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■春四(29)
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「これは結構整備されたパーキングエリアという感じです」
と潤子ちゃんは矢田さんが向けるカメラに向かってしゃべっている。
「あそこに自販機がありますよー」
と言って一緒に行き、カメラが撮す。
「コカコーラの製品が多いですが、違うのも混じってますねー」
と潤子は言って読み上げる。
「コカコーラ、コカコーラゼロ、ファンタグレープ、アクエリアス、茶織(さおり)、煌(ファン)、いろはす、紅茶花伝ロイヤルミルクティー、QOO白ぶどう、経口補水液」「GEORGIAのエメラルドマウンテン、PLATINUM BLACK,ラテニスタ キャラメルラテ、ビターショコラ ラテ、贅沢ミルクココア」
「野菜ジュース、トマトジュス、牛乳、豆乳、乳酸菌」
「コーンスープ、カレースープ、しじみの味噌汁、ラーメン、きつねうどん、おでん、豚汁、ホワイトシチュー、ボルシチ、おしるこ」
「半分までがコカコーラですね。残りがその他」
(危険なもの(女性ホルモンとか抗男性ホルモンとかプエラリアとか緊急避妊薬とか:むろんMに飲ませる!)は事前に撤去させた!)
「ボルシチって初めて見た。買ってみよう」
と言って真珠が買っているが
「あ、これ全部100円だ!」
と驚いている。
「お釣りが面倒くさいからだって」
「へー」
「あ、これカットしてね」
「はいはい」
「では私はラーメンを」
「じゃ僕は豚汁を」
「みんな下の段を買ってるね。じゃ私はおでんを」
「あ、このラーメン本当の麺だ」
麺は汁に浸かっておらずコンビニ弁当によくあるように分離されている。汁の中に入れ、2〜3分待ってから食べる方式である、
「コンニャクを使ってるのは時々あるね」
「豚汁もこれ美味しいですよ。お肉も結構入ってる。これ200円でも買うなあ」
「こちらはフードの自販機です。電子レンジ内臓タイプですね」
「ハンバーガー、ダブルチーズバーガー、フィッシュバーガー、チキンバーガー、てり焼きバーガー、焼き肉バーガー、焼きおにぎり、焼き醤油おにぎり、焼き味噌おにぎり、赤飯おにぎり、稲荷寿司、マルガリータピザ、シーフードピザ、サラミピザ、スパゲティミートソース、フライドポテト、アメリカンドッグ、ホットケーキ、チキンナゲット、タコス、中華ちまき、肉まん、あんまん、ピザまん、カレーまん」
「最近このタイプの自販機減りましたよね」
「昔は高速のPAにあって夜中のドライブに重宝したんだけどね」
「ああ、こちらは300円が多いみたいです」
「中華まんとかアメリカンドッグとかが100円ですね」
こちらは焼き肉バーガー、焼き味噌おにぎり、サラミピザ、ホットケーキ、と買ってみたが、どれも美味しくてみんな満足であった。
「焼き味噌おにぎりって、おばあちゃんの味だ」
などと矢田ディレクターは言っていた。
中華まんを4種類1個ずつ買ってみたが、思ったより大きくて具もたくさん入っていて「これ200円で売っていいと思う」とみんな言っていた。
「この自販機は八王子林業の従業員さんが使うのでしょうかね〜」
などと潤子は言っている。
「施設内は休憩室と右側にトイレ、左側には・・・ドアの向こうに通路があって、ドアが左右に5つずつ並んでいます。ここは会社の施設のようですね」
(この通路のドアは鍵を開けておいた)
千里が言う。
「そこの部屋の中見たい?」
「見たいです!」
「じゃ開けてあげるね」
というと自分のスマホを出して右側の3番目の部屋でかざすとドアが開く。
全員中に入る。
「仮眠部屋でしたか!」
「でもきれいですね」
「寝るだけだからね」
中にはセミダブルサイズのベッドと小さなワークテーブル、コンセントやUSBコネクタなどがある。小型の洗面台と鏡もある。
「仮眠している間にスマホやパソコンを充電できるよ」
「すごいですね」
「電気は太陽光パネルで起こしてる」
「太陽光パネル載ってましたね!」
「水は簡易水道だから飲まないで。あくまで顔を洗う程度」
「へー」
「ということで降りましょう」
全員トイレに行ってから車に戻る。千里の運転で“出口”と書いてある側に降りて行く。道はゆっくりと山を周回しながら降りていく。千里はそこを200km/hで走って行く。
「でもなんで道を2本作ったんでしょうね。上り・下り兼用でも良さそうなのに」
「猛スピードでの車のすれ違いは怖いからかもね」
「確かに200km/hでのすれ違いは怖いかも」
「まそれでオフレコということにして,本当はこの道路は何のための道路なんですか?千里さん」
と潤子が訊く。
「ここは実は事実上アクアの専用道路なんだよね」
「アクアちゃん!」
「彼女が愛車のボルシェを思う存分走らせるための道路。道路は250km/hで作ってあるけど、実際にはコスモスから180km/hまでに抑えるように言われてる」
「それは事故が怖いですよ」
「それと夜間走行では100km以下と言われてる」
「それが無難ですね」
「まあ彼女も国内A級ライセンスは持ってるからね。本当は昼間なら250km/h出せる。でも2000km/h以上出したい時は必ず私が同乗している」
「そういうことだったのか」
「まあ空(あ)いてる時は私も練習に使わせてもらってるけどね。だから要するにここはアクア専用サーキットだよ」
「やはりサーキットでしたか」
「建前上はHFRC:八王寺林業レーシングクラブ Hachipji Forestry Racing club の練習道路。でも八王寺林業レーシングクラブ は現在参加者を募集してない」
「あぁ」
「アクアはこのクラブの特別会員」
「ほほお」
「実は彼女のおとうさんがHHFRC設立者の1人。」
「へー」
「HFRCは2003年に8人の車好きにより設立された。当時は東富士山レーシングクラブでHFRCだった。東・富士山あるいは八王寺富士はここの山・上八岳の別名」
「へー」
「アクアは会員権を相続している」
「なるほどー」
「そこまでは放送していいよ」
「します」
「そちらの番組アシススタントの神田あきらちゃんも特別会員」
[ほお」
「この番組の第三弾は神田あきらのスパイラルロードで」
「なんと」
「頂上の仮眠所は夜中にドライブしてて眠くなったらあそこで仮眠するためのもの」
「へー」
「手前の2組が一般用。奥側は、左側の3つはアクア専用、右側の3つが私(わたし)専用」
「・・・えっと3つあるのは」
「分かってるくせに」
「ああ、やはりそうですよね」
「アクアの人数分ね」
「それと千里さんの人数分ですね」
「君たちには本当のことを言っておく。変にあれこれ勝手な想像をされると余計困るから。だから番組上は八王子林業専用道路ということにしといて」
「分かりましたー」
「ところでアクアさんの部屋と千里さんの部屋って何か仕様の違いとかあるんですか」
「私の部屋や一般用はイケアの5万円のベッド、アクアのは40万円のフランスベッド」
「あ、私もイケアです」
と潤子ちゃん。
「畳に布団のほうが休めるけどね」
「まあ、好みの問題ですね」
千里が運転するポルシェはやがてかなり麓まで降りてきた。運転席後ろに乗っている潤子が
「あ、合流がある」
と言う。
「じゃ、あとでそこを通ろうか」
「はい、お願いします」
やがて車は直線に入る。車は減速する。
「直線に入ったら減速ですか」
「そうそう。終端が近い印、この先に分岐があるからね」
それで車は分岐を左に行った。
「右に行くと何があるんですか」
「アクアの秘密の別荘が建ってるだけ」
「へー」
「近日公開。ほかの局たけど」
「楽しみにしておこう」
それでしばらく行くと信号機がある。信号はこちらが青である、千里はその信号を左折した。
「ここに信号があるなあと思って見てました」
「感応式だけどね。更に1km以内に車が無ければ消灯している」
「省エネですね!」
信号の少し先には合流がある、
「ああ、この合流に出てくるんだったのか」
千里は運転しながら左手でバッグを取り、中から地図を出して真珠に渡した。
「これ撮影禁止で。この道路の地図」
「凄い」
「Fo our eyes only ですね」
(再掲)
「この信号機を使うのはアクアの別荘側から走って来て山裾を一周し、山には上らずに八王寺林業に出る時だけ」
潤子と真珠はしばらく地図を見て指で辿っていたようだが
「なるほどー!」
と声をあげた。
それで車は頂上の駐車場を出て30分ほどで山裾を周回してから八王子林業の所まで戻ってきた。
車を一時停止させるとゲートは自動的に開く。
「外から中に入る時はリモコンで開けないといけないけど、中から外に出る時は自動的に開くんだよ」
「なるほどー」
千里は車を左側の公園のようなところに入れ。その中の道路を走っていく。
「こここそまるでサーキットみたい」
「そそ。ここが本来のHFRC専用サーキット。さっきの道はその延長」
「へー」
それで千里はポルシェを八王寺林業の庭に駐める。
「あ、社長さんに挨拶を」
「必要無い。帰っていいよと言ったからもう帰った筈」
「あはは」
それで潤子と矢田ディレクターは放送局の車の方に移り手を振って帰って行った。
時を少し戻して2022年11月。ムーランの山吹若葉と朱雀林業グループの村山千里は一緒に富山市の富山県庁を訪れ、富山県知事に面会を求めた。
「新交通システムを作るんですか」
「ルートは東西ルートが富山県東部から富山市・新湊・高岡市を通って取り敢えず金沢まで。南北ルートが南砺市から高岡市・氷見市を通って石川県の七尾市まで」
「それは何だか不思議なルートですね」
「南砺市の城端にムーランのセントラルキッチンを作る予定です。今南砺市には朱雀化学のマスク工場があり、朱雀製紙の製紙工場も作る予定です。また東京・名古尾・大阪への配送センターも作る予定です。新交通システムは、これらで働くスタッフの通勤用また資材・製品の運搬用と考えています」
「ああ。内部用なんですね」
「そうです。外部には開放するつもりはありません。ですから富山県さんが参加しておられる第三セクターの“あいの風とやま鉄道”とは競合しないと思います」
「なるほど」
「これは許認可案件になりますかね」
「いや内部用の専用線なら国土交通省の許可さえ取って頂ければこちらの許認可は不要ですね」
「ですよね。そんな気はしたのですが、念のためと思いこちらに顔を出してみました」
「分かりました」
実は国土交通省の許諾は既に取っている。基本的には郷愁ライナーの技術を使う。急勾配の所も郷愁飛行場に登る技術を使う。それで坂道を上るパワーを増強した新型車両も検査してもらった。
若葉と千里はこのあと一緒に金沢市に移動し、石川県庁に石川県知事を訪ね、同様のお伺いをした。こちらも富山県知事と同様の意見だった。ただどちらの知事からも「一般に開放しない内部用とはいっても災害などの時は開放してほしい」と要請があり、若葉たちは快諾した。
この日の会談を受けてムーランが石川県、朱雀が富山県の土地買収を進め、年内にはだいたいの土地買収を終えた。ここまで済んだ段階で若葉と千里は東京に行き、D製薬東京本店に山川社長を訪ねた。
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