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■春四(28)
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5:59のアラームで目が覚める。なんかぐっすり眠った気がする。
まずお股の状態を確かめる。あ、ペニスはあるけど睾丸が無い。でも睾丸くらい構わない気がした。千里さんには男に戻りたいと言ったものの内心、自分は女でも構わない気分になってたけ。でも青葉と一緒にいるならペニスは無いとやばい。バストは消失している。男の胸だ。これは少し寂しい気がした。
そして次の瞬間、男の身体だと会社でやばい!という問題に思い至る。
どうしよう?
自分はもう女ということで、全てが進行している。課長からも水川さんと女同士だから気安いだろうなどと言われたし、
悩む。
男に戻れた(睾丸以外)のは嬉しいけど、自分が男であることはもう許されないのかも。水川さんには裸も見られているし。でも青葉の前では男の身体が必要である。
悩んでも仕方無いので、取り敢えずトイレに行く。ルームウェアのままではまずいので、スカートに穿き換えた。それでトイレに行くが「うっ」と思う。ここは呉羽PAではない。どうもどこかに移動しているようだ。
とにかくトイレ(女子トイレ)に行ってきてから施設の方を見ると甘楽PA!
ぼくが変なこと考えたから、悪戯されたのかもと思った。
まあ仕方無い。戻された分は再度走るしかない。
それで運転席に就いたが、ふと思った。
もう一階眠ったら呉羽でなくても越中境PAくらいになってないかな。
それで声に出して言った。
「どなたか分かりませんけど、変なこと考えたことはお詫びしますから、せめて北陸道のどこかくらいまで戻してもらえませんでしょうか」
それで彪志は後部座席に行くと再度眠った!
随分熟睡した気がした。スマホを見ると9:05である。3時間ほど寝たようだ。外の景色を見ると甘楽PAとは別の場所のようである。
自分の身体をチェックする。ペニスは付いたままだし睾丸も戻っている。これは今から青葉と会うのに都合が良い。上半身を触るとバストが戻ってる。
バストは今までと同じくらいのサイズである。うーん・・・これはまあいいか。バストが戻ったのは本当は困るけど内心は嬉しい気がした。バストと4ヶ月付き合ったら、もうあるのが当然になってしまって無いのは変な感じだった。これはあっても青葉は気にしないだろうし。
さっき甘楽PAに戻された時は、おっぱい・ちんちん・たまたまが、この順に、なし・あり・なし、だった。今度はあり・あり・あり、になった。考えてみるとこれは理想的かも。男性器をタックしておけば、会社もなんとかなる気がする。一方でペニスと睾丸があれば、青葉の出産後は普通の夫婦生活が送れる。青葉はきっと、バストがあることは気にしない。
取り敢えずトイレに行ってくることにする。車外に出る。ここはどこ?
見るとここにはトイレ(と自販機)しか無い。駐車場はわりと広めである。
ここは福岡PAじゃん!
(福岡県ではなく旧・福岡町、現・高岡市福岡地区にあるパーキングエリア)
とにかくトイレに行く。むろん女子トイレに入る。男の身体でも男の服装でも自分は女に見えるようだ。だったら女子トイレに入った方が無難なようである。
福岡PAは“進入路”というものが存在せず、左側の走行車線から直接入るという難しいPAで、知らないとまず寄れない。(以前はこに本線料金所があり、そこで停止して料金を払ってから中に入っていた)
設備もトイレだけだし、普通の人はここからひとつ能登側の高岡ICで降りて、IC傍の高岡・道の駅“万葉の里”で休憩したほうがいい。道路情報の掲示やレストランなどSAのような施設がある。仮眠している人も多い。無料区間なのでICの出入りも自由。“万葉の里”は構造が、名阪の道の駅“針テラス”と似ている。
そういう訳で福岡PAは休憩する車も少なく、この時は他に駐まっている車が居なかった。
「誰かさんありがとうございます。睾丸とバストもありがとうございます」
と自分をここに運んでくれた人にお礼を言う。少し笑い声がした気がした。
自販機でコーヒーを買ってから車に戻る。青葉に
『今福岡』
とショートメールを送ってから車を出した。
約6分で高岡北ICに達する。
信号を左に行って、少し細かい道を走り青葉の家に到達する。
駐車場には突っ込んで駐める。これが2/5 sun 9:35くらいだった。今青葉に突っ込める身体だけど、青葉が妊娠中にはどっちみち突っ込めないなと思った。
先日のトラックがまだそのまま置いてある。まだ徳部さん取りに来てないのかな?
荷物を持って玄関の所に行く。ピンポン鳴らす前に青葉がドアを開く。そのままキスして抱き付く。股間を揉まれる。
「まだ取ってないの?ちんちん取って女の子の形にしてくれる病院紹介しようか」
「ちんちんは無くしたくない」
「取っちゃってもいいのに。ただフェラとかしてあげられなくなるけど」
「どっちみち出産まではセックスはお休み」
彪志が青葉の胸を揉む。
「ますます大きくなってる」
「もうピークに近いね」
と言って青葉も彪志の胸を揉む。
「月子ちゃんの胸も結構大きい」
「あ、ブレストフォーム外すの忘れてた」
「そのままにしときなよ。毎日ブラジャーが着けられていいよ」
「あれ癖になりそう」
「きっと既に癖になってる」
例によって
「あんたたち玄関でされるのは迷惑。部屋でしなさい」
と言われて青葉の部屋に入る。
「月子ちゃん、私がちんちん切ってあげようか」
と言って医療用のハサミ?を取り出す。
「遠慮する」
「だってちんちん邪魔でしょ。取っちゃってすっきりしたお股になろうよ」
「やだ」
「そして2人目の子供は月子ちゃんが産んでよ」
「それは状況次第では考えてもいい」
あれ?やはり月子、ほんとに産んでくれる気かも。
「でも新しい部署を立ち上げてすぐ妊娠して離脱するわけにはいかないから2年くらいは待って」
「いいよ。じゃ2025年の1月くらいに妊娠ね」
「その時に僕が女だったら頑張る」
「きっとそれまでには性転換してるって」
「どうなのかなあ」
月子ほんとに妊娠する気かも。でも精子はとうやって調達しよう?
彪志が伏木に到着した2月5日(日)、浦和に来ている真珠は、朝食をとったあと千里のポルシェに同乗して、八王子林業に向かった。
「これオフレコで、千里さんあの道のこと知ってるんでしょ?」
「放送しないし人にも言わないのなら、あの道の正体は話してもいい。変な憶測で報道されるとよけい困るし」
「ああ、何か秘密があるんですね」
「まあね」
「でもこの車凄いですねー」
「ポルシェ992 Carrera S 。最高速308km/hだよ。実はレースに出る時に使っている車。国際C級ライセンスを維持するのに年間3回はレースに出ないといけないから」
「へー!」
「2年間に5回レースに出て順位認定される、つまり決勝進出することが必要」
「それ結構大変そう」
「まこちゃん運転してみる?」
「え〜!?」
「基本的には普通のMT車が運転できればそれと同じだよ。少々ぶつけてもいいから」
「よ、よし」
それで運転席を交替して真珠が運転して八王子に向かったが
「この子、凄く加速性能がいいですー」
と真珠が言っていた。
八王子林業の前で潤子ちゃんたちと合流する。
「千里さん、お早うございまーす」
「潤子ちゃん、矢田さんお早うございまーす」
「しかし凄いポルシェですね」
「最高速308km/hです。実際は320km/hくらいまで出ますけどね」
「おっすごい」
「4人乗りですが乗るのは?」
「私とまこちゃんと・・・矢田さんかな?」
「僕が撮影しよう。それと車のあちこちに小型カメラ付けて良い?」
「とうぞどうぞ」
矢田さんが固定カメラを取り付けている間に、潤子・真珠・千里は八王子林業の事務所に入り、千里が国際C級ライセンスを山道社長に提示する。
「あんた凄いライセンス持ってるね!」
と驚く(演技)。入場が許可される。矢田さんの準備ができたところで社長がリモコンでゲートを開ける。
ポルシェには前方を撮すカメラ、後方を撮すカメラ、左右各々を撮すカメラ、室内を撮すカメラ、フロントパネルを撮すカメラを取り付け、更に助手席に座る矢田さんがハンディカメラと小型のCCDカメラを持つ。
ポルシェが八王子林業・専用道路に進入する。後方でゲートが閉まる。
ポルシェ(右ハンドル車)には次のように乗っている。
運転席:千里
助手席:矢田
運転席後:谷崎潤子
助手席後:伊勢真珠
これは矢田と谷崎、千里と真珠で話しやすいようにである。
「スピード上げるよ」
と言うと千里がシフトをあげてアクセルを踏み込む。車はあっという間に200km/h に達する。この速度を維持する。実は矢田さんとの話し合いで200km/hまでにしましようと言っていたのである。これでも凄い速度である。
やがて分岐があるが、千里は右に進路を取った。
(再掲)
(図は3回巻いているが、実際は5回+1巻いている)
道は直線や緩やかなカーブが続き、急カーブの類いは無い。本当に250km/hで設計されているようだ。そして次第に山を登って行く。風景の飛んで行く速度が凄いので 200km/h という速度が分かるが、それ以外には速度の手がかりのようなものが無い。なお矢田の乗る助手席からは山裾側の風景が見えている。
「これは未知の速度体験ですね」
「まあこの道はサーキットみたいなものだからね」
と千里は言っている。
しかし千里の運転がうまいせいか、200km/hで走っていても車はあまり揺れず乗っていて安心感がある。
「ちょうど新幹線くらいの速度かな」
と潤子。
「まあ似たような速度ですね」
と千里は答える。
時々ガードレールの色が変わる。色は白→黄→黄緑→緑→青緑→スカイブルー→コバルトブルー→すみれ色→紫→ピンク→オレンジ→赤と変化した。そして赤いガードレールの所はアスファルトの色も赤である。
千里がオレンジのガードレールになったところで速度を落とした。そして赤いアスファルトの所は80km/hで走る。
「この部分は80km/h制限なんだよ」
「へー!」
「いや確かにオレンジと赤の境目のところに80という標識が立ってた」
と矢田ディレクターが言う。
「気付かなかった」
「後部座席からは分かりにくかったかもね」
そして道路はコンクリート舗装の道になる。
「これは最後の一周ですということなんだよ」
と千里はスピードを落としながら言う。
「50という標識があった」
と矢田さん。
そして車は速度を20km/hくらいまで落として頂上の駐車場に到着した。八王子林業そばのゲートからトリップメーターで51.2km、所要時間は 15:25 ほどであった。
枠が引いてあるのでその中の適当な場所に駐める。
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