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【春二】(1)

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1  2  3  4  5  6 
 
「え〜?“身二つになる”って子供を産むという意味なの?」
と初海は驚いたように言った。
 
「まあ出産の瞬間、1人の人間が2人になるからね」
と幸花は言う。
 
「人間は胎生動物だから、出産以外の方法で増殖はできない」
と真珠。
「どこかの独裁者が麦から兵隊を作りたいと思っても結局は女がひとりずつ産んでいくしかない」
と明恵。
「まあそういう独裁者に限って女は無用の物と思っていがち」
「自分が女から産まれたことさえ忘れてるよね」
「兵隊工場とかあって、兵隊のもとを入れると兵隊が大量に生産されてきたら怖い」
「クローンとかでも結局は人間が1人ずつ産むしかないからなあ」
 
「独裁者にとっては兵隊は1000人、2000人という“数字”だけど、産んだ女にとってはそのひとりずつが、代わりの利かない“わが子”。死んだらまた産めばいいじゃんというわけには行かない」
 

「多胎児を産むと増殖率が速いかも」
「多胎児が生まれる確率は低いけどね」
「ヘリン(Hellin) の法則ではn胎児が生まれる確率は1/89n-1

 
「分からん」
「双子は1/89, 三つ子は7921分の1, 4つ子は70万分の1, 5つ子は6000万分の1, 6つ子は55億分の1, 7つ子は5000億分の1, 8つ子は44兆分の1, 9つ子は4000兆分の1」
 
「もっと高頻度な気がする」
「排卵誘発剤のせい」
「なるほどー」
 

「だけど双子を産んだら“身三つ”かもね〜」
「三つ子なら身四つ」
「四つ子なら身五つ」
「五つ子なら身六つ」
「六つ子なら身七つ」
「七つ子なら身八つ」
「八つ子なら身九つ」
「九つ子なら身十つ」
 
「そのあたりになると生存確率がぐっと低くなる」
 
「昨年(2021.5.1) モロッコで九つ子が生まれて、少なくとも1歳の誕生日時点で全員健康であることが報道されていた」
「それ凄いね」
「九つ子の最長生存記録を更新中(*1)」
 
「ケイさんが10人居るのはどういう仕組みなのかね」
「やはり無性生殖で分裂したのでは?」
 
「千里さんはバナナ・タルタルソースの原理とか言ってたよ」
「バナナ・タルタルソース??(*2)」
「なんかそんな感じの名前」
 

(*1) マリの Halima Cisse さん(当時25歳)と夫の Abdelkader Arby さんの夫婦。マリ政府は医療設備の整っているモロッコに奧さんを移送して出産させた。30週での帝王切開である。5人の女の子と4人の男の子。夫妻には2つ上の女の子もおり、10人きょうだいとなった。出産2年後、2023年5月の報道でも全員が元気な様子が報告されている。
 
↓2歳の誕生日の写真
https://00m.in/Lrq05
 
しかし「7ヶ月子は育つ」と昔から言う。たぶん7ヶ月目まで行けば生存に必要な機能が出来あがっているのだろう。多胎児の場合育ち過ぎると子宮破裂あるいは胎児圧迫死の危険があるのでギリギリの時期判断だったと思われる。
 
(*2) きっと「バナッハ=タルスキーの定理」。球を有限個の部分に分割し、それらを回転・移動させることで、元の球と同じ大きさの球を2つ作ることができる。
 
操作方法はわりと簡単なので、大学1年生程度の数学の分かる人なら理解できる。
 
円周率が無理数であることと、球が回転合同であることをうまく使っている。無限個の粒子で構成されるからできることである。「賢いホテルの支配人」と同様の操作方法。∞/3=∞だから、何も矛盾していない。
 
但し人間は回転合同ではないし有限個の粒子で構成されているので、この方法で人間を3人にすることはできない。きっと難しいこと言って煙に巻いているだけ。
 

アクアは2022年3月〜6月に『黄金の流星』『お気に召すまま』と2本の映画を製作した。そして7月一杯はアルバムの製作をし、少し休んだかと思ったら今度は長時間ドラマ(実質映画)『竹取物語』を製作した。このドラマは8月20日に放送されたが、実は放送の最中!まで製作は続いていた。
 
8月21日の朝にやっと解放され、21-22日は八王子の家で2人ともひたすら寝た(彩佳たちが開いてくれた誕生会の途中で眠ってしまった)。
 
8月23日(火).
 
早朝、ヘリコプター Ecureuil-2 が龍虎の家の庭に着陸する。降りてきたのは千里である。
 
「龍ちゃんたち、お仕事だよ」
「眠いですー」
「まだきついですー」
「ヘリコプターの中で寝てていいから」
「えーん」
 
「いってらっしゃーい!」
と彩佳・理史が見送った。
 
ということで、パイロットの芝山さんと千里、2人のアクアを乗せてヘリは離陸する。
 

2時間ほどの飛行で、エキュレイユ2は関西某所に降り立った。
 
「わあ」
「凄いところでしょ?」
 
千里は2人のアクアを“屋外美術館”に案内した。
 
「凄いたくさんの彫刻がありますね」
「全て西村南風さんの作品だよ」
「へー」
 
「全部で108点ある。西宮市のコレクターさんが集めたもの。生前も一応野外美術館として公開していたんだけど、広い土地が必要だから物凄く不便な場所だった。自家用車以外のアクセス方法が無かったし、その道路がすれ違い困難な細い道だった。それで、あまりお客さんは来なかった」
 
「それで10年前から閉鎖、というより事実上放置されていた。2年前にそのオーナーさんが亡くなって遺族は相続税支払いのためここを売りに出た。でもおりしもコロナが流行り始めて買い手がつかず遺族は困っていた。それで朱雀林業が土地・コレクションまとめて20億円で買い取った」
 
「それコレクションだけの価格ですね」
「そうそう。土地はおまけ。むしろコレクションの中でも名作だけの価格だね。大半の彫刻は名作のおまけ」
「ああ」
 
「実は朱雀林業は元々この付近、西宮市から宝塚市に掛けてかなり広い山林を所有していた。だから実はお隣さんのよしみもあったんだけどね(*3)」
「へー!」
 
「朱雀林業では5億円掛けて約5kmの取り付け道路を4車線に拡張し、GPバスと提携して西宮駅とのシャトルバスを運行してもらうことにした。9月4日オープンだよ(*4)」
 
「わざわざ9月になってから開けるのはコロナ対策ですね」
「そうそう。それでオープン前に撮影をしようという訳だよ」
「なるほどー」
 

(*3) それに加えて西村作品を12点所有していた縁があった。後述。
 
(*4) 9月2日が吉日なので2日に開(あ)けたかったが、郷愁ライナーの開業、氷見飛行場の開業とぶつかるので、こちらはずらした。
 

今回はアクアの写真集の撮影なのだが、仮題は "Aqua in Bronze Forest" “青銅の森のアクア”である。撮影は長年アクアの写真を手がけている桜井理佳さんである。桜井さんは今回も含めてアクアの写真集が8冊作られた中で実に6回も撮影を担当している。
 
撮影月/発売月
2014.11/2015.01(桜井) ハワイ "AQUA in Hawaii"
2015秋/2016.02(多数) 与論島・福島など "Fukushima 2016"
2017.04/2017.07(桜井) プーケット "Double Green Sea"
2019.05/2019.08(桜井) タヒチ "Aqua dans les iles du paradis"
2019.11/2020.05(桜井) ロマンティック街道 "Aqua an der Romantischen Strasse"
2020.06/2020.08(室田) 金田町 "Aqua Holiday in Kanada"
2021.05/2021.07(桜井) 小浜市 "Aqua im Mirror Labyrinth"
2022.08/2022.11?(桜井)西宮市 "Aqua in Bronze Forest"
 

「1日目が主として男の子衣裳、2日目が主として女の子衣裳、最後にお楽しみ」
 
「何させるんですか〜?」
「事前に言っておかないと信義違反だから言っておくけど水着になってほしい」
「まあいいですよ。それみちお担当ですよね」
「ちょっと待って。それバストが確認できる写真ですよね」
「ビキニとかあるから胸が無いと撮れない」
 
「じゃみちおやってね」
「ふじえがやってよ。ぼくバスト無いのに」
「この機会におっぱい大きくしちゃおう」
「やだ」
 
「まあその辺は2人で話し合ってね。いつでも完全な双子姉妹にしてあげるから」
と千里は言った。
 
「もう既にちんちんは無くなったし、おしっこは女の子の位置から出るし、ヴァギナもあるんだから、あとおっぱいさえ大きくすれば完全な女の子になれるのに」
「ちんちんはあるよ!」
 
やはり完全な姉妹になるのは時間の問題のような気がする。
 

2人は彫刻の森の東端にあるコテージ群“west six”(*5) のコテージをひとつもらい、ここで撮影開始まで仮眠した。
 
桜井さんは1ヶ月前にこの“青銅村”に入り。イメージを膨らませた。そして先週1週間は入瀬ホルンと麻生ルミナを代役にポーズやアングルの検討をしていた。ホルンは身長が156cmで、157cmのアクアに近い。そして中学2年生にしては未熟っぽく、まだ女になりきってないところが中性的なアクアの代役として使えた。妹の入瀬コルネ(中1?)はもっと中性的だが背が低すぎた(148cm)のである。(*6) ルミナは複数入る場合の相手役の役である。
 
今回は彼女たちを含めて8人の信濃町ガールズを脇役要員・兼・雑用係として連れてきている。ホルン・ルミナ以外は昨日ホンダジェットで熊谷から神戸空港に運んでいる。
 
入瀬ホルン・麻生ルミナ(北陸組)
夏江フローラ・山口ヨルカ(関西組)
米田ショコラ・花畑バニラ(ツイスト)
青井ももこ・有田くりこ(ももくり)
 

(*5) west sex は西宮と六甲から取ったもの。もっとも六甲は古来この付近が「むこ」と呼ばれていたので「むこの山」として六甲山の字を当てたものが後に「ろっこうさん」と誤読されるようになったのが定着したものである。数字の6とは実は無関係。「むこ」は武庫川女子大とか武庫川ステークスの「むこ」。古くは“務古”という書き方もあった。“六甲”という字自体江戸時代頃に生まれた書き方らしい。だから“ろっこう”という読み方はかなり新しい。
 
(*6) コルネはホルンより背も低いし、とても幼い雰囲気なので、ほとんどの§§ミュージック関係者からホルンの妹と思われているが、実はコルネのほうが上である。中学1年ではなく高校1年。妹のホルンのほうが身体が大きいから彼女たちの家では、妹のおさがりをコルネが着ている。更にコルネは「ぼく男の子ですー」と言っていたが、これはさすがにジョークだろうと花ちゃんは思った。だって女の子の声だしナプキン買ってたし。
 

この2日間の西宮地方の夜明け・日出・日入・日暮れは下記である。
 
日付:夜明/日出/日入/日暮
8.23 4:51 5:25 18:38 19:11
8.24 4:52 5:25 18:36 19:09
 
最後の水着撮影はプールでおこなうが、それまでは屋外の撮影になるので、このように時間を設定している。
 
男性衣裳撮影:23日 10:00-14:00
葉月とのツーショット 23日 14:00-18:00
女性衣裳撮影:24日 7:00-14:00
水着撮影: 24日 14:00-21:00
 
「ぼくたちが2人いることを前提にしたスケジュールだ」
と2人は文句を言っていた。
 
「女性衣裳の撮影時間のほうが長い」
「当然」
 
「男性衣裳の写真は不要ではという意見も多かった」
「でもアクアは男性タレントという建前だし」
 
「これ休憩時間は無いんですか」
「2人で交代しながら撮影されればいい」
「やはり2人いることを前提にしている」
 

桜井さんはアクアたちの要望に応え、1枚だけ男子水着を着けた(平らな胸が見える)アクアの写真をプールサイドで撮ってくれた。最初に撮ったのは先に撮らないとブラ跡が出てしまうからである。
 
桜井さんは1回しかシャッターを押さなかった。
 
「1ショットなんですね」
「男の子の身体撮っても面白くないもーん」
と桜井さんは、すねるように言っていた。
 
「アクアちゃんが女の子モードのヌードを撮らせてくれるなら男子水着を3〜4枚撮ってもいいけど」
 
「すみません。それはうちの社長の許可が出ないので」
と花ちゃんが言った。
 

そして普通の撮影に行く。
 
男性衣裳は主としてF(ふじえ)が着るが、M(みちお)も適宜Fを休ませるために、自分も男性衣裳を着て撮影された。なおMはさきほどFに指摘されたようにペニスが無い(実は皮膚の中に埋没している)ので股間にはタックしなくても膨らみが無く、肌にピタリとフィットするズボンでも穿ける。
 
アクアのお股に膨らみがあることは許されない!
 
今やファンの中で極めてレアになってしまったアクア男性説を取る人も
「アクア様は男の子だけどちんちんは無いのよ」
などと言っている。
 
多くの人が男アクアのペニスはやはり小さい頃の病気で取ってしまったのだろうと考えている。更に病気治療のために女性ホルモンを投与されていたので女アクアと同じ体型になっているというのが最近の主流の説のようである。アクア本人も一時期女性ホルモンを治療に使用されていたことは認めている。彼はホルモンニュートラルだったことから小学5年生になっても身長が126cmしかなかった。それが女性ホルモンを投与され始めてから2年間で152cmまで背が伸びたのである。
 
(当然おっぱいも膨らんだはず)
 

14時までの予定だったが、男の子衣裳での撮影が終わったのは15時だった。そこから葉月との2ショットを撮る。葉月はほとんど女性衣裳である。アクアは男性衣裳と女性衣裳が半々くらいであった。これが19時頃、日暮れまで続いた。
 
ライトが欲しいくらいだったが“自然の光の中で撮りたい”ということからライトは使わなかった。増感が必要だろう。
 
そして24日は朝6時に起こされ、7時少し前から女性衣裳での撮影が始まる。男性衣裳での撮影を朝から昼に掛けてやったので、同じような光線具合になる時間帯に女性衣裳での撮影もしたかったのである。
 
なお女性衣裳での撮影は主としてM(みちお)が担当する。
 
アクアたちは、女役をMが、男役をFがやっていることが多い。男役のMと女役のFは雰囲気が違いすぎて同一人物に見えないからである。ふたりの顔の形や体形は完全に一致しているのだが、各々の性別意識があるので雰囲気が女性的・男性的になる。女性意識のFが男装しているのと男性意識のMが女装しているのが、ちょうど似た雰囲気になる。だからたまにFが女装していると桜井さんが「あ、その雰囲気凄くいい!」などと声を掛けたりする。
 
信濃町ガールズたちは、昨日は青いドレスを着たが今日は白いドレスで撮影されている。今回はあまり物語的な演出はされておらず、青銅の国の住人たちとアクアやガールズたちが遊んでいるような演出が行われた。
 

12体の彫像が並ぶ大作『お茶会』では、アクアがこのために制作した豪華衣裳を着て、タキシード姿の葉月、そしてミューズのように彫像たちと並ぶ信濃町ガールズがお茶会を楽しんでいるような絵にした。
 
アクアたちが1人ずつ彫像の間に座ったが、アクア・葉月に8人のガールズで10人なので、高村マネージャーと緑川マネージャーも白いドレスを着て参加した。
 
神戸市の『阪神淡路大震災復興祈念像』の小型版(高さ1.5m)も置かれている。実はこちらは習作で、これを元に神戸市・三宮公園に置かれた像(高さ7m)が制作された。三宮公園のものは西村氏が4年掛けて作り上げた力作である。ここではアクア(白いドレス)と葉月(タキシード)がミューズたち(白いドレス)とともに祈りを捧げるところが撮影された。
 
またこの森のシンボルともいえる『希望』は、2人の乙女が肩を組んで各々反対側の手で何かを指さすポーズだが、ここは青いドレスのアクアと白いドレスのアクアが並んでいるショットである。これはもちろん、葉月をボディダブルにして2度撮って合成したもの(ということにしておく)。でもこの写真は写真集の表紙に使われることになる。
 

24日前半?の女性衣裳での撮影は大幅に予定が伸びて18時まで掛かる。それで桜井さんと現地責任者である花ちゃんが話し合った結果、水着での撮影は翌日25日に行うことにした。明日は雨の予報だが、屋内での撮影なら問題無い。
 
「え〜〜〜!?」
「明日は丸一日やるし、1人だけではとても体力持たないから2人で適宜交替でね。だから、みちおちゃんは明日までに性転換して女の子になっててね」
と花ちゃんは言った。
 
「嫌です」
 
でもF(ふじえ)が拍手をしていた。
 

コテージに戻ってから
「さあ、潔く女の子になろう」
「いやだ、なりたくない」
と言っていたら千里さんが入ってくる。
 
「じゃみちおちゃん、女の子にしてあげるね。寝てていいからね。目が覚めた時はもう女の子だから。明日からは“みちよ”ちゃんだね」
と千里が言う。
 
「ちょっと待ってください」
とMは言ったが、千里は構わず彼にタッチして部屋を出て行った。
 

25日朝。
 
FがMの寝床を襲撃する(龍虎家では日常風景:理史には絶対見せられない)。
 
「おお、きれいに女の子になったね」
 
Fをベッドから蹴落として(本人間暴力)からMは自分の身体をチェックする。
 
「嫌だぁ。おっぱいができてる」
と龍虎M(みちお/みちよ?)は困ったように言った。
 
「お股も完全な女の子の形になったみたいね。これまでが変則的だったからこれでよけいスッキリしたじゃん」
「うーん・・・」
 
「取り敢えず撮影頑張ろう」
「まあいいや。後で千里さんと交渉しよう」
とMは自分の身体のことは後回しにして今日の撮影の準備態勢である。
 
今悩んでも仕方ないことは悩まないというのはアクアの良い性格である。
 
それで2人はあそこの毛が水着からはみ出したりしないように、お互いの毛をきれいに処理してあげた。
 
普段は竜崎由結か和城理紗にしてもらっているが「今日は女の子同士だから自分たちでやる」と言った。Mが女の子に変えられても2人がいつもと変わらないので由結も理紗も呆れていた。
 
「普通性別変えられたらもっと動揺しません?」
「ぼく女の子に変えられるの慣れてるもん」
「ああ」
 

信濃町ガールズたちには露出度の少ないワンピース型水着を着せた。それで彫刻の森に隣接するアクアゾーン(室内温水プール)に行き、ここで水着写真の撮影をする。アクアはほとんどの写真でビキニを着ており、その豊かなバストが確認できる。
 
「これ布面積が小さすぎません?」
「大丈夫。写してはいけない場所はちゃんと隠れてる」
 
ここのアクアゾーンは、このようなプール・施設で出来ている(*7).
 
・25mプール(20レーン。コロナ対策で仕切り板付き。立ち止まり禁止。家族友人以外ではレーンの共用禁止。2時間交代制)
・2つの遊泳プール(コロナ対策で各々8ゾーンに分けられている)
・子供プール(小学2年生までとその保護者のみ)
・フェアリープール
・造波プール
・ウォーキングプール(流れるプール)
・3基のスライダー
・ウォータートレイン
・スパ(水着で利用する。裸になるの禁止)
・身体を洗いたい人のための個室シャワー多数
 
といったものが作られている。この他に飲食店が10店舗ほど(*8)、水着ショップ、フェニックス・スポーツ、簡易診療所、などが並んでいる。
 
実はこのアクアゾーンは7月20日から8月21日まで開けていた(1日2000人限定)。交通機関さえ存在すれば便利な場所だし、コロナで安全に遊べる所が少ないし、ここの入場料は安いしで、その1ヶ月間に約6万人が訪れた。つまり33日間ほぼ毎日満員!アクアゾーンのみで3億円もの売上があった。
 
またアクアゾーンの北側は多数の花が咲く公園をはさんで、体育館・武道場・屋内テニスコート・競泳プールが並んでいる。このスポーツエリアは完全予約制で、4月から開けていたのでこちらもずっと利用者が出ている。
 

(*7) 実を言うと、西宮駅とのシャトルバスを運行する条件として、何かの遊戯施設を作って欲しいという要求がGPバス側からあり、それで朱雀リゾートとムーランリゾートが共同で、国内3つ目のアクアゾーンを建設した。既に熊谷・津幡とアクアゾーンを開設しているムーランが絡んでいたので行政はすぐ認可した。
 
(*8) この夏の暫定オープンに参加してくれた飲食店:ムーラン4種類(和洋中軽)、仙台クレール、峠の熊カレー、流氷パーラー(かき氷・アイスクリーム)、ニューポパイバーガー、マリ・ベーカリー、播磨の水(素麺・日本料理)、常州酒家、GPレストラン。つまりほぼ身内!でも全店黒字だった。
 
各テナントからはぜひ近日中の再オープンをと要望されている。
 
(若葉は「絶対赤字になると思ってたのに黒字になるなんて」と文句を言っていた。千里も赤字を覚悟していたのが黒字になりびっくりした)
 

今回の撮影では、おとぎ話のモチーフが多数使われているフェアリープールと七色の水のトンネルを通過するウォータートレインで撮影している。ウォータートレインでは七色の各箇所で列車を停めてもらって撮影している。
 
フェアリープールでは、白雪姫と小人の家、シンデレラとかぼちゃの馬車、かぐや姫とお月様、ロミオとジュリエットの窓、オズの魔法使いのエメラルド・シティ、不思議の国のアリスのお茶会、ピーターパンと海賊船、お菓子の家、人魚姫と難破船、アリババと盗賊の洞窟、などといったものが作り込まれている。
 
アクアはここで白雪姫、シンデレラ、かぐや姫、ジュリエットなどに扮して撮影された。多くの場面で相手役は葉月が務めた(多くは男装)。
 
昨年も着せられた人魚姫の水着が再登場し
「またこれ着るんですか〜?」
と言ったら
「去年のとは色違いだよ」
と言われた。
 
人魚姫の衣裳を着た時には千里がアクアを抱えて移動してくれた(足が動かせないので)。
 
なお今日の撮影では山村マネージャーは男性とみなしてプールに立入禁止にしている。
「俺、女なのに・・・。ちんちんも没収されたのに・・・」
と、いじけていた。
 

信濃町ガールズは25日で帰したが、26日の午前中は彫刻の森で少し“秘密”の撮影をした。そして夕方には神戸空港からHonda-JetRedで仙台に移動し、8月27日(土)のネット・サマフェスに出演した。
 
8月28日は東京でテレビ番組出演を4つこなした!
 
「これ絶対1人では無理〜」
 
8月29-30日の2日間は先日の『竹取物語』の完全版(最終的に映画版として公開)の追加撮影を行った。(この2日間のネットライブはセシルと舞音)
 
・石作皇子が初夜を前にして、雪兎に誘われて満月を見たら女に変わってしまうシーン
 これは闇夜の翌日で満月のはずがない
 →雪兎が“金の銅鑼珠”を渡しそれを食べたら女の子になる
 
・かぐや姫の日常シーンを追加(*9)
 桃(川泉パフェ)と囲碁・双六をするシーン
 姫が女房たちと合奏する場面
 御飯を食べながら歓談するシーン
 
・大量の反物を乗せた大八車を福(山村勾美)が引いているシーン。
 
・かぐや姫と石上麻呂の月世界でのデートシーン
 白雪姫の鏡みたいな大きな鏡が映っていて、桃と子供たちが遊んでいるところが見える。
 
・“NGシーン”をわざわざ撮影する。
−石作皇子が牛車に乗ってかぐや姫宅に向かうシーン。撮影していたら美高助監督が出て来て「奈良時代に牛車は無いんだけど」と言い一同「え〜!?」
−石作皇子が花嫁衣裳の裾を踏んで転ぶシーン
−車持皇子が玉の枝を落として玉の枝が転がっていくシーン
−車持皇子が船縁からうっかり転落するシーン
 

これに関しては没にしていた“鹿車”シーンが“NG場面”として復活した。実は8月に以下のようなシーンを撮影し(ようとし)ていた。それは桃が“鹿車”に乗って富士に向かうシーンである。ここで鹿車とは一輪車のことではなく本当に鹿が輓く車!
 
牛車が生まれる前だし、馬車は無かったしというので、鳥山プロデューサーの案で作られて撮影もしてみたものの、鹿がなかなか言うことを聞かず、撮影はうまく行かなかった。これやはり無理があるし、乗馬で充分、という複数のスタッフの意見からボツとなっものである。だいたいゴムが無い時代の車というのは極めて乗り心地の悪いものである。長距離の旅は歩くより辛い。
 
「サンタクロースになった気分で面白かったけど」
と鹿車に実際に乗った夕波もえこは言っていた。
 
語り手の元原マミにはこんな台詞も用意されていた(映画版にも収録してない)。
 
語り手「またこの鹿に牽かせる車は、女性や子供たちを連れて旅をするために桃と石上菘鳥が考えたものですが、やはり鹿は制御しづらく、平安時代になるとおとなしい牛に牽かせる“牛車”(ぎっしゃ)が生まれました。またこの鹿に牽かせる車のことを最初は“しかくるま(鹿車)”と言っていたのが、後に“しんかくるま”→“さんかくるま”→“さんたくるま”と変化して“さんたくるす”→“さんたくろーす”という言葉が生まれたそうです」
 
元原マミも
「これさすがに無理がありましたよー」
と言っていた。
 
(*9) 入瀬コルネの役は妹ホルンの親友・麻生ルミナが代役して後で差し替えた。ルミナは「顔も映らないのにきれいな服着て美味しい物食べるって超お得」と言って代役を喜んで引き受けてくれた。ルミナは本編では“看板係”を務めた。
 

青葉は9月2日に結婚式をあげ、それを機に桃香は10ヶ月に及ぶ伏木滞在を終えて浦和に帰還したが、荷物はそのままだった。
 
「すまない。中高生の教科書・参考書・問題解法集と辞書だけでもこちらに送ってくれない?」
と母に電話がある。
 
それで朋子が荷物をまとめようとしたのだが・・・・
 
全然分からない!!
 
真珠に声を掛けて見てもらう。
 
「かなりの量ですね」
「中学生とか高校生の通信教育の採点をやってるのよね」
 
それで明恵も入れて3人で整理していたが、元々桃香の部屋が酷くちらかっているので、布団やゴミ?の大群を片付けながらテキストを捜索するので大変である。
 
「もうキリが無い!」
と言っていたら、千里が若い男性2人を伴ってやってきた。
 

「部屋の中身丸ごと持って行けばいいよ」
「はあ」
「コンテナ持って来たから、全部放り込んじゃおう」
「ああ、それがいいですね」
 
それで千里、助手のコリン、2人の男性、更に明恵と真珠の6人で桃香の部屋の荷物をまるごと、庭に駐めたトラックに積んだ10Fコンテナの中に放り込んだ。
 
(10Fコンテナは国際規格で4畳半程度のサイズ。JRコンテナより少し小さい)
 
「じゃ浦和までよろしく」
「分かりました」
と言ってコリン及び2人の男性が乗ったトラックは出発して行った。
 
(キツネは運転免許を持ってないのでコリンが運転する)
 
「また伏木に来る時はあのコンテナごと運ばれてきたりして」
「ああ桃香はそれでもいいかもね」
「桃香さんの住所がコンテナだな」
 

青葉は2022年9月17日(土), 18日(日), 19日(祝) と伏木の自宅でミュージシャン・アルバムの取材をした。
 
それが終わったところで、青葉の母・朋子は9月20日(火)、真珠に留守番をお願いして、千里のHonda-Jetblackで、能登空港から熊谷の郷愁飛行場に飛んだ。この飛行機の操縦席に座っていたのは、千里の専属パイロット、エリサと、千里である。“この”千里はライセンスこそ持っていないがHonda-Jet, Gulfstream G450/G650, Cessna Citation Jet CJシリーズ, Hawker400XPR, などの代表的な小型機の操縦ができるらしい。(で、どの千里?)
 
朋子が飛行場の喫茶室で少し待っていると、Beach Jet 400 (*10) が飛来する。この飛行機に札幌の丘珠空港から千里の実妹の長内玲羅(札幌市在住)が千里自身と一緒に乗ってきた。
 
それで朋子は玲羅・千里と合流し、千里の運転する青いロッキーで浦和の千里の家に向かった。
 

(*10) 三菱MU-300 (ほんの数機しか売れなかった)の製造権がビーチクラフトに売却され、Beach Jet 400として大量に売れた。この飛行機はその後、販売チャンネルの整理により Hawker400 として販売されている。
 
今回使用した機体は千里4の使用機で、丸山アイが九州と関東の往復のために所有し郷愁飛行場に駐めていることの多いものと同型機。
 
オリジナルの400(MU-300)では乗員2名・乗客4名であったが、その後ビーチにより、改訂版の400A(1990), 400XP(2003)が作られており、400XPでは乗員が最大9名になっている。ただ400は元々の設計が古いため若いパイロットにはかなり扱いにくいものだったし、エンジンも非力だった(実用上は乗客は3人しか乗せられないと言われた:6人乗せると航続距離が2000km程度しか出ない)。
 
2013年からこれを最新鋭のシステム・エンジンに載せ替える改造が行われるようになり、この改造版を400XPRという。ウィングレットが取り付けられているのが特徴で外見で見分けが付く。
 
千里の使用機は400XPで買ってXPRに改造したものである。丸山アイの所有機は最初からXPRの状態になっているものを買ったものである。
 

それで浦和の家に到着する。千里は2人を降ろすと車を立体駐車場に格納した。この駐車場には8台の車を収納できるが、7台分使用中である。
 
普段収納している車
ロッキー(主として1番が使う)
オーリス(主として2番が使うが、2番は現在運転禁止中)
アテンザ(主として3番が使う)
フリードスパイク(彪志の車)
ランドクルーザープラド(貴司の車)
セレナ(家族移動用)
アクアのアクア(子供たちの千葉との往復用)
 

千里が運転する車から玲羅と朋子が降りて玄関のところまで行くと、
「お疲れお疲れ」
と言って桃香が出て来て2人を中に入れた。
 
「桃香、千里ちゃんの様子はどう?」
「暇だ暇だと言ってる」
「普段が仕事のしすぎだから、こんな時くらい少しは休めばいいのに」
 
というわけで、9月26日が予定日の千里の出産をサポートするために、朋子と玲羅が出て来たのである。
 

玲羅と朋子が、千里の入っている1階の和室に入ると千里と夏川早羽子(サハリン)が
「お疲れー」
「お疲れ様です」
と言っている。2人は囲碁をしていた。
 
「運動したらいけないと言われて暇で暇でたまらん」
などと千里は言っている。
 
「それゃ臨月でマラソンしたら赤ちゃんがびっくりするよ」
と玲羅は言う。
「サハリン、久しぶりだね」
と玲羅は続けて言った。
「はい、だいぶごぶさたしておりました」
とサハリンも笑顔で答える。
 
「朋子母さんは初めてだよね。こちら私の助手で夏川早羽子。ニックネームは“さはこ”から“サハリン”」
「へー。初めまして、桃香の母の朋子です」
 
「サハリンは千里姉のドライバーを昔からしてたんですよ」
と玲羅が説明する。
 
「ああ、そうなんだ」
「今回は本来の業務外なんだけど、絶対的に信頼できる人をそばに置いておきたかったから、この春から頼んでいる」
と千里は言う。
 
「桃香は危ないしね!」
 

1月に千里の妊娠が判明した時、誰をそばに置いておくか、千里3,4,5,6の4人で話し合った。その結果、サハリンが常時付いていることにしたのである。また調理人として、前橋虹彩(アイリス)の友人で、ちょうどフリーだった横井一子(プリマ)を雇うことにした。
 
「臨時雇いがいい?眷属になるのがいい?」
「眷属にしてくださーい」
「じゃそういうことで」
といって眷属にしたが、複数の千里が出入りするりのを見て
「千里さんって三つ子か何かですか?」
と訊く。
「自分でもよく分からないけど、きっと千里は20人くらい居る」
「あのぉ、千里さんって人間なのでしょうか?」
「あまり自信無ーい」
 
千里研究家?の虚空にも千里が何人居るのかはよく分からないようである。「5人いるのは確実。多分6人以上」と彼は言っているが、千里たちはお互いに“別の千里”のふりをするので、把握出来なくなる。
 
「6人ということでもいいよー。私たちは女子十二楽坊みたいなもの」
「女子十二楽坊?」
「女子十二楽坊って“ステージには”12人出ている」
「なるほどねー。で実際は何人?」
「分かんなーい」
と本人も言っていた。
 

千里3,4,5,6の会議で、フランスのLFBは千里2B, アメリカのWBDAは千里1が参戦することも決めた。またサハリンがしていた業務には左倉ハルを徴用している。
 
(2Bは『2Aが体調悪くて次の試合出られないから代わりに出て』と言われて出ただけだったのに、その後『2Aは妊娠してた。今年いっぱい頼む』と言われた)
 
左倉ハルは現在大学4年生で本人が忙しい時は飼いネコ?のアキが代行する。アキは佐藤玲央美の影武者をしているのだが、LFB 2021-2022シーズンが5月で終了したので6月以降、こちらの仕事に入っている。LFB 2022-2023シーズンは10月下旬から始まるので10月中旬からまたフランスに行く予定である。
 
「夏の間は休んでいられると思ったのに」
と本人(本猫)は文句を言っていた。
 
しかしネコが運転していいのか?
 

11月 青葉の新居完成で桃香と子供たちが伏木へ。京平はすぐ帰る。
1.08 早月も幼稚園入園準備で浦和に戻る。
1.26 2Aの妊娠発覚。LFBは2Bが代理。
2月 サハリンが2Aに付いておくことに。プリマを雇う。
5-6月 2Bがマルセイユとグラナダで水泳日本代表をサポート
5.06 千里1が渡米
7.11 青葉の妊娠発覚
7.17 青葉が分裂♪
8.08 千里1が帰国
9.02 青葉の結婚式(越谷)
9.03 桃香・由美・緩菜が浦和に帰宅
9.20 朋子・玲羅が浦和を訪れる
 

さて、桃香が伏木に戻っている間に、浦和の家は増築をしていた。
 
この家には最大14人?が住み、更に来客も多いというのに、トイレ3個はまだいいとしてお風呂がひとつしかないのは、大きな問題だった。更に客間というものが無いのも問題点。
 
それで昨年桃香が伏木に行った後、千里たちで話し合い、大規模な増築をすることにしたのである。
 
(before)

(after)

 
家の南側に 4H(2間)軒(のき)を延ばして、お風呂を3個にし、部屋も4つ増やした。工事は1月まで掛けて設計して建築確認を取り、2月に入ってから始め一週間で完成した(播磨工務店はいつもこんなもの)。それで妊娠した2Aは101の部屋に入れることにしたのである。
 
2022.2 の部屋割
101(和室6) 千里2A・早月・サハリン
102(和室6) 彪志
103(4.5J)
201(6J) 貴司・京平
202(8J)
203(6J)
204(6J)
205(4.5J) プリマ
2SR(防音室)
 

2020.11 この家を買う(4LDK2S 3WC1Bath)
2020.11 地下室を作る(1S->BS)
2020.12 初代の立体駐車場(6台)を作る
2021.01 立体駐車場を交換(8台)
2021.01 プールの作成
2022.02 増築(8LDK2S 5WC 3Bath)
 

部屋割は桃香たちが戻って来た時点でこのように変更した。
 
2022.9.3 の部屋割
101(和室6) 千里2A・サハリン
102(和室6) 彪志
103(4.5J) 桃香
201(6J) 貴司・京平
202(8J) 早月・由美・緩菜
203(6J)
204(6J)
205(4.5J) プリマ
2SR(防音室)
 
そして玲羅と朋子が来たところでこうした。
 
2022.9.20 の部屋割
101(和室6) 千里2A・サハリン
102(和室6) 玲羅・朋子
103(4.5J) 桃香
201(6J) 貴司・京平
202(8J) 早月・由美・緩菜
203(6J)
204(6J) 彪志
205(4.5J) プリマ
2SR(防音室)
 
玲羅と朋子は千里のそばに交代で付いていることにした。だいたい昼間が朋子、夜間が玲羅の担当である。それでサハリンは夜間は寝ていることにした。つまりサハリンか玲羅はいつでも運転できる状態にしておく。
 

なお千里3・千里1は地下の自分の部屋(B03,B01)に住んでいる。ここは京平・緩菜・青葉くらいしか入ってくることはできない(*11)。千里3は「私に用事がある時は電話で呼んでね」と玲羅に言っていた。
 
(全体図)

 
(*11) 地下のラウンジや千里・龍虎の隠れ部屋は、基本的には女子専用だが、京平はスカートを穿いていれば入域OKにしている。京平は彪志の影響でだいぶ男らしくなってはきたが、まだ所有している服は、ズボンよりスカートの方が多い。パンティはほとんど女児用である。これはプリキュアのボクサーが無いから!らしい。
 
彼は学校で女児用ショーツを穿いているのを友人たちから見られても平気だし、オカマとかからかわれても全然平気である。彼は体育は大得意で飛び箱は6段飛べるし、逆上がりが出来て50m走もクラスで一番なので、わりとみんなから尊敬されている。
 
でも運動会ではスカート穿いてチアをしてた!実はダンスもいちばんうまいので女の子たちからうまく乗せられた。
 

朋子は102の部屋の窓を開けて外を見た。
 
「あのコンテナ、そこに置いたんだ!」
「コンテナ持って帰りたいから早く荷物を整理してくれと千里からは言われているがなかなか片付かない」
と桃香は言っている。
 
部屋の前に小型コンテナが置かれて、桃香の部屋(103)との間にボーディング・ブリッジ?まで掛けられている。
 
↓再掲

 
「いっそあの中で仕事しようかと思ったがコンテナの中は暑いし、スマホがつながらないから無理だった」
「早く返さないとコンテナのレンタル代もかかるのでは?」
「1日200円+消費税取ると言われた」
「それは早く片付けなければ」
 

この家のご飯は、基本的にはプリマが作るが、千里1,2A,3 も結構手伝う。特にパンを焼くのはだいたい千里3である。
 
朝焼きたてパンを食べるには深夜2時頃ホームベーカリーに材料を入れてスタートさせる必要がある。これはプリマの業務時間外である。3の合宿中は千里1が、1の渡米中は5番か6番がホーム・ベーカリーをセットしていた(星子やコリンが代行することもある)。材料の強力粉はH新鮮産業から買った帯広産の非F1小麦粉。
 
サハリンは常に千里のそばにいることにしているので、調理はしない。買物はだいたい、すーちゃん・てんちゃんがしてくれている。
 
朋子たちが来てからは、朋子も少し手伝った。
「作る量が凄くて大変でしょう」
と朋子はプリマに言う。
「ご飯を作る仕事頼むと言われた時は、普通の家政婦程度の仕事かなと思ったんですけどね」
とプリマは言う。
「これは給食のおばちゃんの仕事でした」
「ですよね。人数が凄いもん」
「それに子供たちの好き嫌いが」
「ああ、最近の子供は嫌なら食べるなと言うと、おやつ食べるもんと言うし」
「みんながマリー・アントワネットになってる」
「ひもじさを知りませんからね」
「困ったもんですよね。みんな食べてくれるのは、カレー、スパゲティ、ハンバーグ、唐揚げ、やきそばといったところで」
「ワンパターンになりがちですよねー」
「一応千里さんから、だいたいのメニューは渡されているんであまり考えなくてもいいんですが」
「なるほど」
「子供たちは炊き込み御飯でキノコやニンジンを選り出そうとして千里さんに叱られたりする」
「ああ」
「ついでに桃香さんまでピーマン選り出そうとして叱られる」
「子供たちに示しが付かないもんね」
 

25日の夕方、千里が「来たかも」と言う。きーちゃんが出て来てお腹に耳を当ててみて言った。
 
「まだまだ」
 
「でも動いてるよー、この子」
「出て行くための準備運動をしてるんだろうね」
「まだ準備運動かぁ」
 
でもその準備運動がだんだん激しくなってきて、「痛いよー」と千里が言うので、26日(予定日)の午後に病院と連絡をとり入院させることにした。昼間ずっと仮眠していた玲羅が千里を車(オーリス)に乗せ、朋子・サハリンも付き添って病院に行く。
 
お医者さんも
「まだ少し掛かる気もするけど、まあ予定日だし入院してもいいよ」
と言うので入院させた。
 
その晩は朋子は、サハリンがオーリスを運転して一緒に帰り、玲羅が病室のサブベッドで寝た。
 

27日朝。朋子が病院に来る。玲羅が交替して帰ろうとした時、陣痛が始まった。それで玲羅も引き続き待機する。連絡で貴司が病院に来る。今日は休むことをチームに連絡した。
 
陣痛の間隔が短くなっていき、お昼すぎ、破水が起きる。15時頃、分娩室に移動する。
「歩いて行くの〜?」
「歩ける歩ける」
「出産は4度目なのに情けないこと言わない」
 
えーん、何度目でも辛いよー。
 
きーちゃんは思ってた。もしかして千里の出産4回で全部そばに居たのって私だけ??(*12)
 

(*12)以下のようになっている。(★本当に産んだ人、●分娩台に寝た人)
 
京平出産の時そばに居た人:千里F★・阿倍子●・理歌・白虎
近くに居た人:青葉・貴司・六合・貴人・阿倍子の母・白子奈香・冬子・政子
 
阿倍子は自分は出産してないのに血圧急降下して死にかけた。出産したので自分は体力消耗したはず→私は死ぬかも、という思い込み。阿倍子を助けるのに青葉は自分が死ぬ思いした。
 
早月出産の時そばにいた人:桃香★●・千里2・千里3・青葉・朋子・朱音・貴人・月夜
 
桃香が確かに出産したと記憶してるのは貴人だけ!
 
緩菜出産の時そばに居た人:千里1★・羽衣・貴司・美映●
近くに居た人:勾陳・貴人
 
美映は自分は産んでないので全然痛くなかった。そして出産しても処女のままだったので、彼女は処女を貴司の次の夫・孝史に捧げた。
 
今回そばにいた人:千里2A★●・玲羅・朋子・貴人・サハリン・貴司
 
確かに4回全てで近くに居たのは貴人だけ。
 
※早月は本当は桃香が産んだのだが、出産に立ち会った人のほとんどが産んだのは千里(千里2)だと思いこんでいる。桃香本人も記憶が不確かである!実際には千里2は助産師の服を着て、早月を取り上げた。千里1は日本代表としてアメリカ遠征中、千里3はフランス留学中。でも3は出産に立ち会い早月を桃香の次に抱いた。1も数時間後に来て新生児室の赤ちゃんの手を握った。
 
早月を作った精子は、武矢に射精させて採取し冷凍しておいたもの。小春が武矢の陰茎を握り往復運動して射精させた。武矢は夢魔に射精させられた夢を見た。武矢の睾丸は小4の時に千里の睾丸に入れ換えられていた。
 

前回(緩菜の妊娠出産)は信次と千里1が生セックスした後で、貴司が美映とセックスしようとして、貴司のペニスが美映の膣口に接触した瞬間、京平・千里・貴司本人・貴司の妹たち、が掛けていた“呪”が作動して、その相互作用により、美映の女性器と千里1の女性器が交換された。それで美映の体内に入った千里1の女性器が妊娠した。つまり卵子も子宮も1番(≒Bw)のものが使用された(桃香の推察だが多分正解)。
 
今回は“結婚している”貴司と千里2Aのセックスで普通に2Aが妊娠した。だから卵子も子宮も2A(≒Bs)のものが使用されている。
 
全ての千里の調整者であるグレース(千里5)にも今一よく分からないのが、最初の妊娠出産、京平のケースである。
 
あの時は、阿倍子の人工受精の時、胚を子宮に投入するのと同時に阿倍子の女性器と千里の女性器が交換された。それは分かるのだが、グレースにも分からないのが“誰が”交換したのかというのと(*13)、“誰と”交換したのかということである。(*15) またそもそもどの千里の卵子を使ったのかもよく分からない(*14).
 

(*13) 交換したのは実は小春。その力を与えたのはU大神の意向を受けた北海道のA大神である。
 
(*14) 採卵を主導したのはU大神の意向を受けた出羽のH大神で、実際の作業は美鳳がおこなった。この時、美鳳は小学4年生の時に作成したiPS細胞から育成した卵巣から採卵すると千里(統合千里)に言っている。このiPS由来の卵巣を持つのはY(C1p+K)なので(美鳳の言葉が正しければ)Yの卵子が使用されたことになる。
 
(*15) 京平が生まれたすぐ後に、千里はユニバーシアードを戦っている。実際に出たのはBsと思われる。痛みがあるので千里は鍼を打ってもらっていたが、それにしても出産したのがBsなら、さすがに無茶である。だから妊娠出産したのはBwかY1のどちらか。
 
胚移植の時、2階の病室に陣取った千里が1階手術室の胚移植の様子を青葉に“実況中継”して青葉が胚の定着をナビゲートした。この時女性器を交換されて実況していた千里は強いショックを受けている。
 
つまり実況していた千里の女性器が使用された。あれだけ明瞭な実況ができたのは巫女力の高いY1の可能性が高い。つまり交換されたのはY1の女性器と思われる。だから妊娠出産したのはY1である可能性が高い。
 
また予定日になってもちゃんと出て来ずに遊んでいた京平を叱ったのは多分Bwと思われる。これは妊娠している本人とは思えないのでやはり妊娠していたのはY1っぽい。
 
つまり Y1の卵子で Y1が妊娠したと考えられる。
 
結局、京平=Y1の子供、緩菜=Bwの子供、夕月=Bsの子供
 
但し高校時代に京平と親子の契をしたのはBwである。
 

3回(4回?)も出産したのに初めて分娩台に乗った千里であるが、両手を玲羅と朋子に握ってもらっていた。
 
17時頃、子宮口が全開になり、胎児が産道へと移動し始める。これまでいきむのを我慢していたが、ここからはいきむ。やがて赤ちゃんの頭が見え隠れするようになる(排臨)。
 
「赤ちゃん見えてきたよ、頑張ろう」
 
やがて赤ちゃんの頭はもう引っ込まなくなる(発露)。ここで、いきむのをやめて、フーーーっと長く息を吐く呼吸法に変える。千里もできるだけ自分をリラックスさせる。(ここで短い呼吸にするラマーズ法は最近ではよくないと言われるようになった)。
 
やがて身体の全体が娩出される。会陰切開は必要無かった。
 
「女の子だね」
と玲羅が言う。
 
「千里、最初は男の子、2人目は男の娘で、3人目は女の子って上手すぎ」
と言っているのは助産師の服を着た、きーちゃん!いつの間に?
 

そんなことを言っている内に赤ちゃんが「おぎゃー、おぎゃー」と産声をあげる。
 
「おめでとう!」
という声があがり、助産師の服を着たきーちゃんが赤ちゃんを千里に抱かせてくれる。私、初めで分娩台で自分の子供を抱いたよ、と千里は思った。
 
その後、赤ちゃんは、玲羅と朋子にも抱いてもらった。助産師さんが1人外に出て廊下で待機していた貴司に「女の子ですよ」と告げた。
 
足に「細川千里ベビー」のタグが付けられ、臍の緒が処置された。それから10分ほどで後産も出て来て、出産は完了した。
 
出生時刻は17:30, 体重は 2927g と記録された。
 
「凄くスムースに出て来ましたが、ママはもしかして経産婦さんですか?」
と産科医が訊く。
「ええ、この子で4人目ですよ」
と玲羅が言う。
 
「いや初めてのお産と聞いていたもので」
「姉は何でもすぐ忘れちゃいますから。上の3人も元気に育ってますよ」
「だったら良かった」
「友だちに1億円貸しても翌日には忘れてる人なんです」
「それはぜひお金を借りなければ」
 
ということで、どこまでジョークか分からなくなった!
 

なお“長男”とか“長女”というのは婚姻ごとにカウントするので、緩菜もこの子もどちらも貴司の長女になる。
 
この子の名前は“夕月”にすることになった。夕方の月が見えている時間に生まれたからである!
 

 
2022.09.27 浦和での
日没 17:32
月入 18:20
 
つまり日没直前、既に太陽の一部は地平線下に隠れ始めた時間帯に生まれているが、この時月はまだ18度ほど上にある。月齢は1.4で三日月の半分程度の細い月である。
 

関東司令室では、2Aのお産が無事何のトラブルも無く終わったことから、GとVが上等の紅茶で祝杯をあげ、それを飲みながらケーキを食べていた。
 
「だけど、私、子供たちの親子関係が分からなくなったよ」
とヴィクトリアが言うので
「これ絶対貴司君には見せられないけど、最新の情報によると、こうなっている」
とグレースが図表を見せてくれた。
 
↓子供たちの遺伝子上の両親(単に生殖細胞を貸しただけのものを含む)
(桃香が父であると生母が主張している珠那・美甘を省略する。また夏樹が代理母で産んだ子供・美奈を省く)
 
この図をしばらく眺めていたヴィクトリアは言った。
「よく分からん」
 
「この図は、子供から見て左側が父で右側が母になってる。だから卯乃と隼人は父母が完全に逆転した、完全ねじれ姉弟であることが分かる」
とグレースは解説する。
 
「卯乃の父親は雅希・母親は早紀
隼人の父親は早紀・母親は雅希」
「うん。それは分かる。あの2人ふざけすぎ。性転換で遊んでる」
「ルーレット(*16)で負けた方が男に性転換してセックスとかやってるね」
「負けたほうが男役って、やはりセックスは女のほうが気持ちいいのかなぁ」
「早紀ちゃんは男の方が気持ちいい、射精の快感は女では体験できないって言ってるけど」
「でも女役になりたいんでしょ?」
「あの子は色々矛盾してる。人のこと言えないけど」
 
(*16) じゃんけんでは必ず早紀(虚空)が勝つのでルーレットになった。玉を投げ入れるのは雅希。早紀は雅希が玉を投入する“前”に黒か赤か言う。投入後ならどちらになるか分かってしまうから。
 

「千里は京平・夕月・緩菜の母で、早月の父。
夏樹は来紗・伊鈴・歌声の父で、美奈の母」(*17)
「夏樹ちゃんは遺伝子的な子供が3人もいるのに誰の親でもないんだよね」
「それが辛かったみたいだけど、優子ちゃんと結婚して凄く救われたみたい」
 
(*17) 歌声は現在優子の胎内にいる子供。もう名前は付けちゃった♪この名前は女の子であることを前提としている。万一男の子だったら出生届けを出す前に性転換させて女の子にすると優子は言っている(ジョークと信じたい)。
 

「桃香は、小空・小歌の姉弟、来紗・伊鈴の姉妹、京平・緩菜の兄妹(*18), 珠那・美甘と実に8人の父親だけど、実は遺伝子的な父親になっている子は今の所居ない」
「今の所って永遠に居ないのでは?」
 
「桃香の冷凍精子はあるから、これを季里子ちゃんに人工授精すれば、本当に桃香を父親とする子供ができる」
 
「精子があるの〜〜!?」
「桃香とセックスしたことのある女性が全員証言すると思うよ.桃香にはペニスも睾丸もあるって」
「確かに」
「もっとも過去に様々な女性から30回くらい去勢されてるけど」
「しぶといちんちんだな」
 
(*18) 桃香のことを早月はお母ちゃんと呼ぶ。由美は“もも母ちゃん”と呼ぶ。京平・緩菜はお父ちゃんと呼ぶ。
 

その桃香は彪志・子供たちと一緒に赤ちゃんを見に行き、千里をねぎらった。
 
青葉L(妊娠中のほう)は18時頃、“千里からの!”電話で知った。
 
「じゃ産んだ、ちー姉にお疲れ様と言っておいて」
「OKOK」
 
青葉は言った。
「私唐突に思い出したけど、早月ちゃんが生まれた時(2017.5)、7年後に私も子供産むと、ちー姉が言ってたけど予定より1年早くなるみたい」
 
「それは“どの千里”が言ったのか知らないけど、たぶんコロナの影響で色々なものが変わったんだと思うよ」
 
「それあるだろうねー」
 
 
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【春二】(1)



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