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■春零(7)

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「大宮先生にお願いしたいのはアクアへの楽曲4-5曲程度の提供と全体のプロデュースです。細かい歌唱指導は、花咲ロンドにやらせますので」
 
結果的に青葉はこれから半月程度で4-5曲作曲して、残りの7-8曲もアレンジの調整をする必要があることになる。東京のスタジオに居るロンド・アクアと連携しながら。
 
「ロンドちゃんも最近は若い歌手の指導がメインの仕事になりつつあるね」
「アクアとは2つしか違わないんですけどね」
 
「でも大学を卒業したから、かなり時間が取れるようになったみたい」
と千里が言う。
「あ、大学卒業したんだ?すごいね」
と青葉。
「アクア以降では、うちのタレントで芸能活動しながら大学を出た最初のタレントになります」
とコスモス。
 
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西宮ネオンは大学には入りはしたが、忙しさに耐えられず途中で退学している。
 
「まあ大学を出る意味があったかどうかは微妙だけどね」
と千里。
 

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「それでまた熊谷に籠もって作業するの?」
と青葉は、また自宅を離れることになるのかと諦めの境地になりつつ訊いた。ところがコスモスの返事は意外なものだった。
 
「いえ。大宮先生の家のお隣にスタジオを用意しましたので、そこで作業をしていただければと」
「隣!?」
 
それで青葉はコスモス・千里に連れられて濡れ縁を歩き、“お隣”にあるスタジオに行った。
 
「いったいいつの間にこんなものが」
と青葉は呆れる。
 
中は結構広い。
 

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青葉宅の新見取図(2022.7以降)。

 
2021.11 竣工
2022,04 お隣にスタジオを設置。濡れ縁の延長。楽器室と制作室の中身移動。
2022.07 第2リビングを作る。
 
コスモスが説明する。
「ここは熊谷のコテージとほぼ同じ広さを確保しています。向こうは建物が星形なので六角形の部屋でしたが(*20)、こちらは敷地を有効利用できるように四角形の部屋になっています」
 
「四角形のほうが音響はいいよね」
と千里。
 
「中にキッチン・バストイレがあり、また宿泊用の個室が4つ付随しています。熊谷のコテージには5個ありましたが、ここでは大宮先生は御自宅の方でお休み頂けるだろうしと思い4つだけ用意しました」
 
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「まあ熊谷では実際は3人でやってたね」
と青葉も言う。
 

「スタジオの周囲を個室が取り囲んでいるから、ここは特に防音の仕組みは作ってない。個室が防音のためのクッションになる」
と千里は説明する。
 
「ちー姉が建てたの?」
「コスモスちゃんから、青葉の自宅近くにスタジオを建てられないかと相談されたんだよ。それで土地を探していたら、ここの土地が売りに出ていることに気付いて。だからここの土地・家屋の所有者はコスモスちゃん個人」
 
「個人名義なんだ!」
「会社名義で土地を買ったり、そこに建物を建てるにはあれこれ手続きが大変なので」
とコスモスは言っている。
 
ここの土地はたぶん700-800万円、建築費も600-700万円程度かな?と青葉は思った。コスモスならポンと払える金額だろう。確かに会社の経理を通すより楽そうだ。
 
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「ここは前のオーナーさんがこちらの土地と向こうの土地の所有者と交渉して公道まで2m幅の通路を確保していた。だから再建不可物件ではないんだよね。それで建物を建てられた。建ててから、青葉の家と渡り廊下で結んだ」
と千里。
 
「ああ・・・播磨工務店さん?」
「当然当然。彼らは基礎工事をして1週間おいた後は3-4時間で組み立てた。ここは全て標準ユニットだけで出来ているから工費も安かったし」
「イナバの物置と大差無いですよ、と工務店の人が言ってた」
 
「なるほどー」
 

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「エレベータがあるけど、2階か地階に何かあるの?」
「2階は物干し」
「そうなんだ!」
 
「助手として、南田容子と立花紀子を呼んでここに泊まり込みでお手伝いをさせますから」
とコスモスは言っている。
 
「立花紀子ちゃんはテレビのレギュラーが無い?」
「その日は東京まで日帰り往復ですね」
「え〜〜!?」
 

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「ここからあまり遠くない氷見市郊外にヘリポートを作ったから、そこから直接東京ヘリポートまで飛ぶ」
と千里。
 
「能登空港・郷愁飛行場を経由するより、よほど早いね!それ」
「氷見から2時間程度で東京ヘリポートまで行けます。前後の車での移動を含めてもTV局まで3時間半程度で辿り着けます」
「凄いね」
 
能登空港・熊谷経由だと、どうしてもここから片道5-6時間掛かる。新幹線を使うのと大差無いのだが、感染の危険を避けるのが大きな目的である。特にタレントは“感染している人からサインを求められる”リスクがあるので、公共交通機関をできるだけ避けたい(*19).
 
「乗り心地はホンダジェットより随分劣りますけど、時間はかかりません」
「確かに。しかしヘリでの長時間移動は体力使うし、若くないとできないなあ」
 
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「主としてこの往復用でエキュレイル2(Écureuil2)をもう1機買いましたから」
「お金掛けてるね」
「いえ。いちばん高いのは、大宮先生とアクアの単価です。それに比べたら1億円くらい(*17)大したことないです。ヘリポートは若葉ちゃんが作ってくれたのでこちらは負担無しですし」
 
「若葉ならそのくらい作ってくれそうだ。お金の減ること大好きだもん」
 
青葉は、若葉が§§ミュージックに出資しないのは“お金が増えちゃう”からだろうと想像していた。アクアが好調だから、今たぶんコスモスもアクアも資産が100億を軽く超えているだろう。
 
「氷見にヘリポートができたから津幡と氷見の間をヘリで移動できる」
「わざわざヘリで飛ぶ距離でもないと思うけど」
 
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「東京から津幡までヘリで誰か運んだ時、津幡は着陸したヘリがどかない限り、他のヘリが降りられない。だから氷見に回送して津幡を空ける(*18)」
「そうか・・・」
 

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(*17) エアバス AS355 Écureuil2 "TwinStar" は2016年で生産終了しているが、最終新品価格は360万ドルだった。コスモスは若葉から“余っている”のを1機1億円で買い取った。それで名義変更だけですぐ使えるようになった。このヘリは、ヘリとは思えない高速性 (224km/h) と長い航続距離 (703km) を持つ。氷見−東京の直線距離は280km程度である。定員1+6名。最高飛行高度4000m.
 
開発したのはフランスのアエロ・スパシアル(Aérospatiale) だが、同社は1992年にドイツのメッサーシュミット・ベルコウ・ブロームと合併して、“ユーロコプター”となり、2014年に“エアバス・ヘリコプターズ”と社名変更した。
 
単発機の AS350エキュレイユ と双発機の AS355エキュレイユ2があり価格も性能も大差無いが、若葉やコスモスがエキュレイユ2“ツインスター”のほうを買うのは、エンジンにトラブルが起きた時の生還率の問題である。
 
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(*18) 実はこの問題は3月に明恵を東京から津幡に運んだ時に浮上した。それで若葉は氷見にヘリ専用飛行場を作ることにしたのである。ムーランエアー4つめの飛行場となった。既に3つの空港を運用している航空会社が設置する私的なヘリポートということで自治体と国土交通省の認可はわりと簡単に取れたらしい。若葉は地元と、農薬散布用のヘリ(ドローン)とかの離着陸・駐機、救急患者の搬送などにも自由に使ってくださいと言って話をまとめた。
 
(*19) クリスティ『鏡は横にひび割れて(邦題:クルスタル殺人事件)』では風疹に罹っているファンが他人に感染させるリスクがあるのに、めったに近くで見られないからと妊娠中の女優に接近してサインを求め風疹を移してしまう。結果的に女優も風疹に罹り重い障害のある子を出産する。このような“無邪気な悪意”からタレントを守るためにコスモスとケイは何十億円もの投資をしている。
 
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(*20)ホテル昭和のコテージは↓のような形である。

 
単位となる正三角形の1辺を a とすると正三角形の面積はピタゴラスの定理より√3/4・a2になり、正六角形の面積はその6倍で 3√3/2・a2である。コテージは a=3.6m(2間) で作られているので、正三角形の個室がベッドとトイレまで含めて3.4畳、中央のリビングが20.4畳となる。コテージ全体は10.8m×11.2m = 120m2あり、この“伏木スタジオ”の専有面積9.09m×9.09m = 82.6m2に比べて効率が悪い。個室も狭いし。結局星形というのが無駄が多い。
 

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青葉が、いくら短時間で移動できるといっても富山−東京の日帰り往復って大変そうと思っていたら、コスモスは、ひとこと言った。
 
「まあ冗談ですけど」
 
青葉は頭を抱えた。コスモスにしても、ちー姉にしてもジョークとマジの区別が付かないよぉ!
 
「作業中、立花紀子は番組お休みです。機転の利く桜井真理子も居るから何とかなるでしょう。頭数が足りなくなるので、ピンチヒッターで花咲鈴美を代役で番組に出します」
 
「花咲鈴美って・・・花咲ロンドちゃんの妹か何かだったっけ?」
「意気投合して姉妹の契を結んでいたようですよ」
「ああ。他人ですか」
 
「上島雷太先生の二女です」
「え〜〜〜!?」
「このことは内密に。大物作曲家の娘と分かるとみんな遠慮して使いにくくなるから。あくまで半人前のミュージシャンということで」
「あ、思い出した。ColdFly5のメンバーだ」
「そうです、そうです」
「あの音楽センスはお父さん譲りか」
 
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「お母さんも元歌手の花村かほりさんです」
「ごめんなさい。知りません」
「レコード大賞取った歌手ですが、今はほぼ忘れられていますね」
「へー!」
 
「上島先生の子供は4.5人ですが、全員母親が違うんですよ」
「うーん・・・・・0.5は妊娠中ですか?」
「いえ。母親は上島先生と別れて雨宮先生と付き合い始めた微妙な時期に妊娠したので、母親にもどちらが父親か分からないそうです」
 
「DNA鑑定すれば分かるのでは?」
 
「そういう無粋なことはしないでどちらも父親と思おうと、上島先生と雨宮先生が話し合って決めたそうです。だから本人は上島先生を“お父さん”、雨宮先生を“おたあさん”と呼ぶそうです。養育費は折半して送金しているみたいです」
 
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“おたあさん(otaasan)”は“おとうさん(otoosan)”と“おかあさん(okaasan)”の合成語で、一般的には父親が性転換して女性になってしまった家庭の一部で使用される。“女性の父親”という意味である。英語でも daddy, mommy の合成語で maddy というのが同様の家庭の一部で使用されている。
 
「ちなみにヘリポートは本当に建設中ですし(実はもうできて認可発効待ちだけど)、ヘリコフターは既に1機買いましたから」
「あはは」
 
それって“私が”『急ぎの用事があるんです』とか言われて東京日帰りする羽目になったりして?怖いなあ。うちの庭にヘリで乗り付けられたりして!?(*21)
 
(*21) エキュレイユ2はヘリとしては割と大型なので、アクアの家の庭なら問題無く離着陸できるが青葉の家の庭では無理。但し、もっと小型のヘリで氷見ヘリポートまで運ぶ手はあるかも!? Robinson R22 (回転翼直径 7,68m 定員:パイロット+客1名)のような小型ヘリなら、青葉の家の庭にも“物理的には”離着陸可能。
 
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