が優羽説のよく分からない所)、赤ちゃんのママをしている内に、別に性転換しなくてもいいかなという気持ちになってきている。むろん彼は女物しか着ないし、温泉では普通に女湯に入る。夫からもたくさん愛してもらっているので、実用上、性転換手術を受ける必要性を感じていない。
 

このように様々な説があるので、情報通の姫路スピカも「分からん」と言うのである。
 

さて、真理奈はその日お風呂に入って、自分の足をよくよく観察してみたが、やはり傷跡は無い。(ちんちんも無い)
 
なんで消えたんだろう。
 
でもこれ夢かも知れない、と思ってあまり期待しないようにしてその日は寝た。
 

翌朝起きてからトイレのなかで再確認する。やはり傷跡は無い。
 
真理奈はズボンを穿かずにそのまま(ショーツだけで)トイレから出る。母が
「寒くない?」
と言う。
 
「何か足に傷が無い気がするんだけど、私夢でも見てるのかなあ」
「え?」
 
母は真理奈の足を確認する。念のため反対側の足も見る。
 
「傷が無くなってる」
 
弥日古も起きてきて妹の足をチェックする。
 
「これ傷跡無くなってるよ」
「やはり?」
 
母が泣き出す。そして真理奈の足を抱きしめる。
 
「良かった。良かった。あの日なんで私、あんたを迎えに行かなかったんだろうってずっと後悔してた。ほんとに良かった」
 
事故以来、母はずっと自分を責めていたのだろう。
 
母はずっと娘の足を抱きしめたまま泣いていて、真理奈ももらい泣きしていたが弥日古は自分までもらい泣きしながらも言った。
「ズボン穿かないと寒いよ」
 

2人のお腹の手術跡を見て千里は言った。
 
「きっと性転換したせい」
「え〜〜?でもぼくこれまで何度も女の子に変えられてますよ」
 
「過去の性転換では全部外科的にペニスを切断したり、立ちにくい小型ペニスをくっつけたり、ヴァギナを造ったり、卵巣や子宮を埋め込んだり、睾丸を除去したり、女性ホルモンを分泌するニセ睾丸を入れたり、陰裂を作ったり、尿路を短縮したりしてて、性別軸の回転はしていなかったはず」
 
「ひたすら女性化されてる」
とF。Mは不快そうな顔をしている。
 
(龍虎のオリジナルペニスは一度Nに戻されたがNが消えたことで現在消失中。ただしそれ以前に龍虎の精液は保存されているので子作りは可能。彩佳も人工受精で龍虎の子供を産むつもりでいる)
 

「今回は性別軸を1回転させたから、その副作用として怪我が治ったのだと思う」
 
「そんな効果が・・・」
 
「過去に性別を回転させたことによって腫瘍が消えた人が居る」
「へー!」
「そもそも性別軸を回転させると、それまで無かった卵巣が出来たり、睾丸ができたりする」
「確かに」
 
「だから龍ちゃんも性別軸を回転させたことで傷が3割くらい治った可能性がある」
「凄い」
「でもこのままじゃ2人で1人のふりをするのに支障がある」
「それ困るなと言ってたんです」
 
「やはりMにもう一回傷を付けますか?」
「なんでだよ!?」
「Fちゃんも一度男の子にして、続けて女の子に戻す。それで傷は同程度に薄くなるはず」
「男にするんですか〜?」
「すぐ女の子に戻してあげるから」
「分かりました」
 
「Mちゃん、この操作をFちゃんにするのに多分半日かかると思う。悪いけど今日のお仕事は、1人で頑張って」
「分かりました。頑張ります」(*52)
 
「じゃFちゃんは寝てていいからね。目が覚めた時には男の娘だよ」
「やだなー」
「男の娘になって1度おしっことオナニーしてから眠ったら今度は女の子への性転換がかかるから」
「オナニーするんてすか〜?」(*53)
「男の娘のオナニーやってみたいでしょう?」(*54)
「不純な動機でやってみたい」
「一度経験してみるといいね」
 

(*52) 実際には千里は和城理紗に命じて、この日の仕事の3割程度をカブちゃんにやらせた。
 
(*53) 排尿は大量代謝が行われるので必要だが自慰までさせるのは千里の趣味!Fは「面白かった」と言っていた。ちなみにこの時に放出した精液は念のため和城理紗の手で保存された。
 
(*54) ルーシー(招き猫バンド)は“男の子オナニー”と“男の娘オナニー”の違いを熱く語っていたが、省略する!!
 

翌日(24時間後)。
 
「凄いね。Fちゃんの手術跡も薄くなったね」
「これもう一回回転させれば消えたりしません?」
「可能性はある。それよりさ」
 
と千里は提案した。
 
「なるほどー!」
 
コスモスを代々木のマンションに呼び、千里を交えて4人で話し合う。
 
「それは時代劇の制作スケジュールをずらしてもやる価値がある」
とコスモスも賛成した。
 

それで10月10日(祝)、次のメンバーが西宮に集まったのである。
 
入瀬ホルン・麻生ルミナ(北陸組)
夏江フローラ・山口ヨルカ(関西組)
米田ショコラ・花畑バニラ(ツイスト)
青井ももこ・有田くりこ(ももくり)
 
広瀬のぞみ・広瀬みづほ(広瀬姉妹)
月城としみ・月城たみよ(月城姉妹)
 
この中で上の8人は8月25日にアクアと一緒に西宮の彫刻の森・アクアゾーンで写真を撮った子たちである。実はアクアのお腹の傷が少し薄くなったことから、先日の水着写真を撮り直すことになったのである。
 
撮影には上記12名の他に別便輸送(本当は転送)されるアクアと葉月が参加する。
 

今回の日程は下記の条件でギリギリの妥協点になった。
 
・写真集の12月発売は営業的に絶対ずらせない(できるだけ早く撮りたい)。
 
・前回参加してくれた子は外せない(折角水着になってくれたのに写真集に掲載されないのはあまりにも可哀想)。
 
・中学生の子がいるので、法令上平日には撮影できない。(学校があっている時間に中学生に労働させてはいけない:労働基準法56条2)
 
・長編時代劇の撮影にできるだけ影響を与えないよう3連休の1日。
 

また前回撮影してて8人では足りず無理矢理間に合わせたようなシーンが幾つかあったことから、12人での撮影になった。(広瀬姉妹・月城姉妹の追加)
 
そこにちょうど広瀬みづほから
「なぜか分からないけど足の傷が消えた」
という報告があったので、その記念に彼女の足が露出している写真を撮っちゃうことにした。のぞみは妹のついでである(性転換記念写真?)。
 
実は入瀬コルネを呼ぶ案もあったのだが
「小学生の水着写真を撮ってる」
と言われる危険がある!という判断から見送られた。高校生なのに!
 
昔ケイなんて小学生なのにビキニの写真を撮られているが、最近は低年齢タレントの写真は色々難しい。今回ビキニになるのはアクアと葉月のみで、ガールズたちは被覆面積の大きなワンピース水着である。
 
結果的に薩摩川内市の月城としみ、都城市の広瀬のぞみを呼び出すことになった。今回は金曜日の夕方、のぞみの母に彼女を藺牟田飛行場まで送ってもらい(2時間ほどで行く)、月城としみと2人でホンダジェットに乗せてミューズ飛行場に運んだ。それでふたりは昨日からBFRに泊まっていた。帰りはとしみの母がのぞみを都城市まで送ってくれるらしい。
 
この2人以外は,夜中に熊谷に移動して郷愁村で一泊し、今朝一番に郷愁飛行場から Gulfstream G450 (千里2の所有機)で神戸空港に運んだ。
 

一行はマイクロバスで神戸空港から彫刻の森・リゾート(BFR)に入り、まずは彫刻の森で“お茶会”の写真を撮り直した。
 
前回は8人のガールズに、高村マネージャーと緑川マネージャーまで入れたのだが、如何にも間に合わせた感じになったので、今回円卓に座る12体の彫像の間に白いドレスのガールズたちを1人ずつ配す。ただし、月城としみ・広瀬のぞみはうさ耳付きのメイド衣裳を着せ給仕とした!(バニーガール?)残り10人のガールズとアクア・葉月がお茶会の出席者である。うさぎが出てくるのは『不思議の国のアリス』のイメージである。のぞみには“柔らかい時計”も持たせている。
 
高村マネージャーなどは
「30代のおばちゃんの恥ずかしい写真が残らなくて良かった」
などと言っていた。
 
このほか幾つかのシーンを撮り直した。みんな前回のポーズや位置を覚えていたので短時間で撮影できた。さすが10代の記憶力である。
 
その後、アクアゾーンに入り、水着姿で前回と同じポーズの写真を撮る。これは全て撮り直す。虹色の列車のところは前回乗客がアクアたちを含めて10人だったが今回は14人になった。
 
水時計のところも、文字盤の数字の間に座ったのは10人のガールズとアクア・葉月で、としみ・のぞみは、やはりうさ耳を着けてお盆とティーサーバーを持っている。
 
脇役扱いが多くて申し訳無いのでアクアの両サイドにこの2人を立たせる絵も撮った。
 

帰りのバスの中で
「この写真公開されるんですか?」
などと月城としみ(松崎真和)が言い出す。
 
何を今更?
 
「アクアの写真集として発売するけど」
「え〜?ぼくの女子水着姿がみんなに見られちゃう」
 
花ちゃんが心配して
「公開していいんだよね?」
と訊いたら
「もちろんOKです!」
と月城たみよ(松崎典佳)が答えた!
 

「お姉ちゃんも既に社会的には女になってしまったんだから覚悟を決めて女子として生きなよ」
と典佳。
「そうは思ってるんだけど・・・」
 
「元々女の子になりたかったんでしょ?」
「なりたかった」
「なれたんだからそれでいいじゃん」
「そうだよね」
と言いながらも本人は気持ちがまだフラフラしている。でも男には戻りたくないし、その気持ちは動かない。
 
「明日からはちゃんと女子制服で学校に行こう」
「そうしようかな」
 
本人もかなりその気になってきたようである。
 
「トイレも女子トイレを使おう」
「それ友だちからも強く言われてる。男子トイレの使用は禁止されたし」
「当然。女の子が男子トイレ使ってはいけない」
 
「お風呂もちゃんと女湯には入らなきゃ」
「ぼく女湯に入るの〜〜!?」
「少なくとも男湯には入れないな」
 
藤弥日古(広瀬のぞみ)もドキドキしなが聞いていた。
 
『ほくも女湯に入らないといけないんだろうな・・・』
 

「広瀬みづほちゃんの傷が消えたのどう思う?」
とヴィクトリアはグレースに訊いた。
 
「性別軸を1回転した効果だろうね」
「やはり」
「オーリンの怪我の功名だね。アクアの傷が薄くなったのと同じ」
「ああ」
「ずっと昔、司ちゃんの肩の痛みが治ったのも同じ」
「でも司ちゃんは副作用ですごく女らしくなって、結局女として生きる道を選んじゃったね」
「今では3児のママだからなあ」
「こないだお祝い持ってったけど子供3人とも美人だったよ」
「1人は男の子たった気がするが」
「一番上の子でしょ。凄い可愛かったよ。あまり可愛いからってスカート穿かせてた」
「うーん。まあいいか」
 
「司ちゃんのケースは、きーちゃんの悪戯のせいだけどあのまま肩の痛みを我慢して生きるのも辛かったと思うよ」
「かなり悪化しつつあったみたいだもんね。多分物も持てなくなるのは時間の問題だった」
 

「でもこの方法、誰にでもは使えないよね」
「そうそう。まず男の子に使うと、副作用として女らしくなる問題がある」
 
「傷の根本原因が既に解決していることも条件だよね」
「私たちが使う子牙方式はそうだね。きーちゃんのはそこも治しちゃうみたい」
「但し女性化作用も強い」
 
「オーリンの場合はオーリンが見える程度の霊感が必要」
「確かにオーリンが見えない子には使えない」
「そもそも女子にしか見えないような子にしか使わない」
「オーリン本人の好みの問題だな」
 
「私たちの術の場合は、怪我してから最低でも2年程度は経っていることが条件」
「逆に早い時期なら青葉のヒーリングが有効」
「そちらがまともな方法だから、基本的にはそれを勧めたいね」
 
「アクアの手術跡、最終的に完全に消えると思う?」
「分からないけど、完全に消すにはあと2回は性別軸を回す必要があると思う」
「つまりあと2回は“妊娠可能な”女の子になってもらう必要があるのね」
とヴィクトリアは楽しそうに言った。
 

10月11日(火).
 
松崎真和(月城としみ)がまだドキドキしなながら女子制服で学校に出て行ったら、担任に声を掛けられた。
 
「松崎さん、最近ずっと女子制服で通学しているよね」
「はい、すみません」
「いやそれはいいんだけどね。保健の先生が君は確かに女性だと証言しているし。そもそも性別変更届けも出ていたし。性別が変わっちゃうことって時々あるらしいね。君ってそもそも女らしかったし」
 
あれやはり処理されたの?確かに身体測定で女の子の身体を曝してるし。
 
「ただ、そのままでは生徒手帳での身分証明に支障が出るからさ」
「あ」
 
男子制服で写った写真の生徒手帳を持ってて女子制服を着ていたら同一人物と思ってもらえない。
 
「だから生徒手帳の写真撮り直そう」
「はい!」
 
それで真和は女子制服を着た写真を撮ってもらい、翌週にはその写真を転写して新しい生徒手帳を発行してもらった。古い生徒手帳は穴を空けて無効化して返却された。
 
新しい生徒手帳は性別も女と記載されている。真和はそれを見てドキドキした。
 
「ぼくこれで完全な女子生徒になっちゃった」
と真和は思った。
 

2022年10月15日(土) 10:10.
 
能登空港で海上保安庁の測量機「あおばずく」(Beachcraft King-Air B300C ターボフロップ機)が着陸して滑走路を端まで行き、折り返してエプロンに行こうとしていた最中に、この空港を共用している日本航空学園のヘリコプター(ベル206B)が同じ滑走路から離陸するというできごとがあり、 国土交通省は重大インシデントと認定した。
 
能登空港は以前は“航空管制運航情報官”(*55) が配置されていたのだが、2016年4月から管制のための要員が居なくなり。大阪対空センターのリモート管制に変更されていた。この日は日本航空学園では学園祭が行われており、ヘリコプターによる遊覧飛行が何度も実施されていた。
 
“あおばずく”は給油のため、リモート管制の許可を得て能登空港に着陸した。ヘリコプターはリモート管制の許可を得て離陸動作を始めた。
 
飛行機側はエプロンに行こうとしてたら前方にヘリが出て来たのを見て、慌ててブレーキで機を停めるとともにリモート管制に連絡、管制はヘリに離陸を中止してその場に停止する指示したが、既に離陸した後だった。(その場に停止したら、よけい危険な気がする)
 
着陸した飛行機がエプロンに行くのに滑走路を使うことを予想できなかったヘリにも問題はあるが、基本的には滑走路に別の飛行機が居るのにヘリコプターに離陸許可を出した管制ミスという気がする。
 
(*55) 航空管制運航情報官というのは、管制官ではないし、航空機に指示を出す権限は無いのだが、その空港に居て管制のための情報を提供したり、航空機に現地の状況を伝える仕事をしている人。管制官が居ない小さな空港に配置される。
 
実は以前筆者の息子の同級生のお父さんが能登空港で航空管制運航情報官をしていた。
 

10月17日(月).
 
ホンダはホンダジェットの新型 "Elite II" を発表した。価格は695万ドル(10.2億円)とアナウンスされた。
 
燃料タンクを拡大したことから航続距離が1547海里(2865km)に伸びている(従来のElite-S は1437nmi=2661km)。巡航速度は782km/hである。また来年(2023)の前半には操縦席にオートスロットを、後半には緊急着陸装置も装備する予定としている。
 
また塗装色として Black が追加された(*56).
 
(*56) Honda Jet Elite-II のBlack は縁取りの色がマゼンタのような赤である。千里が所有している特別塗装のblackは縁取りがシルバー。Honda Jet Elite-S のGunmetalもほとんど黒であるが縁取りが黄色。
 
※Honda-Jetの塗装色
 
初期: red, silver, blue, green, yellow
Eliteで追加 Ice Blue, Ruby Red, Monarch Orange
Elite S で追加 Gunmetal, Luxe Gold, Deep Sea Blue
Elite-II で追加 Black
 
アクアの使用機 Red
常滑舞音の使用機 Monarch Orange
ラピスラズリの使用機 blue→Deep Sea Blue
高崎姉妹の使用機 Silver
羽鳥セシルの使用機 Yellow
 
ただしRed, Orange 以外の機体は空いていれば他の人が使うこともある。RedとOrangeはアクア(+葉月)・舞音以外が使うことはめったにない。他の機体が全部ふさがっている時以外は原則使わないので、舞音は orange に読みかけの漫画を置いていたりする。
 

10月19日(水).
 
彪志は仕事が終わって25時くらいに自宅に戻った。みんな寝静まっているのでできるだけ音を立てないように荷物を部屋に置いたらお風呂に行く。それで下着を脱いだら、トランクスに微かな汚れがあるのに気付いた。
 
あれ〜?お尻ちゃんと拭いてなかったかなあと思い、お風呂の中で自分でその付近をしっかり洗ってから洗濯機に入れた。
 

10月20日(木).
 
彪志は仕事で外に出掛け、訪問した病院でトイレを借りた時、お尻を普通に拭いた後、いつも持ち歩いているアルコールウェットでも拭こうしていて“お尻ではない所”が汚れていることに気付いた。
 
あ・・・ここから何か分泌液とか出て来てるのかな。
 
と気付く。新しいアルコールウェットを1枚取ってそこを拭いてから少し考えた。これ何かここに当てておいたほうがいいのでは?
 
それでポケットティッシュを1枚取り、その付近に当たるようにした。彼がまだ男性だった頃に、男性固有の器官からの分泌物でパンツが汚れないように当てていたのと同じ要領である。トランクスを穿き、ズボンをあげて個室を出た。
 

それで病院の出口へ向かおうと廊下を歩いていた時
「何か落ちましたよ」
と声を掛けられる。
 
「あ、済みません」
と行って振り返る。教えてくれたのは女性看護師さんのようである。彪志が会釈すると向こうも会釈して立ち去る。彪志が床を見ると何か白い物が落ちている。何だろうと思って彪志は拾った。それでしばらく見てて正体が分かると青くなる。
 
さっき“あそこ”に当てていたティッシュだ。まだ付けてから短時間だから大して汚れてなくて良かったけど。
 

駐車場の車の中でしばし考える。ティッシュをはさんでおいたら簡単に落ちる。何かいい手は無いかと考える。ティッシュをセロテープとかでパンツに留めといたらどうだ?いや、そんなの簡単に外れる。ガムテープでは?それだと今度は剥がすのに苦労する。だいたい痛い(←60年くらい前までの多くの女性の悩み)
 
そのうち彼はハッとした。そうだ!ナプキン使えばいいんじゃないか?と。ちんちんやたまたまがあるとナプキン付けるのに邪魔になるけど、今自分の身体は女と同じような形だから、付けられるハズと思い付いたのである。
 
ただナプキンをどうやって買えばいいかと少し悩む。でもこれはすぐ思いついた。メモに買うべき商品の名前を書き、それを見ながら買えばいい。実は過去に青葉に頼まれて、そんな感じで買いに行ったことがあった。そうすれば男のくせにナプキン買うなんて変態ではと思われることもないんじゃないかなぁ。
 
(↑よほど怪しげな行動してない限り、お店の人は気にしないって)(*57)
 

(*57) 松崎典佳(月城たみよ)はナプキンコーナーでそわそわしていたのでお店の人に声を掛けられた!でも「ぼくナプキンが欲しいんです」と言ったら選ぶのを手伝ってくれた。でも“生理ごっこ”したい男の娘?と思われたかも。(痴漢には見えなかったと思う)
 
花和留実子は男にしか見えない(生理用品コーナーに居たら痴漢と思われる)という問題に加えて経済的な問題でナプキンが買えなかったので、いつも千里に買ってもらっていた。お金も千里が出してあげていた。
 
滝沢小鞠(komatta) は生理用品コーナーに居たら声までは掛けられないものの変な目で見られるので友人女性に頼んで買ってもらっていた。今ではマリのお陰で、マリベーカリーの女性スタッフは(バイトの子まで含めて)全員生理用品が無料配布になっているので助かっている(希望の物を買ってもらえる)。これは特にバイトの大学生に好評である。女子大生はお金が無いので生理用品を買うのにも苦労してる子がけっこう居る。
 

彪志はナプキンの商品名をスマホで調べてみた。それでソフィ・ボディフィット普通の日用21cm 羽無しというのが良さそうだなと思い、これを紙にメモした(スマホにメモすると、それを見てたら盗撮してるようにも見える。紙が安全)。
 
それで会社に戻る前にマツモトキヨシに寄る。おやつとかコーヒーとか買った後、メモを見ながら調べておいたナプキンを商品カゴに入れた。通路を歩いてレジの方に行こうとしていた時、50代くらいの女性とすれ違いざまに軽く接触した。彪志は「すみません」と言ったが、女性は何も言わずに向こうに行った。
 
やや不愉快だったが、気にせずレジに行く。レジの女性はナプキンともうひとつ何かを黒い袋に入れた。生理用品を紙袋とか黒いビニール袋に入れてくれるのは知っていたものの、ナプキン以外に何か買ったっけ?と思うが、まあいいことにした!
 

車に戻ってから早速ナプキンを着ける。
 
この時、黒い袋の中に生理用ショーツ(L)が入っていることに気付く。
 
あ!あのおばちゃんとぶつかった時にこれがカゴの中に落ちたのかと思い至る。返品してくるのはあまりにも恥ずかしすぎるので、そのまま買うことにし、仕事用ではなく自分のカバンの内ポケットに入れた。
 
ナプキンの方はパッケージを空けてシールを剥がし、トランクスに貼り付ける。やや不安定な気もしたが、いいことにする。シールとパッケージのゴミも個人のカバンの内ポケットに入れておいた。
 

その日、夜遅く。彪志は浦和の家に帰宅してから、横井さん(プリマ)が置いておいてくれた夕食をチンする。それで晩御飯を食べた後お風呂に入った。
 
服を脱いだとき、何か違和感を感じたがよく分からなかった。
 
湯船に入って少しぼーっとしていた時、突然気がつく。
 
ナプキンがトランクスに付いてなかった!
 
青くなる。
 
どこで落とししたんだ?
 

お風呂を上がってから居間に行ってみるが落ちてない。玄関にも落ちてない。ガレージまで行くが途中には落ちてない。車の中を点検すると、
 
運転席の所に落ちてた!!
 
良かった。これ会社とかで落ちてたら極めて恥ずかしいことになる所だった。とにかく回収して部屋に戻る。
 

しかしこれは問題だぞと思う。何か対策を考えなきゃ・・・と思っているうちに眠ってしまう。彪志は夢を見ていた。
 
なんか教室に座っていて、前で教師っぽい服を着た青葉が授業をしている。机の上にテキストが載っているので見ると『男の娘のためのナプキン講座』と書いてある。何それ〜?
 
青葉は講義している。
 
「その昔、女性はほとんど月経というものをしていませんでした。昔は結婚年齢が低く、初潮が来たらすぐ結婚し,結婚したら妊娠して子供を産んで、月経が再開する頃にまた妊娠して。閉経したら打ち止め。だから月経を経験していたのは様々な理由で結婚できなかった女性、夫が早く死んでしまった女性、夫との仲が悪化してセックスしなくなった女性でそれは少数派だったのです」
 
「状況を変えたのが第1次世界大戦でした。この戦争ではちょうどスペインかぜの流行と重なり、男が大量に死んで人手不足となったので女性が労働力として社会に進出するきっかけとなりました。そして戦場にも女性は進出しました」
 

「1914年、キンバリー&クラーク社は、従軍看護婦のために原始的なナプキンを開発し、これが戦争が終わった後の1920年に Kotex (コテックス) の名前で一般向けに発売されました。kotex は気持ち的には cot-tex でコットンのような肌触りという意味合いを込めていました。このキンバリー&クラーク社というのは、クリネックスとか、理系の人にはおなじみキム・ワイプの開発元です」
 
「そして1961年、日本でもアンネ社から『40年間おまたせしました』というキャッチフレーズでナプキンが発売されました。このアンネ社は後にライオンに吸収されています」
 
「こごで昔は月経のことそのものを“アンネ”と言っていたのですが、これは『アンネの日記』の中に、月経に関する記述があることに基づきます」
 
「昔のナプキンは紙製だったのですが、これは当然吸収力に限界があり、とても漏れやすいものでした。これを大きく変えたのが高分子吸収体の登場です。これによってナプキンも紙おむつも、長時間着けておくことができて漏れにくいものへと変化したのです」
 

「現在ナプキンは、その大きさや厚さにより、軽い日用・重い日用、あるいは昼用・夜用、などに分かれています。また香料のあるもの・ないものがありますが、男の娘のみなさんは軽い昼用で充分と思います。また香料があると他人に着けてることがバレやすいので無香料の方がよいと思います」
 
「あとナプキンには羽根付き・羽根無しがあり、どちらが好みかは女性の間でもかなりの論争があります。運動をするなど激しい動きのある人は羽根付きがよれたり外れたりしなくてお勧めです」
 
あ、そうか。俺は羽根付きを選ぶべきだったのかなと思う。
 
「あとナプキンを選ぶ場合、とても大事なのが表面の素材です。これが本当に酷いのがあるんです。サンプルが置いてあるドラッグストアもありますから触って確かめるのもひとつの手。最終的には色々買って試してみて自分の肌に合うのを選ぶしかありません。概して安物とか外国メーカーのは感触が微妙です」
 
ああ、外人さんはあまりそういうの気にしないかもと思った。日本人はわりと肌がデリケートである。
 

「あとNG集です。交換したナプキンはトイレに捨てず、必ず汚物入れに捨てて下さい。トイレに流すと詰まります。捨てる時はくるくると丸めた上でナプキン自体に付いているテープで留め、そのあと交換したナプキンの袋で包み更にトイレットペーパーでくるんでから捨てましょう」
 
へー。そうやって捨てるのか。
 
「ナプキンは粘着シートやテープの付いているのがショーツ側です。粘着側を肌に付けようとしてはいけません」
 
それはさすがに無いだろうと思った。
 
「念のため言っておきますが、ナプキンはショーツに着けてくださいね。ブリーフとかボクサーだと安定しませんよ」
 
あっ。
 
俺トランクスに付けてたけど、トランクスも安定しないよね?そうかショーツを着けなければいけなかったのか。でも・・・俺が女の子ショーツを穿くの??なんかいやらしい。変態みたいだ。
 

「羽根付きを使用した場合、ショーツの表側にそれが出る問題があります。気になるようでしたら、いっそ生理用ショーツを使う手ももあります。生理用ショーツは股座(またぐら)のところが漏れ防止も兼ねて二重になっているので、その間に羽根を折り込むことができます」
 
へー、そういうやり方があるのか。
 
「また初心者で女物の下着を着けてることを、学校で身体測定の時などに見られたくない人は、ショーツの上に重ね穿きでトランクスなどを着る手もありますね」
 
それだ!
 
「この時、ブリーフやボクサーではショーツの線が出ちゃうんです。トランクスならショーツの線は目立ちません」
 
ほほぉ!これが俺にあってるかも、と彪志は思った。
 

そこで目が覚めた。
 
いつの間にか朝である。ナプキンは結構汚れている。でも熟睡していたせいか下着からあまりずれていなかった。
 
彪志はトイレに行って来てから、ナプキンを偶然買ってしまった生理用ショーツに貼り付けてから穿く。ピタリとフィットして安定する、これすごーいと思う。男の娘さんだとタマタマが邪魔になるけど、そういう邪魔な物が無いのでナプキンはきれいに肌に着いている。そしてその上にトランクスを穿いた。
 
ナプキンは羽根付きを買い直して、生理用ショーツもあと3枚くらい買っておこうと思った。
 
 
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【春二】(5)



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