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■春紅(1)

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(C) Eriko Kawaguchi 2021-06-11
 
その日、今井葉月(天月西湖)は仕事に出かけるのに、橘ハイツ(5階以下は§§ミュージック男子寮)の6階の部屋を出るとエレベータで1階まで降りた。
 
自販機で野菜ジュースを買っていた寮生の弘原如月(芸名:夢島きらら)は、エレベータから葉月が降りてきたので
「おはようございます、葉月(はづき)さん」
と挨拶した。
 
白いワンピース姿の葉月は
「お早う、きららちゃん」
と笑顔で挨拶すると、そのままエントランスを出て、葉月の専用車・白いアウディ(Audi A3 ETRON) で待っていた桜木ワルツに軽く会釈し、車の後部座席に乗った。ワルツが車を発車させ、葉月は仕事場に向かった。
 
弘原如月はそれを何気なく見送ったが、ふとエントランスの傍に封筒が落ちていることに気付いた。
 
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「あれ〜、葉月さんが落としたのかな」
と言って拾い上げる。
 
「これどうしましょう?」
とフロントのツキさんに尋ねる。
 
「切手も貼ってあるね。投函すればいいのかな。じゃ私が出しておくよ」
とツキさんは言った。
 
「じゃよろしくお願いします」
と弘原如月も答えた。
 

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その日、森本メイは上司の砂原アナウンサー室長の所に行くと「退職願い」と書かれた封筒を提出した。
 
「室長、大変申し訳ないのですが、3月一杯で退職させていただけませんでしょうか?」
「どうかしたの?」
「実は体力がもたない気がして」
「そうかぁ」
「入社して1年も経ってないのに申し訳ないのですが」
「でもさ、もし具体的な次の予定とかが決まってないなら、できたら8月くらいまで退職の時期を延ばしてくれないかなあ」
 
「といいますと?」
「実は川上君が既に東京オリンピックの代表に内定していてね」
「すごーい」
「それで練習に集中したいということで、4月頭からオリンピックが終わるまで休職することになったんだよ」
「確かにオリンピックの代表合宿とかやりながらは難しいでしょうね」
 
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「だから君にまで辞められると、手が足りなくなっちゃうから」
「あぁぁぁ」
「君の仕事の負荷はできるだけ減らすようにするからさ、何とか少し待ってくれない?」
 
「分かりました。川上さんが復帰するまで8月まで頑張ります」
「済まないね」
 
そういう訳でメイの退職願は砂原の所で取り敢えず預かることになった。
 
しかしメイは結局、2022年3月まで、あと1年アナウンサーの仕事を続けることになってしまう(辞めさせてくれないブラック企業!?)。
 

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その夜、龍虎Fは疲れすぎて、なかなか眠れなかったので《わっちゃんさん》(和城理紗:ワシリーサ:Василиса)に頼んで八王子の家に転送してもらった。Mも誘ったが「寝てる」と言って寝ていた。
 
愛車のポルシェ(Porsche 996 40th anniversary edition)に乗ってエンジンを掛ける。八王子ICから中央高速に乗る。
 
転送を《わっちゃんさん》に頼んだのは、《こうちゃんさん》に頼んだら「夜中に1人でドライブなんてとんでもない、寝ろ」とか叱られそうだったからである。それに《こうちゃんさん》は自分が1人になってしまったと思い込み、1人になったアクアの負荷を下げようとかなり頑張っているようだ。それだけに夜中のドライブなんて話はできないと思った。
 
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1時間ほど走り、甲府も過ぎて、双葉SAで休んでいたらあくびが出た。
「帰ろうかな」
と思ったが、この状態で運転していて居眠り運転になるとヤバいと思った。双葉SAで車中泊することも考えたが、あいにくこの車は前回9月に運転して以来で、冬用の寝具を積んでいなかった。(車自体はバッテリーがあがらないように《わっちゃんさん》が時々運転してくれていたし、燃料もいつも満タンにしてくれている:また車庫の天井に張った太陽光パネルからも充電している)
 
「お布団と毛布、積んでおかなくちゃ」
と思ったが、今日はしょうがない。
 
(車中泊派には布団派と寝袋派がいるが、アクアはふたりとも布団派である。ちなみにお互いが使用した布団を使うのには全く抵抗はない。FはMが着た下着を着るのも平気だがMが嫌がるので下着には“F”“M”の記号をマジックで書いている:Mも彩佳の“教育”のおかげで女子下着しか着ない。ふたりは好みもほぼ同じなので記号を書いていなかったらどちらの下着か分からなくなる:Mは千里などには『レースとかついた可愛いのはFの好みで自分はシンプルな下着が好き』などと言っているが、本当はMもフェミニンなデザインのものが結構好きである。また偽装工作のため、FとMは同じサイズのブラジャーを着けている)
 
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「どこかで泊まろう」
と思って、韮崎ICで降りた(双葉にもスマートICがあるが、龍虎は気付かなかった)。
 

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それでカーナビでホテルを探して行ってみた。ホテルというより旅館っぽいがまあいいかと思った。名前は《甲斐国グランドホテル》なのに!
 
木造2階建ての建物の前面が駐車場になっているようなので適当に駐める。それで降りたら
「アクアちゃんか!」
という声がする。見たら、松田理史君だ。
 
「おはようございます、松田ちゃん」
「おはようございます、アクアちゃん」
 
「凄い車だね。君の?」
「そそ。実はお父ちゃんの遺品(*1)なんだよ」
「へー。そういえば御両親は小さい頃亡くなったって以前言ってたね」
「うん。それでボクは田代の両親に育てられたんだ」
 
松田理史の車は Honda CR-Z であった。彼も深夜のドライブをしていて少し眠くなったので泊まろうと思ってここに来たらしい。
 
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「ここ何とかグランドホテルという名前なのに」
「旅館にしか見えないね」
と言ってお互い笑う。
 
「でも松田ちゃんの車も格好いいじゃん」
「さすがにポルシェの前では、かすんじゃうよ」
 
などと言いながら、2人は旅館の方へ歩いて行く。
 
(*1)正確には父・高岡猛獅が乗っていた車の同型車である。父の車は両親が死亡した事故で全損になっている。この車は同型車を持っていた音速通信の重富音康社長の好意で譲っていただいたもの。
 

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旅館の中に入ってみるが、帳場の所は常夜灯が点いているだけで人が居ない。
 
「もう営業終了しちゃったのかなあ」
「呼んでみよう」
と言って理史は
「すみませーん」
と呼んでみた。
 
中から60歳くらいのお婆さんが出てくる。灯りを点ける。
 
「はいはい」
「夜分遅く申し訳無いのですが、部屋は空いてるでしょうか?」
「ご予約は?」
「してなかったんですが。ドライブしてたら眠くなってきたから、やばいと思って泊まろうと思って」
 
「ああ、大丈夫ですよ。お食事はどうなさいます?」
「今夜はもういいです。朝御飯お願いできますか?」
「はい。じゃ予約入れておきますね。6時から大丈夫ですから」
「分かりました」
「宿帳書いてくださいね」
 
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それで理史は「松田佐斗志(*2)」、龍虎は「長野龍虎」と署名した。
 
(*2)松田理史の本名は松田佐斗志である。しかし彼が出世作となった「ねらわれた学園」に出演する際、主演のアクアが「ときめき病院物語」で上原佐斗志という役名を演じていたので、それとの混乱を避けるため、漢字を変えて、松田理史の名前を使用した(それ以前に子役などとして出ていた頃は本名を使っていた)。このドラマの演技でかなり注目されたので、以降は松田理史の芸名を使用している。
 
松田佐斗志 総31◎円満順風 天13◎和合繁栄 地18○難関突破 人12△天地波乱 外19△不達挫折
 
松田理史 総29◎無限挑戦 天13◎和合繁栄 地16◎仁心覆幸 人16◎仁心覆幸 外13◎和合繁栄
 
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ということで、明らかに「松田理史」の方が良い名前である。特にタレントとして外格が悪いのはよくない。
 

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「ご案内しますね」
と言って、女将さん(?)は2人を2階の端の部屋に案内した。
 
「こちらでどうぞ」
と言われてから、理史が
「あっ」
と声をあげる。
 
2人は連れと思われてしまったようだ。
 
「あのすみません」
「何か?」
それで理史は自分たちは別々であることを言おうとしたのだが、龍虎は彼の袖を引っ張る。
 
「いいことにしようよ。夜中に大変だよ」
「そうかな。じゃいいことにするか」
と理史も言った。(ここで理史は目の前にいるのがアクアだと思い込んでいるので、男同士ならいいかと思った)
 
「お風呂は天然掛け流し温泉で24時間使えますから、先にお風呂どうぞ。バスタオルとタオルはこちらをどうぞ」
と言って渡された。
 
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「分かりました」
 

それで2人とも荷物を置き、貴重品は部屋の金庫に入れてから、お風呂に行く。
 
男女に分かれている所で、理史は当然男湯方向に行くが、龍虎は女湯方向に行こうとするので、理史がびっくりした。
 
「君、もしかしてマクラちゃん?」
「そうだけど」
「アメリカに帰ったんじゃなかったの〜?」
 
「それがさあ、いったん帰国したんだけど、向こうで二週間の自己隔離してる間にアクアから『とりかへばや物語の撮影が遅れてて、放送に間に合わない恐れが出てきたから戻ってきて欲しい』と言われてさあ、だから隔離明けにそのまま日本へトンボ返り。日本では向こうで2週間隔離生活してたという証明書のお陰で、PCR検査だけして、隔離無しで、そのまま撮影現場に入れたけどね」
 
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「向こうで結婚するとか言ってなかった?」
「キャンセル」
 
「キャンセルなの?延期じゃなくて」
「結局彼と会えないまま日本に戻って来ちゃったからさ、そのことで彼と大喧嘩してしまって」
「それは気の毒に」
 
「もう売り言葉に買い言葉になって決裂。婚約も解消。当面ボクはアメリカには行かない」
 
「・・・・」
 
「お風呂入ってから話さない?」
「うん」
 

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それで2人はそこで別れて、理史は男湯、龍虎は女湯に入ったのである。
 
龍虎がお風呂から戻ってから、少しして理史も戻って来たが、何か緊張してるようである。
 
「男女で同じ部屋に泊まるってまずいよ。やはりフロントに連絡してもう1部屋無いか聞いてみるよ」
 
「大丈夫だよ。何もしなければいいんだし」
「何もしないよ!」
 
「じゃ問題無いね、遅いし、寝よか」
「そうだね」
 
それで理史は2つの布団がなぜかくっつけてあったのを1メートル!くらい離してから、入口側の布団に潜り込み
「じゃお休み」
と言って目を瞑った。龍虎はホントに緊張している感じの理史の様子に微笑みながら、自分も窓側の布団に潜り込んで電気を消し
「お休み」
と言った。
 
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「でも松田君、女の子との経験が無いみたいね」
と布団の中から龍虎は言う。
「うん。キスもしたことない」
「松田君、もてそうなのに」
 
「小学生の頃から、子役で色々なお芝居に出てたし、学校終わったら、仕事に行くかレッスンに行くかだったから、他の子との関わりというのがあまり無かったし」
 
「ファンの子から言い寄られたりしたことは」
「誘惑されたことはあるけど、そんなの絶対トラブルになるから、応じたことは無い。事務所からもそのあたりはしばしば言われてたし」
「病気も恐いしね」
「そうそう。個人的にはそれも恐かった」
 
「でもマクラちゃんって、いつ頃からアクアの代役してたの?」
「2017年の春かな。だからプーケットで撮った写真は、半分はボクだよ」
「なるほどー」
「写真集については、ボクの写真の比率がだんだん高くなってきて、今年春にカナダで撮った写真はほとんどボクだし」
「あ、そうだろうね」
「だから写真集に関するギャラは全部ボクがもらってるよ」
「それはそうすべきだと思う」
と言ってから理史は尋ねた。
「カナダで実はヌードも撮影したという噂は?」
 
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「見せてあげようか」
「え?」
 

龍虎は荷物の中からノートパソコンを取り出すと、パスワードの掛かったフォルダを開いて、理史に見せた。
 
「・・・・・」
「18歳でないと撮れない写真を撮ってもらった。もっともボクって発達が遅いから、15-16歳のヌードに見えるでしょ?写真家さんはこれチャイルド・ヌードにならないよな?って悩んだらしい」
 
「凄くきれいと思っちゃった」
「この写真はアクアには撮れない」
「それは無理だろね!」
 
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