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■春紅(2)

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「まあ実を言うと、ヌード写真は全部ボクだけど、水着の半分は、アクアだったりする」
「うっそー!?」
 
「ボクとアクアは完全に体型が同じだからね。それでお互い代役ができる。裸にならない限りはね」
 
「人前で裸になるのは、ヌード写真撮る時とお風呂入る時くらいだろうね」
「後はセックスする時かな」
「・・・・・」
「どうしたの?」
 
理史は話を変える。
 
「アクアちゃんって睾丸無いよね?でないと君と同じ体型になる訳無い」
「あるけど機能してないみたいだよ。時々あるんだよ。睾丸機能不全とか言って」
「あ、そういうことか」
「もっとも小学生の頃の病気治療の副作用もあるみたいだよ。だから元々体型が女性的なんだよ。人間の身体は基本が女型で、男の身体は男性ホルモンの作用でそれを壊して作られるからね」
 
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「そういう話は聞いたことある」
 
(これは龍虎Mの睾丸消失事件の後だが、龍虎Fは自分の本来の睾丸は《こうちゃんさん》が保存していることを認識している:Mは気付いていない)
 

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「ボクと松田君の友情に免じてこれ1部コピーしてあげたいくらいだけど、絶対誰にも見せてはいけないって言われてるから、今夜は見るだけね」
 
「あ、うん。いづれヌード写真集とか出すの?」
 
「それコスモス社長に言われたんだけどさー」
「うん」
「いったんヌード写真集出しちゃったら、その後はもう水着写真集とか買ってもらえなくなるって」
 
「確かにそうだ」
「だからヌード写真集はボク自身が撮って残したかったから撮ってもらったけど、これは絶対にどこにも出さない」
 
「もったいなーい。こんなきれいなのに」
「まあアクアのヌード見たのは、男性では室田さんと松田君がただ2人かな。女の子になら、§§ミュージックの昔から居る女子タレントのほとんどに見られてるけどね」
 
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理史は混乱した。
 
「アクアちゃんも女の子なんだっけ?」
「アクアは小学校の修学旅行でも女湯に入っているよ」
と言って、龍虎Fは楽しそうに笑った。
 
(中学の時は仕事が忙しくて行けなかった)
 
「何かまた分からなくなってきた。君はマクラちゃんだよね?」
「確かめてみる?」
「確かめるって・・・」
 
「誰かさ、ボクにもうアメリカに戻るなとか言ってくれる人がいたら、ボクずっと日本にいてもいいなあとか思ってたんだけどね」
と龍虎Fが言うと、理史は常夜灯だけの暗い部屋の中でじっと龍虎を見ていた。
 

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その日、葉月の母・天月湖斐(あまぎ・こい/芸名:柳原恋子)は葉月が通うS学園からの電話を受けた。
 
「3月1日に聖子さんも卒業となるのですが、卒業証書の名義は、学籍簿通りの“聖なる子供”の聖子にしますか?それとも戸籍名の“西の湖(みずうみ)”の西湖にしますか?」
 
「ああ、本人の戸籍名も“聖(きよ)い子”の方に変更予定で現在家庭裁判所に申請している最中ですので、学籍簿通りの“聖い子”の方でお願いします」
 
「ああ、改名なさるんですね」
「ええ。あの子、私にも言わないで勝手に性転換手術しちゃったみたいで」
(と母は思い込んでいる)
 
「ああ、やはりそうでしたか。どう見ても男の子の体型には見えませんでしたから」
 
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「性別の変更は2022年4月まで(*3)できませんけど、名前だけでも変えようよと言って、先日申請書を裁判所に出したんですよ。申請が通ってから、学校には連絡しようと思っていました」
 
と言いながら、あの子、私が渡した書類、ちゃんと投函したよね?と若干不安に思っている。かなり言ったので、本人も渋々(なぜためらうのか母には分からない)承知したと思ったが、投函自体は本人に委ねた。
 
「なるほど、そうでしたか。では“聖なる子供”で」
「はい、よろしくお願いします」
 
(*3)西湖は2002年8月20日生まれなので20歳になるのは2022年8月20日である。ところが2022年4月1日から成人年齢が18歳に引き下げられるので、4月1日以降は名前や性別の変更が可能になる。
 
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2020年12月28日(月)朝。
 
緒方美鶴(芸名:甲斐絵代子)は§§ミュージック女子寮の、姉と一緒の部屋で激痛とともに目が覚めた。何?どうしたの?この痛みは?
 
お股の付近が、まるで大怪我したように痛いのである。しかし大怪我した割には、血などは出ていないようである。一体どうしたんだろうと思いながら、朝御飯も食べずにベッドの中で寝ていた。
 
姉の飛蝶(芸名:甲斐波津子)が心配していたが
「今日は学校休んで寝てる」
というと、姉は寝冷えでもしたかと思ったようで、
「じゃそちらの担任には言っておくね」
と言って学校に出かけた。
 

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姉が出かけた後、トイレに行きたい気分になったので、かなり辛いのだが、何とか起き出す。そして這うようにしてトイレまで行き、何とか便器に腰掛けて、おしっこをすると何か感覚が違う!
 
何この感覚!?
 
絵代子はずっとタックしているので、おしっこは皮膚を接着した内側に隠した陰茎の長い尿道を通って後方(結果的にはほぼ女子の尿道口に近い位置)から排出される。だから、とても回りくどい出方をする。ところが今日は身体からまっすぐ落ちていく感覚なのである。
 
何で?
 
と思ってよくよく自分の股間を見た美鶴は
 
「なんで私のお股、女の子みたいな形になってるの?」
と衝撃を受けた。
 

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おしっこをした後、そのままにしておくのはまずい気がしたので、普段通りトイレットペーパーで拭いてから、アルコール・ウェットティッシュ(感染予防のため持っている)でその付近を拭いた。アルコールで染みるけど、多分放置しておくのは“傷”に悪い気がした。
 
美鶴は何か変な夢でも見ているのではと思ったので、お股は痛いものの、わりと不眠症な姉が持っている睡眠薬を勝手に1錠もらって飲むと再度寝た。
 
睡眠薬が効いたようで、美鶴はお昼まで寝ていた。姉が料理配達係の夏津美さん(海浜ひまわり)に言っておいてくれたようで、お昼御飯も配達してもらったので、それを食べる。そして食事をして少し落ち着いたところで、美鶴は下着を脱いで自分のお股をじっくりと観察した。
 
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30分くらい眺めていて。自分は性転換手術を受けたのではという結論に達す。ひょっとして。川崎ゆりこ副社長あたりが、余計な親切?で私に性転換手術ほ受けさせちゃったとか?というのも考えてみたものの、手術するならすると事前に言ってくれそうな気がする。
 
しかし痛みの原因が分かったので、朝のような訳の分からない精神状態からは少し落ち着いた気分だった。
 
でもこの痛み・・・たぶんかなり長期間続くよね?私せっかく売り出してもらえそうな雰囲気なのに、こんな痛み抱えていては、活動できないよぉ、などと考える余裕も出てきた。
 

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取り敢えず1週間くらい寝ていたら少しはマシになるのではなかろうかと思い、その日も夕方まで寝ていたら、やがて姉が帰宅する。美鶴がまだかなり気分が悪いようであること、どうもお股の付近を痛がっているようだというのを見て
 
「ちょっと見せなさい」
という。それで美鶴は下着を脱いで姉にその付近を見せた。
 
「あんたいつの間に性転換手術受けたのよ?」
 
「分かんない。朝起きたらこうなってた」
と美鶴は正直に言った。
 

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この日は偶数日で、カウンセラーの上野さんが女子寮に詰めていた。
 
飛蝶はこの問題は女子寮専任看護師の山口さんに相談するより、上野さんに相談した方がいいような気がした。
 
「上野さん、大変申し訳ないのですが、こちらの部屋にちょっと来て頂く訳にはいきませんか?」
 
「いいよ」
 
それで上野さんは来てくれた。そして美鶴が朝起きたら“こうなっていた”というのを説明する。
 
「ちなみにうちの事務所って、男の娘を勝手に性転換手術したりはしませんよね?」
「§§ミュージックでは、そんなことしないと思うよ。ゆりこ副社長は盛んに「女の子になっちゃいなよ」とか唆すけど、本人の意志を無視して勝手に手術することはない。この事務所ではね」
 
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「この事務所では、というと」
「まあ人権無視の事務所はこの業界多いから」
「ああ、恐い」
 
「これってお医者さんに見せるべきでしょうか。そのあたり、山口さんとかに見せたら、即刻病院に連行されそうな気がしたから、上野さんに相談したんですよ」
と飛蝶は言う。
 

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「性転換手術後の痛みは医者に見せてもせいぜい、痛み止めを処方してくれるだけ。これは医者の分野じゃないね」
 
「医者でなかったら・・・」
 
「千里さんを呼ぼう」
「千里って、醍醐春海先生ですか」
「そそ」
 
それで上野さんが醍醐春海に連絡すると、ほんの30分くらいで来てくれた。
 
「ああ。これは辛いでしょ?」
「凄く辛いです」
「ヒーラーを呼ぶ」
 
と言って、醍醐春海はまた誰かを呼び出していた。その人はちょうど時間が取れたようで、30分ほどで来てくれた。
 
「こちらは日本一のヒーラー、中村晃湖さん」
と醍醐春海が紹介する。
 
「日本一は千里ちゃんの妹でしょ?」
「向こうは中村さんが日本一だと言ってましたよ」
 
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その“日本一”のヒーラーさんが美鶴のお股の所に手を当て、何か念じていたら美鶴の痛みは嘘のように軽減されていく。
 
「凄く楽になってきた」
「あなたは突然性転換されちゃったから、その新しい身体をあなた自身が受け入れきれずにいる。だから激しい痛みがある。美鶴ちゃん、あなたはもう自分は女の子なんだというのを心から確信しよう。それだけで痛みはかなり小さくなるから」
 
「分かりました!頑張って自分にそう言い聞かせます」
「よしよし」
 
中村さんは2時間くらいずっと美鶴のお股に手を当て、念じているようだった。しかしその2時間で美鶴の痛みはかなり引いた。
 
「一週間後にまた来るから」
「ありがとうございます」
 
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それで中村さんは帰っていった。
 

「あ、代金訊くの忘れた」
と飛蝶が言ったが、千里は
「ヒーリングの代金は私が払っておくから気にしないで」
と言った。
 
「もしかして物凄く高いんですか?」
「気にすることないよ」
「済みません!」
 
「そうだ。醍醐先生」
「うん?」
「年明けのローズ+リリーのニューイヤーライブに、もしかしたら美鶴に来てもらうかもと言われていたんですが、辞退した方がいいですよね」
 
「さすがに無理だね。美鶴ちゃんは学校が始まるまではひたすら寝ていた方がいいよ。ケイには私から言っておくから」
 
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
 
「カウントダウンにも出られないよね?」
「あ、それも副社長に言わなきゃと思ってました」
「それも、ゆりこに言っておくから」
「済みません。ありがとうございます」
 
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千里は上野と一緒に緒方姉妹の部屋を出てから
「こんな所に犠牲者がいたとは」
と呟いた。
 
「千里さん、もしかして“犯人”の見当がついています?」
「まあね」
「まさか事務所関係者じゃないですよね」
「まさか。この事務所とは無関係の人だよ。ちょっとした玉突き事故みたいなものかな」
「は!?」
 

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