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■春四(20)
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初海は翌日は◇◇テレビに『関東不思議探訪』の編集部を訪ねた。
谷崎潤子ちゃんと矢田ディレクターおよびスタッフさんが2人居た。
“〒〒テレビ『霊界探偵・金沢ドイルの北陸霊界探訪』アシスタント・関東支部長”金沢メール:竹本初海、の名刺を渡す。(肩書きが長い)
「金沢メールってフランス語の mer (海)からですか?」
「発端はそれですね。本名に“海”の字が入ってるから」
「海よ、僕らの使ふ文字では、お前の中に母がゐる。そして母よ、仏蘭西人の言葉では、あなたの中に海がある」
「ですです」
(日本語では海という字の中に母がある。フランス語で母は mère 海は mer で母の中に海が入っている。三好達治『郷愁』)
「これって最初にやったもん勝ちですね」
「ですよねー。でもうちの妹は金沢メッセージ、略してメッセです」
「メールからメッセージか」
「本人は金沢シュメールを希望しましたが」
「格好良すぎるのはだいたい拒否される」
「ノリの世界ですから」
「でもそちらの番組、毎回ビデオ送ってもらって見てるよ〜」
と潤子ちゃん。
「こちらも毎回見させていただいてますー」
「最近北陸は大規模な事件が多いね」
「解決方法が全く見当の付かない事件があって毎回悩んでます。でも金沢コイルこと村山千里は不思議探訪にも年に1〜2回は出てますよね」
「花丘玉依姫神社(*34) が定点観測地点になってるからねー」
(*34) 花丘玉依姫神社は千葉市内の小高い丘に2014.3.1に青葉が創建した神社だが、本人が北陸にいるので、事実上千里が“オーナー代行”として運営している。巫女長も千里の知人である。一応市街地にあるL神社の境外摂社扱いにしてもらっていて朝晩神職さんが拝礼に来てくれる。姫様の“三帰の家”の中心(本宅)で神社の故地を見下ろせる場所にある。
ここの運営にはローズ+リリーのマリも結構関わっていてしばしば訪れている。また神社そばの駐車場は市が運営している。来る人が多いので年々面積が拡大している。駐車場と反対側には神社直営の結婚式場のほか、料理店が現在3軒もできている。完璧に定番デートスポットになった。ここは東京電力の電線が来ていないのだが、太陽光パネルで電気をまかなっている。賑やかになって姫様もご機嫌のようである。
また谷崎潤子の妹の聡子が以前飼っていた“ルパン”という三毛猫が2013年に亡くなった後、姫様に気に入られて眷属となり、ここの神社の社守となってカップルたちを見守ってくれている(谷崎姉妹と千里だけが知っていること)。
聡子は2014年にこの神社近くに捨てられていた黒と白の子猫を拾い、オニキス・パールと名付けて可愛がっている。その子たちももう8歳半のおじいちゃん・おばあちゃんになっている。
「それで君のデスクはここに用意したから」
「わっ。ありがとうございます」
“北陸霊界探訪・関東支部”というプレートが貼ってあり、標準的な事務机と回転椅子、そしてそばに1.5mほどの高さの本棚が置いてある。初海はそこに『北陸霊界探訪』のこれまでの放送分が収録されたDVDセットを置いた。
椅子に座って笑顔で両手でピースサインしている所を、向こうのスタッフさんに初海のスマホで撮影してもらう。これを『霊界探訪』のほうで流す。
「このDVD見てもいい?」
「どうぞどうぞ、ご自由に」
「この部屋にはいつでも入っていいから」
「ありがとうございます」
それでディレクターからメールでこの部屋の鍵をもらった。テレビ局の入館証は後日送るということで写真を撮られた。
「ついでに時間のある時はうちの取材にも協力を」
「じゃ時間の取れる時に」
「今時間ある?」
「今日は夕方17時半までに熊谷の郷愁飛行場に行くことになってます」
「じゃ帰り送ってってあげるから、今から一緒に取材を」
「今からなんですか〜?」
1月18日(水).
月子(彪志)は首をひねっていた。今日は前回生理のあった12月21日の28日後なのだが、まだ生理が来ない。予兆(PMS)も来ていない。なんで来ないんだろうと思っていた時、体調が悪いと言って午前中休んでいた同僚の吉沢柚代がお昼頃に出社してきて言った。
「私妊娠しちゃったぁ」
「おお、それはめでたい」
と同年齢で仲の良い田原恵花が言う
「なんか今月は生理が来るの遅いなあと思ってたのよ。そしたら妹が『生理遅れてるって妊娠じゃないの?』と言うのよね。まさかぁ。ちゃんと避妊してるのにと思ったけど念のため妊娠検査薬使ったら美事に陽性」
「まあ避妊の失敗はよくあること」
「それで午前中レディスクリニックに行ってきて妊娠確認。予定日は9月24日」
「結婚するの?」。
「彼がすぐにも結婚式挙げようと言ってるから入籍だけはする」
「結婚式は〜?」
「金ばかり掛かるし面倒くさいからしない。新婚旅行も無し」
「お母さんは花嫁姿見たいんじゃないの?」
「別に“お嫁さんに行く”つもりはないし」
「まあ確かにそうだ」
「単に婚姻届けを出すだけよ。まあ記念写真くらいは撮ってもいい」
「仕事は続けるよね」
「当然当然」
「サーヤ(水川係長のこと)、私に産休くださーい」
「届け出して。一応出産予定日の3ヶ月前から、出産の3ヶ月後まで産休とするけど、体調がなかなか回復しない場合は出産後6ヶ月までは産休として休んでいい」
「了解で〜す」
この会話を聞いて月子(彪志)はギクッとした。
ぼくも生理が遅れてるけど、ぼく妊娠してないよね?こないだ入れられる夢見たし。
その日の帰り、月子(彪志)はドラッグストアで妊娠検査薬を買ってみた。お店のトイレでおしっこを掛けてみる。
ホッとする。窓には何も表示されない。陰性っぽい。でもなんで遅れているんだろう、
1月19日(木).
伏木の青葉の家に唐突に千里か来訪した。徳部・清川・広沢・沢田の4人を連れている。
「青葉、家の模様替えをするよ」
「唐突に何を?」
「月子ちゃんが越してくるから彼女の部屋を作る」
「月子は私の部屋に同居で」
「普通の主婦と主夫ならそれでもいいけど、青葉も月子もお仕事持ってるから、お互いに相手にも見られたくないものがある」
「確かに見られたくないものはある」
「だから各々の私物は各々の部屋に置いておき、セックスする時はセックス用の部屋でする」
「セックス用!?」
「セックス用の部屋には人間製造工場という看板を」
「やめて〜!見られたくないものはクローゼットに放り込むから、ここが日常を過ごす部屋でいい」
「了解。じゃ、クローゼットを拡張して、青葉の部屋の隣に置いて、どっちみち月子ちゃんの部屋作るね」
「うん」
それで千里と徳部たちは部屋の間仕切りを移動して4畳半の霊的な作業をする部屋と月子の部屋を作ってしまう。
「子供たちの部屋は?」
「2階に持って行く」
「2階?アキちゃんたちの部屋があるところ?」
「その隣に子供たち用の2階を作る」
「太陽光パネルは?」
「2mほど上にやる」
「ケーブルは〜?」
「延長する」
「大工事だね」
「今日中には終わる」
「よくやるね!」
しかしここの家、数ヶ月単位で形を変えてないか?
2021.11 竣工
2022,04 お隣にスタジオを設置。濡れ縁の延長。楽器室と制作室の中身移動。
2022.07 第2リビングを作る。
2022.09 2階を新設。明恵たちの部屋を作る。
2023.01 子供部屋を2階に移動し、青葉の霊的作業部屋と月子の部屋を作る。
実際の作業は清川がヘリコプターで太陽光パネルを土台ごと持ち上げたまま、ユニット部品を挿入した。男子寮の4階交換やホテル赤城のフロア増築と同様の工法。播磨工務店にしかできない。結構な騒音があるがお隣さんに豪華な贈り物をして了解を取った。
●Before(ピアノ室・スタジオ・駐車場を省略)
●After
(月子の部屋の右側2つの部屋はミュージシャンアルバムで来たタレントさんの控室(簡易洗面台付き)。これまでは子供部屋のどこかを借りていた)
朋子 1960,02.03女 艮(東)
青葉 1997.05.22女 震(西)
彪志 1993.11.15男 兌(東)
月子 1993.11.15女 艮(東)
桃香 1990.04.17女 艮(東)
桃香 1990.04.17男 坎 (西)
千里 1991.03.03女 乾(東)
来紗 2013.06.03女 坎(西)
京平 2015.06.28男 震(西)
伊鈴 2014.08.10女 艮(東)
早月 2017.05.10女 艮(東)
由美 2019.01.04女 兌(東)
緩菜 2018.08.23女 乾(東)
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