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■春紅(9)

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(C) Eriko Kawaguchi 2021-06-18
 
青葉たちは2月10日には、元ロングノーズの堂崎隼人・前川優作・松崎連鹿の3人をまとめて取材した。これは堂崎さんからセット取材にして欲しいという要請があったので、こうなったものである。堂崎さんの御自宅に前川さん・松崎さんが来ていて、そこに取材に行っている。
 
ロングノーズというのは1992-2002年に活動していたバンドで、そのマネージャーをしていたのが、現在∴∴ミュージック(KARIONの事務所)社長をしている畠山裕光である。実は元々∴∴ミュージックはロングノーズの解散後、ボーカルの前川優作がソロ歌手としてデビューするのに、畠山が彼のために設立した個人事務所だった。この時、前川は全く資金を持っていなかったので、会社の設立資金は全額畠山が出している。前川は、どうも目の前にあるお金は全部使ってしまう性格のようである(現在は使いすぎたり、勝手に借金したりしないよう、カード類も印鑑も全て奥さんが管理している)。また前川は遅刻魔で、彼が結婚するまで、畠山は、かなり苦労させられている。
 
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堂崎さんはスリファーズおよびそのお姉さん格ピューリーズのメインライター・プロデューサーとして知られる。それ以外にも多数のポップス歌手・ユニットに楽曲を提供している。また堂崎さんは現在、★★レコードの社外取締役でもある。
 
松崎はアマチュア作曲家に物凄く多数の“信者”のいるカリスマ作曲家であるが、「5m以内に近寄ると妊娠する」という伝説のある男でもある。養育費も10人くらいの女性に毎月合計1000万円くらい払っているのではといわれている。音楽による収入のほとんどが養育費で消えるので、いつも貧乏だという噂がある。(青葉はどこかで似たような話を聞いたなと思った:桃香のこと!)
 
松崎を慕っていて、しばしばウィスキーを酌み交わしながら夜通し音楽論議をしているのに、妊娠しないのが、ステラジオのホシである。それで世間では
 
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「やはりホシは実は男の娘たから妊娠しないのでは」
と随分噂されている。
 
もっとも実態はふたりの音楽的価値観が近いので夢中になって話している内に夜が明けてしまうというだけである。「セックスより楽しい」などとホシが発言したことがある。だから、ふたりの間には性的な関係も恋愛感情も無い。しかしここ数年のステラジオの“商業性を無視”した作品の数々は松崎の影響と言われている。ホシは三つ葉にもかなり楽曲を提供しているが、そういう作品は多分相棒のナミか、同じ事務所の北野裕子あたりが調整しているのではとも言われている。
 

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今回の取材では、テーブルをはさんで向こう側に3人が座り、(間には透明アクリル板で仕切り)こちらは松崎さんの前に妊娠しにくそうなテレビ局の男性!カメラマン、前川さんの前に青葉とケイが座り、ラピスの2人はいちばん安全そうな堂崎さんの前に座らせた。
 
ラピスたちには、堂崎さんが書きスリファーズが歌ってヒットした曲と、松崎さんが書き三つ葉が歌った曲を歌わせたが
 
「ぜひどちらも君たちのアルバムにでも」
と言われた。また「懐メロ」用の楽曲がたまっていく。
 

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ロングノーズというと、車が好きな人は Long Nose というスペルを連想する。これは巨大なエンジンを積んだスポーツカーの象徴である(長いフロント部分を鼻にたとえたもの)。おそらくパンド名もリーダーで車好きの松崎がそこから付けたものと思われる。
 
松崎連鹿の初期の愛車はアメ車のDodge Viper ... の中古車、正確には大古車!だった(信じがたいことに5万円で買ったらしい)。走行中に壊れないか?と怖がり誰も乗りたがらなかった。あまりにも危なそうなのでレコード会社から使用を禁止され、キャデラックのエルドラドに乗り換えた(ヴァイパーは自宅ガレージに飾られている)。このド派手なクーペ Cadillac Eldorado は、“キャー!”と“歓声”をあげて“乗りたがる女の子”と“キャー!”と“悲鳴”をあげて“見ただけで逃げる女の子”が両極端である。
 
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ホシはよく松崎の運転するエルドラドの助手席に乗っており、しばしば写真がネットに投稿されている:松崎もホシも気軽に写真撮影に応じ、カメラに向かって手を振っている。
 
松崎はアメ車好きでアメリカン・ロックが大好きなのに英語に弱い!それで、初期の頃の彼らのサインには Rong Nose, Rong Nows, Long Knows など実に様々なスペルが見られ、ついには開き直って Wrong Knows (間違って知っている)を正式スペルということにしてしまった。
 

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3日目は元モンシングVersion 2 の堂本正登さんであった。モンシングはワンティス活動停止(2003年末)後、★★レコードを支えたバンドである。その活動は2007年8月にリーダーでメインボーカルで全ての楽曲を書いていた弥無が突然脱退するまでと、その後、堂本正登が加入してVersion 2 として活動再開した後に分けられる。
 
弥無が脱退した当時は、★★レコードのトップアーティストはラララグーンに移ってはいたものの、まだモンシングの売上は★★レコードの総売上の2割程度を占めていた。堂本さんを見つけて来たのは、加藤課長(当時)なのだが、彼を選んだいちばんの理由は、顔つきと声質が似ていたからであった!
 
(バンドのボーカルが抜けた後、こういう理由で後任者を選ぶことは時々あるようである。ヴァニラ・ニンジャもその例)
 
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実際、モンシング Version1, Version2 の演奏をランダムに聞かせて、ちゃんとどれがどちらと正確に答えられる人は、よほど熱心なファンに限られる。
 
モンシングは Version 2 の方がファン層も広がり、セールスも数倍に大きくなったが、弥無の居た頃を懐かしむ古くからのファンもあった。堂本さんはそういう古くからのファンを意識して、いつも弥無を尊敬していると発言し、彼の音楽にはとても手が届かないとも発言し、何度か雑誌で彼との対談などもセットしてもらったりして、融和に努めた。
 
弥無がひとりで突っ走るリーダーで、他のメンバーとの間に意識の乖離(+収入格差に対する不満)ができていったのに対して、温和な性格の堂本さんは楽曲もメンバー全員でまとめていく方式を採り、バンドも一体感が出た。また編曲印税を全員でシェアすることで収入に対する不満も無くなった。弥無時代を懐かしんでいたファンも次第に堂本さんの音楽を受け入れてくれるようになっていった。
 
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今回のインタビューでも、堂本さんの穏やかな性格が出て、ラピスの2人も本当にリラックスしてインタビューしていた。特にふだん発言の少ない東雲はるこがよく発言し、堂本さんもジョークを交えて丁寧に答えてくれていた。
 

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「弥無さんっても今はどうしておられるんですか?」
と堂本さんの家を出てから、町田朱美がケイに尋ねた。
 
「行方不明」
「そうなんですか!?」
 
「失踪したのが、もう10年以上前だよ。生きてないかもね。青葉どう思う?」
とケイが訊くが
 
「ご本人と会ったことがないので、何とも見当が付きません」
と青葉は表情を崩さずに答える。
 
「ああ、本人の波動みたいなのが残るものがないと無理だよね」
「まあそうですね」
と今日の青葉は素っ気ない。
 
「かなり無茶苦茶な生活してて、多数の人から訴訟も起こされていた。彼の脱退で億単位の損害が生じたレコード会社と事務所は、残留メンバーからの嘆願で損害賠償請求は起こさずに過去の楽曲の著作権をレコード会社に譲渡するだけで和解したけど、音楽活動以外でも結婚詐欺とか代金未納とかで大量に訴訟を起こされた。だから、ヤクザに消されたのではとか、警察が薬あるいは恐喝や詐欺事件とかで内偵していたのではとか、色々噂は飛び交ったものの、分からず。警察もノーコメント。既に失踪宣告されていると思う」
 
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とケイは言う。
 
「いや、今日のお話聞いてても何か闇のようなものを感じました」
と東雲はるこが言っている。
 
「うん。私も何か感じたけど、あまり関わらない方がいいと思った。岬ちゃんも、その件は深く考えない方が良い」
と青葉は、東雲はるこに本名で注意した。
 
「はい、考えません!」
 
彼女もこの手の問題については、考えること自体が危険であることは理解しているようである。
 

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青葉は水連からも呼ばれていたので、堂本さんのインタビューが終わった2/11夕方には水連に行き、強化部長さんと少しお話しした。そしてこの日はもう遅くなったので、そのまま浦和に泊まった。
 
「これ3日早いけどバレンタインね」
と言って、 彪志にピエール・マルコリーニのチョコと、おまけ(?)でバーバリーのジャケットをあげた。
 
「ありがとう。なんかこのジャケット高そうな気がする」
「気にしない気にしない。もうひとつプレゼントがあるんだけど」
「何かな?」
「あ・た・し」
と言って青葉は彪志にキスする。
 
「それがいちばん嬉しい」
と言って彪志は青葉をしっかり抱きしめた。
 

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青葉は、翌日2/12、早朝から彪志に送ってもらい、熊谷の郷愁飛行場からホンダジェットで能登空港に戻った。
 
しかし§§ミュージックが所有または借りている機体の中ではホンダジェットの稼働率がいちばん高いようである。ケイは
 
「ホンダジェットもう1機買おうかなあ」
などとも言っていた。
 
「どうせなら、あと5機買って、虹の七色で揃えるとか?」
「ホンダジェットのカラーって何色あるんだっけ?(*9)」
 
青葉はジョークで言ったのだが、ケイはマジで考えているような気もした。
 
(*9) 最初 red, silver, blue, green, yellow の5色だったが、2018年に発売されか"Elite"仕様で、Ice Blue, Ruby Red, Monarch Orange の3色が追加された。
 
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今回、ジャパンオープンに参加する“津幡組”の移動については、最初は千里姉所有のG450を使うと言われていたのだが、アクアのCM撮影に使うことになったとかで、代わりに Do228 の使用になったらしい。Do228 はプロペラ機なので
「プロペラ機って初めて乗った」
と言っていた人が結構居た。
 
この機体は離着陸距離が短く、800mしか滑走路のない調布飛行場に降りることのできる数少ない機体らしい。ただし航続距離が短く、400kmしか飛べないので、熊谷からなら、能登空港・小松空港・小牧飛行場・仙台空港などまでならよいが、伊丹や山形まで飛ぶのは厳しい(運が良ければ辿り着けるが危険なのでフライトの許可がおりないと思う。特に西向きは風上に向かって飛ぶので厳しい)。なお、ホンダジェットの航続距離は Red (Elite) が 2661km, Blue (original) が 2265km である。(札幌−那覇の直線距離が2250km)
 
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今回の関東滞在中は、千里姉の家の地下プールで、ほんとにひたすら泳いでいて充実したのだが、千里姉に
 
「これ水道代凄くない?私少し出そうか?」
と言ったが、千里姉は
 
「最初にプールに水を満たす時はトラックで水を運んで来た。その後は雨水でかなり行けてる」
などと言っていた。
 
「どこから運んで来るの?」
「栃木県S町」
「なぜ唐突に栃木県?」
 
「私そこの町の川の水利権持っているんだよ。だから安価に水を確保できる」
 
「ちー姉って、最近ビジネスマンだね」
「ビジネスレディと言って欲しいね」
「エグゼクティブかな」
 
千里姉って、どうも国内に5−6個の工場を所有しているみたいだし、スポーツ用品店とか、アクセサリーショップも運営しているようだし、それにプラスして松本花子・夢紗蒼依にも関わっているし、ひょっとして作曲収入よりビジネス収入の方が大きくなってたりして!?
 
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でも体育館の運営は全部赤字という気がする!
 

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