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■春零(26)

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19日は彪志と一緒に婚姻届けを提出するので、朝、美鳳さんに浦和へ転送してもらうことにしていた。
 
8時頃、美鳳さんから「転送するよ〜」という直信が来て、青葉は浦和に転送された。目の前に天野貴子さんがいるので
「お世話になります」
と挨拶する。
 
実は、天野さんの車で浦和まで往復するという説明を彪志にはしていたのである。
 
「あんたも大変ね。乗って乗って」
と言われて彼女のホンダ・シャトルに乗り、浦和の千里邸に行く。ここで彪志と落ち合い、彪志のフリードスパイクで浦和区役所に行った。
 
窓口で婚姻届けと転入届けを同時に出したいと説明。処理してもらった。手続きは10時前には終わる。この日の月入が10:27なのでそれまでには出したかったが、ちゃんとその前に完了させられて良かった。
 
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「この後、どうすんの?」
「天野さんには今夜伏木に送ってもらう」
「大変だね」
「だから彼女は今日は日中仮眠しているはず」
「わあ、大変そう」
「取り敢えず“休もう”よ」
「う、うん」
 
それで2人は浦和の家に戻り、自分たちの部屋で愛の再確認をした。実は婚姻後最初のセックスである!つまり初夜である!!彪志は青葉のお腹を圧迫しないよう後側位で入れてくれた。レスビアンで言うとダブルスプーンである。男女ならスプーン・フォーク??青葉は向かい合わないのは寂しい気がしたのだが、この体位が意外に密着度が高く(だからビアンカップルに好まれる)、物凄く気持ち良かった。それで彪志とひとつになれたんだ、というのを再認識できた。
 
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でも青葉は1回しただけで眠っちゃった!
 
彪志はもっとしたかったが「疲れてるだろうから仕方ないよね」と諦め、青葉のお腹を冷やさないようにタオルを巻き付けた上で、自分もそばで仮眠した。
 

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青葉が目をさましたのは夕方である!
 
「ごめーん」
「寝てれば子は育つというから」
「なんか少し違う気がする」
 
“こちらの千里”(千里2A)が、
「結婚祝い」
と言って、ステーキも焼いてくれたので、貴司さんが買ってきたケーキとサイダーも出して、京平・早月と一緒にお祝いの晩御飯を食べた。
 
そのあと19時に天野貴子が迎えに来てくれて、彼女の車に乗って千里邸を出た。少し走った所で
「この辺でいいかな」
と言って天野さんは車を停める。
 
「じゃ美鳳さん、お願いします!」
と言って、青葉は伏木の青葉の部屋に転送してもらった。
 
それで青葉はこのあとスタジオに入って21頃まで作業をしてから寝た。
 

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梨原志望(泣原死亡)は突然K医大病院から電話を受けた。
 
「奧さんが倒れられて病院に運ばれたんです。至急来て頂けませんか」
「分かりました!えっとそちらどこでしたっけ?」
 
それで志望は病院の場所を聞いて車で駆け付けた。受付で聞いて病室に行く。ナースステーションで尋ねたら医師も来てくれた。
 
「妻は・・・どういう状態なのでしょうか。眠っているように見えますが」
「現時点では何とも診断名は出せません。意識を失っておられるようですがここまでの検査結果では遷延性意識障害いわゆる植物状態ではないようです」
「よかった」
 
「昏睡状態なのか最小意識状態なのか、閉じ込め症候群なのか、もう少し検査しないと判断が付きません」
 
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「妻は意識回復するのでしょうか?」
「現時点では何とも言えません。ただできたら色々話し掛けてあげて下さい。この手の症状は、家族などがたくさん話しかけることで改善に繋がることもありますから」
「分かりました!」
 

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7月20日(水).
 
H南高校で終業式が行われた。晃はもちろんスカートを穿いた女子制服姿で体育館に整列して校長先生のお話を聞いた。
 
学校は夏休みに突入した、
 

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その日の夕方、バスケット部がファイアーバードで練習をしていたら、ふらりと千里がやってきた。
 
「地区リーグは終わった?」
「はい。2位になりました」
と言って、春貴は勝敗表・スコアを見せた。
 
「ふーん。凄いね。私はバスケのスコアは分からないけど、最後は得失点差だったんだ?」
 
バスケットのスコアが分からない?バスケットの女子日本代表さんが??それともこのスコアが読みにくいのかなあ、などと春貴は悩む。
 
「以前言ってたけど、愛佳ちゃん、舞花ちゃん、晃ちゃんと少し話したいんだけど。舞花ちゃんと晃ちゃんはできたらセットで」
「だったら愛佳と先に会ってあげてください。晃は今日までは男子の方で練習しているので」
「ああ、そうたったね。だったら愛佳ちゃんを先に」
 
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それで春貴が愛佳を呼んだ。誰も使ってない2階の2号控室に行く。
 
千里は愛佳に通告した。
「君には呪いが掛かっている」
 
「え〜〜〜!?」
 
「最近何か変わったこと無かった?」
「変わったことですか?何だろう。あ、模試の成績が悪かったくらいかな」
「たぶんそれ呪いのせい」
「嘘!?」
 
「これを除霊していい?」
「お願いします!」
 
それで千里は愛佳を椅子に座らせ、自身は左足の靴と靴下を脱いだ。右手の薬指と左足の中指を接触させる。愛佳は自分の身体から何かが抜けていくような気がした。
 

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「何か身体が軽くなった気がします」
「まあ、変なの憑けてたら重いだろうね」
「軽くなったらバスケの動きも良くなるかな」
「良くなるかもしれないよ。次の大会は?」
「10月にウィンターカップ予選があります」
「だったら活躍できるようになるかも知れないね。トレーニング頑張るといいね」
「はい!」
 
「成績のほうも良くなると思うよ。呪いを解いたから、次の模試とかでは点数が良くなるはず」
 
「そうなんですか?」
 

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矢作瑠璃は唐突に目を覚ました。
 
私どうしてたんだろう?
 
それにここはどこ!?
 

千里は愛佳に尋ねた。
 
「君、どこかで何か変なものと接触しなかった?たぶん、愛佳ちゃん、舞花ちゃん、晃ちゃんの3人で。人形美術館に来た時に気付いたんだけど、あの場では余裕が無かったから後日会いに来ようと思ったんだよ。だから6月19日以前。多分それより一週間程度以内」
 
「6月19日より一週間程度以内・・・舞花・晃ちゃんと一緒に・・・」
 
愛佳は腕を組んで考えた。
「もしかしたら」
 
と言って愛佳は、人形退避作戦の前日、6月18日に金沢で一言主神社を探していて、結局見付からなかったものの石碑のようなものを見て、注連縄(しめなわ)も張ってあったので、何かの神様が祭られているのかもと思い、そこで『H南高校がウィンターカップに行けますように』とお祈りしたということを言った。
 
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「それが原因だな」
「え〜〜!?」
「多分君がウィンターカップに行けるようたくさん練習するように大学進学は諦めさせようとして君の成績を落としたのだと思う」
 
「非道い」
 
「しめ縄が張られていても神聖なものとは限らない。世の中にはレベルの低い邪霊に欺されてお祀りする人がいるからね。そういうのに関わると、ろくなことがない。しばしばその手の低レベルの邪霊は、何か良くするとその倍くらいどこかを悪くしてゼロサムやマイナスサムにするんだよ。周囲の人にまで悪影響を与えたりする」
 
「きゃー」
 
「舞花ちゃんや晃ちゃんも何かお願いごとしてた?」
「舞花は『晃ちゃんが女の子になって女子選手になれますように』と祈ってました。晃ちゃんは何もお祈りしませんでした」
 
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「もしかして晃ちゃん女の子になった?」
「病院で確かに女子であるという診断書もらって、7月8日以降は女子生徒として通学してるんですよ。それで女子生徒扱いになったから、昨日の地区リーグでも女子選手として出場したんです」
 
「ああ。遅かったか。まさかそんな急展開するとは思わなかったな。戸籍の訂正とかまでしてないよね?」
「もしかして性別が変わったのも呪いなんですか?戸籍については本人が唐突に女の子になって戸惑っているので、奥村先生の助言で、1年くらい変更は保留するそうです」
 
「それは良かった」
 
春貴が居てくれなかったらもう戸籍まで修正されてたなと千里は思った。
 
「晃ちゃん、男子に戻るんですか?」
「それは本人の気持ち次第だね」
 
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練習が終わって晃が女子のほうに戻って来た所で千里は舞花と晃を一緒に呼ぶ。さっきと同様2号控室に入る。愛佳も付いてくる。
 
「君たち2人には呪いが掛かっている」
「え〜〜!?」
「愛佳ちゃんから聞いたけど、君たち先月金沢で変な石の所でお祈りしたでしょ?」
「はい、それまずかったですか?」
「大いにまずかったようだね。舞花ちゃん成績下がったんだって?」
「はい」
「それ成績を下げて、進学を諦めさせ、その分たくさん練習させようとしたものだと思う」
「えげつないですね」
「晃ちゃんが女の子になっちゃったのもそのせいだと思う」
 
「その件なんですが、ぼく実は女の子とかにはなってないんですけど」
と晃は言う。
 
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「そうなの?」
「ぼくが女の子の身体に見えるのは本当は偽装なんですよ。胸はブレストフォーム付けてるだけだし、お股は“タップ”してるだけなんです。それなのにお医者さんから間違い無く女の子と言われて困惑しているのですが」
 
「“タップ”じゃなくて“タック”かな」
「あ、そうだったんですか?」
 

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「取り敢えず2人とも呪いを解いてもいい?」
「はい、お願いします」
 
それで千里はまずは舞花を椅子に座らせ、さきほど愛佳にしたのと同様にして呪いを解いた。
 
「なんか身体が軽くなった気がします」
「まあ軽くなるだろうね」
 
続けて今度は晃を椅子に変わらせ、愛佳・舞花と同様にして呪いを解いた。
 
「晃ちゃん、トイレに行って来てごらん」
「はい?」
 
それで晃は第2控室付属のトイレに行ったが
「嘘ー!?」
などと声を挙げている。やがて晃はトイレから出て来たが、顔が青ざめている。
 

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「ちんちんが無くなってる」
と晃が言うと
「何を今更」
と舞花は言う。
 
「おっぱいも本物でしょ?」
と千里が言うので晃は自分の胸を触っている。
 
「これ作り物ではない気がします」
「要するに、自分の身体が本物の女性の身体になっていることに呪いのせいで気付かなかったんだな」
「えーー!?」
 
「愛佳ちゃんも舞花ちゃんもこれで成績が上がると思うよ。次の模試はいつ?」
「11月にありますが」
「遅すぎるな。8月くらいに受けられる模試は無い?」
「他社のにならあると思います。個人申し込みになるけど」
「それを受けてごらん。絶対今回より成績がいいと思う」
「やってみます!」
 
「あのぉ、ぼくは女の子のままなのでしょうか」
と晃が訊く。
 
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「晃は女子のままのほうがいい」
と愛佳も舞花も言う。
「え〜〜!?」
 
「でも晃君の身体の中に入っている卵巣や子宮は明らかに別人のものだよ。取られた人が困ってると思う。だから元の人の所に戻したいんだけどいい?」
「お願いします」
 

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それで千里は再度晃を椅子に座らせると、藤雲石の数珠を取り出し、何か念じていた。
 
「あ」
と晃が声をあげる。
「身体の感触が変わったでしょ?」
「はい。今まで体内のこの付近」
と言って下腹部を手で押さえる。
「この付近に何か暖かいものがある気がしていたのですが、それが無くなった気がします」
「うん。卵巣・子宮が元の持ち主の所に戻ったんだね。そして代わりに前立腺が晃君のところに戻って来たんだよ」
「元の持ち主のところに戻ったのなら良かった」
 

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黒井マミ(ステージ名:黒衣魔女)は唐突に身体の調子が良くなった気がした。
 
「あれ〜!?どうしたんだろう」
と呟くと布団から起き上がり、取り敢えずトイレに行った。
 
「うん。なんか調子がいい」
 
それでマミは服を着替えると、近くのコンビニまで行ってお弁当を買ってきた。なんか久しぶりにまともに御飯を食べた気がした。
 
「これなら会社にも行けそう」
と思うと、会社に電話を入れる。
 
「あ、課長ですか。長く休んで申し訳ありません。なんかだいぶ良くなったので明日から出社させてください。はい、ご心配お掛けしました」
 

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ファイアーバード。
 
「じゃ晃は男に戻ったんですか?」
と舞花が訊いた。
 
「晃ちゃん、ちんちんとタマタマある?」
と千里が訊く。
 
「確認してきます」
と言って、晃はトイレに飛び込んだ。やがて出てくる。
 
「ちんちんもタマタマもありません。でもこのお股はタックされた状態です。一見女の子のお股に見えますが、よくよく見ると偽装が判るかも」
 

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