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■春紅(31)

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松元徳世は4月4日(日)に両親・姉2人と一緒に引越の荷物を持って出て来た。それでその日、両親と姉たちは近くのホテルに泊まったようである。
 
そして翌5日(月)に、母親(父親だったかも?)が本人を連れて入学予定の中学に出向いた。手続き的には、向こうの教育委員会に連絡して地元の中学への就学を取り消してもらい、あらためて卒業した小学校に中学進学のための書類を作ってもらったらしい。中学に行く時、彼女は薄ピンクのブラウスに紺の膝丈スカート、水色の薄手のニットという格好で、ローファーを履いていた。髪は胸の付近まである長い髪をツインテールにして、各々髪ゴムで結んでいる。そして筆記具だけ、ピンクの学生鞄に入れて持って行った。
 
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この格好を見て彼女の性別を“勘違いする”人は存在しないだろう。
 
話し合いは彼女の出身地、家族構成などを確認しただけで、特に何事もなかったらしい。言われていたサイズの写真を提出したので、それで生徒手帳も作ってもらえるということだったらしい。
 
また体操服・スクール水着、音楽の授業で使うアルトリコーダー、美術の授業で使う水彩絵具などを学校の購買部で購入してきたと言っていた。家庭科で使う裁縫セットは小学校の時に使っていたものでよいらしい。また学生カバンに校章を押してもらわないといけないので、学校に行った帰り、そのお店に寄って押してもらってきたらしい。
 
「スクール水着って男物?女物?」
と門脇純江は念のため尋ねた。
 
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「私、男物の水着なんて着られませんよぉ」
「あ、そうだよね」
 
確かにこの子、結構胸があるように見える。本物かフェイクかは分からないけど。
 
しかし、松元徳世は女子として中学に通うつもりのようである。性別については彼女の場合“疑われようもない”ので、きっと学校の先生たちも、彼女がまさか男子とは思いもよらなかったのではと思った。
 
「そういえば小学校から渡されていた書類で性別が間違ってたから、その場で修正してもらいましたよ」
「ああ、たまにそういうことはあるんだろうね」
 
まあ彼女を見たら、書類が間違っていると思うだろうね!
 
でも結局女子として通学するのなら、最初から女子寮に入っても良かったのでは!??
 
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彼女の両親とお姉さんたちはその日の夕方、郷愁飛行場から鹿児島空港にHonda-Jet で移動した。松元徳世も見送ったが、お姉さんたちが「この飛行機かわいい!」とはしゃいでいた。
 
彼女は4月7日夕方、制服を頼んでいた業者さんで真新しいセーラー服を受け取り、翌日の入学式にそれで普通に参加した。
 
そういう訳で彼女は男子寮から女子制服で通学する寮生の第1号となった。(2ヶ月後には、もう1人増える)
 

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川崎ゆりこは、男子寮で「部屋移動」をさせることにした。
 
松元徳世が入寮する以前の部屋割はこのようになっていた(6階の聖子と明日香は別)
 
201 菱田ユカリ(中2)
202 須舞恵夢(中2)
203
204 末次一葉(中3)
205 上田信貴(高1)・上田雅水(中2)
 
301 弘原如月(高2)
302
303 篠原倉光(高2)
304
305 木下宏紀(19)
 
501 西宮ネオン
 
川崎ゆりこは実に計画的な移動を仕掛けた。最初に4月2日(4階の工事が終わった翌々日)に男子寮に来ると“新しい寮生のために部屋を空けたい”と言ってこの日は、まず3階の住人を全員そのまま4階の同じ番号の部屋に移動させた。作業は便利屋さんを手配して手際よく行っている。
 
401 弘原如月(高2)
402
403 篠原倉光(高2)
404
405 木下宏紀(19)
 
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そして3階の部屋のクリーニングもさせる。当然、翌日4月3日は1階の住人を2階に移動させるものと、多くの子が思った。ところが4月3日のゆりこの指示は意外なものだった。宏紀は「やられた〜!」と叫んだ。
 
このような移動をさせたのである。(★=移動者)
 
201 菱田ユカリ(中2)
202 須舞恵夢(中2)
203
204
205
 
301 (後述)
302
303 篠原倉光(高2)★
304 末次一葉(中3)★
305
 
401 弘原如月(高2)
402 (松元徳世)
403
404 上田信貴(高1)・上田雅水(中2)★
405 木下宏紀(19)
 
なんと篠原君は1日だけ4階に移動して翌日には元の部屋に逆戻りである。まだ開けてなかった段ボールをそのまま3階の元の部屋に運び戻された。彼は「非道い!」と叫んでいた。結局部屋移動しなかったのに、段ボールに詰められてしまった本とか衣服・食器を元の場所に戻さなければならない(木下君と弘原君が手伝ってあげた)。
 
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「異義があります」
と木下宏紀は言った。
 
「何だね?」
とゆりこが尋ねる。
 
「男の子を2-3階にして、女の子・男の娘を4階にしたんだと思いますけど、ボクは男の子です」
 
「君は睾丸もペニスも存在しないから女の子の一種。女子寮に移動でもいいよ。君のために7階に1つ部屋を空けているから」
 
「ボク、睾丸も、ちんちんもありますけど」
「却下」
 
ということで木下宏紀本人は不服だったようだが、彼はまんまと川崎ゆりこに欺されて“女子フロア”として設定された4階に移動されてしまったのである。篠原君はこの作戦の巻き添え・犠牲者である。
 
そして松元徳世は当然4階に入れられることになり、402に入居した。
 
徳世の両親やお姉さんたちは、スカート姿の木下宏紀や、セーラー服姿の上田雅水が挨拶するのを見て、
 
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「なるほど2-3階が男子で4階が女子なんですね」
と何だか納得していたようである!
 
(やはり、そもそも女子寮に入れても問題無かった気がする)
 

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如月に関しては、なぜ彼は4階になったのだろう?と疑問を持つ子が多かった(これを知っていたのは、寮生では木下宏紀と上田信希だけ)。
 
彼は普通に男の子に見えるし、スカート姿なんてめったに見ないし、男声使いである。寮生で男声を使うのは、弘原君・篠原君とネオンだけだ。
 
ゆりこはその件は詮索しないようにとみんなに言ったが、それで彼は実はFTMなのでは?という説まで飛び交っていた!
 
なお、上田信貴はどっちみち移動するならと言って、翌日、段ボールに詰められた自分の荷物をユキちゃんにワゴン車で運んでもらい、女子寮に移動した!女子寮には“信貴”ではなく“信希”の名前で入寮し、ホームページの記載も“上田信貴・男”から“上田信希・女”に変更してもらった。
 
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彼女は自分の荷物を全部移動したのではなく“わざと”一部残していった。特にフェミニンな服とか、少し大きなサイズの可愛いデザインのブラ(新品)を置いていった。弟(妹?)の雅水がそれを着てみたくなるようにである!
 

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この移動があった翌日、如月は、これまでめったに見せていなかったスカート姿でキュアルームに姿を見せ、居合わせたセーラー服姿の須舞恵夢(山鹿クロム)と菱田ユカリ(三陸セレン)から
 
「可愛い!」
と歓声をあげられていた。
 
「ボク、あまり人前で女の子の格好したことがなくて」
などと如月は言っている。
 
「寮内はみんな男の娘ばかりだから、恥ずかしがらなくていいですよ」
 
「だよねぇ。ゆりこ副社長から、睾丸取っちゃった以上、もう女の子になるしかないんだから、勇気出してカムアウトしなさいって言われたからこれで出て来た」
 
やはり睾丸取ってたから4階に入れられたのか、と恵夢もユカリも納得する。
 
「きっとこの寮にいる人は3年以内には全員女の子になっちゃう気がする」
などとユキさんが言っている。
 
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「ここは第2女子寮と化したりして(既に4階は女子寮化したし)」
「取り敢えず寮内だけでも、スカート穿いて出歩きましょうよ」
 
「そうだなあ。じゃ時々でもスカート穿いて部屋の外にも出ようかな」
「みんなでスカート穿けば恐くないです」
「でもボク、女の子の声がうまく出せないし」
 
「ボイストレーナーさんとかに通うといいよ。ゆりこ副社長に言えば紹介してくれるよ」
とユキさんが言った。
 
「ちょっと聞いてみようかな」
と彼も言っていた。
 

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さて、帯広市内の私立高校に入学予定の柴田数紀は、4月3日に「制服が仕上がりました」というハガキをもらい、母から2万円預かって、イオンまで取りに行った。
 
「はい、柴田数紀さんですね。こちらですよ」
 
と言われて渡され、代金を18000円払った。あれ〜制服代は15000円と言ってなかったっけ?と思ったが、消費税かなと思った。
 
(15000円に消費税をプラスしても16500円にしかならない。小学生でもできる計算)
 
「着てみます?」
「うーん。いいかな」
「じゃもし合わなかったら言ってくださいね。無料でお直ししますから」
「分かりました」
 
それで自宅に戻り、おつりを母に返す。
「18000円だった」
「あら、高かったのね」
と母も言う。
 
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「身体に合わせてみた?」
「着てみますかと言われたけど、別にいいですと言った」
「合わせとかなくちゃ、あんた女子体型だから、男物の服はウェスト合わせるとヒップが足りなくて、ヒップ合わせるウェストが緩すぎるし」
 
「そうだった」
 
それで袋から制服を出してみた。
 
数紀も母も無言になる。
 
たっぷり3分くらい経ってから、母が言った。
 
「あんたスカートで通学する?」
 
数紀は困ったような顔で
「どうしよう?」
と言った。
 
悩むのか!?
 

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§§ミュージックで部屋の移動が一段落し、4月4日までに新入団員の3人も入居してきて、落ち着いたかなと思った、4月5日(月).
 
「自分みたいなのが6階だなんて落ち着かない」
などと言っていた、悠木恵美がコスモスの所に来て言った。
 
「社長、お願いがあります」
 
この時コスモスは、その部屋位置の問題か、あるいは寮を出たいとか、或いはひょっとして信濃町ミューズを辞めたいとかの話かと思った。実は彼女は今年初め頃から、あまり遠くない内にミューズを卒業したいと言っていたのである。その時はバンドか何かでもしたいのかなとコスモスは思っていた。彼女はギターとキーボードはそこそこ弾く。
 
彼女は2017年のロックギャル・コンテスト9位で信濃町ガールズに入団した。この年の優勝者は石川ポルカで、上位入賞者には中村昭恵・三田雪代といった、その後、女優志向が強くなった子が出ている。この年は川崎ゆりこの言う“不作”な年で、確かに飛び抜けて歌の上手い子が出なかった。悠木恵美もそこそこ歌は上手いが、歌手をさせるには力不足で、デビュー機会の無いまま3年半が経過している(歌も楽器も“そこそこ”なのがこの子の問題)。
 
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現在、悠木恵美は信濃町ミューズ最年長の20歳(ちなみに最古参は木下宏紀)で、今更アイドルとかもできないので、もし音楽の世界で生きていくなら、本格的なポップシンガーかロックミュージシャンなどを目指すしかない。むろんその道はアイドルより厳しい。
 
そんなことを瞬間的にコスモスは考えたのだが、悠木恵美の“お願い”というのは意外なことだった。
 

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「常滑舞音ちゃんにはマネージャーが必要ですよね。それを私にやらせてもらえないでしょうか」
 
「へー!」
 
甲斐絵代子は元々夏頃にデビューさせるつもりでマネージャーの人選を進めていたのだが、常滑舞音は唐突に売れてしまったので、そのあたりのバックアップ体制も何もできていなかった。現在は取り敢えずリセエンヌ・ドオや大崎志乃舞を担当していた村上麗子が、そちらをほぼ放置して、常滑舞音に関する処理をしている。
 
「舞音ちゃんって凄い努力家だなあと、彼女が入団してきた時から思ってたんです。彼女は未完の大器なんですよ。多分これまであまりしっかりした音楽的教育を受けてなかったんじゃないのかなあ。だから入団後どんどん力をつけてきた。彼女オーディションの時『今12番でも12ヶ月後には1番になります』と言ったらしいですけど、年末くらいの段階で既にロマン、ルビーに次ぐ3番手くらい。1月か2月にはルビーも追い越してしまったと思ってたんです」
 
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「うん。舞音の成長は凄い」
 
「だから彼女の曲が大ヒットした時、彼女なら当然かもと私思ったんですよ」
「そういう意見は実は数人から聞いた」
とコスモスは楽しそうに言う。
 
それを言ったのは、実は七尾ロマンと恋珠ルビー、それに町田朱美である。3人とも自分たちの強烈なライバルを冷静に評価していた。
 
「私、自分自身は全然売れてないけど、3年半この世界でお仕事してきたから、その経験から彼女を色々手助けしてあげられないかなと思ったんです。営業の仕事自体は未経験なので、力不足と思いますけど、頑張りますから、やらせてもらえませんか」
 
コスモスは感心した。
 
悠木恵美は、自分のタレントとしての道が明るくないからというので消極的にマネージャーに転向しようとしているのではない。自分の“売り”をちゃんと主張しているし、かなり意欲を持っている。
 
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「分かった。じゃ営業面はまだ確かに経験不足だから、現在舞音ちゃんの面倒を見ている村上麗子と当面は二人三脚でお仕事してもらおうか」
 
「ありがとうございます!」
 
「ただ、うちの給料ってあまり高くないから、マネージャーになると毎月の収入はたぶん今までの4分の1くらいになっちゃうよ」
 
「構いません。私、贅沢しないし」
「じゃ村上ちゃんと話してもらおう」
と言って、コスモスは村上麗子のスマホに電話を入れた。
 
「じゃ信濃町ミューズは卒業ということで」
「はい、それで」
と答えてから悠木恵美は言った。
 
「寮は出ることになりますよね?」
 
まさかこの子、そちらが主目的じゃないよねとコスモスは心の中で苦笑する。
 
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「コロナが落ち着くまではそのまま入ってなよ」
「そうですか。ではそうします」
と、そちらは不満っぽい!
 
彼女の部屋を6階に決めたのは川崎ゆりこだが、正直、このベテランのガールズをあまり下の階には置けなかったのである。5階のメンツにも、彼女の代りに6階にあげられそうな子が居なかった。
 

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