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■春紅(6)

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なお、娘たちを千葉に連れて行く時、貴司には「早月のお父さんの家に連れて行く」と言っておいた。早月の父親は実際は千里なのだが、誰も(千里に精子があったなんて)信じてないので、好都合だった。千里1までこの説明を信じていた!!(千里1は自分の睾丸の行方を忘れている)
 
この往復のために、千里3!が専任のドライバーとして、さいたま市内に住む、東野穂佳さんという30代の女性を雇った。桃香の運転する車なんかに子供を乗せるわけにはいかない、としてこのミッションに協力したのである。
 
東野さんには「桃香はいつも女装しているけど実は男で!、前の奥さんである季里子さんの所に娘たちを会わせるため連れて行く」と説明している。実際問題として正確な説明は不可能である。でも桃香が男というのは「確かに結構男っぽいですもんね」と言って信じてしまったようである。
 
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東野さんはタクシー運転手をしていたのが、コロナの影響で会社が倒産し、フリーになっていた。二種免許持ちなので安心である。原則として金曜の晩に千葉に搬送し、日曜の晩に浦和に戻す。往復に使うのは、早月が大いに気に入っている“アクアのアクア”である。早月は
 
「私、アクアちゃんみたいな可愛い女の子になりたいな」
などと言っている!
 
東野さんには、金土は季里子の家から歩いて5分ほどの所にアパートを用意したのでそちらで待機してもらう(季里子の家の近くは2019年の水害で壊滅したため、家の再建を諦めて引っ越した人がかなりあり、空き地も多いが賃貸アパートもわりと建っている。
 
この“ミッション”には結構な費用が掛かっている。
 
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東野さん本人は20代の頃結婚していたが現在は独身である。1人娘の水蘭(みらん:現在は小学生)ちゃんを育てている。タクシー会社が倒産した後は、コンビニのバイトをしていたのだが、感染が怖いので、充分な給料を払うのでといって、そちらは辞めてこちらの専任になってもらった。ついでにワクチンも打っておいた!
 
(保険の問題があるので、フェニックス・トラインの社員にした。保険と年金は高額の国民健康保険・国民年金を払っていたので、助かったと言っていた)
 
仕事は早月と由美の送迎だけなのだが、それだけでは暇すぎるし、こんなにたくさんお給料をもらう訳にはいかないと言うので、千里は彼女に譜面の整理作業をしてもらうことにした。Cubaseをインストールし44鍵のMIDIキーボードも取り付けたパソコンを貸与し、主として手書きの譜面を入力してもらう。
 
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結構音感が良いようだったので、録音から譜面(バンド譜やビアノ譜)に起こす作業もしてもらうことにした。これが割と助かった。試奏用に88鍵のフル・キーボードも貸与した。
 
「指がビアノの手ですね」
「小学生の時までピアノ習っていたので」
「それは心強い」
 
それで音感も良いのだろう。
 

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ところでアクアのアクアを季里子の家に駐めようとすると、実はわりと苦しい。季里子の家は建坪 14坪(4間×3.5間)の 4LDK (子供部屋を仕切った結果7LDKと化している) で、敷地面積は 32坪(8.4m×12.5m) である。
 
ここの庭に普段は季里子の父の車 Mazda6 sedan (4.865m×1.840m) と季里子の車 Mazda Axela Hybrid (4.580m×1.795m) を並べて駐めている。特に駐車枠は引いてないが、こんな感じである。
 

 
ここに“アクアのアクア”も駐める場合は3台並べるのでこうなる。
 

 
3台の車幅の合計は、Mazda6 1.840m + Axela 1.795 + Aqua 1.715 = 5.35mとなり、庭の幅(隣地とのフェンスの厚さを引いて)8.2mから引くと残り2.85m 車同士の間隔は71cm程度になる。
 
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この幅で(速やかに確実に、斜めにせずにまっすぐ!)駐められるのは季里子のみである(東野さんも当然できる)。季里子の父は怪しい(入れられたとしても時間が掛かる)し、母は自信が無いと言う。桃香がやったら絶対“両側に”ぶつける。
 
ただ交通量のある時間帯にこの“入れ直し”をやると、交通の妨害になり迷惑である。
 

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早月たちを千葉に連れて行くのはパートナーシップ宣言した次週の土日(1/23-24)から始めたのだが、その前、年末年始にも、千里が小浜に行くのもあって、千葉に連れて行っている。12/31に緩菜まで入れて娘3人を連れて行ったのだが(*7), 大晦日の交通量の多い時期に車の“入れ直し”をやったのでなかなか大変だった。
 
(*7)京平は年末年始は貴司・彪志と男3人、浦和の家に取り残された(青葉も来たが、ほとんど仕事で出ていた:本当は地下ラウンジに居た/桃香は寝正月だったし、“女”にはカウントできないかも)。
 
桃香は京平に「スカート穿いて女の子パンツ穿くなら連れて行ってもいいよ」と言ったが、京平は断った。彼は昨年春以来彪志と一緒に暮らしていて、かなり男としての自覚が出て来ており、あまりスカートを穿かなくなっている。トイレも物心ついて以来座ってしてたのが最近は立ってする。下着も以前は結構女児用ショーツも穿いていたのが、最近はもっぱら男児用トランクスである。
 
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(でもプリキュアのトランクスが売ってない!とか文句言ってる)
 
この年末年始の時は、千里はむろん現地に行ってないのだが、ドライバーの東野さんから話を聞いて、考えた(東野さんの娘は事前に千葉のアパートに連れていっており、母娘は千葉で正月を迎えた)。
 
「現地見られるかなあ」
「季里子さんが了承すれば」
 
「よし行ってみよう」
 
それで千里は季里子の家に行ってみたのである。
 

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「季里子ちゃん、こんにちはー」
と明るく挨拶するが向こうは敵対的である。
 
「何しに来たのよ?」
「ちょっと庭を見せて」
「はあ?」
 
千里は季里子が見ている前でレーザーメーターで庭の寸法を測ってメモしている。そして頷いている。
 
「一体何なの?」
と季里子がきつい調子で言う。
 
「ここさ、早月たちを車で連れて来た時に、車3台駐めるの大変でしょ?」
「まあね。正月はそれに姉貴まで来たけど、東野さんが芸術的に4台並べて駐めてくれて助かった」
 
「ここに4台駐まったんだ!」
「私には無理。入れるのも出すのも東野さんにお願いした」
 
お姉さんの車の車幅を仮に1.7mとしても、4台駐めた場合、車間は23cmになる。物理的には可能であるが、さすが東野さんである。
 
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庭の寸法を測っていた千里は
 
「ここにごく普通に4台駐められるようにしてあげるよ」
と季里子に言った。
 
「は!?」
「早月が来る度に苦労するのは申し訳無いし、立体式駐車場を作ってあげるよ」
「そんなことしてもらう筋合いは無いけど」
「だって早月も由美も私の子供でもあるからね」
「まあそれは否定しないけど」
 

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「だから季里子ちゃんと桃香の結婚祝いにプレゼントしてあげる」
 
「立体駐車場なんてかなり値段がする気がするけど」
「実は余ってるのが1個あるのよ。サイズ計ってみたら、うまい具合にここに納まるから、ここに持って来ていい?」
 
「まあ余ってるのなら、置いてもいいよ」
「じゃ作業させるね。1日で設置できると思うから」
「分かった」
 

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季里子は「立体式駐車場」と聞いて。よく会社の駐車場などに設置されている機械式2段のものを想像していた。しかし実はそうではなかったのである!
 
その日、季里子が勤務先から戻り“いつものように”アクセラを庭に駐めたら母が
「今日、工事の人が来て、駐車場作っていったんだけど」
と言う。
「え?どこに作ったの?」
と尋ねる。
「使い方説明されたんだけど、私よく分からなくて」
「うーん・・・」
 
千里に電話するのは不愉快なので、母が渡されたという分厚いマニュアルを読む。取り敢えず制御用アプリがあるようなので、AppStoreからダウンロードする!
 
マニュアルに手書きされているid番号の内のひとつを登録する。
 
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いつの間にか庭灯まで作られているので、それは別途玄関の所に設置されているスイッチで点灯させる。
 
「この庭灯は自動にしといた方がいいみたいね」
「あ、そんなこと工事の人も言ってた」
 

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まず自分のアクセラは正しい位置に駐まっていないことを認識するので、いったん出してから、庭にLED灯で表示されている枠内に駐め直した。このLED灯で指示されている駐車枠が2つある。
 
自分のスマホにダウンロードしたアプリで“上昇”スイッチを入れる。
 
自分のアクセラを駐めた部分の地面が上がり始める、
 
「なるほどこうなっていたのか」
 
約2.5mほど上がって停まる。
 
「ピット式だったのか」
 
普通の地上2段式の場合は、上の段に駐めた車を出すには、いったん下の段に駐めた車を出さなければならない。そうしないと下の車は潰れる!しかしピット式なら、下の車は地下に降りていくので、上の段の車だけを出すことができる。つまりその段が地下に降りていた状態だったようである。
 
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LED灯で指定された駐車枠が2つある。ということはそちらも昇降するのだろう。多分マニュアルに書かれていた、もうひとつのidで動くのだろうと判断する。それで4台駐められることになる。千里さんは「4台駐められるようにしてあげる」と言ってたもんね。
 
しかしよくまあ1日でこれだけの穴を掘ったものだ。
 
だけどこれ多分1基150万はするんじゃないかなあと季里子は思った。
車の販売店に勤めているので、このタイプの駐車場を斡旋したことがある。その時、確か150-200万程度だったように思うのである。
 
「2基で300万くらいになると思うけど、ほんとに良かったのかなあ」
などと呟いたのだが、手元のアプリでは「上昇」「下降」2つのボタンが有効になっていることに気付いた。
 
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あまり深く考えずに季里子は「上昇」ボタンを押してみた。
 
車庫が上昇!し始める。
 
「嘘!?まだ上に上がるの!?」
 
車庫は更に2.5mほど上がって停まった。つまり最初の地面は5mほど上がったことになる。家の屋根と同じくらいの高さになっている。
 
「じゃ、もしかして1基に3台駐められる訳〜!?」
と季里子が言うと
 
「工事してた人は下の2つのスペースに駐めるの推奨と言ってた。一番上は雨風に曝されるからって」
 
「それ気にしなかったら6台駐められるんだ?」
「そうなるみたい。あとパーキングブレーキ掛けるの絶対忘れないでって。台風の時も最上段に車を乗せたまま昇降させないようにって」
「5mから車が転落したら怖いね」
と季里子も言った。
 
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普段地下に降りている部分には壁があるが、最上段、つまり地上に出ている部分には壁が無いから、風の影響を受けやすい。確かに台風の時は恐い。
 

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翌日明るくなってから再確認すると、LED灯で指定された駐車スペースは右側(家から見ると左)のは幅3.6m 長さ5.4mほどあり、大きな車を駐められる。もうひとつのは幅3.2m 長さ4.5mで小型乗用車(5ナンバー)用のようである。季里子は、父の車と自分の車は右側に入れて、早月たちが乗ってくる“アクアのアクア”は左側に駐めればいいなと思った。もっとも普段はどちらの車庫も全部下におろしておいて、庭に駐める感覚で良いだろう。
 
車のサイズ
Mazda6 sedan 4.865m×1.840m×1.450m
Mazda Axela_ 4.580m×1.795m×1.455m
Aqua of Aqua 4.060m×1.715m×1.500m
 
(↑そういう訳で“アクアのアクア”は実は3ナンバー車だが、むろん小さい方の車庫に充分入る)
 
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しかし、これどう考えても全体で500万円はかかってる、と思ったものの、もう値段のことは考えないことにした!
 
「夜はLEDで分かりやすいけど、昼間も分かりやすくするのに、ペンキとかで線を引くか、柵でも作った方がいいかも知れないけど、好みにもよるので必要なら呼んでくださいと工事の人は言ってたけど」
と母が言う。
 
「うーん。それは桃香に作業してもらうからいいや」
と季里子は言った。正直これ以上千里さんに負担を掛けるのは不愉快だ(気の毒ではない)。桃香に柵でも作ってもらうかな。
 

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