広告:Back-Street-Girls(5)-ヤングマガジンコミックス-ジャスミン・ギュ-ebook
[携帯Top] [文字サイズ]

■春紅(32)

[*前p 0目次 #次p]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 
前頁 次頁目次

↓ ↑ Bottom Top

3月にアクアでカワサキのバイクのCMを撮った時、実はアクアにはホンダからもバイクCMのオファーが来ていた。しかし両方受けることはできないので、先着優先というのと『少年探偵団』で北里ナナがカワサキに乗っていたという縁もあったので、カワサキの方を受けることにした。そしてホンダの方は、誰か他の人に代えてほしいとホンダ側に要請。そのホンダの人が指名したのが、実は舞音だったのである。
 
最初は舞音にすぐバイクの免許を取らせてという話もあったのだが、それだとかなり時期がずれる可能性がある。彼女は現在既に多忙なので、教習所に通う時間が取れない。そこで、バイクの講習に通っていて、後は卒業試験を受けるだけになっていた羽鳥セシルに250ccのCMはさせて、舞音はスクーターに乗せようという話が3月中旬まとまった。
 
↓ ↑ Bottom Top

それにしても舞音が16歳にならないと免許を取れないので、舞音には4月12日の誕生日が来たらすぐ免許を取ってもらうことにし、1週間前から、新マネージャーの悠木恵美から交通法規を学ばせた。そして4月12日に鮫洲の運転免許試験場に行って一発で原付試験に合格。真新しいグリーンの運転免許証を手にした。
 
そして悠木恵美には実技指導もさせることにし、毎日夜間にあけぼのテレビの広い駐車場でスクーターの乗り方の練習をさせた。舞音は仕事がかなり忙しくなってきていたのだが、高校生で仕事は10時までに終わるので、当面それをできるだけ9時までに終わらせるように調整して、その後1時間くらい練習してもらったのである。
 

↓ ↑ Bottom Top

舞音のデビューシングル(ということになったもの)は、1月頭に1時間でCF撮影し(私服で出た!)、1時間で音源制作してブルボンのクッキーのCMになった『ちょっとだけ甘い時間』(松本葉子作詞・松本花子作曲・愛野礼奈編曲)という曲である(1曲入りシングル)。愛野礼奈というのは編曲用コンピュータの名前で要するにフルオートで作成された曲である。音源制作の時プロデューサーのような人もおらず、付き添ってくれた原田友恵マネージャーが
 
「ああ、ちゃんと歌えるようになったね。これでよしとしよう」
 
と言った所で完成だった。つまり歌唱指導なども全くされていない。伴奏もMIDIの再生そのままだった。
 
ブルボンのこのクッキーのCMはこれまで多数の“アイドル未満”の10代女子がCMをしており、テレビ放映版では出演者名も表示されていない(メーカーサイトには表示されている)。このCM出演の出演料は芸能人として最低ランクのわずか30万円(舞音の取り分は6万円)である(+CD印税)。
 
↓ ↑ Bottom Top

(§§ミュージックでは、B契約はギャラ配分は8:2(業界での一般的比率)だが、12万円の最低保証がある。A契約は6:4(業界最高水準)だが、最低保証は無いので、仕事が無いとゼロになる)
 
普通ならこの程度の曲をいちいちCDとしてはプレスしない(実際過去にこれに出演して歌を歌った子たちはそんなもの出してない)が、§§ミュージックはTKRの専用レーベルMarine Recordを持っていて自由にそのレーベルでCDを出せるので、Marine Recordから1月下旬、CMの放映開始に合わせてCDがリリースされた。この手のものは大して売れないが、仙台・津幡・鳥栖にある§§ファン/TKRサウンズの店頭に置けば買っていく人も出る可能性があるので100枚だけプレスした(プレスする場合の最低枚数)。またアマゾンにも一応登録して3枚だけ納入しておいた。
 
↓ ↑ Bottom Top

舞音があけぼのテレビで日舞の名取公演をした2/14以前の売上枚数はわずか14枚(店頭在庫分を除く)だった。
 
「10枚越えたのは売れた方」
などと原田友恵マネージャーは言っていた。
「ちなみにこれの印税は?」
「えっとね」
と言って原田は電卓を叩く。
「63円だね」
 
(500円×0.9×0.01×14 = 63円)
 
「あはは。夢の印税生活には遠いなあ」
 
「まあ印税で左うちわの生活ができるように頑張ろう」
「はい」
「3月締めで4月末受取りだから5月のお給料と一緒に振り込むよ。まあ3月末までにはもう少し売れるかも知れない」
 

↓ ↑ Bottom Top

などと言っていたのだが、3月3日発売の「とことこ・なめなめ・招き猫」が凄まじいセールスとなると、この曲も売れて、レコード会社では慌てて大増産することになる。むろん§§ファンだけでなく、一般のCDショップにも大量に置くことになる。
 
そしてブルボン側から、あのCMの舞音版 ver.2 を制作したいという話が来るのである。今回は広告出演料が500万円で契約もA契約に切り替わったのでもらえる率も高くなり、舞音の取り分は200万となって前回の33倍である。
 
メーカーとしては舞音が話題になったことでこのお菓子の売り上げも上がったので500万くらい払ってもいいのである。500万というのはデビューしたばかりの新人にしては高めだが「折角売上を押し上げてくれたこの子を他のメーカーには取られたくない」という思惑からこの価格が設定されたものと思われる。
 
↓ ↑ Bottom Top

またテレビの広告もいったん他の子でのCMが流れていたのを、舞音版に戻して放送しており、再放送料として100万円(舞音の取り分は40万円)も頂いた。
 
前回は私服で撮影1時間・音源制作1時間だったが、今回は衣装も花ちゃんが自ら数点選んでくれて、撮影は伊豆で行なうということだった。SCCの運転手さんの車に3時間揺られて伊豆半島の白浜まで行き、海岸の美しい白浜をバックに様々な服に着替えながら4時間ほど掛けて撮影した。共演者はモデル会社に登録している下田市内の女子高生4人を起用した。しかし短い夏向きのスカートが多くノースリーブもあって寒かった!。舞音は普通の服だけだが、共演者の女子高生たちは水着にもなっていたので風邪引いたりしないかと心配になった。
 
↓ ↑ Bottom Top

この撮影をしたのが4月17日(土)だが、先行して楽曲の制作も進めた。
 
CM曲『風のいざない』は松本葉子作詞・松本花子作曲だが、編曲が本山隆信とイリヤ工房のアレンジャーさんの名前がクレジットされており、音源制作でも本山さんが直接指導してくださった。練習に4/14の放課後3時間ほど掛け、録音は翌日行われた。合計5時間ほど掛けての制作だった。本山さんは
 
「君は上手いから短時間で完成域に到達するし、つぎはぎ編集とかせずに歌唱をまるごと使って音源化できるから、こちらは凄く楽だよ」
と言っていた。
 
この曲がバイクのCM曲『マイルドな夜明け』とカップリングして発売されることになる。『マイルドな夜明け』は翌週、月火の2日間かけて制作された。
 
↓ ↑ Bottom Top

この間、悠木恵美は毎日舞音を学校まで迎えに行き、車で仕事場に連れて行き、音源制作や撮影に付き合い、仕事が終わったら寮まで連れ帰っている。
 
恵美はこれって結構重労働だぞと思った。
 
村上麗子は恵美に午前中は寝ておくように言い、またきつかったらいつでも自分が交替するから、絶対に無理せず特に過労運転は絶対しないよう言った。辛かったら§§ミュージック・コールセンターのドライバーを遠慮なく呼びなさいと言う。恵美も過労運転などした場合、重大な事故を起こしかねないし、舞音に怪我でもさせたら数億円規模の損害が出ることを理解するので、そういう時は必ずドライバーを呼びますと誓った。
 
また花ちゃんのアドバイスに従い、ガールズの子の誰かを一緒に連れて行き、撮影中・出演中は、その子に代わりに付いててもらうようにもした。恵美はひょっとしたら、2〜3年後に自分と同じ道を歩むことになるかもと思う“あまり売れてない子”を指名して連れて行ったが、彼女たちは付き添いでもらえるお手当が美味しいようだった。舞音自身が特に何人かの子を指名することもあり、相性がいいのかな?と恵美は思った。
 
↓ ↑ Bottom Top


4月23日(金).
 
この日は§§ミュージックの報酬振込日であった。舞音は最近仕事の量が等比級数的に増えてきているので、もう報酬の額とか考える余裕もなくなってきつつあった。取り敢えず、学校があるので朝8時過ぎに甲斐波津子(緒方飛蝶)・山本コリン(魚中広菜)と一緒に学校に出かける。この日はゴールデンウィーク前で仕事が立て込んでいるので、申し訳ないが午前中だけで早退してくれということだった。それで4時間目の授業が終わるとお弁当(女子寮で配給されている)を持ったまま迎えに来てくれた悠木恵美(西岡空世)のAudi A3 ETRON Whiteに乗り、放送局に向かった。車内でお弁当を食べる。
 
この車は先日まで今井葉月の専用車だったが、葉月が“アクアのアクア”Leoをもらったので、こちらは常滑舞音用に転用された:事務所の期待が大きいことが分かる。
 
↓ ↑ Bottom Top

放送局で午前中に行われたリハーサルに代理出演してくれていた木下宏紀から引き継ぎを受ける。こういう学校の時間とぶつかるリハーサルにはだいたい高校を既に卒業している、木下宏紀・三田雪代・佐藤ゆかなどが使用されている。彼女たちは実は舞音と身長も近い。体格が近いことはリハーサル役の必須条件である。なお、南田容子は昨日“お花見”番組のレポートから戻った所なので、4/28までは特別休暇をもらっている(休んでいても給料が出る)。
 
木下宏紀は番組の流れを簡単に説明した上で、司会者やディレクターさんからの指示についても伝達する。ちなみに木下宏紀は桜の柄の可愛いドレスを着ている。舞音の本番衣装と同じ物である。リハーサルではカメラの調光などの確認もあるので、基本的に本番と同じ衣装を使用する。
 
↓ ↑ Bottom Top

だいたい説明を受けた所で舞音は言った。
 
「でも、宏紀ちゃん、その衣装つけてると可愛い」
 
(“ちゃん”は芸能界では一般社会の“さん”に相当する普通の敬称である。ガールズたちは先輩・後輩の別なく“ちゃん”で呼び合う)
 
「舞音ちゃんが着るともっと可愛くなるよ。やはりこういう衣装は女の子が着けないとね」
「・・・宏紀ちゃんも女の子ですよね?」
と舞音は不思議そうな顔をして尋ねる。
 
「ボクは男の子だけど。だから男子寮に住んでるし」
 
「え?でも性別変更は終わってるんでしょ?女子制服着てる卒業式の写真見ましたよ。女子寮の7階に1つだけ空いている部屋は宏紀ちゃんの部屋だから、5月から女子寮に移動してくると聞きましたけど」
 
↓ ↑ Bottom Top

(女子制服を着た宏紀の卒業式の写真は女子寮の全員が見ている。宏紀が性別変更が完了していて、女子寮に移動予定という情報の発信源は姫路スピカ。でもスピカの情報源は篠原倉光!)
 
「ボクは身体にはメスを入れてないし、女子寮に移動する予定も無いよ」
 
「え〜?そうなんですか」
 
「7階の空き部屋は、舞音ちゃんのためにリザーブされてるものだと思うけど」
 

↓ ↑ Bottom Top

そんなことを言っていた時、別の番組に出演する白鳥リズム(秋田利美)が通りかかる。どうも彼女もゴールデンウィーク前で忙しいからと学校を早退したようである。
 
「おーい、舞美、過労で倒れてないか」
と言って首から抱きつく(濃厚接触)。
 
「利美(りみ)ちゃんこそ、大丈夫?たくさんレギュラー持ってるのに」
「既に出演番組数自体では舞美の方が多くなっている。レギュラーの数もあっという間にボクを超えるさ」
とリズムは言う。
 
「そうそう、今月は報酬いくらだった?先月よりかなり増えたでしょ」
と利美が訊く。
 
「あ、まだ見てないや」
「今月は1000万超えたんじゃない?」
と宏紀。
 
「まさか。幾らなんでもそんな凄い所まではいかないでしょ」
「いや、あれだけ仕事したら2000万は行ってると思う」
とリズム。
 
↓ ↑ Bottom Top

「まっさかぁ」
「舞音ちゃんの争奪戦が激しくなってるから、ギャラ相場が急騰してる。多分もうラピスより高くなってると思う」
「え〜〜?」
 
「舞美ちゃん、振込額確認してみたら」
と宏紀が言うので、スマホで銀行のアプリを開いてみる。
 
「わぁ凄い」
と舞音が言う。
 
「3000万くらい行ってた?」
 
「そこまではないけど残高が490万もある」
と舞音は言いながら、もう少しあってもいい気がするけどなあと思った。
 
(先月の報酬280万は花ちゃんの助言で、生活費に20万だけキープして別口座2つに140万,120万と分けて移動していたので、残高≒振込額のはず。なお、分割するのは税金支払いに備えるため)
 
「それはあり得ない。そんな少ない訳が無い」
と宏紀が言う。
 
↓ ↑ Bottom Top

「ちょっと見せて」
とリズムが言うので、舞音は彼女に自分のスマホの画面を見せた。
 
「舞美ちゃん、数字を読み違ってる」
「え?」
 
「これ4900万じゃん」
とリズムが言うと、
 
「うっそー!!?」
と言って、舞音は絶句した。
 
 
↓ ↑ Bottom Top

前頁 次頁目次

[*前p 0目次 #次p]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 
春紅(32)

広告:SQM-【水着】-3点セット水着-レディース-ワンピース-xl-yy001