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■春紅(4)

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聖子は授業を上の空(うわのそら)で聞きながら、自分は本来男の子で、女の子になる気とか無かった筈という思いと、女の子の身体っていいよなあ。男の身体より燃費がいい気もするという思いとの間で揺れていた。
 
3年間女子高生をしてきたので、今更「男です」とはもう言えない気がする。そんなことしたら、クラスメイトたちから殺されそう。でも和紗と結婚する約束しちゃったし。女の子と結婚するなら、ボク男の子に戻らないといけないのかなあ。でもずっと女子高生生活してたから、男に戻る自信が無い。昔は女の子の服を着るのが恥ずかしかったけど、今は男の服を着るのに抵抗を感じる。
 
3年間の女子高生生活、それにアクアさんの代役で、女の子アイドルに準じた活動してて、着替えなんかも女の子たちと一緒にするのに慣れちゃって、むしろ男子更衣室なんて恐くて入れない気がする。温泉とかもずっと女湯に入ってるし。ボクは女の子の裸や下着姿には何にも感じない。精神的にはほぼ自分は女になってしまっている気がする。
 
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男だとしても、ちんちんは別に無くてもいいよなという気がする。そもそもMの状態でも全く使ってないし。生理の処理は慣れたらそう面倒でもないし。トイレはもうずっと座ってしているから、その場合。ちんちんが無いほうがかえって楽だ。最近Mの状態でも胸が少し膨らんできつつあるし、ボクFを選択してもMを選択しても結局女の子の体型になるのでは?つまりFかMかは、生理があるかどうか=妊娠能力があるかどうか、だけの違いだ。だったらFを選択して妊娠可能な、完全な女の子になったほうが生きやすいのかも知れない気もしてくる。
 
でもボク赤ちゃん、産むんだっけ?? アクア(F)さんは、ボクの体型ってFでもMでも骨盤が広い安産型だと言ってたけど。
 
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西湖はコスモス社長があまりにも忙しそうにしているので、花ちゃんを捉まえて訊いてみた。
 
「ボク、高校卒業したら吉田和紗(桜木ワルツ)と結婚する約束してるんですけど」
「うん、聞いてる。盛大な披露宴やる?あけぼのテレビで中継してもいいし。放送スケジュール取ってあげるよ。放送料は5000万円くらいかかるけど、聖子なら、そのくらいポケットマネーで出せるよね?」
 
「費用は出せますけど、そういうのは勘弁して欲しいんです。ネオン君は盛大な披露宴やるみたいですけど、ボクは彼らのようなタレントとは違って、基本的にはアクアさんのスタッフだから。結婚式も2人だけで挙げればいいかなあと思ってるんですよ。コロナの情勢下では、双方の親戚にも遠慮してもらって」
 
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「まあいいんじゃないの?」
「でもやはり指輪はあげたいなと思って」
「エンゲージリングあげてないんだっけ?」
「あげてません」
「だったら、和紗ちゃんにエンゲージリングあげて、あと双方にマリッジリングだね。金を使う人とプラチナ使う人がいるけど、聖子ちゃんどちらが好き?」
 
「プラチナがいいかなあ」
「OKOK。だったら後はエンゲージリングだね。聖子の年収なら、最低1カラット以上、200万円以上の指輪を用意したいね」
 
「400万くらいの予算で考えようかなと思ってました」
「まあいいんじゃない?」
「でも指のサイズを聞かないといけないですよね?」
「和紗ちゃんの指サイズは分かるよ」
「そうですか?」
「サプライズであげるのなら協力してあげようか」
「お願いします!」
「じゃ一緒に見に行ってあげようか」
「すみません!」
 
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それで花ちゃんは銀座のティファニーに予約を入れてくれて、聖子に(話がややこしくなるから)男装するように言い、花ちゃんは聖子の姉ということにして、お店に行った。そしてダイヤのエンゲージリングとプラチナのマリッジリングを選んだのである。3つのリング合わせて500万円ほどであった。支払いはその場で振込で払っている(聖子はまだ高校生なのでクレカを持っていない:振込限度額は10億円に設定している)。
 

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2月上旬、レッドインパルスの川崎の練習場に訪問者があった。この日練習に出ていたのは千里3であった。
 
「あら、ごぶさたー」
と千里が明るい声で言うので、相手はホッとした様子である。
 
練習時間の終わり近くだったので「先に上がるね〜」とみんなに声を掛けてから、汗を掻いた服だけ交換して、応接室で訪問者“2名”と会う。
 
「こちら、私の婚約者の日倉孝史です」
「確か、大阪ヨッシーの方でした?」
「ああ、ご存じでしたか」
「Bリーグの主な選手の顔はだいたい頭の中に入っていると思います」
「さすがですね」
「いつ結婚なさるんですか?」
「婚姻届けは今月中に提出するつもりです。この子が2月12日以降なら結婚できるらしいのいで、その後になりますが」
 
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(美映は2020.11.4に貴司と離婚したので100日後の2月12日以降結婚できる)
 
「ああ、待婚期間とか面倒ですよね。誰の子供かなんてDNAで確認できるのに」
「ほんとよね」
と美映は言っているが、緩菜のDNA検査するとヤバいよなと千里は内心考える。
 
「一応結婚式は内輪であげようと思って。披露宴はリモートで」
「先日、妹の結婚式がありましたけど、リモートってかえって煩わしくなくていいですよね」
と千里は言う。
 

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「それで私、千里さんに謝らなければいけないことがあって」
と美映が言うので
「何だろう?」
と千里は尋ねる。
 
「実は11月に大阪に帰った後、どこに泊まるか困っちゃって。初日はネットカフェに泊まったけど、あそこはちょっと感染しないか恐くて」
 
「確かに恐いよね。換気の悪い所も多そうだし」
「それでふと思ったのが、姫路の家に入れないかなと思って」
「ごめん。たぶんIDを無効化してたと思う」
 
「それが無効化されてなかったのよ」
「ありゃ」
 
それは2番の責任だぞ〜と3番は思ったが、2番は日本国内に居ることが多い3番の責任と思っているかも知れない(共同責任は無責任)。
 
「それで住む所が見つかるまでちょっと泊めさせてもらおうと思ってたんだけど」
「事実上そこに住んでるのね?」
「ごめーん」
 
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「それで実はあの家をいっそこちちらで買い取れないかというご相談なんですよ」
と日倉孝史さんが言った。
 
「あそこは地下にバスケ練習場があって、理想的な環境なので」
 
「そうだなあ。私が貴司と・・・あ、あなたも“たかし”さんか。細川貴司が前の奥さんと離婚したら、私が彼と結婚してあそこに住むつもりだったんですけどね。それが美映さんと結婚しちゃったから、その計画が挫折して。細川自身関東に移動しちゃったから。あそこはどうしよう?とは思ってたんですよ」
と千里も言う。
 
「それでさぁ、千里さん、あの家を5000万円で買い取れないかな」
「5000万〜?あの家は土地を含めて建てるのに3億円かかったんだけど」
「でも住人が居たから中古住宅でしょ?もう少し安くならない?」
「そうね。美映さんたちが住んでたから」
と千里は皮肉を込めて言ったが、美映は平然としている。
 
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「土地は村山さんからお借りして賃料を毎月払うことにして、家屋だけでも買い取れないでしょうか?」
と日倉さんが提案する。
 
「そうね。土地が1億で家の建設費が2億だから、まあ中古ということで、1億なら売ってもいいかな」
 
「そこを何とか5000万で」
「それは厳しいよぉ」
 
日倉さんが美映に言う。
「やはりさ、こないだ言ったように僕が銀行から5000万円借りて、美映の持ってる5000万円と合わせて買い取ろうか」
 
千里は考えた。日倉さんの年収はたぶん800万円程度だろう。銀行はこの家に抵当権を設定することで貸してくれるかも知れないが、返済にはたぶん20-30年かかる。そんな負担をさせるのは可哀想だ。実際姫路の家はほとんど放置してたし。自分は当面浦和から動くつもりもない。
 
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「じゃ7000万で売っていいよ」
「ありがとう!」
「だったら銀行と交渉しますので、そのローンが通ったらご連絡しますね」
「はい、よろしく。この携帯番号に電話してください」
と言って、千里3は自分のスマホの番号を日倉さんに教えた。
 
「土地の借り賃は毎月おいくらくらい払いましょうか」
「当面はローンが大変だろうし月1万でいいですよ」
「そんなに安くていいんですか?」
「私も儲けるつもりは無いし。借地契約しているという備忘のための金額ですね」
「分かりました。ありがとうございます」
 

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「そうだ。あの姫路の家に黒いインプレッサが放置されてたんだけど、千里さんの車?」
「さあ、どうだったっけ?」
「鍵がささったまま放置されてたから、それもつい勝手に使っちゃって」
「鍵がささったままなら、もう捨ててあったと思っていいかもね」
などと千里が言うと《こうちゃん》が抗議している。なるほど彼の車か。
 
「だったらさ、廃棄物なら、無主物先占で私のものにしてもいいかなあ」
「まあいいんじゃない(テキトー)」
「だったら、その車を千里さん買い取ってくれない?」
「いくらで?」
「実は、千里さんからもらった5000万円の内100万円くらいは使っちゃって」
「なるほどー」
「だからその不足分をその車で払うとか」
「まあいいよ、この際」
 
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千里としては、美映と日倉さんの仲がうまく行ってくれれば、貴司にちょっかいを出される心配が無くなり、こちらとしては安心だという気持ちがある。だから多少の便宜を図ってあげていい。
 
「じゃ車はどこで受け取ろうか」
「実はここまで乗って来たんだけど」
 
それで表に出てみると、見慣れた黒いインプが駐まっている。これ確かアクアの送迎に使っていた車たよなと千里は思った。
 

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「でも帰りはどうする?」
「新幹線で帰ろうかなと思ってた」
 
「じゃ送ってあげるよ」
 
と言うと、千里は2人をインプの後部座席に乗せ、自分で運転して熊谷市に向かった。
 
「そういえば緩菜は男の子に戻した?」
と美映は千里に尋ねた。
 
「本人に自分は男の子か女の子かと訊いたら、自分は女の子だと言うしさ、それに服とかも、男物と女物と買ってきて並べると、女物を選ぶのよ。だから女の子として育ててるよ」
 
「それでいいよねー」
と美映も言っている。
 
「男物と女物を並べて選ばせるのは実は私もやってみた」
「あの子はかなり明確な性別意識を持ってるね」
「どうもそうみたい」
 
千里は緩菜の性別問題で美映が異義を唱えた場合は面倒だよなと思っていたのだが、美映も女の子として育てる方針に賛成なようなので、助かったと思った。
 
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やがて郷愁飛行場に到着する。
 
「こんな所に空港があったなんて」
「私が関わっている会社のプライベート飛行場なんだよ」
「へー」
 
千里はフロントで機体の空き状況を確認した。ムーランエアーのグランド・ホステスの制服(若葉が作った)を着た島田さんが対応する。
 
「ああ、G450は使う予定があるのか」
「すみません。千里さんの機体なのに」
「いいよ。いいよ。ホンダジェット、空(あ)く?」
「レッドなら大丈夫です。パイロットもいます」
「じゃそれで伊丹までの往復スケジュール組めない?帰りはもう遅くなるし、明日の朝一番でいい」
 
「確認しますね」
 
それで島田さんは伊丹に電話して予約を入れたようである。
 
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「予約取れました。ではボン・ボワヤージュ(Bon Voyage)」
 
パイロットの制服を着た、鷲尾健太さんが「私が操縦しますね」と言って、千里たちを案内してくれた。
 
「可愛い!」
と美映がホンダジェットの機体を見て声をあげている。
 
それでホンダジェットの客室に2人を座らせ、千里はコーパイ席に乗って、郷愁飛行場から伊丹空港までフライトした。伊丹には《いんちゃん》に頼んで市川ラボに置いていたホンダ・インサイトを回送してもらっておいたので、それに2人を乗せて姫路まで送った。
 
「あれ?スバル・レヴォーグですか?」
「はい、私の車です」
と日倉さん。
 
千里は建物のそばに駐めてあるそのレヴォーグを見て言った。
「カーポートをサービスでつけましょうか?」
「ほんとですか?」
「じゃ今度設置させますね」
「すみません」
 
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千里自身はそのまま市川ラボに行き、そこで泊まった。翌日朝伊丹から帰りのホンダジェットに乗り、熊谷に帰還した。伊丹から市川への回送も再び《いんちゃん》に頼んだ。なお鷲尾さんは大阪のムーラン支店に泊まっている。
 
 
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