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■春紅(25)

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(C) Eriko Kawaguchi 2021-07-02
 
桃香と季里子の結婚式が1日早くなったのはこういう事情だった。
 
桃香と季里子は、1月にパートナーシップ宣言をしていたのだが、季里子の母が「夏樹さんと結婚した時も結婚式をあげなかったから、今度こそ結婚式が見たい」というので、桃香が休みを取れるように、受験シーズンの終わるのを待って、この日に式を挙げることにしたのである。
 
桃香は玉依姫神社のオーナー代行(?)の千里3番に電話して
「季里子との結婚式を挙げたいんだけど、そちらで女同士の結婚式とかできる?」
と尋ねると
「全然問題無い。こちらの桃香が3月28日に結婚式挙げると言ってるから、日付を合わせよう」
と言って同じ日に挙げることにした。
 
(一時期1番が能力を失い、2番は海外に行っていたので、ここの管理は3番の担当となった)
 
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ところがいったん3.28と決めてから、千里3が暦を再確認すると、この日の“適時”が17:22-17:58(千葉市での月出〜日入)の36分間しかないので、「げっ」と思った。
 
2番に確認すると、2番が完璧に暦を読み間違っていたことが判明した。間違って2001年の暦を見ていたらしい(2001/3/28なら月出7:40月入21:27)。貴司や千里たちの結婚式はもう3月28日という日程で動き始めていたので今更変更できず、その36分間でやってしまうことにした。
 
しかし36分しかないと、朋子たちを千葉の結婚式にも出席させることは不可能である。それで、千葉の桃香と季里子の結婚式は、1日前の3月27日に設定させてもらうことにしたのである。
 
3.27の場合はボイドには掛かっておらず、月出は16:11、日入は17:57(千葉市の場合)となっていて、適時は1:46あるので、余裕であった。それで朋子は27日にこちらに来たら、千葉に連れて行き、千葉の桃香の結婚式に出席させ、翌日は越谷で埼玉の桃香の結婚式に出席させるということにしたのである。
 
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桃香が2人いるなというのは朋子は認識していたので、問題なかったが、典子は混乱しているようだった。
 
朋子は洋彦から「千里ちゃんとの関係はどうなったんだっけ?」と尋ねられたが、「あちらはあくまで良いお友達ですよ。千里ちゃんは明日男の人と結婚しますし」と言うと、「まあお友達であり続けるならいいね」と納得していたようである。
 
でも典子はやはり混乱していた!
 
朋子は
「ひとつだけ間違い無いことは、桃香も千里ちゃんも重婚はしてないってことね」
と笑顔で典子に言ったが、典子はさっぱり分からないようだった。
 
なお、27日の夜は、季里子と桃香は千葉市内のホテル(ダブルルーム)に泊まり、翌日から新婚旅行に行く、つまり浦和の桃香の結婚式の時、千葉の桃香は新婚旅行中である。
 
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27日は、朋子と典子はふだん桃香たちが寝ている部屋に泊めさせてもらった(*17). 早月たちはいつもの自分たちの部屋で寝た。
 
(*17) 鏡が置かれた仏間は散らかりすぎていて人を泊められないが、最近は散らかっているのをいいことに、おキツネさんたちは早月・由美・伊鈴と一緒に隠れん坊をして遊んでいる。最近おキツネさんたちにお稲荷さんをあげるのは毎週末にここに来る早月の仕事になっている。
 

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さて浦和組の方だが、千里・桃香・貴司の3人(4人?)は3月29日の朝から新婚旅行に出かけた。
 
貴司のランドクルーザー・プラド、千里のアテンザに分乗して、どこにも泊まらず、お店などにも一切寄らず、車中泊で、ひたすら走り回るだけ、という旅行を約2週間(4/11まで)設定している。食料も2週間分積み込んでいる。貴司はリーグの試合とぶつかっているが、貴司は今シーズンまでは選手ではないので、特にお休みをもらった。
 
新婚旅行中は、千里は休憩の度にアテンザとプラドを行き来することにしていた。千里がアテンザに乗る時は千里が運転するが、千里がプラドに乗っている間はアテンザを桃香が運転することになる(桃香はMTの運転自体は問題無い)。桃香にアテンザを運転させるのは不安ではあったが、この際“廃車覚悟で”任せることにした。
 
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「桃香の葬式をするはめにだけはしないでよね」
「分かった。慎重に運転する」
 
実際には1回駐車に失敗してバンパーを壁にぶつけたのと、狭い道から出るのを失敗して、左前方を車止めにぶつけてひっこませただけで済み(修理代が5万円掛かった)、桃香の葬式はせずに済んだし、アテンザも廃車にならなかった。また他人に怪我させたり、他の車に被害を与えることも無かった(そっちが重要)。
 
なお新婚旅行中の4.3 20:00 (JST=4.4 3:00), 4.6 20:00 (JST=4.7 3:00)にフランスでは試合があったが、いづれも深夜だったので、貴司が寝ている間にフランスに移動して試合に出て来た(フランスのアパルトマンでシャワーを浴びてから日本に戻る:フランスでは多くの体育館でシャワールームが使用禁止になっていた)。
 
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結婚式に参列した人たちで、典子は29日の午後、郷愁飛行場から能登空港へHonda-Jet で帰した。北海道組はお昼すぎにG450で旭川空港に送り届けた。
 
なお新婚旅行中、子供たちの内、早月と由美は季里子の家で預かってもらうことにした。これは東京に不慣れな朋子が子供4人見るのは無理だから、こちらに2人連れて来てと呼子が言ったのに甘えたものである。しかし呼子1人で4人見るのも大変なので、桃香がベビーシッターさんを頼んだ。
 
実際には子供たちは、ずっとおキツネさんたちと遊んでいたので、ヘビーシッターさんも小さな子供は何か見えるのかもと思いながら、仏間で楽しそうに遊ぶ子供たちを眺めていた。
 

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季里子たちの方だが、桃香と季里子も1週間の車中泊新婚旅行に行った。車は季里子のアクセラを使用した。
 
ふたりの桃香は電話で連絡を取り合い、双方の新婚旅行コースがぶつからないよう計画したし、新婚旅行中もお互いのコースを確認していたようである。(1度だけニアミスがあり、ヒヤッとしたらしい)ちなみにアクセラは季里子がずっと運転する。桃香に任せたら、行き先が天国になっちゃう、と季里子は言っていた。
 

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3月25日(木)は、§§ミュージックの報酬支払日(通称給料日)だった。舞音は1月に受け取った報酬はローズ+リリーさんのニューイヤーライブの出演料が大きくて30万円もあったが、2月はそういう特別な物は無かったので、最低保証の12万円だった(*18).
 
12万円とはいっても寮に居れば食事代と光熱費は無料だし、生理用品は自分の好きなのを無料でもらえるし(*19)、ランジェリーのクーポンを給料とは別に毎月1万円分(*20)もらえるし、むろん仕事で着る服は貸与されるから、むしろ使い道がないくらいである。
 
(*18) 名取り公演の費用はケイが全て出してあげているし、公演で着た振袖もケイが貸してあげたので舞音の負担はゼロであった。
 
(*19) 男子寮には(3月時点では)この制度がないが、ナプキンやパンティライナーの自販機があり、よく売れているらしい!?これはセレンがゆりこに「ナプキンとかが自販機で買えたらいいなあ」と言ったら設置してくれた。セレン本人に生理があるのかについては、本人はノーコメントである。
 
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(*20) ランジェリークーポンはガールズは5000円でA契約の子が1万円。靴下やTシャツなどの購入にも使える。楽屋で他の事務所のタレントさんに見られても恥ずかしくない下着を着けてなさいという趣旨である。
 

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舞音は1月に30万もらった時は実家に「お年玉」と称して3万円送金したが、2月は「今月は実入り少ないから、お小遣い無しにさせてね」と母にはメールしておいた。母からは「仕送りとか要らないから、ちゃんと貯金しておきなさい」とお返事があった。
 
しかし3月はかなりの仕事をした。CDも売れた。一応CDの印税等は3ヶ月単位なので、3月締めで事務所が4月末(一部は7月末)に受け取り、(4月受取分は)5月分の報酬に加算されるという話ではあった。しかしテレビ出演なども多かったので、結構もらえるんじゃないかなあと期待していた。
 
それでわくわくしながら、朝礼の後、8:30を過ぎたのでスマホで残高を確認した。
 
28万円?
 
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(先月のお給料はほぼ使い切っているので、残高≒振込額のはず)
 
え〜?あんなにお仕事したのに、こんなもん?と舞音は少しがっかりした。でもお仕事って結構厳しいものなのかもね。そんなにガバガバと稼げたら苦労しないよね、と舞音は思い直し、また頑張ろうと思った(さすが前向きな牡羊座)。
 

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その日はお仕事は無かったので、学校が終わると§§ミュージック・コールセンター(以下SCC)の女性ドライバーさんに、同じ学校に通っている甲斐波津子・山本コリンと一緒に女子寮に搬送してもらった。夕方5時からフルートのレッスンに出て、夕食の後は、楽典の授業とギターのレッスンに出るつもりだ。
 
甲斐波津子とはフルートのレッスン仲間だし、山本コリンとは大の仲良しなので、お互いに遠慮が要らない。車の中で、お給料の話も出る。
 
「舞美ちゃん、今月はお給料すごかったでしょう?ケーキか何かでもおごってよ」
とコリンが言う。
 
「ケーキはおごってもいいけど、そんな凄いってほどではないよ。やはりお仕事って厳しいよなと思った。それに私、まだ駆け出しだから、ギャラの相場も安いんじゃないかなあ」
 
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「そういうもん?」
とコリンが訊くが、波津子は
「いや、いくら単価が安くても今月の舞美ちゃんはかなり凄かったはず」
と言う。
 
「だってお給料28万だったよ」
と舞音が言うと
 
「それは絶対あり得ない」
とコリンも波津子も言う。
 
「だって、ほら」
と言って、舞音はスマホの銀行専用アプリを開き、隣の席の波津子に見せた。
 
(この3人では、身体の大きなコリンがいつも助手席に座っている)
 
波津子は舞音が見せた画面を見て言った。
 
「舞美ちゃん、桁を読み間違えてる。これ280万じゃん」
 
「うっそー!?」
 

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3月29日(月):千里の結婚式の翌日、地方信濃町ガールズの本部昇格希望者の昇格審査試験が熊谷の郷愁村にある、§§ミュージック分室で行われた。千里3は審査員として行ってきた(Wリーグはオフ期間に入っているし、日本代表の合宿にもかかっていない)。
 
今年は3名を昇格させることになったが、正直3人ともビデオガールコンテストで優勝争いするレベルだと思った。昨年春から、各地域に研修所を作りそこで毎月1回レッスンをするようになったので、地方ガールズのレベルが上がっているのだろうと千里は想像する。
 
今回落とした子たち(この子たちも多くが本選で10位以内に入れるレベル)には結構厳しいことを言ったが、昨年かなりきついことを言った子で、今年再挑戦して合格した子がいたので、その子はたくさん褒めた(本人は泣いていた)。それで今回落とされた子たちも、自分たちが来年再挑戦するには何をしたらいいのかが分かったようだった。
 
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千里はコスモスに提案して、今回の落選者たちには、§§ミュージックで費用を持ってあげて、よりレベルの高いレッスンを受けさせることにした。事実上本部メンバーに準じる教育を課すのである。この話を聞いて、落選者たちは一様に張り切っていた。
 

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千里は一度帰宅してからコスモスに電話して言った(その場で言わなかったのは、同席していた悠木恵美に聞かせたくなかったから)。
 
「コスモスちゃん、第2女子寮を建設しよう」
「やはり2棟目が必要になるか」
 
現在の女子寮は来年の春にも満杯になることが確実である。
 
「それとさ、男子寮をちょっと改造していい?」
「改造?」
「4階が今5階と同じ、2DK×3 なのを、2-3階と同じ、1K×5に変えちゃう」
「なるほどー」
 
「あるいは住んでる住人を全員女の子に改造してもいいけど。そしたら女子寮に移動できるし」
と千里が言うと
「うーん。みんな泣いて喜びそうだけど(篠原君はショックで泣きそうだけど)、今10人女子が増えると女子寮があふれるから、男子寮4階の改造で」
 
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「了解〜」
 
そういう訳で、女子寮のキャパの問題で、男子寮生は今年は改造されるのを免れることとなった!?
 

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